歯科CTの保険点数と診療報酬算定方法

歯科用CTの保険適用範囲や点数体系について詳しく解説します。2024年の最新情報を踏まえた算定要件や診断料、撮影料の内訳など、歯科医院経営に役立つ情報をまとめました。あなたの医院でも適切に保険請求できていますか?

歯科CTの保険点数と算定要件

歯科CTの保険点数の基本情報
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撮影料と診断料

歯科用3次元エックス線断層撮影の保険点数は、撮影料600点と診断料450点の合計1,050点です。

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造影剤使用時の加算

造影剤を使用した場合は500点が加算されます。この場合、造影剤注入手技料と麻酔料は所定点数に含まれます。

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算定頻度の制限

診断料は回数にかかわらず月1回のみ算定可能です。適切な算定要件を満たす必要があります。

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歯科医療の現場では、より精密な診断を可能にする歯科用CTの活用が広がっています。しかし、その保険点数や算定要件については正確に理解している歯科医師は意外と少ないのが現状です。本記事では、歯科CTの保険点数について詳しく解説していきます。

 

歯科用3次元エックス線断層撮影(歯科用CT)は、2024年現在、保険診療において重要な位置を占めています。従来のデンタルX線やパノラマ撮影では確認できない立体的な情報を得られるため、複雑な症例の診断に非常に有効です。

 

保険点数としては、撮影料600点と診断料450点の合計1,050点が設定されています。患者負担は3割として3,150円となります。これは医院経営の観点からも、適切に算定することで収益向上につながる重要な項目です。

 

歯科CTの保険適用となる症例と条件

歯科用CTの保険適用は、すべての症例で認められているわけではありません。保険診療として認められるのは、歯科用エックス線撮影または歯科パノラマ断層撮影では診断が困難な場合に限られています。具体的には以下の症例が対象となります。

 

  1. 埋伏智歯等と下顎管との位置関係の確認
  2. 顎関節症等における顎関節の形態確認
  3. 顎裂等の顎骨欠損形態の確認
  4. 腫瘍等の病巣の広がりの確認
  5. その他、通常のX線撮影やパノラマ撮影では確認できない位置関係や病巣の広がり等を確認する特段の必要性が認められる場合

これらの条件を満たさない場合、例えばインプラント治療のための単なる術前診断などでは保険適用外となり、自費診療として扱う必要があります。

 

保険請求の際には、なぜCT撮影が必要だったのかをカルテに明確に記載しておくことが重要です。審査機関からの査定を避けるためにも、診断した断面画像を保存・印刷してカルテに添付しておくことをお勧めします。

 

歯科CTの撮影料と診断料の詳細内訳

歯科用CTの保険点数は、大きく分けて「撮影料」と「診断料」の2つの要素から構成されています。それぞれの内訳と算定方法について詳しく見ていきましょう。

 

【撮影料】600点
これは実際にCT撮影を行った際の技術料に相当します。撮影そのものの手技や機器の使用に対する評価です。

 

【診断料】450点
CT画像の読影・診断に対する評価です。診断料は月1回に限り算定可能となっています。同一月内に複数回撮影した場合でも、診断料は1回しか算定できません。

 

造影剤使用加算】500点
造影剤を使用してCT撮影を行った場合には、所定点数に500点を加算できます。ただし、この場合の造影剤注入手技料および麻酔料は所定点数に含まれるため、別途算定することはできません。

 

【電子画像管理加算】
2022年の診療報酬改定以前は、電子画像管理加算として120点が別途算定できましたが、現在は撮影料に含まれる形となっています。

 

実際の請求時には、これらの点数を合計した1,050点(造影剤使用時は1,550点)を算定します。1点=10円で計算されるため、患者負担3割の場合、3,150円(造影剤使用時は4,650円)となります。

 

歯科CTと従来のレントゲン撮影との保険点数比較

歯科診療における画像診断の選択肢は複数あり、それぞれに異なる保険点数が設定されています。ここでは、歯科CTと従来のレントゲン撮影の保険点数を比較してみましょう。

 

【歯科用CT】

  • 撮影料:600点
  • 診断料:450点
  • 合計:1,050点(患者3割負担:3,150円)

