待機中のスマホは検査精度を30%下げる
PET-CT検査の全体の所要時間は、受付から終了まで約2時間から3時間です。これほど時間がかかるのには明確な理由があります。検査薬FDG(フルオロデオキシグルコース)を静脈注射してから、薬剤が全身に行き渡るまで約1時間の安静待機が必要だからです。
実際の撮影時間は20分から30分程度と比較的短いものです。つまり、全体の時間のうち約半分以上が待機時間に充てられているということですね。検査の流れは、まず問診と血糖値測定を行い、その後検査着に着替えます。次にFDGを静脈注射し、専用の待機室で約1時間安静にします。
この待機時間中は、運動や読書、テレビ・音楽の鑑賞、携帯電話の使用が厳しく制限されます。なぜなら、筋肉や目を動かしたり、脳を使ってしまうとFDGがそれらの部位に集積し、がん細胞への集積が減少して検査精度が落ちてしまうからです。待機後、撮影室に移動してPET-CT撮影を行います。
撮影が終了した後も、体内に残っている放射性物質を軽減するために30分から1時間程度の待機時間があります。医療施設によっては、より検査の精度を高めるために2回目の撮影を行う場合もあります。全ての検査が終了したら着替えを済ませ、会計を行って終了です。検査結果は通常1週間以内に主治医に送付されます。
PET-CT検査を正確に行うためには、前日からの準備が極めて重要です。検査前日から当日にかけて、激しい運動やトレーニングは絶対に避けなければなりません。これは前日の運動でも、使った筋肉が疲労回復のためにブドウ糖代謝を活発化させ、FDGが筋肉に異常集積してしまうからです。
ジョギングなどの軽い運動も控えるべきです。水泳、テニス、サイクリング、カラオケなども筋肉を使うため、前日から避ける必要があります。日常生活程度の動作は問題ありませんが、長距離を歩いたり、自転車で来院することも避けるべきでしょう。
検査当日は、検査時刻の6時間前から絶食が必要です。ジュース、スポーツ飲料、カフェインを多量に含有する飲料、乳製品、ガム、飴なども検査に影響が出るため摂取できません。ただし、糖分の含まれていない水やお茶は飲んでも構いません。
糖尿病の薬を使用している方は特に注意が必要です。検査当日の糖尿病の薬(内服薬・インスリン)は使用せず、検査時に持参してください。血糖値が高いとFDGが全身の筋肉に集まってしまい、病変が分かりにくくなります。糖尿病以外の薬(高血圧の薬、鎮痛剤など)は通常通り使用して問題ありません。
検査当日は暖かい服装で来院することも大切です。身体が冷えることにより、褐色脂肪組織にFDGが集積し、病変部位以外に薬が集まる恐れがあるためです。検査着は用意されていますが、金具のないスウェットやジャージを持参しても構いません。
PET-CT検査の費用は、保険適用の有無によって大きく異なります。保険診療でPET-CT検査を受ける場合、検査の基本料金(算定料)に核医学診断料や画像管理加算などが加わり、3割負担の方で約3万円、1割負担の方で約1万円程度になります。つまり、検査費用そのものは約9万円から10万円程度ということです。
一方、がん検診目的など自費診療でPET-CT検査を受ける場合は、全額自己負担となり10万円から15万円前後の費用がかかります。医療機関によって価格設定が異なるため、事前に確認することをお勧めします。
PET-CT検査が保険適用になるのは、医師が医学的に必要と判断した場合に限られます。具体的には、がんの診断、病期診断(進行度の確認)、治療効果の判定、再発・転移の確認などが保険適用の対象です。ただし、PET-CT検査の保険請求は6か月に1回までとなっています。例外として、悪性リンパ腫の治療効果判定のみ6か月以内の2回目も保険請求が可能です。
健康な人が早期発見・早期治療を目的として人間ドックやがん検診などを受診する場合は、保険適用外となるため全額自己負担です。保険適用の要件は厳しく制限されており、疾患や目的によって自己負担になるケースが多いことを患者に事前に説明する必要があります。
患者から費用について質問された場合、保険適用の可否は主治医や検査機関が判断するため、まず主治医に相談するよう案内することが適切です。また、高額療養費制度の対象になる可能性もあるため、保険証の種類によっては負担が軽減される場合があることも伝えると良いでしょう。
歯科医療従事者として特に注意すべきなのが、口腔内の炎症とPET-CT検査の関係です。PET-CT検査で使用するFDGは、がん細胞だけでなく、活動性の炎症がある部位にも強く集積します。歯槽膿漏(歯周病)、根尖病巣、歯肉炎などの口腔内炎症があると、その部位にFDGが集積し、がんと誤認される可能性があるのです。
