補綴歯科専門医一覧の正しい調べ方と活用術

補綴歯科専門医の一覧はどこで確認できるのか、名簿に載っていない専門医がいる理由や新制度移行のポイントまで、歯科医療従事者が知っておくべき情報をまとめました。あなたの職場での連携や患者対応に役立てていますか?

補綴歯科専門医一覧の見方と制度の全体像

一覧を調べれば全員の専門医がわかると思っていませんか?実は同意がなければ名簿に載りません。


この記事のポイント📋
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補綴歯科専門医一覧の調べ方

日本補綴歯科学会のMAP検索・都道府県別名簿・日本歯科専門医機構PDFの3ルートを使い分けるのが基本です。

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名簿に載っていない専門医がいる理由

掲載は本人の同意が必要で、非公開を選んでいる専門医も一定数います。名簿の「全員」ではない点に注意が必要です。

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2023年以降の新制度と広告可能化

2023年10月から補綴歯科専門医は広告可能な資格となり、制度の位置づけが大きく変わりました。移行期間は令和11年3月31日まで続きます。


補綴歯科専門医一覧が確認できる3つの公式ルート

補綴歯科専門医の情報を調べる場合、アクセス先は大きく3つあります。それぞれ収録範囲や更新頻度が異なるため、目的に合わせて使い分けることが重要です。


まず最もよく使われるのが、日本補綴歯科学会の専門医・認定医MAPデータベースです。地図上に専門医のピンが表示され、都道府県名や氏名から絞り込み検索ができます。専門医だけでなく指導医・認定医もまとめて確認できるため、患者紹介先の候補を探す際に便利です。データベースの更新には変更申請から最大1か月程度かかる仕組みになっています。


次に、日本歯科専門医機構が公開しているPDF名簿があります。機構の認定を受けた補綴歯科専門医を年度ごとに収録したPDFで、2022年度・2023年度版が公式サイト(jdsb.or.jp)からダウンロードできます。氏名・勤務先名称・電話番号・所在地が一覧形式で記載されており、特定の地域の専門医を一括で確認したい場面に適しています。


3つ目は、都道府県別認定医名簿(hotetsu.com/p6_02.html)です。認定医レベルの情報が都道府県ごとに整理されており、専門医に限らず補綴治療に精通した歯科医師全体を把握したいときに役立ちます。


調べ方 特徴 適した用途
🗾 学会MAPデータベース 地図・氏名検索可能 紹介先の候補を探す
📄 機構認定PDF名簿 年度別・連絡先あり 特定地域を一括確認
📋 都道府県別認定医名簿 認定医も含む広範囲 補綴全体の分布把握


つまり、目的によって使うリストが変わります。


公式参考:日本補綴歯科学会「認定医・専門医名簿」および専門医・認定医MAP
日本補綴歯科学会 認定医・専門医名簿ページ(公式)


補綴歯科専門医一覧に「載っていない専門医」が存在する理由

名簿に名前がないからといって、その歯科医師が専門医でないとは言い切れません。これは見落としがちな重要なポイントです。


日本補綴歯科学会の公式データベースは、掲載の承諾が得られた専門医・認定医のみを掲載する仕組みになっています。つまり、正規の資格を持ちながらも、氏名・勤務先の公開に同意していない専門医は一覧に表示されません。非公開を選ぶ理由はさまざまで、勤務先の方針や個人のプライバシー配慮などが挙げられます。


さらに、データベースの更新にはタイムラグがあります。申請や変更手続きをしてから実際に反映されるまでに最大1か月程度かかるため、直近で取得・更新した情報が反映されていないケースも存在します。


また、名簿上に「氏名のみ掲載」を希望している専門医については、勤務先ではなく便宜的に学会事務局の連絡先が掲載されます。この場合、一覧で医院名や電話番号を確認することはできません。


意外ですね。


補綴歯科専門医を紹介先として検討する場合には、学会データベースの検索だけでなく、直接、対象の医療機関や学会事務局に問い合わせて確認する方法も有効です。特に患者紹介を行うかかりつけ医や歯科衛生士が、専門医の所在を調べる際には「名簿になくても実在する」という前提で動くことが適切です。


公式参考:日本補綴歯科学会「MAPデータベース掲載について」
日本補綴歯科学会 専門医・認定医MAP(掲載ルール確認)


補綴歯科専門医の資格取得条件と修練医・認定医・指導医との違い

補綴歯科専門医という名称だけが独り歩きしがちですが、実際には段階的な資格体系が整備されています。それぞれの位置づけを正確に理解することが、歯科医療従事者として連携や紹介の質を高める第一歩になります。


日本補綴歯科学会の資格体系は以下の4段階で構成されています。


  • 🏫 修練医:補綴歯科の研修を開始した段階。研修機関への登録が条件で、3年毎の更新が必要。
  • 🩺 認定医:3年以上の研修経験を有し、適切な歯科補綴治療の経験がある歯科医師。3年毎の更新で、継続維持には年間5,000円の継続料が発生する。
  • 専門医:5年以上の会員歴・5年以上の認定研修機関での研修・学術活動・試験合格が必要。5年毎の更新で、年間継続料は6,000円。
  • 🏆 指導医:専門医を取得済みで、認定研修機関において後進を指導できる歯科医師。年間継続料は2,000円。


