コメントを書かないだけで、250点が丸ごと査定されることがあります。
診療情報提供料(Ⅰ)は250点(歯科・医科共通)で、患者を他の医療機関へ紹介する際に算定できる診療報酬です。基本的には「紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り」算定できると定められています。
「月1回限り」という表現から、同月に複数回の算定は一切できないと誤解している方が少なくありません。しかし実際には、紹介先が異なる医療機関であれば、1人の患者に対して同一月内に2回・3回と算定することが可能です。つまり「医療機関ごとに月1回」というのが正確な理解です。
たとえば、ある患者を同じ月に「A歯科口腔外科病院」と「B内科クリニック」の2か所に紹介した場合は、それぞれの紹介先について250点ずつ、合計500点を算定できます。これは正当な算定であり、誤請求ではありません。
一方で、同月に同一医療機関の複数の診療科に情報提供を行っても、算定は1回のみです。A病院の外科と整形外科に同月にそれぞれ紹介状を書いても、A病院として1回分(250点)しか算定できない点に注意が必要です。
医療機関ごと、月1回が原則です。
なお、同一医療機関に対して翌月にあらためて紹介を行った場合は、月が変わっているため再度算定することが可能です。月ごとのリセットがかかる仕組みと理解しておくと整理しやすいでしょう。
参考:愛知県保険医協会「診療情報提供料の算定方法について」(歯科での算定ルールが具体的にまとめられています)
https://aichi-hkn.jp/news/4938
ここが最も混乱しやすいポイントです。
現行の記載要領では、診療情報提供料(Ⅰ)について「保険医療機関以外の機関へ情報提供した場合は、情報提供先を記載すること」と明示されています。しかし、同月に複数の保険医療機関へ情報提供した場合の摘要記載については、記載要領上に明文規定がありません。
つまり厳密なルールとしては「書かなくてよい」という解釈も成立します。実際、東京都の国保連合・支払基金に問い合わせた事例では、「記載要領には複数回算定時に医療機関名記載は書いてない」として、書かなくても一次審査では問題ないとの回答が得られた事例も報告されています。
それでも書いたほうがいい理由があります。
コメントなしで月2回算定すると、審査側から見ると「同一医療機関に2回請求したのではないか?」という疑念が生じやすい状況になります。実際に保険者から「御院を含め2医療機関からしか請求がないが、同一医療機関への2回請求ではないか」と照会が届いた事例もあります。この照会対応に要する時間と手間は相当なものです。
結論は「紹介先名称を書いておくのが安全」です。
具体的には、摘要欄に紹介した医療機関名(例:「A歯科口腔外科病院」「B内科クリニック」)をそれぞれ記載することで、審査委員が「別々の医療機関への情報提供である」と確認できます。これにより不要な返戻・照会が防げ、レセプト処理がスムーズになります。
記載要領に明文化されていなくても、「審査委員が判断しやすいレセプト作成」という観点から紹介先名称の記載は実務上の必須事項と考えておくのが現場での正解です。
紹介先名称の記載が条件です。
一方、同月1回の算定であれば、保険医療機関への情報提供の場合は紹介先名称の記載は省略可能です。ただし、医療機関以外(市町村・居宅介護支援事業者・保健所など)への情報提供は、件数を問わず摘要欄に情報提供先を記載することが必須とされています。この点もよく見落とされる部分なので覚えておきましょう。
参考:医療事務講座「診療情報提供料を同月に複数回発行したら」(現場の実例と支払基金への確認内容が記載されています)
https://iryoujimu1.com/iryoujimukouza2/entry899.html
月2回算定の可否だけでなく、そもそも診療情報提供料が算定できない状況を把握しておくことも重要です。算定できる場面と算定できない場面が混在しており、これが査定の多い原因にもなっています。
まず、患者の受診行動を伴わない情報提供は算定できません。たとえば、他医療機関から紹介を受けた患者についての「返書(経過報告)」を紹介元に送った場合、これは算定対象外です。「受診行動を伴う紹介」が前提という点を押さえておきましょう。
つぎに、FAXやEメールのみによる情報提供も算定不可です。文書を直接患者に持参してもらう、または郵送する形が原則です。この点は電子化が進む現場では思わぬ落とし穴になります。
また、紹介先が未定・宛先未定の状態で情報提供書を患者に渡した場合も算定できません。「診療科のみ特定で病院名未定」という形であっても同様です。算定できないということです。
特別の関係にある医療機関(同一医療法人の関連施設など)への情報提供も算定対象外です。傘下や関連法人への紹介は原則として算定不可と覚えておきましょう。
さらに盲点となるのが、公費申請のための意見書・診断書についてです。たとえば小児慢性疾患や特定疾患の受給者証更新のための文書作成において、患者から自費を徴収している場合は診療情報提供料として保険請求できません。二重請求になるためです。自費徴収がない場合は保険算定できる余地があります。
