ペーストタイプレジン特性と使い分け

ペーストタイプレジンは歯科修復に欠かせない材料ですが、フロータイプとの適切な使い分けを知っていますか?物性、充填方法、臨床での注意点まで、歯科医療従事者が押さえておくべき知識を詳しく解説します。

ペーストタイプレジン特性と使い分け

フロータイプの多用で形態が崩れていませんか


この記事の3つのポイント
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ペーストとフローの明確な違い

物性、重合収縮率、フィラー含有量の差を理解し、症例に応じた適切な材料選択ができます

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充填技術のポイント

気泡混入を防ぎ、重合収縮を最小化する積層充填のテクニックを習得できます

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臨床での実践的判断

臼歯部咬合面、前歯修復など部位別の材料選択基準と長期予後を向上させる方法がわかります


ペーストタイプレジンとフロータイプの根本的な物性差


ペーストタイプレジンとフロータイプレジンは、どちらもコンポジットレジン修復で使用される材料ですが、その物性には明確な違いがあります。


最も重要な違いはフィラー含有量です。


ペーストタイプは重量比で約78〜81%という高いフィラー充填率を持ち、これが優れた機械的強度と耐摩耗性の源となっています。


フロータイプはモノマー成分の割合が高いため、流動性に優れる反面、重合収縮が大きくなりやすい特徴があります。具体的には、重合収縮率がペーストタイプの1.5〜2%に対し、フロータイプは2.5〜3%に達することもあるのです。これは体積にすると、1立方センチメートルあたり0.025〜0.03立方センチメートル(角砂糖の約3分の1個分)の収縮に相当します。


つまり重合収縮が大きいということですね。


機械的強度の面では、ペーストタイプの曲げ強度が100〜130MPa程度であるのに対し、従来のフロータイプは80〜100MPa程度でした。ただし近年では、物性が向上したインジェクタブルレジンと呼ばれるフロータイプも登場し、ペーストタイプと同等以上の強度を持つ製品も出てきています。これらは咬頭被覆を伴うMOD修復にも対応できる高い剛性を備えています。


臨床での具体的な使用場面では、ペーストタイプは臼歯部咬合面の形態付与や前歯部の歯冠回復など、精密な形態再現が必要な場合に適しています。粘土のような性状で、充填器を使って緻密に築盛でき、形が崩れにくいのが特徴です。一方フロータイプは、狭く深い窩洞の底部や複雑なアンダーカット部への流し込み、ライニング用途に向いています。


OneDの歯科医療従事者向け詳細比較(フロー vs ペーストの物性データと臨床での使い分け基準)


ペーストタイプレジンの充填技術と気泡混入対策

ペーストタイプレジンの充填では、気泡の混入が最大の失敗要因となります。気泡が入ると透明感が損なわれるだけでなく、強度低下や二次カリエスのリスクが高まるためです。気泡混入の主な原因は、シリンジからペーストを採取する際のささくれ立ちや、充填器での築盛時の巻き込みにあります。


対策として最も効果的なのは、練和紙上に採取したレジンを少量ずつ、窩洞の隅角部から丁寧に填塞していく方法です。このとき充填器の先端をペーストに押し付けるようにして、空気を押し出しながら築盛します。繰り返し叩くような築盛は気泡を巻き込む原因になるため避けるべきです。


一度に大量に充填しないのが基本です。


シリンジタイプの材料を使用する場合は、カニューレの先端を窩洞の底部に到達させてから、ゆっくりと引き上げながら注入します。急速に押し出すと気泡が混入しやすくなります。また、ペーストがささくれ立っている場合は、一度平らに整えてから採取することで気泡混入のリスクを大幅に減らせます。


ボンディング処理後の窩洞が完全に乾燥していない状態でレジンを充填すると、水分が気泡として残る可能性があります。エアーブローで適度に乾燥させつつ、過度な乾燥で象牙質が脱水しないよう注意が必要です。ボンディング材の薄い光沢面が確認できる状態が理想的です。


複雑な窩洞形態の場合、まずフロータイプでライニングを行い、その後ペーストタイプで形態付与する併用法も有効です。この方法では、フロータイプの流動性で隅々まで材料を行き渡らせ、ペーストタイプの賦形性で最終形態を整えられます。ただしフロータイプのライニング時は、2mm以下の薄層で少量ずつ積層硬化するのが鉄則です。


