実はCT未導入だと8割の歯科医院が根管を見落とす可能性があります
歯科用CTは正式には「歯科用コーンビームCT(CBCT)」と呼ばれる三次元画像診断装置です。従来の2次元レントゲンでは影に隠れて見えなかった部分を、立体的に可視化できる点が最大の特徴といえます。
医科用CTとの決定的な違いは撮影方法にあります。医科用CTは患者が横たわる必要があるのに対し、歯科用CTは座位または立位で撮影可能です。撮影時間も約10~20秒と短時間で済みます。
被ばく線量の比較も重要なポイントです。歯科用CTの被ばく線量は約0.04~0.1mSvで、医科用CT(頭部撮影で数mSv)の10分の1から50分の1程度に抑えられています。これは東京からニューヨークへの飛行機往復時の被ばく量(約0.2mSv)よりも少ない数値です。
つまり安全性が高いということですね。
撮影範囲は口腔周囲に限定されるため、全身への影響も最小限です。妊娠中の方でも時期や必要性を考慮すれば撮影可能なケースもあります。
画像の解像度も診断には欠かせません。歯科用CTは骨質の硬さや密度まで正確に把握できるため、インプラント埋入位置の計画や根管の複雑な形態の確認に威力を発揮します。デジタルデータとして保存されるため、過去の画像と比較しながら経過観察も容易になります。
歯科用CTの被ばく量や医科用CTとの違いについて詳しく解説されています
従来の2次元レントゲンでは発見が困難だった「隠れた根管」を3D画像診断で発見できるケースが増えています。特に上顎第一小臼歯は複雑な根管形態を持つことが多く、見逃されやすい歯の代表例です。
ある症例では、通常のレントゲン検査で2本の根管が確認されていましたが、CT撮影により実際には3本目の根管が存在することが判明しました。この3本目の根管には感染が残っており、それが痛みの原因だったのです。
見逃されていた根管が問題でした。
根管の見落としは治療の失敗や再発につながる重大なリスクです。患者は何度も通院を繰り返し、時間的・経済的な負担を強いられます。
場合によっては抜歯に至るケースもあります。
CT撮影により根管の本数だけでなく、走行方向や分岐の位置も立体的に把握できます。根管治療前にCT検査を実施することで、術前の治療計画がより精密になり、見落としリスクを大幅に減らせるでしょう。
保険適用の条件も押さえておくべきです。根管治療でCT撮影が保険適用されるのは「通常のレントゲン撮影で診断困難な場合」に限られます。3割負担で約3,000~4,000円の自己負担で受けられます。
条件を満たせば保険適用です。
根尖病変の大きさや位置の特定にもCT画像は有効です。2次元では重なって見えていた構造物を分離して観察できるため、病変が神経や上顎洞にどれだけ接近しているかも正確に判断できます。
見落とされた根管の発見事例についてCT画像を用いた解説があります
インプラント治療において3D画像診断は治療計画の根幹を担う重要な役割を果たします。CT撮影により顎骨の厚み、高さ、密度を正確に測定でき、インプラント体の埋入位置・角度・深さを術前にシミュレーション可能です。
サージカルガイドの製作にはCTデータが不可欠です。シミュレーションソフト上で計画した理想的な埋入位置を、実際の手術で再現するための「ガイド」を作成します。このガイドを使用することで、計画通りの位置に正確にインプラントを埋入できます。
計画通りの埋入が基本です。
下顎管(下歯槽神経が通る管)との距離測定も重要な確認項目です。神経損傷を起こすと唇のしびれなどの後遺症が残る可能性があります。CT画像で神経の走行を三次元的に把握し、安全なマージン(余裕)を確保した埋入計画を立てられます。
上顎洞との位置関係の確認も必須です。上顎の奥歯部分は上顎洞が近接しており、骨の高さが不足しているケースが多く見られます。CT画像で骨の高さを正確に測定し、骨造成手術の必要性や方法を判断します。
インプラントのシミュレーションソフトには「ノーベルガイド」や「ストローマンガイド」などがあります。これらのソフトでは、口腔内スキャナーで取得した歯列データとCTデータを重ね合わせ、最終的な上部構造(被せ物)の位置から逆算して最適な埋入位置を決定できます。
