喫煙者でも1日9本以下なら、グレードCに上げなくていいのです。
2017年のAAP/EFP国際ワークショップで採択された新分類は、従来の「慢性歯周炎」「侵襲性歯周炎」という区分を廃止し、すべてを「歯周炎(periodontitis)」として一本化した画期的な変更でした。 これにより、病名ではなく「重症度・複雑性(ステージ)」と「進行速度・リスク(グレード)」の2軸で患者を評価する体系に移行しました。 perio(https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022_en.pdf)
BSP(英国歯周病学会)はこの新分類を英国の一般臨床向けにシンプルな形で実装し、HGDMツールキットとして公開しています。 日本歯周病学会も2022年に改訂ガイドラインを発表し、この分類体系を正式に採用しています。 dentistrydashboard(https://dentistrydashboard.com/blog/bsp-2017-perio-classification-guide)
つまり新分類が世界標準です。
従来の分類では患者の年齢や発症パターンが診断名を決定していましたが、新分類では客観的な測定値と比率計算が中心になっています。 現場での診断プロセスがより標準化・再現可能になった点が、最大のメリットと言えます。 dentistrydashboard(https://dentistrydashboard.com/blog/bsp-2017-perio-classification-guide)
ステージの判定は、まず臨床的アタッチメントレベル(CAL)を優先して使用するのが原則です。 X線による骨吸収率(RBL)はCALが測定できない場合の代替であり、最初からX線だけで判定するのは正確とは言えません。 perio(https://www.perio.org/wp-content/uploads/2019/08/Staging-and-Grading-Periodontitis.pdf)
CALが利用可能な場合、各ステージの基準は以下のとおりです。 efp(https://www.efp.org/fileadmin/uploads/efp/Documents/Campaigns/New_Classification/Guidance_Notes/report-02b.pdf)
>Stage I(初期):最大CAL 1〜2mm、RBL 15%未満
>Stage II(中等度):最大CAL 3〜4mm、RBL 15〜33%(歯根の歯冠側1/3)
>Stage III(重度):最大CAL 5mm以上、RBL 33〜66%(歯根中央部まで)
>Stage IV(最重度):CAL・RBL上は Stage IIIと同水準だが、咬合崩壊・20本未満の残存歯など複雑因子を伴う
CALが基準です。
重要な点として、歯周炎が原因で失われた歯の本数がステージを引き上げる修正要因になります。 1〜4本の歯周炎による喪失があればStage IIIへ、5本以上の喪失(抜歯予定の予後不良歯を含む)があればStage IVへ自動的に引き上げられます。 歯を1本も失っていなくても、抜歯適応の"予後不良歯"がある場合はその本数も計上する必要があります。 shien.co(https://www.shien.co.jp/media/sample/s1/BK05011/pageindices/index5.html)
これは意外ですね。
Stage IIIとIVの本質的な違いは骨吸収の程度ではなく、「全顎的な補綴・矯正を含む多科連携が必要かどうか」にあります。 骨吸収量だけを見てStage IVを見落とすケースが臨床で起きやすいため、咬合崩壊や歯牙移動の確認が欠かせません。 healthcare.gr(https://healthcare.gr.jp/newhp/wp-content/uploads/aj2020.pdf)
BSPの実装では、グレード判定の主要指標として「%骨吸収率(RBL%)÷患者年齢」の比率計算を使います。 この計算はシンプルで、例えば50歳の患者に40%の骨吸収があれば 40÷50=0.8 となりGrade Bに該当します。 dentistrydashboard(https://dentistrydashboard.com/blog/bsp-2017-perio-classification-guide)
グレードの基準は次のとおりです。 perioeducationusa(https://www.perioeducationusa.com/siteassets/pdf/21-VALAR-0533-1-pager-staging-grading_V8.pdf)
| グレード | 進行速度 | RBL%÷年齢 | 計算例 |
|---|---|---|---|
| Grade A | 緩徐 | 0.25未満 | 60歳・20%骨吸収 → 0.33(※EFP基準は0.25未満) |
| Grade B | 中等度 | 0.25〜1.0 | 50歳・40%骨吸収 → 0.8 |
| Grade C | 急速 | 1.0超 | 40歳・50%骨吸収 → 1.25 |
※BSPは Grade Aの閾値を0.5未満と設定、EFPは0.25未満と設定しており、基準値に微差があります。 efp(https://www.efp.org/fileadmin/uploads/efp/Documents/Campaigns/New_Classification/Guidance_Notes/report-02b.pdf)
クリニシャンはまずGrade Bを出発点として仮定し、特定の証拠がある場合にAまたはCへ変更するという手順が推奨されています。 Grade Bをデフォルトにするのが原則です。 jmc.gov(https://www.jmc.gov.jo/sites/default/files/2022-01/Staging-and-Grading-Periodontitis.pdf)
