
AHプラス(AH Plus)は、Dentsply Sirona社が製造するエポキシ樹脂系の根管充填シーラーです。 ペーストAにはビスフェノールA/F系エポキシ樹脂、ペーストBにはアミン系硬化剤がそれぞれ含まれており、これを等量混和することでエポキシアミン反応が起き、約8時間で自己硬化します。 従来の前身製品「AH 26」ではホルムアルデヒドの放出や歯の変色が問題とされていましたが、AHプラスではその処方を改良し、それらのリスクを排除した設計となっています。 dentreview.doctorbook(https://dentreview.doctorbook.cloud/products/29)
X線造影性を付与するため、酸化ジルコニウムやタングステンなどの造影剤が配合されています。 これにより、充填後のX線写真で根管内のシーラー分布を確認しやすくなり、臨床的な評価がしやすくなります。 dentreview.doctorbook(https://dentreview.doctorbook.cloud/products/29)
医療機器認証番号は220AABZX00327000、クラスⅡ(管理医療機器)に分類されています。 製品形態はチューブ入りのペーストタイプと、混和不要で直接根管内に注入できる「AH Plus Jet」があります。 assets.dentsplysirona(https://assets.dentsplysirona.com/flagship/japan/explore/endodontics/END-Brochure-AH-Plus-JP-202006.pdf)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製造販売元 | デンツプライシロナ株式会社 |
| 分類 | クラスⅡ 管理医療機器 |
| 主成分(A剤) | ビスフェノールA/F系エポキシ樹脂 |
| 主成分(B剤) | アミン系硬化剤 |
| 造影剤 | 酸化ジルコニウム、タングステン |
| 硬化時間 | 約8時間(自己硬化型) |
| 形態 | チューブ型 / AH Plus Jet(シリンジ型) |
AHプラスは1992年にヨーロッパで導入されて以来、30年以上にわたり根管充填シーラーの世界標準として使用されてきました。 その生体適合性と長期封鎖性は基礎研究・臨床研究の両面から繰り返し証明されており、現在もっとも信頼されるエポキシ系シーラーの一つです。つまり「実績で選ばれている製品」だということです。 heartful-konkan(https://heartful-konkan.com/blog/dr_motoyama/10153/)
デンツプライシロナ社の臨床データによると、術後1年での成功率は91.3〜94.1%、術後3年でも92.7%、術後4年では90.7%という高い継続的成功率が報告されています。 根尖性歯周組織疾患の症例では、術後に78%で治癒が確認されたという報告もあります。 これは使えそうです。 dentsplysirona(https://www.dentsplysirona.com/content/dam/flagship/japan/explore/endodontics/END-Brochure-Related-Products-JP-END-050-202212.pdf)
一方で、この優れた封鎖性は「硬化後の再治療困難」という側面にも表れます。エポキシ樹脂が根管壁に強力に接着し硬化するため、再根管治療が必要になった際の除去は容易ではありません。再治療を想定した症例選択の段階で、十分な判断が求められます。
AHプラスは当院ブログでも臨床的考察が詳しく解説されています。
ハートフル歯科:根管充填材としてのAHプラスの特性と長期封鎖性についての臨床考察(H3「根管充填の話」セクション参照)
AHプラスは多様な根管充填テクニックに適応可能です。 ただし、それぞれのテクニックで「シーラーに求める役割」が異なる点に注意が必要です。 dentreview.doctorbook(https://dentreview.doctorbook.cloud/products/29)
側方加圧充填法(Lateral Condensation)では、複数のガッタパーチャポイントとシーラーを組み合わせて封鎖します。AHプラスの粘性と流動性はこのテクニックに適しており、ポイント間の微細な隙間をシーラーが埋めることで緻密な封鎖を実現します。シーラー量はあくまで補助的に使用するのが原則です。
垂直加圧充填法(Warm Vertical Compaction)では加熱軟化したガッタパーチャを垂直方向に加圧します。加熱操作との相性が問題になりますが、AHプラスは適切な操作時間内であれば十分な流動性を保ちます。
シングルコーン法では1本のメインポイントにシーラーを塗布して挿入します。この方法はシーラー依存度が相対的に高くなるため、良質なシーラーであることが前提条件です。AHプラスの優れた根尖封鎖性が生かされる場面です。これが条件です。
水酸化カルシウム製剤はペースト状で根管壁に付着しやすく、通常の洗浄では完全に除去しきれないケースがあります。 研究では、超音波チップを用いた物理的洗浄でも完全除去が難しいと報告されており、メーカー側がクエン酸系の専用除去薬剤を販売しているほどです。 痛いですね。 hoshina-dc(https://hoshina-dc.jp/blog/%E6%AD%AF%E5%86%85%E7%99%82%E6%B3%95%E3%89%96/)
根管壁に水酸化カルシウムが残留した状態でAHプラスを充填すると、シーラーのエポキシ樹脂成分と根管壁との接着界面に水酸化カルシウムが介在し、接着性・封鎖性を低下させる可能性があります。
また、水酸化カルシウム長期貼薬(数か月単位)は根管象牙質の耐久性を脆弱化させるという論文報告もあります。 根管壁が弱くなった状態でAHプラスを充填しても、長期予後に影響します。貼薬期間の管理が重要です。 hoshina-dc(https://hoshina-dc.jp/blog/%E6%AD%AF%E5%86%85%E7%99%82%E6%B3%95%E3%89%96/)
保科歯科医院:水酸化カルシウム貼薬の意義と注意点の詳細(「長期貼薬のデメリット」「根管外漏出リスク」が詳しく解説されています)
AHプラスは二剤混合型のシーラーであるため、使用前の適切な管理が製品性能に直結します。現場でよく見落とされる管理上のポイントを整理します。
保管については、直射日光を避け室温(15〜25℃)で保管することが基本です。冷蔵保管をしている施設もありますが、使用前に十分室温に戻さないと粘度が高く混和が均一にならないことがあります。粘度のムラは封鎖性にも影響します。
混和比については、ペーストAとペーストBを厳密に等量で混和することが必須です。 チューブ型は目視で等量を出す必要があるため、スケールや専用ミキシングパッドを使った正確な計量が望ましいです。一方、AH Plus Jetはシリンジ型で混和が自動化されており、混和比ミスを防げる点で臨床的に有利です。 これは使えそうです。 dentreview.doctorbook(https://dentreview.doctorbook.cloud/products/29)
ワーキングタイムについては、混和後に約8時間で硬化しますが、根管内の温度や湿度の影響を受けます。特に夏季などの室温が高い環境では、ワーキングタイムが短縮する場合があります。混和後はできるだけ速やかに使用することが大切です。
使用期限の管理も重要です。開封後は空気との接触により品質変化が起きやすくなるため、開封日を記録し早めに使い切る運用が推奨されます。
デンツプライシロナの公式製品情報ページでは、適切な使用方法と仕様の詳細が確認できます。
FEED(歯科専門サイト):AHプラスの製品詳細・仕様・価格情報(根管充填シーラー カテゴリ内)