ペーストタイプレジンの重合収縮を最小化する積層充填法

ペーストタイプレジンの重合収縮は、臨床上避けられない現象ですが、適切な積層充填法で悪影響を最小限に抑えられます。コンポジットレジンは固まる際に約1〜2%収縮し、これは1立方センチメートルの材料が硬化後に0.98〜0.99立方センチメートルになることを意味します。


重合収縮が問題となるのは、収縮応力が歯質との接着界面に集中し、微小漏洩や術後疼痛、最悪の場合はエナメル質亀裂の原因となるためです。特に一塊で厚く充填した場合、収縮応力は接着強度を上回ることがあります。これを防ぐ基本原則は「一度に重合する体積を減らす」ことです。


具体的には2mm以下の薄層に分けて築盛します。


積層充填の手順は、まず窩底部にフロータイプで薄くライニング(0.5〜1mm)を行い、応力緩衝層を形成します。その後、ペーストタイプを2mm厚ずつ積層し、各層ごとに十分に光照射します。この時、光照射は窩洞全体に光が届くよう、照射方向を考慮しながら20秒以上行うのが基本です。


窩洞形態によって充填方向を工夫することも重要です。Class II窩洞の場合、隣接面から咬合面に向かって積層することで、重合収縮の方向を接着界面から遠ざけられます。いわゆる「インクリメンタル充填法」と呼ばれる技法です。咬合面のみのClass I窩洞では、窩洞の隅角部から中央に向かって充填します。


近年では、重合収縮率が1.6%と低く、重合深度が5mmまで可能なバルクフィルタイプのレジンも登場しています。これらは一層で厚盛りできるため、積層回数を減らせる利点がありますが、従来のペーストタイプほどの賦形性はないため、最終層には通常のペーストタイプを使用する併用法が推奨されます。


ボンディング材の適切な使用も重合収縮対策の一環です。セルフエッチングプライマーを用いた接着システムでは、エナメル質への酸処理が不十分になりがちなため、選択的エナメル酸処理を追加することで接着強度を高め、収縮応力に対抗できます。


WHITE CROSS(積層充填による重合収縮対策の臨床例と具体的な手技)


ペーストタイプレジンの臼歯部適応と形態付与のコツ

臼歯部咬合面へのペーストタイプレジン充填では、機能的な咬合面形態の再現が成功の鍵となります。フロータイプは流動性が高いため、充填後に形態が変わってしまったり、咬頭や溝の精密な再現が困難です。これに対しペーストタイプは、充填器で緻密に形態を付与でき、光照射前の形がそのまま保持されます。


臼歯部のClass I窩洞では、まず窩底部をフロータイプでライニングした後、ペーストタイプで咬合面形態を築盛します。小窩裂溝の再現には、充填器の先端で溝を描くように形成し、隣接する咬頭の傾斜を意識して賦形します。咬合接触点は対合歯の位置を確認しながら、わずかに高めに設定しておくと、研磨時の調整がしやすくなります。


MOD修復のような大きな窩洞では強度が重要です。


このような症例では、フィラー含有量が78%以上の高強度ペーストタイプを選択します。市販製品では、松風のビューティフィルILSやGCのグラディアダイレクトなどが該当し、曲げ強度120MPa以上、曲げ弾性率9GPa以上という臼歯咬合に耐えうる物性を備えています。


Class II窩洞で隣接面を含む場合、マトリックスとウェッジの適切な使用が不可欠です。まず隣接面をフロータイプで充填し、コンタクトポイントを形成した後、咬合面はペーストタイプで形態付与します。この併用法により、隣接面の緻密な充填と咬合面の精密な形態再現を両立できます。


咬頭被覆を伴うような広範囲修復では、エナメル質の残存量が予後を左右します。咬頭全体を覆う場合でも、可能な限りエナメル質を保存し、その上にレジンを築盛することで、接着面積を最大化し長期的な安定性が得られます。咬頭の咬合面積が大きい症例では、セラミックインレーやCAD/CAM冠も選択肢として検討すべきです。


研磨は形態付与と同様に重要です。咬合調整後、粗研磨から仕上げ研磨まで段階的に行い、最終的にはダイヤモンドペーストで鏡面仕上げを目指します。適切に研磨されたレジン面は耐着色性が向上し、2〜3年は良好な審美性を保てます。研磨不足は表面粗さの増加と細菌の付着、二次カリエスのリスク増加につながります。


ペーストタイプレジンの色調選択と審美性向上の実践知識

ペーストタイプレジンの色調選択は、審美修復の成否を決める重要な要素です。従来は、VITAシェードガイドに基づいてA1、A2、A3などの多様なシェードから選択する必要がありましたが、近年ではシェード選択を不要とする「ユニバーサルシェード」タイプのレジンが注目されています。