岡山大学の研究では、慢性歯周炎患者において18F-FDGを用いたPET/CT検査によって炎症の強い歯周組織を検出できることが確認されています。これは、歯周治療の効果判定に応用できる一方で、がん検診目的のPET-CT検査では偽陽性(実際にはがんではないのに陽性と判定される)の原因になります。
患者がPET-CT検査を受ける予定がある場合、歯科医療従事者は以下の点を確認し、必要に応じて主治医に情報提供すべきです。まず、現在進行中の歯科治療があるか、特に根管治療中や抜歯後の治癒期間中ではないかを確認します。次に、歯肉の腫脹や出血、歯周ポケットの深さなど、活動性の炎症の有無をチェックします。
検査前の歯科治療のタイミングについても配慮が必要です。侵襲的な治療(抜歯、歯周外科など)の直後は炎症が強く残るため、可能であれば検査の2週間以上前に治療を完了させるか、検査後に延期することが望ましいでしょう。急性炎症がある場合は、検査前に応急処置を行い炎症を鎮静化させることが重要です。
インプラント治療を受けている患者からPET-CT検査について質問された場合、基本的には検査可能であることを伝えてください。一般的なチタン製インプラントは、PET検査の画像に多少の乱れを生じることはありますが、体への影響はほとんどありません。ただし、磁性アタッチメント(磁石を利用した義歯の固定装置)が使用されている場合は、事前に検査機関に申告する必要があります。
金歯、銀歯、歯の詰め物などの歯科金属も、画像の乱れを生じることはありますが、体への影響は心配ありません。しかし、大きな金属冠が多数ある場合や、頭頸部領域の詳細な評価が必要な場合は、画像診断の精度に影響する可能性があるため、検査前に検査機関に情報提供しておくとよいでしょう。
PET-CT検査が終了した後も、患者には注意すべき点があります。検査後、体内には微量の放射性物質が約12時間から24時間残っているためです。放射線量は時間とともに急速に減少しますが、その間は特定の行動を避ける必要があります。
まず、検査後24時間は授乳を控えなければなりません。授乳中の患者がPET-CT検査を受ける場合は、事前に検査機関に連絡し、検査後24時間分の粉ミルクや搾乳した母乳を準備しておく必要があります。また、検査後12時間から24時間は、乳児や妊産婦との密接な接触を避けるよう指導してください。
検査終了後2時間程度は、できるだけ人混みを避けることが推奨されます。これは周囲の人々への被ばくを最小限にするためです。ただし、通常の社会生活を送る上で問題になるレベルではないため、過度に心配する必要はありません。
使用するPET薬剤のFDGは、余った分が主に尿とともに排出されます。そのため、検査後はこまめにトイレに行き、排尿後は手洗いを心がけるよう患者に伝えてください。特に検査当日は、水分を多めに摂取して排泄を促すことが推奨されます。糖分やカロリーを含まない水やお茶を500ml以上飲むとよいでしょう。
検査後の性行為については、特に禁止事項とはされていませんが、体内から放出される微量の放射線が気になる方は、検査後12時間程度経過してから行うことをお勧めします。これらの情報を患者に分かりやすく説明することで、不安を軽減し、適切な検査後の行動を促すことができます。
歯科治療のスケジュールについても配慮が必要です。PET-CT検査の直後は、激しい運動や侵襲的な処置を避けるべき期間です。検査当日や翌日に予定されていた抜歯などの外科的処置は、可能であれば数日延期することが望ましいでしょう。通常の歯科検診やクリーニング程度であれば、検査の翌日以降に行っても問題ありません。
患者から「PET-CT検査を受けたが、歯科治療はいつから再開できるか」と質問された場合は、検査後の体調に問題がなければ翌日から通常の歯科治療を再開しても構わないことを伝えてください。ただし、検査で異常が見つかり、追加検査や治療が予定されている場合は、その計画を優先し、歯科治療のタイミングを主治医と相談するよう助言することが重要です。
PET-CT検査は、がんの早期発見や治療効果判定に有効な検査方法です。歯科医療従事者として、口腔内の炎症が検査結果に影響を与える可能性を理解し、患者に適切な情報提供と指導を行うことで、より正確な診断と円滑な医科歯科連携に貢献できます。検査前の口腔ケアの徹底、炎症のコントロール、検査機関への情報提供など、歯科の専門性を活かした支援を心がけましょう。