バイオセラミックシーラー mta との特徴と選び方

バイオセラミックシーラーとMTAセメントの違いを徹底解説。根管治療の成功率向上に必要な封鎖性、操作性、再治療時の除去難易度など、歯科医療従事者が知っておくべき臨床ポイントを具体的な数値とともに紹介します。材料選択で治療結果は変わるのか?

バイオセラミックシーラー mta 違いと選択

バイオセラミックシーラーの根管充填に失敗すると5万円の材料費が無駄になります。


この記事の3つのポイント
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バイオセラミックとMTAの違い

成功率が10~20%向上する材料特性の差と、硬化時間・操作性における臨床的な使い分け基準を解説

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封鎖性と膨張率の実際

約0.2~1%の微小膨張による根管壁との密着メカニズムと、再感染リスクを下げる高pH環境の維持期間

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再治療時の除去難易度

バイオセラミックシーラーは除去可能だがMTAは除去困難という臨床報告と、症例選択における判断基準


バイオセラミックシーラーとMTAセメントの基本的違い

バイオセラミックシーラーとMTAセメントは、どちらもケイ酸カルシウムを主成分とする水硬性セメントですが、臨床応用における特性には明確な違いがあります。MTAは1990年代に登場して以来、根管充填シーラー、覆髄材、穿孔部封鎖など多目的に使用されてきた材料です。一方、バイオセラミックシーラーは2010年代以降に登場し、MTAの優れた生体親和性や封鎖性を維持しながら、操作性を大幅に改善した根管充填用シーラーとして開発されました。


両者の最大の違いは硬化時間と操作性にあります。MTAセメントは完全硬化まで約3~24時間を要し、練和直後の稠度調整が難しいため熟練した技術が必要です。対してバイオセラミックシーラーは約240分以下で硬化し、1ペーストタイプの製品も多く、混和不要で即座に使用できる利便性があります。


つまり操作性が基本です。


成分面での違いも重要です。MTAには石膏やアルミン酸カルシウムが含まれることが多く、これが変色の原因となるケースがあります。バイオセラミックシーラーは変色リスクを低減した配合となっており、前歯部への適用においても審美性を損ないにくい特徴があります。また、バイオセラミックシーラーは水酸化カルシウムを配合した製品もあり、pH11~13の強アルカリ性を長期間維持することで抗菌性を発揮します。


価格面では両者とも保険適用外です。MTAセメントを使用した根管治療は1歯あたり約5万円前後の自費診療となることが多く、バイオセラミックシーラーを使用した場合も同様に1万円~数万円の追加費用が発生します。材料費自体も高額で、MTAセメント1g程度の小分け包装でも数千円、バイオセラミックシーラー2gで1万円以上することが一般的です。


高い投資です。


バイオセラミックシーラーの封鎖性と膨張メカニズム

バイオセラミックシーラーが従来の樹脂系シーラーと決定的に異なるのは、硬化時に微小膨張することで根管壁との密着性を高める点です。この膨張率は約0.2~1%程度と報告されており、根管形成後の象牙細管やイスムス、側枝といった微細な解剖学的構造にも材料が浸透しやすくなります。従来のガッタパーチャとシーラーの組み合わせでは、接着性がないため経年的に収縮や劣化による隙間が生じるリスクがありました。バイオセラミックシーラーはこの問題を大幅に軽減します。


封鎖性の高さは再感染予防に直結します。根管治療後の再発率は保険診療で約30~40%とされていますが、バイオセラミックシーラーやMTAを使用した精密根管治療では成功率が90%以上に達するという海外文献の報告があります。


成功率が10~20%向上ということですね。


この差は、根管内に残存する細菌や根尖部からの再侵入を物理的に遮断できるかどうかによって生まれます。


バイオセラミックシーラーは水分と反応して硬化する水硬性セメントであり、口腔内という湿潤環境でも確実に硬化する特性を持ちます。根尖孔外への溢出があった場合でも、組織液と反応して硬化し、周囲組織への刺激も少ないため生体親和性が高いとされています。ただし、溢出量が多い場合は知覚過敏や異物反応を引き起こす可能性もあるため、適切な操作技術が求められます。


