同月2回目以降のCBCT撮影は算定点数が20%減額されます。
歯科用コーンビームCT(Cone Beam Computed Tomography: CBCT)とは、歯科領域に特化して開発されたX線を用いた3次元画像診断装置です。円錐状(コーン状)のX線ビームを照射し、検出器で取得したデータをコンピュータで再構成することで、歯・歯根・顎骨・神経などを立体的に可視化します。従来のパノラマレントゲンやデンタルX線が平面的な2次元画像であるのに対し、CBCTは3次元の立体画像を提供するため、診断精度が飛躍的に向上するのが最大の特徴です。
1998年に初めて歯科用として開発されて以来、インプラント治療・根管治療・矯正治療・埋伏歯の抜歯計画など、幅広い領域で活用されています。医科用CTと比較して撮影範囲が限定されているため、被ばく量は約1/10程度に抑えられており、撮影時間も約10~20秒と短いのが特徴です。空間分解能は2 line pair/mm以上と高く、歯根の微細構造や根管形態まで鮮明に捉えることができます。
CBCTは2010年に保険収載され、現在では多くの歯科医院で導入が進んでいます。保険点数は撮影料600点、診断料450点(月1回限り)、電子画像管理加算120点の合計1,170点で算定されます。ただし、同一月に2回以上撮影を行った場合、2回目以降の撮影料は所定点数の80%(480点)に減算される規定があるため、撮影タイミングの判断が経営面でも重要になります。撮影適応の判断には専門的な知識が必要であり、「パノラマやデンタルX線で診断が困難な場合」という保険適用の条件を満たす症例選択が求められます。
CBCTとパノラマレントゲンの最大の違いは、画像の次元性にあります。パノラマが2次元の平面画像であるのに対し、CBCTは3次元の立体画像を提供するため、重なり合った構造を分離して観察できます。例えば、下顎智歯と下歯槽神経管の位置関係を評価する場合、パノラマでは前後的な重なりがあるため神経損傷リスクを正確に評価できませんが、CBCTでは任意の断面で両者の距離を計測でき、安全な抜歯計画が立案できます。
つまり診断精度が違うということですね。
パノラマの利点は、低被ばく・低コスト・短時間で上下顎全体を一度に撮影できることです。被ばく量は約0.01~0.03mSvとCBCT(約0.04~0.1mSv)の半分以下で、撮影時間も数秒で済みます。初診時のスクリーニングや定期検診、う蝕や歯周病の概略把握には十分な情報が得られるため、日常臨床の第一選択となります。一方CBCTは、パノラマで疑わしい所見が見つかった場合の精査、インプラント埋入前の骨形態評価、難治性根管治療での根管形態確認など、より詳細な情報が必要な場面で威力を発揮します。
解像度についても違いがあります。デンタルX線は約10~20 line pair/mmと最も高解像度ですが撮影範囲が狭く、パノラマは約2~3 line pair/mmと広範囲をカバーするものの解像度は劣ります。CBCTは2 line pair/mm以上の解像度を持ち、撮影範囲も直径4cm×4cmから8cm×8cm程度まで可変できるため、目的に応じた柔軟な撮影が可能です。ただし金属修復物が多い症例では、アーチファクト(金属によるノイズ)が発生し画質が低下するため、デンタルX線との併用が推奨されます。
費用面では大きな差があります。パノラマ撮影の保険点数は402点(初回)で患者負担は3割で約1,200円、CBCTは1,170点で約3,500円です。自費診療では施設により異なりますが、パノラマが2,000~3,000円程度に対しCBCTは5,000~15,000円と高額になります。診療所経営の観点からは、全症例にCBCTを適用するのではなく、パノラマで初期評価を行い、必要な症例に限定してCBCTを追加する段階的アプローチが合理的です。
インプラント治療においてCBCTは事実上必須の検査となっています。埋入予定部位の骨幅・骨高径・骨密度を正確に計測し、下歯槽神経管や上顎洞との安全距離を確認することで、手術リスクを最小化できるためです。パノラマでは拡大率が約1.2~1.3倍あり個体差も大きいため、実際の骨形態との誤差が生じますが、CBCTでは1:1の実寸計測が可能で、インプラント体のサイズ選択や埋入角度のシミュレーションを高精度に行えます。
特に前歯部では唇側骨の厚みが重要です。
前歯部インプラントでは審美性が重視されるため、唇側骨の厚みが2mm以上あることが長期的な安定の目安とされています。しかしパノラマでは唇側と舌側の骨が重なって見えるため、実際には唇側骨が薄くても気づかないことがあります。CBCTの断面画像では唇側骨の厚みを0.1mm単位で計測でき、骨造成の必要性や術式選択を術前に判断できます。これにより術後の唇側歯肉退縮やインプラント体の透見を防ぎ、審美的な結果を得やすくなります。
