コバルトクロム合金の鋳造は1,400℃超えるため高周波式を選ぶと失敗します。
真空加圧鋳造機は、歯科補綴物の金属フレームを高精度に製作するために開発された設備です。この装置の最大の特徴は、鋳型内部を真空状態にした後に不活性ガスで加圧することで、金属を鋳型の隅々まで確実に流し込む点にあります。
つまり鋳造精度が向上するということですね。
従来の遠心鋳造機では、回転の遠心力によって溶融金属を鋳型に押し込んでいました。しかし、この方式では初期圧力が小さく、持続時間も短いため、複雑な形状の補綴物や薄い部分への金属の充填が不十分になるケースが少なくありませんでした。遠心鋳造の初期圧力は約0.1MPa程度で、持続時間も1秒未満です。
真空加圧鋳造機では、まず鋳型室を10kPa以下の真空状態まで減圧します。この真空引きによって、鋳型内部の空気や埋没材から発生するガスが除去され、金属の流入を妨げる要因が大幅に減少します。金属が溶融したタイミングで装置を反転させ、同時に0.3~0.5MPaの圧力をかけることで、溶融金属が一気に鋳型内部に充填される仕組みです。
この方式が開発された背景には、歯科補綴物の精密化があります。現代の歯科治療では、マージン部分の適合精度が50マイクロメートル(0.05mm)以下、つまり髪の毛の太さよりも薄い精度が求められることがあります。真空加圧方式では、こうした微細な部分にも確実に金属が行き渡るため、補綴物の適合性が大幅に向上しました。
加熱方式には大きく分けて2種類あります。1つはセラミックヒーターによる加熱方式で、最高使用温度は1,460℃程度、デンケン・ハイデンタルのエコキャスコムなどがこのタイプに該当します。もう1つは高周波誘導加熱方式で、最高温度2,000℃まで対応可能です。
高周波式が汎用性では上回ります。
加熱方式による違いは消費電力にも現れます。ヒーター式は家庭用の100V電源で1,500W程度の消費電力で稼働しますが、高周波式では200V電源が必要で、消費電力も2.5kVA以上になることが一般的です。院内ラボで導入する場合は、電源容量の確認が必須条件です。
デンケン・ハイデンタルのエコキャスコム製品ページでは、ヒーター加熱方式真空加圧鋳造機の詳細な仕様と、コンパクト設計のメリットが紹介されています。
歯科鋳造で使用される金属合金は、その融点によって適切な鋳造機と温度設定が大きく異なります。金銀パラジウム合金の液相点は約1,100℃ですが、コバルトクロム合金では1,400℃、純チタンに至っては1,670℃という高温が必要です。
融点が高いほど専用設計が要ります。
最も一般的な金銀パラジウム合金の鋳造では、埋没材の焼成温度を750℃前後に設定し、溶融温度を1,100~1,150℃に設定します。この温度帯では、ヒーター加熱方式の真空加圧鋳造機で十分な性能を発揮できます。エコキャスコムのような機種では、最大80gまでの金属を溶融できるため、複数の単冠やブリッジの同時鋳造も可能です。
銀合金の鋳造では、さらに低い温度での操作が可能です。液相点が950℃程度のため、溶融温度は1,000~1,050℃で十分です。ただし、銀合金は酸化しやすいという特性があるため、不活性ガス雰囲気での鋳造が推奨されます。酸化が進むと鋳造体表面に変色や粗さが生じ、研磨に時間がかかるデメリットがあります。
コバルトクロム合金は部分床義歯のフレームに多用されますが、鋳造には特別な注意が必要です。液相点が1,400~1,500℃と高いため、ヒーター式では温度が不足するケースがあります。高周波誘導加熱方式の鋳造機を使用し、1,500~1,600℃の溶融温度で鋳造することが標準的です。