【デンタルX線(歯科エックス線撮影)】

  • 撮影料:10点/枚
  • 診断料:歯科診断料として算定
  • 合計:単純計算できないが、CTと比較して大幅に低い

【パノラマX線(歯科パノラマ断層撮影)】

  • 撮影料:95点
  • 診断料:歯科診断料として算定
  • 合計:CTの約1/10程度

この比較から明らかなように、歯科用CTは従来のレントゲン撮影と比較して保険点数が高く設定されています。これは、CTが提供する3次元的な情報の価値と、機器の導入・維持コストを反映したものです。

 

ただし、単に点数が高いからといってCTを選択するのではなく、診断に必要な最小限の被曝で最大限の情報を得るという原則に従い、適切な画像診断法を選択することが重要です。必要性が明確でない場合のCT撮影は、保険請求上の問題だけでなく、患者の不必要な被曝にもつながります。

 

歯科CTの保険点数の歴史的変遷と改定ポイント

歯科用CTの保険点数は、時代とともに変化してきました。その歴史的変遷を理解することで、現在の算定ルールの背景が見えてきます。

 

【2010年12月以前】
歯科用CTは基本的に自費診療として扱われていました。保険診療として認められる明確な基準はなく、多くの歯科医院では全額自費として患者に請求していました。

 

【2010年12月】
厚生労働省から歯科診療報酬点数関係の疑義解釈が出され、特定の症例においては「医科点数表の例により算定する」ことが認められました。これにより、歯科医院でも一定条件下でCT撮影の保険請求が可能になりました。

 

当時の算定方法:

  • CT撮影料(その他):600点
  • コンピュータ断層診断:450点
  • 電子画像管理加算:120点
  • 合計:1,170点

【2012年4月】
診療報酬改定により、歯科点数表に「歯科用3次元エックス線断層撮影」が新設されました。これにより、歯科用CTの保険適用が明確化されました。

 

【2024年現在】
現在の算定体系は、撮影料600点と診断料450点の合計1,050点となっています。電子画像管理加算は撮影料に含まれる形となり、別途算定はできなくなりました。

 

この変遷からわかるように、歯科用CTの保険適用は徐々に明確化・整備されてきました。しかし、適用条件は限定的であり、すべてのCT撮影が保険適用になるわけではない点に注意が必要です。

 

また、診療報酬改定のたびに点数や算定要件が変更される可能性があるため、常に最新情報をチェックすることが重要です。

 

歯科CTの保険請求時の注意点と審査対策

歯科用CTの保険請求は、適切に行わないと査定のリスクがあります。ここでは、保険請求時の注意点と審査対策について解説します。

 

【カルテ記載の重要性】
CT撮影が必要だった理由を具体的にカルテに記載することが極めて重要です。「デンタルX線やパノラマ撮影では診断困難であったため」という理由と、前述の算定要件のどれに該当するかを明記しましょう。

 

【画像の保存と添付】
診断に使用した断面画像を保存・印刷し、カルテに添付しておくことをお勧めします。CTは操作によって様々な断面を見ることができるため、診断の根拠となった画像を残しておくことが重要です。

 

【適切な傷病名の記載】
保険請求の際には、CT撮影が必要となる適切な傷病名を記載することが必要です。例えば「埋伏智歯周囲炎(下顎管との位置関係確認のため)」のように、CTが必要な理由を付記するとより明確です。

 

【過剰な撮影の回避】
同一患者に対する頻回なCT撮影は審査の対象となりやすいです。特に短期間に複数回の撮影を行う場合は、その必要性を明確に記録しておく必要があります。

 

【地域による審査の差】
保険審査は地域によって判断基準に差があることがあります。地域の歯科医師会や保険医協会などを通じて、地域の審査傾向を把握しておくことも重要です。

 

実際に関東信越厚生局が発表した個別指導における指摘事項には「必要性の乏しいCT撮影」が挙げられています。これは、CT撮影の保険請求が審査で注目されているポイントであることを示しています。

 

適切な算定要件を満たし、必要な記録を残すことで、査定リスクを最小限に抑えることができます。患者さんの負担軽減のためにも、保険適用可能な症例では積極的に保険算定を行いましょう。

 

歯科CTの保険点数は決して低くないため、適切に算定することで医院経営にもプラスの影響を与えます。しかし、不適切な算定は査定や指導の対象となるリスクがあるため、ルールを正しく理解し、適切に運用することが重要です。

 

以上、歯科CTの保険点数と算定要件について解説しました。適切な保険請求を行い、患者さんに最適な医療を提供するための一助となれば幸いです。