光力学療法(PDT)を「副作用がないなら単独で十分」と思っている歯科従事者ほど、再発リスクを見落としている。
光力学療法(Photodynamic Therapy:PDT)は、光感受性物質(光増感剤)と特定波長の光を組み合わせることで活性酸素を発生させ、病原菌や病変組織を選択的に破壊する治療法です。 がん治療や眼科治療では保険適用として長年使われてきた実績があり、歯科領域ではその応用が近年注目されています。 ukedental(https://www.ukedental.com/perio/periowave)
つまり「光と色素の化学反応」が鍵です。
メカニズムを図解すると以下のようになります。
| ステップ | 内容 | 使用物質/機器 |
|---|---|---|
| ①光増感剤の投与 | 歯周ポケットや病変部にジェルを塗布・注入 | メチレンブルー、バイオジェルなど |
| ②光の照射 | 特定波長(630〜670nm)のレーザーまたはLEDを当てる | 半導体レーザー、FotoSan630など |
| ③活性酸素の発生 | 光増感剤が励起され、一重項酸素などの活性酸素種を産生 | (化学反応) |
| ④選択的殺菌 | 活性酸素が細菌の細胞壁・膜を破壊して死滅させる | (標的:グラム陰性菌等) |
1900年にRaabという学生がアクリンオレンジという色素と光の組み合わせで微生物を死滅させることを発見したのが始まりとされており、歴史は120年以上にわたります。 nakayamadental(https://www.nakayamadental.com/2020/01/30/%E5%85%89%E6%AE%BA%E8%8F%8C%E6%AD%AF%E5%91%A8%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%80%80%EF%BC%91-%EF%BD%9E%E5%8F%A4%E3%81%8F%E3%81%A6%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E6%B2%BB%E7%99%82%EF%BD%9E/)
歯科においてPDTが適応される主な疾患は、慢性歯周炎・インプラント周囲炎・感染根管治療・う蝕の予防的処置です。 特に歯周病とインプラント周囲炎への応用では、複数の臨床研究でその有効性が示されています。これは使えそうです。 sl-nakao(https://www.sl-nakao.com/service02.html)
適応をまとめると以下の通りです。
日本における歯科疾患へのPDT(光殺菌治療)は、現在のところ厚生労働省の薬事承認が得られておらず、保険適用外となっています。 これが多くの歯科従事者にとって「導入を迷う最大の理由」です。 gotanda-dc(https://gotanda-dc.jp/2548/)
厳しいところですね。
一方でアメリカのFDA・カナダ・EU諸国の当該機関は、歯肉炎・歯周炎・歯内病変・インプラント周囲炎に対するa-PDTをすでに承認しています。 国際的なエビデンスは蓄積されているにもかかわらず、日本国内では薬機法の規制対象として慎重な運用が求められる状況です。 onozakishika(https://www.onozakishika.com/10_lad_pdt.html)
臨床に取り入れる際は以下の点に注意が必要です。
日本でも令和6年診療報酬改定の場でレーザー治療の保険収載に関する議論が進んでおり、今後の動向を追うことが重要です。 日本レーザー医学会が医療技術評価分科会へ提案を行っているという情報もあり、承認状況は変わりつつあります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631890.pdf)
承認状況は必ず最新情報を確認することが条件です。
参考:日本レーザー歯学会・J-Stage掲載の歯周治療における抗菌的光線力学療法の応用(a-PDTの臨床エビデンスと適応疾患について詳しく解説)
a-PDT単独では進行した歯周病の治療として十分ではありません。これが原則です。
その理由は、進行した歯周病の病原菌は歯周ポケット内の歯根表面や歯石周囲に強固に付着しており、光とジェルだけではバイオフィルム深部まで光感受性物質を届けることが難しいためです。 光の透過深度にも物理的な限界があり、光が届かない部位では殺菌効果が期待できません。 kusatsuchuo-dc(https://www.kusatsuchuo-dc.jp/blank-6)
明海大学の in vitro 研究では、a-PDTによる殺菌効果は照射時間依存的に増加することが示された一方で、高濃度の光感受性物質は単独でも殺菌効果を示し、かつL929(宿主細胞)への細胞毒性も照射時間が長くなるほど増加することが確認されています。 つまり「多ければ多いほどいい」とは言い切れません。 dent.meikai.ac(https://www.dent.meikai.ac.jp/media/library/new-journals/2021_V50/pp%2084-96.pdf)
SRPとa-PDTを組み合わせたプロトコルの流れは以下の通りです。
複数の論文メタアナリシスでは、1回の補助的Periowave(a-PDT)治療でSRP単独より有意なポケット深さ低下が得られ、6週間継続した場合はさらに2.3倍の改善がみられたとも報告されています。 反復施術が効果を高めるという点は、患者への治療計画説明にも役立てられます。 note(https://note.com/tohoshika/n/n352551adf887)
歯科でのa-PDT導入を検討する際、見落とされやすいのが「機器・薬剤コストと治療単価のバランス」という視点です。意外ですね。
現在、日本の歯科医院で導入されている主な機器・システムには以下があります。
| システム名 | 製造国 | 主な光増感剤 | 波長 |
|---|---|---|---|
| PerioWave(ペリオウェイブ) | カナダ | メチレンブルー(バイオジェル) | 670nm |
| FotoSan630 | デンマーク(CMSデンタル社) | 専用光感受性物質 | 630nm |
| 半導体レーザー+市販光増感剤 | 各種 | メチレンブルー、TBO等 | 810nm等 |
a-PDTは保険適用外のため、1回の治療費は全額患者負担です。 クリニックによって金額設定は異なりますが、1ポケットあたりの費用・1回あたりの照射時間(60〜120秒程度)を考えると、複数ポケットに施術する場合は時間効率とコストの両面での計算が必要です。 gotanda-dc(https://gotanda-dc.jp/2548/)
機器の初期導入コストも決して小さくありません。そのため、a-PDTを「プレミアム歯周治療メニュー」として明確に位置づけ、自費診療の体系の中でどう組み込むかを最初に設計しておくことが、継続的な導入・活用につながります。
また、患者が治療後にしばらく口腔内に青みが残る場合があります(光感受性物質の色素によるもの)。 これは身体に害のないものですが、事前に説明しておくことでクレームや不信感を防ぐことができます。これは必須です。 ukedental(https://www.ukedental.com/perio/periowave)
参考:草津中央歯科クリニックによるa-PDTの臨床的説明(a-PDT単独の限界とSRP併用の必要性について具体的に記載)
草津中央歯科クリニック:光殺菌歯周治療の解説
参考:明海大学による抗菌光線力学療法の有効性と細胞毒性に関するin vitro研究(光増感剤の濃度・照射時間と殺菌効果・細胞毒性の関係を数値で示した論文)
明海大学:a-PDTの有効性と細胞毒性に関する研究PDF