埋没材もリン酸塩系の高温用を選択する必要があります。クリストバライト系の埋没材は800℃程度までしか耐えられないため、コバルトクロム合金には使用できません。リン酸塩系埋没材は900~1,000℃の焼成温度に対応し、高温鋳造時の寸法精度を保ちます。
チタン鋳造は最も難易度が高い分野です。チタンは1,670℃という高融点に加え、高温で非常に活性化し、酸素や窒素と容易に反応してしまいます。デンケン・ハイデンタルのキャスコムTiのような専用機では、アルゴンガス雰囲気下での鋳造を行い、埋没材もアルミナ系やマグネシア系といったチタン非反応性のものを使用します。
鋳造圧力の設定も合金によって調整が必要です。金銀パラジウム合金では0.3MPa程度の加圧で良好な結果が得られますが、コバルトクロム合金のような粘性の高い合金では0.5MPaまで圧力を上げることで、薄い部分への流れ込みが改善されます。
圧力が高すぎると逆効果です。
温度管理の精度も鋳造品質を左右する重要な要素です。最近のマイコン制御型鋳造機では、溶融温度を1℃単位で設定でき、温度センサーによるフィードバック制御によって±5℃以内の精度で温度を維持します。この精度が、リピーターブルな(再現性の高い)鋳造結果をもたらします。
山金貴金属製錬所の技術Q&Aでは、パラジウム系メタルセラミック合金の鋳造時の注意点と、真空加圧型反転式鋳造機での最適な操作方法が詳しく解説されています。
歯科鋳造における最大の課題は、鋳造体内部や表面に発生する欠陥をいかに防ぐかという点です。代表的な欠陥には引け巣、ガス巣、湯境い、球状突起などがあり、これらは補綴物の強度不足や適合不良の原因となります。
欠陥は再製作を招きます。
引け巣は、溶融金属が冷却して固まる際に体積が収縮することで生じる空洞です。金属は液体から固体に変化する時、一般的に3~5%程度体積が減少します。例えば金銀パラジウム合金の場合、収縮率は約2.3%です。この収縮分を補うだけの溶融金属が供給されないと、鋳造体内部に空洞が形成されてしまいます。
引け巣を防ぐ最も効果的な方法は、スプルーの太さと長さを適切に設計することです。スプルーは鋳造体に金属を供給する通路ですから、この部分が細すぎると凝固が早まり、鋳造体本体への金属供給が途絶えます。スプルーの直径は鋳造体の最も厚い部分と同等かそれ以上にするのが原則です。
ガス巣は、埋没材の分解や金属中の溶存ガスが原因で発生します。埋没材中の結合材は高温で分解し、二酸化炭素や水蒸気などのガスを発生させます。これらのガスが鋳造体内部に取り込まれると、小さな気泡状の欠陥となって現れます。ガス巣が多数発生すると鋳造体の強度が著しく低下し、臨床使用に耐えられなくなります。
ガス巣を防止するには、埋没材の適切な焼却が不可欠です。埋没後の硬化時間を十分に取り、通常は室温で30分以上、できれば1時間程度放置してから焼却炉に投入します。焼却プログラムは急激な温度上昇を避け、300℃、500℃、750℃といった段階的な昇温が推奨されます。各温度で30分程度の保持時間を設けることで、埋没材から発生するガスを完全に除去できます。
真空加圧鋳造機では、真空度の管理も重要です。鋳型室を10kPa以下まで減圧することで、鋳型内部の空気を除去しますが、真空ポンプの性能が低下していると十分な真空度が得られません。真空ポンプのオイル交換は200時間ごと、またはオイルの変色が見られた時点で実施するのが基本です。
鋳造タイミングも欠陥発生に大きく影響します。金属の溶融温度に達してから鋳造動作に移るまでの時間が長すぎると、金属表面に酸化膜が形成され、鋳型への流れ込みが阻害されます。最新の鋳造機では、温度センサーによって溶融温度に達した瞬間を検知し、自動的に鋳造動作を開始する機能が搭載されています。
タイミングを逃さないことが重要です。