下顎臼歯部では下歯槽神経損傷のリスク評価が重要です。パノラマで神経管との距離が2mm以下に見える場合、CBCTで精査すると実際には接触している、あるいは神経管が歯槽頂に近い位置を走行しているケースがあります。新潟大学歯学部の臨床利用指針によれば、下顎管に近接する症例では小照射野CBCTによる精査が推奨されています。撮影により神経管の正確な走行路と直径を把握でき、安全な埋入深度と角度を決定できるため、術後の知覚異常を回避できます。
サイナスリフトやソケットリフトを伴う上顎臼歯部症例でも、CBCTは不可欠です。上顎洞底の形態は個人差が大きく、パノラマでは洞底の凹凸や粘膜肥厚の程度を正確に評価できません。CBCTでは上顎洞内の隔壁(セプタ)の有無や位置、洞粘膜の厚さを確認でき、上顎洞炎の既往がある場合は術前に耳鼻科紹介の必要性を判断できます。また残存骨高径が4mm以下の症例では、ラテラルアプローチかクレスタルアプローチかの術式選択にCBCTデータが直結します。
CBCT導入には多額の初期投資が必要です。装置本体の価格は、CT単体の普及機で500万円以上、パノラマ・セファロ機能を統合したオールインワン機では1,000万~1,500万円が相場です。これに据付工事費、遮蔽壁設置費用、線量測定費用などが加わり、総額で装置価格の1.2~1.5倍程度を見込む必要があります。さらに年間保守契約料が約20万円、X線管などの消耗部品交換費用が数年ごとに50万~100万円発生するため、長期的なランニングコストも考慮しなければなりません。
費用対効果の計算が重要です。
保険点数1,170点の3割負担で患者から約3,500円、医院収入は約11,700円です。仮に月20回撮影すれば月収約23万円、年間約280万円の収入増が見込めます。ただし診断料は月1回限りのため、同一患者の複数回撮影では撮影料のみ(2回目以降は480点)の算定となり、実収入は下がります。装置価格を1,000万円、年間保守料20万円とすると、単純計算で約4年で回収できますが、これは撮影数が安定している前提です。インプラント症例が少ない一般開業医では撮影頻度が月5~10回程度にとどまり、回収期間が10年以上になる可能性もあります。
自費診療での活用も収益性を左右します。インプラント治療でCBCT撮影を自費で5,000~10,000円に設定している医院も多く、月10症例あれば月5万~10万円の追加収入になります。矯正治療でも初診時と治療経過観察でCBCTを活用し、自費で10,000~15,000円を設定すれば、年間60万~120万円(月5症例想定)の収益が見込めます。このように保険診療と自費診療を組み合わせた運用により、投資回収期間を短縮できます。
一方、撮影件数が伸びない場合のリスクも考慮すべきです。装置の耐用年数は約6年とされ、この期間内に投資を回収できなければ財務的負担が残ります。またCBCT画像の読影には専門的知識と時間が必要で、アーチファクトの多い画像では診断に30分以上かかることもあります。読影を外注する場合は1件あたり3,000~5,000円の費用が発生し、収益を圧迫します。導入前には地域の競合状況、自院の症例構成、スタッフの教育体制を総合的に検討し、撮影件数の現実的な予測を立てることが成功の鍵です。
金属アーチファクトはCBCT読影における最大の障害です。インプラント体、金属ポスト、メタルコア、銀歯などの高原子番号材料があると、その周囲に放射状のスジや黒い陰影(ダークバンド)、白い線状陰影(ホワイトストリーク)が出現し、本来の骨や歯質の構造が不明瞭になります。特に複数の金属修復物がある症例では、アーチファクトが重なり合い診断精度が著しく低下します。新潟大学歯学部の講義資料によれば、金属が多い口腔内では「読影不可能な画像」になることさえあると指摘されています。
例えば根管治療後の歯根破折を疑う場合です。
根管充填後にポストが入っている歯で歯根に黒い線状影が見えると、歯根破折を疑いますが、これが実は金属アーチファクトだったというケースがあります。アーチファクトと真の破折線を区別するには、複数の断面で確認する必要があります。真の破折線は連続性があり、複数のスライスで同じ位置に同じ角度で走行しますが、アーチファクトはスライスごとに位置や角度が変化する傾向があります。また画像処理ソフトでウィンドウレベルを調整すると、アーチファクトは消失・変化しやすいのに対し、破折線は残存します。
対処法として最も効果的なのが、照射野を最小限に絞ることです。
CBCTの撮影範囲は機種により直径4cm×4cmから8cm×8cm程度まで可変でき、小照射野(Small FOV)にするほど被ばく量が減少し、アーチファクトの影響も軽減されます。例えば下顎第一大臼歯の根管治療で4cm×4cmの照射野に限定すれば、反対側の金属修復物の影響を受けにくく、診断精度が向上します。また撮影条件の最適化も重要で、管電圧や管電流を調整することでアーチファクトを軽減できる機種もあります。ただし線量を下げすぎると画質全体が劣化するため、診断目的とのバランスが必要です。
読影時の工夫として、断面の切り出し方向を変える方法があります。歯軸に対して垂直・平行・斜断面と複数の方向から観察し、アーチファクトが出現しない断面を見つけることで、病変を確認できる場合があります。また3D画像再構成では、金属部分を手動で削除(マスキング)してから再構成することで、周囲組織の観察がしやすくなる機能を持つソフトもあります。ただしこれらは時間がかかるため、外来診療の合間に行うのは現実的でなく、診療後の時間確保や読影専任スタッフの配置が望ましいでしょう。
