口腔機能が発達していない子どもでも「18歳未満なら全員算定できる」と思っていませんか?実は対象外になるケースが複数あり、誤算定で返還請求を受けた医院が出ています。
小児口腔機能管理料は、2018年の診療報酬改定で新設された比較的新しい管理料です。正式名称は「小児口腔機能管理料」で、令和6年改定でも点数・要件が見直されています。対象は「18歳未満の患者であって、口腔機能の発達不全を認めるもの」とされており、すべての小児患者が対象になるわけではありません。
「18歳未満なら誰でも算定できる」というのは大きな誤解です。口腔機能の発達不全に該当する状態が診療録上で確認できることが前提条件になります。
具体的には、「口腔機能発達不全症」の診断に基づき、咀嚼機能・嚥下機能・構音機能・口腔衛生管理能力のいずれかに問題が認められることが必要です。単なる定期健診や予防目的のフッ素塗布だけでは算定の根拠になりません。日本歯科医学会が定める「小児の口腔機能発達評価マニュアル」が診断の基準として広く参照されています。
つまり、診断名と状態像の記録が算定の大前提です。
算定にあたっては、口腔機能の評価を行うための検査を実施し、その結果を診療録に記載することが義務付けられています。記録が不十分なまま算定した場合、個別指導や適時調査の際に返還請求を求められるリスクがあります。これは実際に起きています。
診療録への記載が必要な内容は以下の通りです。
特に見落とされやすいのが「保護者への説明と同意」の記録です。管理計画書を作成するだけでなく、それを保護者に説明し、同意を得た旨を診療録に記載しなければなりません。説明したつもりでも、記録がなければ算定の正当性を証明できません。
記録が命です。
口腔機能の評価には、「ふうふうテスト」「オーラルディアドコキネシス」「舌圧測定」など複数のツールが使われます。舌圧測定であれば正常値は20kPa以上とされており、それを下回る場合が発達不全の指標の一つになります。数値を診療録に残すことで、評価の客観性が担保されます。
厚生労働省 令和4年度診療報酬改定の概要(歯科)- 口腔機能管理関連の算定要件詳細が記載
令和6年改定後の点数は、初回が100点、2回目以降(継続管理)が75点です。算定は月に1回を上限としており、同月内に複数回実施しても1回分しか請求できません。月1回が上限です。
ここで注意が必要なのは「初回」の定義です。同一患者であっても、管理を一度中断して6カ月以上経過した後に再開した場合は、再び初回として算定できます。逆に、短期間の中断後に再開した場合は継続管理扱いになります。この判断を誤ると、過剰算定と見なされるリスクがあります。
また、同月に「口腔機能管理料(成人向け)」と「小児口腔機能管理料」を同一患者に算定することはできません。年齢が18歳の誕生月をまたぐ場合は特に注意が必要です。18歳の誕生日を迎えた月以降は、成人向けの口腔機能管理料への移行が必要になります。
移行のタイミングを誤ると、請求上の問題が生じます。誕生月の扱いをあらかじめ院内でルール化しておくと安心です。
点数だけでなく、適用ルールの細部まで把握することが重要です。算定漏れや過剰算定の両方を防ぐためにも、レセプトチェックの体制を整えておくことを検討してみてください。
管理計画書の作成は、算定の要件として明確に定められています。作成して終わりではありません。作成した管理計画書を患者(保護者)に交付することが必須です。
管理計画書に記載すべき主な内容は以下の通りです。
管理計画書は、毎回作成する必要はありませんが、内容が変わった場合や定期的な見直しのタイミングで更新することが求められます。更新のタイミングが明文化されているわけではないため、院内で「3カ月ごとに見直す」などのルールを設けておくと運用がスムーズです。
これは使えそうです。
電子カルテを使用している医院では、管理計画書のテンプレートをシステムに組み込んでおくと、記載漏れや交付忘れを防ぎやすくなります。紙カルテの医院でも、チェックリストを診察室に掲示しておくなどの工夫が有効です。管理計画書の書式については、日本歯科医学会や各都道府県の歯科医師会が参考様式を公開していることがあります。
日本障害者歯科学会 – 口腔機能管理に関する学術情報・ガイドラインの参照先として有用
算定要件を満たしていても、院内の運用体制が整っていなければ、ミスや漏れが生じやすくなります。特に複数の歯科医師やスタッフが関わるクリニックでは、算定基準の共有が不可欠です。「自分はわかっているが、他のスタッフが知らない」という状況が、返還請求のリスクにつながります。
院内体制として整えておきたいポイントは以下の通りです。
見落とされがちなのが「算定の中断と再開の記録」です。患者が数カ月来院しなかった場合、次回来院時に継続算定とするか初回に戻すかの判断を、主治医が診療録に明記しておく必要があります。この記録がないと、後から判断根拠を示せなくなります。
記録の連続性が、査定対策の要です。
また、患者側の事情(転居・進学など)で管理が中断されるケースは珍しくありません。保護者への説明時に「継続管理の重要性」を伝えておくことで、管理の継続率を高め、算定の安定化にもつながります。口腔機能の改善という本来の目的と、算定の適正化の両方を同時に実現できます。
診療報酬改定のたびに要件が変わる可能性があるため、改定のたびに厚生労働省の告示・通知を確認する習慣をつけておくことが重要です。算定要件の誤認識は、知らない間に積み重なって大きな問題になります。定期的な情報アップデートが、クリニックを守ります。
厚生労働省 診療報酬に関する情報ページ – 告示・通知の最新版を確認できる公式ソース