厳しいところですね。
入院中の患者への算定も注意が必要です。入院中(退院日を除く)は算定できません。外来と入院が同月に発生するケースでは、外来レセプトと入院レセプトが分かれることから見落としが起こりやすく、同一紹介先への算定が外来・入院でそれぞれ発生してしまう誤算定のパターンがあります。
参考:こあざらし「レセプトで診療情報提供料(Ⅰ)の算定が査定になる理由」(査定事例が具体的に解説されています)
https://koazarashi.com/2018/08/18/post-3721/
歯科では、医科とは異なる独自の加算や情報提供先の規定が存在します。これを把握しておくと、算定漏れを大幅に減らすことができます。
まず「障害者歯科医療連携加算(100点)」についてです。これは、初診料に障害者加算(175点)・初診時歯科診療導入加算(250点)を算定した患者、または歯科訪問診療料を算定している患者について、患者・家族の同意を得て下記機関へ情報提供した場合に加算できます。
- 障害者歯科医療連携加算を算定している歯科医療機関
- 地域歯科診療支援病院
- 別の医科医療機関
- 指定居宅介護支援事業者
この加算を算定した場合は、摘要欄に「情I加2」と記載することが必要です。この記載がないと加算が算定できていても査定対象になり得るため、セットで覚えておきましょう。
加算には摘要記載が必須です。
次に、歯科から医科への紹介(歯科→内科・外科など)でも診療情報提供料(Ⅰ)は算定可能です。「歯科の患者を歯科以外に紹介しても算定できるのか」という疑問を持つ方がいますが、提供先が保険医療機関であれば医科・歯科問わず算定の対象です。口腔外科的疾患で医科病院に紹介する場合なども含まれます。
また、歯科のレセプト記載様式では、診療情報提供料(Ⅰ)は全体の「その他」欄に「情I250×(回数)」として記載します。保険医療機関以外への情報提供であれば「提供先」を、障害者歯科連携加算を算定した場合は「情I加2」を合わせて摘要欄に記入することが義務付けられています。
これは使えそうです。
さらに、在宅患者への保険薬局への情報提供(訪問薬剤管理指導目的)も算定対象に含まれますが、条件があります。対象は「在宅療養を行っている通院困難な患者」に限定されており、通院困難と判断できる病名がレセプトにない場合は査定対象となります。在宅患者の紹介状を薬局に出す際は、通院困難を示す病名が記録に残っているかを必ず確認してください。
参考:石薬出版「別表Ⅰ 診療報酬明細書の摘要欄への記載事項等一覧(歯科)」(歯科レセプト記載の公式一覧、行番号31・32が情報提供料の記載要領)
https://www.ishiyaku.co.jp/shikashinryo/information/20240425_03.pdf
「月2回算定できる状況なのに、算定漏れになっているケース」は歯科クリニックでも意外と多く発生しています。これは一般にはあまり語られない視点ですが、見直す価値があります。
典型的な算定漏れのシナリオとして多いのが、「同月に口腔外科病院と内科クリニックの両方に紹介状を書いたが、レセコンの警告表示を見てどちらか1枚しか算定しなかった」というパターンです。レセコンによっては、同月2回目の算定入力時に警告や制限のメッセージが表示される場合があります。
これは誤った制限ではなく、原則の「月1回制限」に対するシステム側のアラートです。ただし紹介先が異なる場合は正当な算定であり、担当者が知識なく「エラーが出たから外した」という判断をすると、本来得られるべき250点(月2回なら500点)が丸ごと算定漏れになります。
いいことではないですね。
対策として有効なのは、月2回以上の算定が発生した月の終わりにレセプト確認を行う際に「算定回数と発行した紹介状の通数が一致しているか」を照合するチェックリストを運用することです。紙の紹介状控えをカルテに添付するルールを徹底するだけでも、この漏れはかなり防止できます。
また、同月複数回算定時のコメントについては「紹介先医療機関名を記載する」という院内ルールをあらかじめ明文化しておくと、担当者が変わっても同じ対応ができます。コメント入力のひと手間が、後の返戻対応という大きな手間を防ぐ投資と考えると合理的です。
レセコンによっては、コメントの定型文を登録できる機能(コメントマスタ)を持つものもあります。「紹介先医療機関名:〇〇(複数機関への情報提供)」というひな形を登録しておくと、入力の手間を最小化できます。自院のレセコンの機能を確認してみましょう。
なお、診療情報提供料の算定を月次で確実に管理するには、算定支援機能つきの電子カルテシステムの利用も選択肢の一つです。月1回制限・複数機関算定の仕組みに対応した判定ロジックを内蔵しているシステムであれば、担当者の知識に依存せず安定した算定が実現できます。
参考:メディコム(ウィーメックス)「診療情報提供料の仕組みを基本から算定不可の場合まで解説」(算定チェックリスト付きで実務に活用しやすい内容)
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/medicalfees-information-provision-fee