湯境いは、金属の流れが途中で冷えて固まり、後から流れてきた金属と完全に融合しないことで生じる線状の欠陥です。これを防ぐには、鋳型温度を適切に管理することが効果的です。鋳型温度が低すぎると金属の流動性が低下し、湯境いが発生しやすくなります。金銀パラジウム合金では鋳型温度を750℃前後に設定します。
球状突起は、埋没材の表面に付着した油分や汚れが原因で発生する突起物です。ワックスパターンを製作する際に指先の皮脂が付着したり、古い分離材を使用したりすると、その部分で金属が突起状に固まってしまいます。これを防ぐには、ワックスパターン製作後に界面活性剤で洗浄するか、真空練和法で埋没材を練和することが有効です。
鋳巣の原因解説記事では、金属の凝固収縮によって引け巣が発生するメカニズムと、ブローホールやミクロポロシティといった他の欠陥との違いが詳しく説明されています。
真空加圧鋳造機を長期間にわたって安定して使用するには、定期的なメンテナンスと消耗品の適切な交換が欠かせません。特にヒーター加熱方式の機種では、セラミックヒーターの寿命管理が鋳造品質を維持する鍵となります。
ヒーター寿命は約1,000回です。
セラミックヒーターは高温での使用を繰り返すことで徐々に劣化し、最高到達温度が低下したり、昇温速度が遅くなったりします。デントロニクスのキャスパックC802の取扱説明書によれば、セラミックヒーターは高価な消耗品であり、適切なタイミングでの交換が推奨されています。交換時期の目安は使用回数1,000~1,500回程度、または最高温度が設定値に達しなくなった時点です。
ヒーター交換を怠ると、鋳造不良が頻発する原因になります。溶融温度が不足すると金属の流動性が低下し、鋳型の細部まで金属が充填されません。特にコバルトクロム合金のような高融点金属を鋳造する場合、ヒーターの性能低下は致命的です。
ヒーター性能が鋳造を左右します。
ルツボも重要な消耗品です。カーボンルツボは金銀パラジウム合金やコバルトクロム合金の鋳造に適していますが、使用回数が50~100回を超えると内面が侵食され、金属の溶融が不均一になります。ルツボ内面に金属の付着や亀裂が見られたら、即座に新しいものに交換すべきです。セラミックルツボはチタン鋳造に使用され、より頻繁な交換が必要です。
真空ポンプのオイルは、真空度を維持するために定期的な交換が必要です。オイルが劣化すると真空到達度が低下し、10kPa以下まで減圧できなくなります。オイル交換の目安は使用時間200時間ごと、またはオイルが茶色く変色した時点です。オイルの劣化を放置すると、ガス巣などの鋳造欠陥が増加します。
Oリングやパッキン類も定期的な点検と交換が必要です。これらのゴム部品は経年劣化によって弾力性を失い、気密性が低下します。真空チャンバーのOリングが劣化すると、いくらポンプを回しても十分な真空度が得られなくなります。Oリングは1~2年ごとの交換が推奨されます。
電気接点や配線の点検も忘れてはいけません。高温環境で使用される鋳造機では、接点の酸化や配線の劣化が進みやすい環境です。定期的な点検で異常を早期に発見することで、突然の故障を防げます。年に1回程度、メーカーの技術者による点検を受けることが理想的です。
メンテナンス記録を残すことも大切です。ヒーター交換日、ルツボ交換回数、オイル交換日などを記録しておくことで、次回の交換時期を正確に把握できます。記録はトラブル発生時の原因究明にも役立ちます。メンテナンスノートを作成し、機械の状態を常に把握しておくことで、安定した鋳造品質を維持できます。
消耗品のコスト管理も経営上重要です。セラミックヒーターは1本あたり数万円、ルツボは1個数千円、真空ポンプオイルは1リットルで5,000円程度のコストがかかります。年間の鋳造回数から必要な消耗品を予測し、予算を確保しておく必要があります。
