アテゾリズマブ・ベバシズマブの副作用と歯科での注意点

アテゾリズマブとベバシズマブの副作用が歯科診療にどう影響するか、ご存じでしょうか?創傷治癒遅延・歯肉出血・MRONJ(薬剤関連顎骨壊死)のリスクや、口腔ケアの重要性を歯科医従事者向けに詳しく解説します。あなたの患者さんは、この薬を使っていませんか?

アテゾリズマブ・ベバシズマブの副作用と歯科処置の関係

ベバシズマブ投与中の患者は、無症状でも歯科処置なしで顎骨が壊死することがあります。


この記事の3つのポイント
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口腔内に直接現れる副作用

ベバシズマブは歯肉出血(発生率1.4%)や創傷治癒遅延を引き起こし、抜歯後のリスクを高めます。アテゾリズマブの免疫関連有害事象(irAE)も口腔内に影響します。

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歯科処置前に必ず確認すべきこと

投与中の患者に抜歯・外科処置を行う際は、主治医との連携が必要です。特にタキサン系抗がん薬との併用例では、抜歯後有害事象リスクが有意に上昇します。

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投与前から始まる歯科の役割

ベバシズマブ(アバスチン)の適正使用ガイドでは、投与開始前から歯科との連携・口腔チェックが明記されています。歯科側からの積極的な介入が求められます。


アテゾリズマブとベバシズマブの副作用の種類と特徴

アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ(商品名:アバスチン)は、主に切除不能な肝細胞がんに対する一次治療として、3週ごとに併用投与される分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせです。2020年9月に国内で承認を受けており、がん治療の現場で急速に普及しています。


この2剤はそれぞれ異なる作用機序を持ち、副作用のプロファイルも異なります。まず理解すべきは「どちらの薬が何を引き起こすか」という点です。


**ベバシズマブ(抗VEGF抗体)に特徴的な副作用:**
- 創傷治癒遅延(VEGF阻害による血管新生の抑制が原因)
- 出血(鼻出血15.1%、歯肉出血1.4%など粘膜出血を含む)
- 高血圧
- タンパク尿
- 血栓症・塞栓症
- 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)


**アテゾリズマブ(PD-L1阻害薬)に特徴的な副作用:**
- 免疫関連有害事象(irAE):間質性肺疾患、甲状腺機能異常、肝機能障害など
- 口腔乾燥、口内炎(口内乾燥は口腔内合併症の一つ)
- 口腔顔面神経障害(irAEとして)
- インフュージョンリアクション(点滴中〜24時間以内)


歯科医従事者として特に押さえておくべきは、ベバシズマブの「出血系・創傷治癒系」の副作用と、アテゾリズマブの「irAEとしての口腔内変化」の2軸です。これが基本です。


創傷治癒遅延は単なる「治りが遅い」という問題にとどまりません。ベバシズマブはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)を阻害することで、血管新生そのものを抑えます。このため傷口の修復に必要な新生血管の形成が妨げられ、歯科処置後の治癒が著しく遅れる可能性があります。半減期が約21日と長く、薬の影響が長期間持続する点も見落とせません。


テセントリク/アバスチン(肝細胞がん)Q&A(中外製薬):歯科連携・口腔ケアに関する公式推奨が掲載


アテゾリズマブ・ベバシズマブ副作用による歯肉出血と口腔内変化の実態

ベバシズマブ投与中の患者において、歯肉出血の発生率は1.4%と報告されています。「たった1.4%」と感じるかもしれませんが、歯科診療の場で考えると話が変わります。


たとえば月に100人のがん患者に関わる歯科施設であれば、単純計算で1〜2人に歯肉出血が生じている計算です。意外と高い数字ですね。この歯肉出血は自然止血が難しい場合があり、「10分経っても血が止まらない場合は病院へ」と複数の患者向けパンフレットで明記されています。


さらに見落とされがちなのが、アテゾリズマブによる口腔内への影響です。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単独療法を受けた患者の10%に口腔顔面部のirAEが発生するとの報告があります(ケアネット、2025年10月)。内訳は口腔顔面神経障害56.97%、口腔粘膜障害33.95%、口腔乾燥症9.07%です。


つまり口腔顔面irAEが起きた場合、半数以上が「神経障害」という形で現れます。口腔乾燥(ドライマウス)も決して珍しくありません。これは使えそうな情報です。


口腔乾燥が続くと、う蝕(虫歯)・歯周病の進行リスクが高まります。唾液の量が減ると口腔内の自浄作用が低下するためです。がん治療中の患者は免疫も下がりやすく、口腔内の感染が全身状態に波及するリスクもあります。ロ腔乾燥が起きている患者を診たら、使用薬剤の確認が原則です。


ケアネット(2025年10月):ICI単独療法での口腔顔面irAE発生率10%の報告記事


アテゾリズマブ・ベバシズマブ副作用と薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)のリスク

ベバシズマブは「骨修復薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブ)」と同様に、血管新生阻害薬として顎骨壊死検討委員会のポジションペーパー2023にも記載されている薬剤です。つまりMRONJを引き起こしうる薬剤として正式に位置づけられています。


ここで歯科医従事者に知っておいてほしい驚くべき事実があります。北海道大学歯学研究院の研究(科研費19K19219)では、ベバシズマブ投与中に**抜歯を行っていないにもかかわらず**、自然発生的にMRONJが3例認められたことが報告されています。いずれも骨修飾薬の併用はありませんでした。発生部位は下顎臼歯部・上顎臼歯部・口蓋隆起の3箇所で、3例中2例でタキサン系抗がん薬との併用がありました。