さらに、バイオセラミックシーラーは硬化過程でカルシウムイオンを放出します。これにより根管壁表面にアパタイト層が形成され、歯質との化学的結合が強化されます。このアパタイト形成能は、MTAセメントと同様の生体活性特性であり、長期的な封鎖性維持に寄与します。根尖部の骨再生や硬組織形成を促進する効果も期待されており、根尖病変がある症例においても良好な治癒経過を示すことが報告されています。


バイオセラミックシーラーの高いpH環境も見逃せません。pH11~13という強アルカリ性は、ほとんどの細菌がpH9.5で死滅することを考えると、根管内に残存する細菌に対して強力な抗菌作用を発揮します。この高pH状態は硬化後も数週間から数ヶ月にわたって維持されるため、根管充填直後だけでなく長期的な無菌環境の維持に貢献します。


抗菌性は必須です。


バイオセラミックシーラーのMTA比較における操作性の実際

臨床現場でバイオセラミックシーラーが急速に普及している理由の一つは、MTAセメントと比較して圧倒的に優れた操作性です。MTAセメントは粉液型が多く、適切な粉液比で練和する必要がありますが、湿度や温度によって練和物の硬さが変化しやすく、扱いが難しい材料でした。練和後の作業時間も短いため、術者は迅速かつ正確な操作を求められます。


これはストレスですね。


バイオセラミックシーラーの多くは1ペーストフロータイプで提供されており、シリンジから直接根管内に注入できる形態です。混和工程が不要なため、操作時間の短縮と術式の簡略化が可能になります。例えば、日本で流通しているBSAワンフィルシリーズやBio-C Sealerなどは、キャップを外してそのまま使用できる利便性があります。


診療効率が向上します。


流動性の違いも重要です。バイオセラミックシーラーは適度な流動性を持つため、シングルコーン法やガッタパーチャポイントとの併用において、側枝やイスムスなどの複雑な根管形態にも材料が行き渡りやすくなります。一方、MTAセメントはパテ状の硬さに調整することが多く、根管充填シーラーとしてよりも穿孔部封鎖や覆髄材としての用途に適しています。


用途の違いがあります。


硬化時間の短さは治療計画にも影響します。バイオセラミックシーラーは約4時間で実用強度に達するため、根管充填後に同日または翌日には支台築造やコア形成に進むことが可能です。MTAセメントの場合は完全硬化まで24時間以上待つ必要があり、治療回数が増える傾向にあります。患者の通院負担を軽減するためにも、バイオセラミックシーラーの利便性は大きな利点です。


短縮が可能です。


ただし、操作性が良いからといって安易に使用すると失敗するリスクもあります。バイオセラミックシーラーは流動性が高いため、根管充填時に根尖孔外へ過剰に押し出されるケースがあります。これを防ぐためには、マスターポイントの適合確認やレントゲンによる作業長の厳密な測定が必須です。また、シーラーのみで根管を充填する手技も海外では報告されていますが、ガッタパーチャポイントとの併用が推奨される場合が多いです。


慎重な操作が基本です。


バイオセラミックシーラーの再治療時における除去可能性

根管治療において避けられないのが、再治療の可能性です。初回治療がうまくいかなかった場合や、経年的に再感染が生じた場合には、既存の根管充填材を除去して再度治療を行う必要があります。ここでバイオセラミックシーラーとMTAセメントの除去難易度の違いが臨床上の大きな判断材料となります。


バイオセラミックシーラーは除去可能であるという報告が複数あります。超音波チップやニッケルチタンファイル、溶剤を併用することで、比較的スムーズに除去できるケースが多いとされています。これは、バイオセラミックシーラーが硬化後も完全に石化するわけではなく、ある程度の機械的除去が可能な硬さに留まるためです。


除去が可能です。


一方、MTAセメントは硬化後に非常に硬く石灰化するため、除去が極めて困難です。特に根尖部まで充填されたMTAを完全に除去しようとすると、根管壁を過剰に削合するリスクや穿孔のリスクが高まります。そのため、MTAを使用する際には「除去が必要になる可能性を最小限にする」という前提で症例選択を行う必要があります。