CBCT保険算定の基本は、撮影料600点、診断料450点(月1回限り)、電子画像管理加算120点の合計1,170点です。3割負担の患者で約3,510円、1割負担で約1,170円の自己負担となります。ただし算定には厳格な条件があり、「歯科用エックス線撮影または歯科用パノラマ断層撮影で診断が困難な場合であって、当該画像撮影の必要が十分認められる場合」に限定されています。つまり、まずパノラマやデンタルX線を撮影し、それでも診断困難な場合にCBCTを追加するという段階的アプローチが原則です。
同一月に複数回撮影した場合の減算規定に注意が必要です。
2回目以降の撮影料は所定点数の80%、つまり600点×0.8=480点での算定となります。診断料450点は月1回限りのため、2回目以降は撮影料480点+電子画像管理加算120点=合計600点のみです。例えば同一患者で右下智歯と左下智歯の抜歯を別日に計画し、月内に2回CBCTを撮影すると、1回目1,170点、2回目600点で合計1,770点となり、2回とも満額算定(2,340点)と比べて570点(約5,700円)の減収になります。可能であれば1回の撮影で両側を含む範囲をカバーするか、月をまたいで撮影することで減算を回避できます。
適応症例の明確化が査定回避のポイントです。社会保険診療報酬支払基金の審査事例では、「顎変形症に対して連月でCBCTを撮影した場合、治療経過で明確な変化がない限り査定対象」とされています。また「パノラマで十分診断可能な単純な埋伏歯に対するCBCT算定は認められない」という事例もあります。レセプトには「パノラマで下顎管との距離が不明確なため精査目的」「複雑な根管形態が疑われ、デンタルでは全体像把握困難」など、CBCT撮影の医学的必然性を摘要欄に記載することが重要です。
同日にパノラマとCBCTを撮影した場合の算定にも注意が必要です。通常パノラマ初回は402点ですが、同日にCBCTを撮影するとパノラマは307点に減算されます。つまりCBCT(1,170点)+パノラマ(307点)=合計1,477点での算定となります。異日に撮影すればパノラマ402点+CBCT1,170点=1,572点で、95点(約950円)の差が生じます。初診時にパノラマでスクリーニングし、後日CBCTを追加する流れが算定上も有利ですが、患者の来院回数が増えるため、利便性とのバランスを考慮する必要があります。
根管治療においてCBCTは、従来のデンタルX線では把握困難な根管形態を3次元的に可視化し、治療成績を向上させます。特に難治性根尖性歯周炎、複雑な根管形態が疑われる症例、根管治療の再治療、歯根破折の鑑別診断などで有用です。例えば上顎第一大臼歯の近心頬側根には通常2根管(MB1、MB2)ありますが、デンタルX線では重なって見えるため見落とされやすく、未治療の根管が感染源となり治療が失敗します。CBCTでは根管口の位置と数を術前に確認でき、見落としを防げます。
大臼歯の根管治療で手術用顕微鏡加算400点を算定するには条件があります。
手術用顕微鏡加算は、歯科用コーンビームCTを撮影した上で、マイクロスコープを用いて根管充填を行った場合に、所定点数に400点を加算できる制度です。対象は大臼歯の加圧根管充填または根管貼薬処置で、算定には以下の施設基準を満たす必要があります:①歯科または歯科口腔外科を標榜し、5年以上の経験および当該療養に係る3年以上の経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること、②手術用顕微鏡が1台以上配置されていること、③地方厚生局長等に届出を行っていること。つまり、CBCT撮影とマイクロスコープ使用の両方が必須で、どちらか一方だけでは加算できません。
根管治療でのCBCT撮影タイミングも重要です。治療前の診断目的で撮影するのが基本ですが、治療中に根管穿孔や器具破折が疑われた場合、あるいは治療後の経過観察で治癒不良が認められた場合にも撮影適応があります。ただし同一月に複数回撮影すると2回目以降は80%算定となるため、初回撮影で治療に必要な全情報を取得することが経営的にも重要です。撮影範囲は対象歯を含む小照射野(4cm×4cm程度)で十分であり、被ばく量を最小限に抑えられます。
CBCTで確認すべき所見として、①根管数と形態(樋状根、C字型根管など)、②根尖病巣の大きさと範囲、③歯根破折の有無、④根管充填材の溢出状況、⑤上顎洞や下顎管への近接度、が挙げられます。これらを術前に把握することで、治療計画の精度が上がり、予後予測も可能になります。また患者説明にCBCT画像を用いると、3次元的に病態を示せるため理解が得やすく、自費の精密根管治療への移行もスムーズです。自費では1歯あたり5万~15万円の根管治療費を設定している医院もあり、CBCT+マイクロスコープを強みとした差別化戦略が可能になります。