SIRSの4項目チェックだけで患者を帰宅させると、あなたは重篤な見逃しリスクを負います。
SIRS(全身性炎症反応症候群)は、感染・外傷・熱傷などの侵襲に対して生体が起こす全身的な炎症反応のことです。 診断基準として確立されたのは1992年のことで、以下の4項目のうち2つ以上を満たす場合にSIRSと診断します。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/214242/)
つまり体温・脈・呼吸・血液の4つが基準です。
つまり、歯性感染症は局所の問題にとどまらず、全身性炎症反応へ発展しうるのです。歯科従事者がSIRSの基準を把握しておくことは、患者の異変に早期に気づくための重要な知識となります。
2016年に発表されたSepsis-3により、成人の敗血症定義は大きく改訂されました。 それまでの「感染に伴うSIRS」という定義から、「感染症によって引き起こされる制御不能な生体反応により、重篤な臓器障害が生じた状態(SOFAスコア2点以上の上昇)」へと変わっています。 yodosha.co(https://www.yodosha.co.jp/rnote/dr_sakamoto/9784758115872_06.html)
Sepsis-3以降の主な診断ツールは次の通りです。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/DoKhrceJXtA3sPo99an1)
| スコア | 構成項目 | カットオフ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| SOFA | 呼吸・凝固・肝・循環・神経・腎の6項目 | 2点以上の上昇 | ICU・入院環境での敗血症確定診断 |
| qSOFA | 収縮期血圧≦100mmHg、呼吸数≧22回/分、GCS<15の3項目 | 2点以上 | 初療・救急でのスクリーニング |
| SIRS | 体温・心拍・呼吸・白血球の4項目 | 2項目以上 | 現在は補助的スクリーニングに位置づけ |
小児の敗血症診断は、長らく2005年の基準「感染症によるSIRS」が使われてきましたが、2024年についに刷新されました。 その名もPhoenix Sepsis Criteria(フェニックス基準)です。 emalliance(https://www.emalliance.org/education/dissertation/202001285)
Phoenix Scoreは以下4臓器系のスコアで構成されます。 emergency-hirosaki(https://emergency-hirosaki.com/case-reports-papers/%E6%8A%84%E8%AA%AD%E4%BC%9A%EF%BC%8318%EF%BC%9A%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87%E3%83%BB%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87%E6%80%A7%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81/)
合計2点以上が敗血症、さらに心血管サブスコアが1点以上で敗血症性ショックと定義されます。 emergency-hirosaki(https://emergency-hirosaki.com/case-reports-papers/%E6%8A%84%E8%AA%AD%E4%BC%9A%EF%BC%8318%EF%BC%9A%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87%E3%83%BB%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87%E6%80%A7%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81/)
注目すべき数字があります。従来のSIRS基準で敗血症と診断されていた小児患者のうち、33%がPhoenix新定義では「敗血症の対象外」となったことが示されています。 これは痛いですね。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/4903b4dc-e570-414a-9b59-bf6c69c4f291)
この変更の意味は大きく、SIRS基準は感度は高いものの、臓器障害の有無や生命予後を正確に反映しない点が長年の課題とされてきた背景があります。 小児の歯性感染症を扱う歯科口腔外科従事者は、この新基準への理解を深めることが今後の現場対応で重要になります。 jsicm(https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf)
これが臨床判断の基本です。
歯科処置後に発熱・頻脈・白血球増多が同時にみられた場合、SIRSの診断基準に当てはめると複数の項目を満たすことがあります。そのような状況では、速やかに全身状態の評価を行い、必要に応じて口腔外科・救急との連携が不可欠です。患者を帰宅させる前に、呼吸数・血圧・意識変化(qSOFAの3項目)も併せてチェックする習慣が、重篤な転帰を防ぐ第一歩になります。
現場で役立つ確認ツールとして、qSOFAの計算ツール(HOKUTO医療計算アプリなど)はスマートフォンで即座に利用可能です。使ってみる価値があります。
参考:qSOFA計算ツールおよびスクリーニング解説(HOKUTO)
https://hokuto.app/calculator/DoKhrceJXtA3sPo99an1
以下の視点で整理するとわかりやすいです。
| 評価場面 | 推奨ツール | 歯科での実現性 |
|---|---|---|
| 院内ICU・救急 | SOFAスコア | △(検査設備が限定的) |
| 初療・救急スクリーニング | qSOFA | ◎(血圧・呼吸・意識のみ) |
| 感染に伴う全身反応の把握 | SIRS | ◎(体温・脈・白血球は歯科でも確認可能) |
つまり歯科ではSIRS+qSOFAの組み合わせが現実解です。
重要なのは、敗血症性ショックの判断基準として「適切な輸液後も昇圧剤が必要かつ乳酸値≧18mg/dL(2mmol/L)」という定義があることです。 歯科診療中に患者の血圧低下が持続する場合は、この基準を頭に置きながら即座に救急要請の判断が必要になります。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/DoKhrceJXtA3sPo99an1)
「体温が37.5℃だから大丈夫」と判断することは危険です。SIRS基準の体温カットオフは38℃超または36℃未満であり、いわゆる微熱状態でもSIRS陽性にはなりません。 逆に体温が正常範囲でも、脈拍・呼吸数・白血球の3項目が揃えばSIRS判定となります。これは覚えておく価値があります。 knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500300)
SIRS診断基準の最新知識を体系的に学ぶうえで、日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2024)は公式かつ最も信頼性の高い参考資料です。PDF形式で公開されており、無料で参照できます。
参考:日本集中治療医学会・日本救急医学会 合同作成「日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)」
https://www.jsicm.org/pdf/cq/J-SSCG2024/J-SSCG2024_Main.pdf