専門医の申請には具体的な要件があります。①日本国歯科医師免許を有すること、②継続して5年以上の学会会員歴、③認定研修機関での5年以上の診療・研究従事、④認定医・専門医試験の合格、の4つがすべて揃って初めて申請できます。会員歴は入会前の研修期間を含む形での計算も一部認められています。


研修施設は「甲」と「乙」に分類されており、甲は大学の歯科補綴関連講座・診療科、乙は甲以外の医療機関(クリニックや病院)で、乙は必ず甲と連携しながら研修を行います。全国に甲79機関・乙25機関(令和4年9月現在)が認定されています。


更新費用の概算として、専門医は5年に1度の更新時に機構登録料11,000円、加えて年間継続料6,000円が毎年発生します。5年間の継続料の合計だけで30,000円になる計算です。これは条件が条件です。


資格区分 主な要件 更新 年間継続料
修練医(会員) 研修機関への登録 3年毎 なし
認定医(会員) 3年以上の経験等 3年毎 5,000円
補綴歯科専門医 5年以上研修+試験等 5年毎 6,000円
指導医 専門医取得+指導実績 5年毎 2,000円


公式参考:日本補綴歯科学会「申請料等一覧」(2025年1月現在)
日本補綴歯科学会 専門医等申請料・継続料の一覧(公式)


2023年から始まった新制度と補綴歯科専門医の広告可能化

補綴歯科専門医は長らく「学会内の資格」に過ぎず、医療広告として院内掲示やホームページへの記載が法的にグレーな状態にありました。しかし2023年に状況が大きく変わりました。これは現場に直結する変化です。


2023年10月、厚生労働省の医療広告規制改正により、補綴歯科専門医が正式に広告可能な専門医資格となりました。 これにより、歯科医院はホームページや院内掲示物に「補綴歯科専門医」の資格名を明記することが適法に認められるようになったのです。従来、広告可能な歯科専門医は口腔外科歯周病・歯科麻酔・小児歯科・歯科放射線の5領域でしたが、補綴歯科が6つ目として加わりました。


この変化の背景には、日本歯科専門医機構が補綴歯科専門医制度を正式に機構認定したことがあります。機構認定を受けたことで、行政(厚生労働省)の広告可能リストに追加される条件が整ったわけです。


新制度への移行期間は令和4年(2022年)4月1日から令和11年(2029年)3月31日までと定められています。旧制度の専門医は移行期間内に新制度への更新を済ませることが求められており、旧制度のままでは将来的に専門医以外の名称へ変更される可能性も明示されています。


新制度での専門医申請・更新には、従来の学術活動要件に加え、日本歯科専門医機構が主催する「歯科専門医共通研修」の受講が義務化されています。5年間で10単位以上(1講習1時間=1単位)を取得する必要があり、医療倫理・患者関係・医療安全・院内感染対策・法規の5区分でそれぞれ最低1単位が必須です。これを忘れると更新申請ができなくなります。


公式参考:日本歯科専門医機構「令和6年度専門医制度概報(2024年版)」
日本歯科専門医機構 補綴歯科専門医制度概報PDF(2024年度版)


補綴歯科専門医が全国に約1,200人しかいない実態と地域偏在

全国に10万人以上の歯科医師がいる中で、補綴歯科専門医はその約1.2%にしか過ぎません。この数字が示す意味は、歯科医療従事者にとって決して小さくありません。


令和4年(2022年)9月時点のデータによれば、全国の補綴歯科専門医は1,185名(うち指導医683名)で、認定研修機関は甲79機関・乙25機関の計104機関が登録されています。日本補綴歯科学会の会員数が約6,862名(2025年9月30日現在)であることを踏まえると、会員の中でも専門医まで到達しているのは約17%に過ぎない計算になります。


これが原則です。


さらに重要なのが地域偏在の問題です。全国の認定研修機関(甲)の分布を見ると、東京・大阪・愛知・福岡などの歯科大学・医科大学が集中する都市圏に偏っていることがわかります。認定研修機関(甲)は大学の補綴関連講座が中心で、地方では研修施設そのものが少ない状況です。


  • 🏙️ 東京圏:東京科学大学・東京歯科大学・日本歯科大学・日本大学・鶴見大学・昭和大学・神奈川歯科大学など多数
  • 🌸 大阪圏:大阪大学・大阪歯科大学など
  • 🌊 九州:九州大学・九州歯科大学・福岡歯科大学・長崎大学・鹿児島大学など
  • 🌿 東北・北海道:東北大学・北海道大学・北海道医療大学・岩手医科大学など


一方で、地方の患者が補綴歯科専門医の診療を受けるハードルが高くなりがちな現実も見えてきます。地域の一般歯科医院が難症例に直面した際、紹介先として専門医が不足している地域では、連携先を探すこと自体に時間がかかることもあります。この課題を念頭に置きながら、近隣地域の認定研修機関(乙)や大学病院附属歯科とのコネクションをあらかじめ確認しておくことが、日常の診療連携において重要な準備になります。


歯科衛生士・歯科技工士など歯科スタッフの立場から見れば、自分が勤務する医院の院長や上司が補綴歯科専門医かどうか、あるいは地域にどれだけ専門医が存在するかを把握しておくことは、難症例患者の対応時に適切な紹介先を提案する上でも役立ちます。これは使えそうです。


公式参考:日本補綴歯科学会「認定研修機関(甲・乙)一覧」
日本補綴歯科学会 補綴歯科専門医認定研修機関 甲・乙 全一覧(公式)