コスト計画が経営を安定させます。
歯科技工所や院内ラボで真空加圧鋳造機を導入する際には、施設の規模、製作する補綴物の種類、予算などを総合的に考慮した選定が必要です。機種選定のミスは長期的なコスト増につながるため、慎重な判断が求められます。
選定は投資の成否を決めます。
最初に検討すべきは、製作する補綴物の種類と使用する合金です。金銀パラジウム合金や銀合金を中心とした単冠やインレーの製作が主体であれば、ヒーター加熱方式の機種で十分な性能が得られます。デンケン・ハイデンタルのエコキャスコムは、最高使用温度1,460℃、最大溶解金属量80gで、家庭用100V電源で使用できるため、院内ラボにも適しています。
一方、コバルトクロム合金を用いた部分床義歯のフレーム製作や、チタン鋳造にも対応する必要がある場合は、高周波誘導加熱方式の機種を選択すべきです。松風のアルゴンキャスターiのような高周波式では、最高温度2,000℃まで対応可能で、チタンを除くほぼすべての歯科用合金の鋳造ができます。ただし、200V電源と2.5kVA以上の電源容量が必要です。
設置スペースも重要な検討項目です。ヒーター式のコンパクトモデルは、幅274mm×奥行495mm×高さ433mm程度のサイズで、小規模な院内ラボでも設置可能です。高周波式は大型の機種が多く、幅500mm以上のスペースを必要とするケースがあります。設置場所の寸法を事前に測定し、搬入経路も確認しておく必要があります。
価格帯も選定の重要な要素です。ヒーター加熱方式の小型機種は150万円程度から入手可能で、院内ラボでの導入ハードルは比較的低いといえます。高周波誘導加熱方式の機種は300万円以上、チタン専用機では500万円を超えることもあります。
投資対効果を慎重に検討する必要があります。
操作性と安全性も見逃せません。最新のマイコン制御型では、液相温度、溶融量、埋没材の種類を入力するだけで、自動的に最適な鋳造プログラムを設定してくれます。初心者でも安定した鋳造ができるということですね。タッチパネル式の操作画面を採用した機種では、視覚的に分かりやすい操作が可能です。
保守サービス体制の確認も必須です。鋳造機は精密機器であり、突然の故障は製作スケジュールに大きな影響を与えます。メーカーや販売代理店が、迅速な修理対応や消耗品の供給を行える体制を持っているかを確認してください。地域によっては、訪問修理に時間がかかるケースもあります。
サポート体制が稼働率を決めます。
中古機の購入を検討する場合は、特に慎重な判断が必要です。ヒーターやルツボなどの消耗品の状態、使用年数、メンテナンス履歴を詳しく確認しましょう。中古機の価格が新品の半額以下であっても、購入後すぐに高額な修理費用が発生する可能性があります。
保証の有無も重要な判断材料です。
複数のメーカーの機種を比較検討する際には、実機でのデモンストレーションを依頼することが有効です。実際の鋳造作業を見ることで、操作性や鋳造時間、音や振動などを確認できます。可能であれば、自分が普段使用している合金と埋没材を持ち込んで、鋳造テストを行うことで、より正確な判断ができます。
導入後のトレーニングも考慮に入れるべきです。高性能な鋳造機であっても、適切な操作方法を習得しなければ、その性能を十分に引き出すことはできません。メーカーや販売店が提供する操作講習会に参加するか、訪問指導を依頼することで、早期に安定した鋳造品質を実現できます。
トレーニングが技術を向上させます。
鈴峯のINDUTHERM小型真空加圧鋳造機は、個人工房から小規模工場まで対応するコンパクト設計で、標準価格198万円という比較的手頃な価格帯が特徴です。

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