ドレーン留置翌日に抜去せず長期間放置すると誤飲や体内迷入のリスクが急増します。
歯科における切開排膿処置では、複数の専用器具を組み合わせて使用することが一般的です。基本的な器具セットには、メスとメスホルダー、剥離子、止血鉗子(モスキートペアン)、洗浄器具、そしてドレーン材が含まれます。
メスは膿瘍の切開に使用する最も基本的な器具で、替刃式のものが衛生管理の面で推奨されています。波動が最も明らかな部分を尖刃刀で切開する際、切開線の長さは膿瘍全長の3分の2を目安とすることが重要です。切開と同時に膿が噴出してくるため、術者は十分な準備を整えておく必要があります。
剥離子は骨膜を剥離して原因歯の骨欠損部を確認するために使用します。モスキートペアンは皮膚・皮下組織を切開後、膿瘍腔の大きさに応じて膿汁の排液を促進する役割を担います。
洗浄には20mLのシリンジに生理食塩水を充填して使用するのが標準的です。膿瘍腔が大きい場合には、シリンジに14Frのネラトンカテーテルを装着して、膿瘍腔内を十分に洗浄することが推奨されています。洗浄は感染の拡大を防ぎ、治癒を促進するために欠かせない手順です。
ドレーン材には開放式と閉鎖式のタイプがあります。開放式の代表的なものはペンローズドレーンで、排膿路を確保するために一定期間留置します。ドレーンがタンポンとなって排膿路を閉鎖しないように注意が必要です。
排膿処置に使用される器具は、処置の目的や膿瘍の状態によって適切に選択する必要があります。ドレーンには主に4つの形状タイプがあり、フィルム型、チューブ型、マルチスリット型、サンプ型に分類されます。
フィルム型ドレーンは平面的な構造で、広範囲の浅い膿瘍に適しています。チューブ型は中空構造を持ち、深部の膿瘍や多量の排液が予想される場合に選択されます。マルチスリット型はプリーツ(ヒダ)付きの内腔を持ち、チューブ効果と毛細管効果を併せ持つ構造です。
止血鉗子にも複数の種類があり、ペアン鉗子とモスキートペアン鉗子が代表的です。ペアン鉗子は比較的大きな組織の把持に、モスキートペアン鉗子は細かい操作が必要な場合に使用されます。先端部の形状も直型と曲型(反型)の2種類があり、切開排膿で患部を開く際や血栓摘出の際に用途に応じて選択します。
メスホルダーも様々な形状があります。一般的な外科用メスホルダーから、口腔内の狭い術野に適した歯科専用の小型メスホルダーまで、処置部位に応じて使い分けることが重要です。
洗浄器具の選択も重要なポイントです。通常の処置では20mLシリンジと生理食塩水の組み合わせで十分ですが、深部の膿瘍や複雑な形状の膿瘍腔には、ネラトンカテーテルを装着したシリンジを使用することで、より効果的な洗浄が可能になります。
材質選択においては、使い捨てタイプと再利用可能タイプがあります。感染リスクを最小限に抑えるため、ディスポーザブル製品の使用が増加しています。特にドレーン材やガーゼ類は単回使用が原則です。
実際の臨床現場では、患者の状態や膿瘍の特徴に応じて適切な器具を選択することが求められます。膿瘍の深さ、広がり、膿汁の量、炎症の程度などを総合的に評価して判断します。
浅在性の小さな膿瘍であれば、メスによる単純切開と簡易な洗浄で対応できる場合があります。この場合、ドレーン留置を省略できることもあります。しかし膿瘍腔が深い場合や広範囲に及ぶ場合には、ペアン鉗子やモスキートペアン鉗子を使用して膿瘍腔を十分に開放し、ドレーンを留置する必要があります。
口腔底膿瘍のような深部感染では、切開深度と範囲の決定が特に重要です。初回は浅めに切開し、膿汁の流出を確認してから、必要に応じて1~2mm単位で段階的に深度を追加していく慎重なアプローチが推奨されています。深く切開しすぎると重要な血管や神経を損傷するリスクがあるため注意が必要です。
ドレーン留置の判断基準としては、膿瘍腔の大きさ、膿汁の量、排膿の持続性などを考慮します。一般的に、膿汁が500mL以上排出された場合や、膿瘍腔が深く複雑な形状をしている場合にはドレーン留置が推奨されます。ドレーン留置により、排膿路を確保し、再感染のリスクを低減できます。
長崎大学歯学部口腔外科の切開排膿術の基本手技では、器具の選択から実際の手技手順まで詳細な解説が提供されています。