「抜歯しなければ大丈夫」は、ベバシズマブについては成立しない考え方です。これが条件です。


さらに同研究では、ベバシズマブ投与中の患者24名(抜歯67本)を対象とした調査で、有害事象(治癒遅延・後出血)が生じたのは24名中6名(25.0%)、67歯中11歯(16.4%)と報告されています。4人に1人に何らかの有害事象が生じた計算で、決して低い数字ではありません。厳しいところですね。


リスクが特に高い条件は以下のとおりです。


| リスク因子 | 詳細 |
|---|---|
| 抜歯部位 | 下顎臼歯部(上顎比で有意にリスク高) |
| 抜歯の種類 | 骨削除を伴う外科的抜歯(普通抜歯より有意にリスク高) |
| 併用薬 | タキサン系抗がん薬(パクリタキセル等)との併用 |


なお、同研究では「ベバシズマブ継続群と休薬群での有害事象発生頻度に有意差はなかった(p=0.35)」との結果も出ています。これは「必ずしも休薬が有害事象を防ぐわけではない」ことを示唆しており、闇雲な休薬よりも主治医・歯科医の連携による症例判断が重要であることを示しています。


科研費研究成果報告書(北海道大学・今待賢治):ベバシズマブ使用患者の抜歯に関する安全性評価


アテゾリズマブ・ベバシズマブ副作用に対応する歯科処置前の確認ポイント

アテゾリズマブ・ベバシズマブ投与中の患者に歯科処置を行う際、最低限確認すべき項目があります。処置の安全性は「情報収集の質」で決まります。


まず確認すべきは投薬情報です。患者が「がん治療中」と申告した場合、使用薬剤の名称・投与スケジュール・最終投与日を必ず確認してください。問診票や「お薬手帳」の確認が有効です。青森県立中央病院が作成している「お口のカルテ」のように、血管新生阻害薬・骨修復薬・抗血栓薬を一覧でチェックする仕組みを自院の問診フローに取り入れることも有効です。


次に処置の内容によって対応が変わります。


**一般的な口腔ケアスケーリング(侵襲なし):**
大きな問題なく継続可能です。むしろ積極的に行うことが推奨されています。


**抜歯・切開インプラント等(侵襲あり):**
必ず主治医に連絡・確認が必要です。ベバシズマブ投与中の場合、特に下顎臼歯や骨削除を伴う外科的抜歯はリスクが高いため、処置の必要性と緊急性を主治医と共有したうえで判断します。


抗血栓薬の休薬目安(参考:青森県立中央病院資料)は以下のとおりです。ベバシズマブに関しては明確な休薬ガイドラインがない現状ですが、大きな手術では「術前6週間以上・術後4週間以上」の休薬が推奨されています。


| 薬剤名 | 術前休止の目安 |
|---|---|
| アスピリン | 7日 |
| クロピドグレル(プラビックス) | 14日以上 |
| ワルファリン(ワーファリン) | 4日 |
| リバーロキサバン(イグザレルト) | 1日 |
| ベバシズマブ(大手術の場合) | 術前6週間以上 |


ポイントは、「休薬の是非は主治医が原病の治療優先度を考慮して判断する」という原則です。歯科医は「処置の必要性・侵襲度」を正確に伝えることが役割です。これだけ覚えておけばOKです。


青森県立中央病院「がん治療を受ける患者さんへ」:血管新生阻害薬・骨修復薬・抗血栓薬の一覧チェックシート(PDF)


アテゾリズマブ・ベバシズマブ投与患者への継続的な口腔ケアと歯科の独自的役割

「副作用が怖いから、がん治療中の患者の歯科処置は控えたほうがいい」と考える歯科医従事者は少なくないかもしれません。ところが実態は逆です。ベバシズマブの適正使用ガイド(中外製薬)では「投与開始前から歯科との連携のもと、あらかじめ口腔チェックや口腔ケア指導を受けることが望ましい」と明記されています。


つまり、治療開始**前**から歯科が関与することが、製薬会社側からも公式に推奨されています。これは非常に重要な点です。


口腔衛生状態が悪いことは、MRONJ発症のリスク因子でもあります。未治療のう蝕、歯周病、不適合義歯などが残っている状態でベバシズマブが開始されると、口腔感染から顎骨壊死へ進展するリスクが上がります。「歯科側が先手を打つ」ことが結果的に副作用リスクの軽減につながります。


ドライマウスへの対応も歯科の独自的な強みが発揮できる領域です。アテゾリズマブによるirAEで口腔乾燥が生じた場合、以下の対応が有効とされています。


- 保湿ジェル・保湿スプレー(市販品・処方品)の活用
- うがい用の人工唾液の使用
- フッ化物配合の低刺激性歯磨き剤への変更
- 食後の丁寧な口腔清掃指導


口腔乾燥が長引くと、う蝕が急速に進行します。特に根面う蝕(歯の根元に生じるむし歯)は進行が速く、がん治療中の患者では見落とされやすいリスクです。定期的なフッ化物応用と食生活指導も歯科の重要な役割です。


さらに、アテゾリズマブ・ベバシズマブ投与患者はがん治療を続けながら長期間通院することが多く、歯科が継続的に関わることで口腔内変化を早期に発見できます。たとえば歯肉の発赤・腫脹・骨露出の早期発見は、MRONJ治療の予後を大きく左右します。MRONJ Stage 0(骨壊死の臨床的・画像的所見なし、非特異的症状のみ)の段階で発見・対応できれば、保存的治療で予後良好になる可能性があります。


がん患者を支える医科歯科連携の担い手として、歯科医従事者の役割はかつてなく重要になっています。いいことですね。


顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023(日本口腔外科学会):MRONJ診断基準・管理指針の最新版


十分なリサーチが完了しました。記事を作成します。