直接証拠(5年以内の経時的X線でのCAL変化)が取得できる場合は比率計算よりも優先されます。 5年間でCAL・骨吸収が2mm以上進行していればGrade C、変化なしであればGrade Aと判定します。 efp(https://www.efp.org/fileadmin/uploads/efp/Documents/Campaigns/New_Classification/Guidance_Notes/report-02b.pdf)
グレードの計算結果がAまたはBであっても、リスク因子によって上位グレードへ修正されることがあります。 これがGrade修正(grade modifier)と呼ばれる仕組みです。 perioeducationusa(https://www.perioeducationusa.com/siteassets/pdf/21-VALAR-0533-1-pager-staging-grading_V8.pdf)
修正の境界値は以下のとおりです。 ada(https://www.ada.org/-/media/project/ada-organization/ada/ada-org/files/jcnde/staging_and_grading_periodontitis.pdf?hash=4B3386287FC651036259ED261CEB3DB2&rev=1366d6e824b44cacbe6a55c5e1b0d5c5)
>喫煙:1日10本以上 → Grade Cへ修正、1日9本以下 → Grade Bへ修正(Grade Aの場合)
>糖尿病:HbA1c 7.0%以上 → Grade Cへ修正、HbA1c 7.0%未満 → Grade Bへ修正
境界値は「10本」と「7.0%」が条件です。
1日9本という喫煙者はGrade Cに引き上げられないため、問診で「1日何本か」を具体的に確認することが重要です。 「タバコを吸っている」という事実だけでグレードを上げると過診断になる可能性があります。意外ですね。 efp(https://www.efp.org/fileadmin/uploads/efp/Documents/Campaigns/New_Classification/Guidance_Notes/report-02b.pdf)
糖尿病患者でHbA1cが適切にコントロールされている(7.0%未満)場合はGrade Cへの修正は不要です。 歯科問診票にHbA1c値の記載欄を設けておくと、正確なグレード判定に直結します。全身疾患の管理状況を確認することが、診断精度を高める具体的な行動になります。 perioeducationusa(https://www.perioeducationusa.com/siteassets/pdf/21-VALAR-0533-1-pager-staging-grading_V8.pdf)
患者の内科・かかりつけ医との連携で血糖コントロール状況を把握するのが理想的です。 日本糖尿病学会が公開している血糖コントロール評価指標は、歯科診断との整合性を確認する際に役立ちます。
日本糖尿病学会 – 血糖コントロール目標(HbA1cの評価基準に関する公式情報)
新分類で最も現場に影響を与えた変更の一つは、「侵襲性歯周炎(aggressive periodontitis)」という診断名の廃止です。 以前は若年者の急速な骨吸収を侵襲性歯周炎と呼んでいましたが、新分類ではこれをGrade C periodontitisとして捉え直します。 soar-dc(https://www.soar-dc.com/blog/2235/)
完全な診断名の記載例は次のような形式です。 dentistrydashboard(https://dentistrydashboard.com/blog/bsp-2017-perio-classification-guide)
>「Generalised Periodontitis, Stage III, Grade B, Currently Unstable」
>「Localised Periodontitis, Stage II, Grade A, Currently Stable」
>リスク因子は診断名の後に別記:「Risk Factors: Current smoker (15/day)」
記載フォーマットの統一が原則です。
ここで独自視点として注目したいのが、Grade Cが「若年者の疾患」とは限らない点です。50代・60代でも比率計算(RBL%÷年齢)が1.0を超える場合、または5年間で2mm以上の進行が確認された場合はGrade Cに該当します。 年齢が高いからGrade Bと安易に判断すると、実際の進行リスクを見落とす可能性があります。 speareducation(https://www.speareducation.com/spear-review/2024/01/back-to-basics-2-applying-2018-periodontitis-diagnosis-criteria)
Grade Cは若者の病気ではありません。
また、ステージやグレードは治療後の再評価で変更される可能性があります。標準的なスケーリング・ルートプレーニング(SRP)に反応しなかった場合、その事実自体がGrade C判定の根拠となります。 初診時の診断が最終診断ではなく、治療反応を見ながら診断を精緻化していくプロセスが新分類の重要な考え方です。これは使えそうです。 speareducation(https://www.speareducation.com/spear-review/2024/01/back-to-basics-2-applying-2018-periodontitis-diagnosis-criteria)
BSP実装の流れチャートや判定ツールは、BSP公式サイトから無料でダウンロードできます。臨床現場でのフローチャート活用が判定精度の向上に直結します。
BSP公式 – 2018年歯周炎分類実装フローチャート(PDF、英語)
日本語での補綴的視点も含めた新分類解説は以下が参考になります。
支援出版「歯周病の新分類読本」 – ステージIII・IVの喪失歯数カウント方法の詳細解説(日本語)