再治療の難しさがあります。


再治療時の除去を考慮した場合、バイオセラミックシーラーは若年者や根管形態が複雑な症例、将来的に再治療の可能性が高い症例において有利です。逆に、根尖病変が大きく外科的歯内療法を視野に入れる場合や、確実に長期間封鎖を維持したい症例ではMTAセメントの使用も選択肢となります。


症例に応じた選択です。


ただし、除去可能であることが必ずしも「劣っている」わけではありません。バイオセラミックシーラーは封鎖性と再治療性のバランスに優れており、臨床的な汎用性が高い材料です。再治療を前提に材料を選ぶのではなく、初回治療で確実に封鎖することが最も重要であり、その上で万が一の際に対応しやすい材料を選ぶという視点が求められます。


初回治療が重要です。


バイオセラミックシーラーの種類と製品選択基準

現在、日本で使用可能なバイオセラミックシーラーにはいくつかの製品があり、それぞれ成分や特性が異なります。代表的な製品としては、Bio-C Sealer、BSAワンフィル、EndoSequence BC Sealer、キャナルシーラーBGなどが挙げられます。これらの製品は基本的な性質は共通していますが、流動性、硬化時間、X線不透過性、pH維持能などに違いがあります。


Bio-C Sealerは水酸化カルシウム系の根管充填材料で、カルシウムイオンを放出し生体親和性が高いことが特徴です。pH11~13の強アルカリ性を維持し、根管内細菌に対して高い抗菌性を発揮します。X線造影剤として酸化ジルコニウムを配合しており、レントゲン撮影時に明瞭に確認できます。硬化時間は約240分以下で、比較的早期に硬化します。


流動性が良いですね。


BSAワンフィルはケイ酸カルシウムを主成分とするMTA系バイオセラミックシーラーです。混和工程不要の1ペーストフロータイプで、操作性に優れています。根管充填シーラーとしてだけでなく、穿孔部の封鎖やパーフォレーション修復にも応用可能な汎用性があります。くっきりとした造影性があり、膨張して封鎖する特性を持ちます。


操作が簡単です。


EndoSequence BC Sealerはアメリカで広く使用されているバイオセラミックシーラーで、日本でも輸入品として入手可能です。ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムなどを含み、MTAセメントと同様の生体親和性と封鎖性を持ちます。根尖孔外へ溢出しても組織刺激が少なく、根尖部の治癒を促進する報告があります。


海外で実績があります。


製品選択において重要なのは、症例の特性と術者の経験です。流動性が高い製品は側枝への浸透性に優れますが、根尖孔外への溢出リスクも高まります。逆に粘稠度が高い製品は根尖部でのコントロールがしやすい反面、複雑な根管形態への適応性がやや劣ります。また、硬化時間が短い製品は作業効率が良い一方、操作時間に余裕がない場合もあります。


症例で選ぶことです。


製品ごとの物性データを把握しておくことも重要です。例えば、Bio-C Sealerの膨張率は約0.094±0.02%、被膜厚さは50μm以下、パーティクルサイズは2μm以下と公表されています。これらの数値は、根管充填材として求められる基準を満たしており、臨床応用において信頼性が高いことを示しています。


数値で判断できます。


さらに、バイオセラミックシーラーを使用する際には専用のガッタパーチャポイントとの組み合わせも検討すべきです。バイオセラミック用に設計されたガッタパーチャポイントは、シーラーとの親和性が高く、シングルコーン法での充填精度が向上します。根管形態に応じて加温垂直加圧法やラテラル法との併用も可能であり、術式の選択肢が広がります。


組み合わせが重要です。


Bio-C Sealer(バイオシーシーラー)の製品情報と物性データ - Angelus Japan


バイオセラミックシーラーの詳細な物性値や成分情報が掲載されています。


製品選択の参考となる技術資料です。


歯内療法とバイオセラミックス系材料 - 日本歯内療法学会誌


バイオセラミックス材料の学術的背景とMTA製材との関係について解説された論文です。


専門的な知識の補完に役立ちます。