ユニバーサルシェードレジンは、構造色やカメレオン効果と呼ばれる光学特性により、周囲の歯質色に自然に調和します。松風のビューティフィルユニシェードやトクヤマデンタルのオムニクロマは、1本でVITA16シェードに対応し、複数シェードの在庫管理が不要になる利点があります。これらは硬化前と硬化後で色調が変化するため、充填時の視認性も確保されています。


シェード選択が簡略化されました。


一方で、前歯部の高度な審美修復では、従来型の多シェード展開製品が依然として有効です。象牙質色のデンティンシェード、エナメル質色のエナメルシェード、オペークシェードを組み合わせた積層充填により、天然歯に近い深みのある色調再現が可能になります。特にクラスIV窩洞やベニア修復では、この技法が不可欠です。


色調適合性を高めるポイントは、光の透過性を考慮することです。窩底部には不透明なオペークシェードやデンティンシェードを配置し、表層には透明度の高いエナメルシェードを使用します。この積層構造により、自然な立体感と明度の変化が生まれます。窩底部に透明度の高いシェードを使うと、金属色やダークスポットが透けて見え、審美性が損なわれます。


シェード選択時の照明環境も重要です。蛍光灯下では青白く、白熱灯下では黄色みが強調されるため、できるだけ自然光に近い色温度5500K程度の照明下で選択します。また患者の歯は乾燥すると明度が上がるため、選択時は適度に湿潤させた状態で確認します。


色調の経年変化対策として、充填当日は着色の強い飲食物を控えるよう患者指導します。レジン表面は重合直後の24時間が最も吸水しやすく、この時期にコーヒーや赤ワインを摂取すると着色が定着します。理想的には、充填当日は研磨を最小限にとどめ、翌日以降に最終仕上げ研磨を行うことで、着色リスクを最小化できます。


松風ビューティフィルユニシェード(シェード選択不要のユニバーサルレジン製品情報)


ペーストタイプレジンの保険診療での選択基準と費用対効果

保険診療でのペーストタイプレジン使用は、CR充填として算定され、3割負担で1本あたり600〜1000円程度と経済的です。ただし保険適用材料と自費材料では、物性や色調バリエーションに差があることを理解しておく必要があります。


保険収載されているペーストタイプレジンは、2024年以降、従来よりも高品質な製品が増えてきました。例えばクラレノリタケデンタルのクリアフィルマジェスティES-2や、GCのグレースフィロなどは保険適用でありながら、フィラー充填率が高く、臼歯部咬合にも十分耐えうる強度を持っています。これらの価格は、シリンジ1本(約4g)あたり3500〜4000円程度で、1症例あたりのコストは数百円程度です。


保険適用なら経済的に治療できます。


自費診療のダイレクトボンディングでは、より高品質なペーストタイプレジンと、多段階の研磨システムを使用し、費用は1歯あたり2〜5万円程度になります。自費用レジンは耐変色性や研磨性に優れ、より繊細な色調再現が可能です。審美性を最重視する前歯部修復では、患者の希望に応じて自費を提案する価値があります。


材料選択の実践的な基準として、臼歯部咬合面のClass I修復では保険適用のペーストタイプで十分な予後が期待できます。一方、前歯部のClass IV修復や広範囲のベニア修復では、自費用の多シェード展開製品を使った方が、患者満足度の高い審美性が得られます。経済性と審美性のバランスを患者と共有し、選択肢を提示することが重要です。


費用対効果の観点では、レジン修復の最大の利点は「即日修復可能」という点です。印象採得や技工操作が不要で、1回の来院で治療が完結するため、患者の時間的負担が少なく、チェアタイムも短縮できます。小規模な修復であれば、セラミックインレーよりもMI(最小限の侵襲)を実現でき、歯質保存の面でも優れています。


ただしレジン修復の耐久性には限界があり、5〜7年程度で再修復が必要になることも少なくありません。大臼歯の咬頭被覆を伴う大規模修復では、長期的にはセラミッククラウンやCAD/CAM冠の方が再治療リスクが低い場合もあります。症例の大きさ、咬合力の強さ、患者の口腔衛生状態を総合的に判断し、材料選択を行うことが、長期予後と医療経済性の両立につながります。


GC歯科(ペーストタイプ光重合型レジンの臨床応用と保険適用に関する情報)




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