患者への説明ツールとしても3D画像は有効です。立体画像を見せながら説明することで、治療内容の理解が深まり、インフォームドコンセントの質が向上します。
治療への不安軽減にもつながるでしょう。
CTとサージカルガイドを使った精密なインプラント治療について詳細が記載されています
矯正治療の診断では従来からセファロ(頭部X線規格写真)が使用されてきましたが、CBCTとの統合により診断精度が飛躍的に向上しています。セファロは2次元での骨格分析に優れ、CBCTは3次元での詳細な形態把握に強みがあります。
セファロ分析では上下顎の前後的な位置関係、歯の傾斜角度、軟組織の形態などを数値化して評価します。これにより出っ歯や受け口などの骨格的な問題を定量的に診断できます。上顎前突か下顎後退か、あるいは両方の問題かを判別することが治療方針決定の基礎となります。
CBCT画像では顎関節の形態や位置、埋伏歯の正確な位置、歯根の傾きや長さ、歯槽骨の厚みなどを立体的に確認できます。特に親知らずの抜歯を伴う矯正治療では、神経との位置関係を3次元で把握できることが安全性の向上につながります。
神経損傷を予防できます。
矯正用アンカースクリューの埋入位置決定にもCT画像が役立ちます。歯根と歯根の間の骨の厚みを測定し、スクリューを安全に埋入できる位置を特定します。従来は経験と勘に頼っていた部分を、数値データで裏付けられるようになりました。
顎変形症の外科的矯正治療では、術前のシミュレーションにCBCTデータが必須です。どの程度顎骨を移動させるか、移動後の咬合関係がどうなるかを3D画像上で予測し、手術計画を立案します。
AI技術を活用した3D解析ソフトも登場しています。「Relu」などのソフトウェアは、CTデータから短時間で高精度な3D解剖モデルを自動生成し、診断時間の短縮と精度向上を同時に実現します。
AI技術を活用した歯科用CTデータの3D解析について解説されています
日本国内における歯科用CTの普及率は現在10~20%程度にとどまっています。導入コストが約800万~1,500万円と高額であることが、普及の障壁となっている主な要因です。
年間保守料も約20万円かかります。
しかし若手歯科医師が新規開業する際には、CT設備はほぼ必須の装備となりつつあります。患者からの要望も増加傾向にあり、「CT撮影ができる歯科医院」が選ばれる時代になっています。
保険適用範囲の拡大も導入促進の追い風です。2024年以降、根管治療や親知らず抜歯など、従来は自費だった一部の症例でも保険適用が認められるようになりました。保険適用時の患者負担は3割で約3,000~4,000円程度です。自費の場合は医院によって異なりますが、約8,000~20,000円が相場となっています。
AI画像診断支援システムとの連携も進んでいます。CTやパノラマレントゲン画像をAIが自動解析し、初期虫歯や歯周病の兆候、根尖病変などを検出するシステムが実用化されています。「VELMENI for DENTISTS」などのシステムは、歯科用CT装置とシームレスに連携し、撮影後ワンクリックで解析結果を表示します。
見落としリスクを低減できます。
口腔内スキャナーとの統合も重要なトレンドです。CTデータと口腔内スキャンデータを重ね合わせることで、補綴物の設計やインプラントガイドの製作がより精密になります。デジタルワークフローの構築により、技工物の製作期間短縮とコスト削減も期待できます。
遠隔診断への活用も始まっています。CT画像をクラウド経由で専門医に送信し、セカンドオピニオンを得るシステムが普及しつつあります。地方の歯科医院でも、大学病院レベルの専門的な診断を受けられる環境が整ってきました。
今後は3Dプリンター技術との連携がさらに進むでしょう。CTデータから直接サージカルガイドや解剖模型を3Dプリントする技術は既に実用化されており、2025年12月からは3Dプリント義歯も保険適用となりました。
デジタル技術の統合が進んでいます。
歯科用CTの普及状況と今後の必要性について詳しく解説されています