排膿処置に使用する器具の適切な滅菌管理は、院内感染予防の観点から極めて重要です。歯科医院は実は院内感染リスクが高い場所であり、患者の血液や唾液が飛散し、これが感染症の原因となる可能性があります。
再利用する器具については、使用後すぐに適切な洗浄を行うことが第一歩です。ピンセット、探針、剪刀類などの鋭利器具は開いて洗浄籠に入れ、超音波洗浄器などを使用して血液やタンパク質を完全に除去します。洗浄剤は器具の材質や微生物の種類、汚染の程度により濃度や時間を選択することが重要です。
オートクレーブによる高圧蒸気滅菌が最も確実な方法です。121℃の高温下で真空と蒸気・加圧を繰り返し、すべての細菌・ウイルスを死滅させます。滅菌処理後の器具は、滅菌バッグに入れた状態で保管し、使用直前まで無菌性を維持する必要があります。
オートクレーブによる滅菌ができない器具に関しては、次亜塩素酸ナトリウムや消毒用エタノールなどの中水準消毒薬を使用します。緑膿菌などの耐性菌に対しては、80℃・10秒間や70℃・30秒間の熱水消毒も有効とされています。
滅菌バッグは単回使用で無菌性が発揮できるように作られており、再利用はできません。開封後の滅菌物は速やかに使用し、使用しなかった場合でも再滅菌が必要です。滅菌物の有効期限を監視し、適切な在庫管理を行うことも重要です。
ディスポーザブル製品の活用も感染対策の重要な要素です。特にドレーン材、ガーゼ、グローブなどは必ず単回使用とし、使用後は医療廃棄物として適切に処理します。器具を使い回せば、別の患者に細菌やウイルス感染させるリスクがあるため、患者ごとの交換が当然です。
ドレーン留置後の管理は、処置の成功を左右する重要な要素です。最も注意すべき点は、ドレーンの留置期間です。基本的にドレーンは切開翌日か翌々日には撤去し、長時間留置しないようにします。長期留置は誤飲や体内への迷入というリスクを高めるだけでなく、ドレーンそのものが感染源となる可能性があります。
実際に、ペンローズドレーンが体内に迷入した事例が医療安全情報で報告されています。約7ヶ月後に右前腕の腫脹のため切開排膿を行った際、皮下からペンローズドレーンが1本出てきたという事例です。このような重大事故を防ぐため、留置したドレーンの本数をカルテに明確に記載し、抜去時に本数を確認することが必須です。
ドレーン固定も重要なポイントです。誤飲や迷入を防ぐため、口腔内へ挿入後は周囲組織と縫合糸でしっかりと固定します。口腔に出る部分は患者の不快感を最小限にするため、適度に切り詰めておくことが推奨されます。固定が不十分だと、患者が就寝中に誤飲する危険性があります。
排膿が持続するようであれば、ドレーンを一旦抜去した後、再挿入を行います。一般的に排膿量が10~20mL/日以下になれば抜去の目安とされています。抜去後も定期的な経過観察が必要で、1週間程度で切開部位の表面的な傷は閉じますが、完全な治癒には2~3週間を要します。
保険算定に関しては、複数の注意点があります。歯科ドレーン法は、ドレーンを留置管理した日ごとに算定し、1日につき50点を算定します。部位数や交換の有無にかかわらず1日1回が限度です。同一日に複数部位にドレーンを留置しても、算定は1回のみとなります。
歯周疾患の急性症状時に口腔内消炎手術(切開排膿等)と同日に行った歯周組織検査に係る費用は算定できません。これは2014年度改定で明確化された取り扱いです。切開などの後に歯周病検査を実施する場合は、医学的必要性を十分に検討し、別日に実施することが望ましいとされています。
算定に当たっては、手術部位、症状、手術内容の要点を診療録に明確に記載する必要があります。切開線の長さ、膿汁の量、使用したドレーンの種類と本数、留置期間などを詳細に記録することで、後日の査定リスクを軽減できます。
歯科ドレーン法の保険点数や算定要件の詳細は、診療報酬算定の実務において重要な参考資料となります。
口腔底膿瘍切開術は700点で算定されますが、単なる切開排膿のみではドレーン法の算定対象とはなりません。持続的(能動的)な吸引を行った場合に限り、ドレーン法の算定が可能となります。この区別を理解しておくことが、適正な保険請求につながります。

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