防護エプロンが再撮影の原因になります
パノラマ撮影を行う際には、装置本体以外にも様々な器具が必要になります。
最も基本的な器具がバイトブロックです。
これは患者が前歯で咬む部分であり、正しい位置づけを維持するために欠かせません。バイトブロックは撮影中の患者の頭部を安定させ、上下の歯列を適切な位置関係に保つ役割を果たしています。
バイトブロックには大きく分けて2つのタイプがあります。リユース型は本体に固定されており、使用後にオートクレーブ滅菌または煮沸消毒を行って繰り返し使用するものです。一方、ディスポーザブル型は1回使用ごとに廃棄する使い捨てタイプで、感染対策の観点から近年注目を集めています。各医療機関の感染管理方針や経済性を考慮して選択することが重要です。
ポジショニング補助具も重要な器具の一つです。頭部固定用のテンプルレストやフォアヘッドレストは、患者の頭部を正しい位置に固定し、撮影中の動揺を防ぎます。チンレスト(顎受け台)は顎の高さを調整し、フランクフルト平面を水平に保つために使用されます。これらの補助具が適切に調整されていないと、画像の歪みや診断精度の低下につながります。
感染対策用品も必須です。バイトブロックカバー(スリーブ)は、リユース型バイトブロックの表面を覆うディスポーザブルフィルムで、患者ごとに交換します。サイズは5.5×2.6cm程度が一般的で、各社のパノラマ装置に対応した製品が市販されています。Ciモールやプレミアムプラスなどのメーカーから、200枚入りや1000枚入りのパッケージで販売されており、コストと使用頻度に応じて選択できます。
その他の補助器具として、レーザーポジショニングシステムがあります。これは正中線やフランクフルト平面の位置を光線で示すもので、多くの現代的なパノラマ装置に標準装備されています。高さ調整が困難な小児や車椅子患者のために、昇降機能付きのチェアや座位撮影用のスツールも用意されることがあります。器具の選択は診療形態と患者層に合わせて行うことが基本です。
パノラマ装置本体の選択は、導入コストと機能性のバランスが重要です。基本的なデジタルパノラマ装置は300〜600万円前後に集中しており、セファロ撮影機能や特殊技術を備えた上位機種は600〜800万円程度が相場となっています。ヨシダのパノーラA1、朝日レントゲンのSOLIO XD、近畿レントゲン工業のKR-8100など、国産メーカーの製品は品質と保守体制に定評があります。
海外メーカーではVatech社のPaX-iシリーズやプランメカ社のProOneなどが人気です。特にOrthophos SLはバイトブロックにセンサーが内蔵されており、位置づけが自動補正される機能を持っています。誰が撮影しても高品質な画像が得られるため、スタッフの経験値に左右されにくいという利点があります。価格は機能に応じて500〜700万円程度です。
バイトブロック単体での選択も重要です。ヨシダのX-ERA用、朝日レントゲンのSOLIO X用など、装置メーカーごとに専用設計された製品があります。ヨシダコード(Yコード)で管理されており、パノーラA1、エクセラMF/NF、エクセラスマート、パノーラ18/19などは共通のバイトブロックを使用できます。互換性を事前に確認することで在庫管理が効率化されます。
ディスポーザブルバイトブロック「プロブロック」は、パノラマ撮影用の使い捨て製品として注目されています。プレミアムプラス社から100個入りの個別包装で販売されており、ヨシダX-ERA用と朝日レントゲンSOLIO X用の2種類のバリエーションがあります。感染リスクを完全に排除できるため、消毒作業の手間とコストを削減したい医療機関に適しています。
年間保守契約も器具選定の際に考慮すべき要素です。パノラマ装置の保守契約料は約20万円前後が相場で、消耗品や定期的な部品交換も含まれることが多いです。信頼できるメーカーとの長期的な関係構築は、突発的な故障時の対応スピードにも影響します。導入時には本体価格だけでなく、ランニングコストも含めた総合的な検討が必要です。
パノラマレントゲン15機種の詳細比較と選び方のポイントについて、こちらの記事で機種別の特徴と価格帯を確認できます
パノラマ撮影の成否は、患者の位置づけ(ポジショニング)で決まります。重要なのは3つの基準線を正確に合わせることです。第一に正中線、顔面の中心を示す垂直線を装置の中心線に一致させます。第二にフランクフルト平面、外耳道と眼窩下縁を結ぶ線を床と平行にします。第三に断層域の線、装置が設定する撮影範囲に歯列弓を収めることです。
撮影手順は以下の流れで進めます。まず患者をレントゲン室に誘導し、ネックレス、ピアス、イアリング、ヘアピン、メガネ、取り外し可能な入れ歯などの金属類をすべて外してもらいます。金属が画像に写り込むと診断の妨げになり、再撮影の原因となります。次に防護エプロンの着用ですが、パノラマ撮影では映り込みのリスクがあるため、現在では省略する医療機関も増えています。
患者を立位または座位で装置に誘導し、バイトブロックを前歯で軽く咬んでもらいます。この時、強く咬ませすぎると顎関節に負担がかかり、弱すぎると位置がずれる原因になります。
適度な咬合力で安定させることがコツです。
頭部をテンプルレストとフォアヘッドレストで固定し、チンレストで顎の高さを調整します。
レーザー光で正中線とフランクフルト平面の位置を確認します。正中線が鼻筋の中央を通り、フランクフルト平面が床と平行になるよう微調整します。
患者に以下の3点を指示してください。
唾を飲み込み、舌を口蓋(口の天井)につける、鼻で静かに呼吸する、目を閉じて動かないでいる。撮影中は機械が約10〜15秒間、頭部の周囲を回転します。
準備から撮影終了まで全体で5分程度です。ただし初診患者や高齢者、小児などでは説明と位置づけに時間がかかることがあります。撮影後は速やかに画像をプレビューし、診断に適した品質かどうか確認します。ポジショニング不良による再撮影は、患者の被ばく量増加と診療時間の延長につながるため、一回で成功させる技術が求められます。
パノラマ撮影の実際の位置づけ方法について、こちらの教育資料で3つの基準線の詳細を学べます
撮影失敗の最も多い原因は、ポジショニング不良です。顎の位置合わせや頭部の固定が不十分なまま撮影を開始すると、画像が上下にぼやけたり、歯列の一部が断層域から外れて不鮮明になったりします。特に患者が緊張して肩に力が入っていると、頭部が後傾しやすく、フランクフルト平面が崩れる原因になります。撮影前にリラックスするよう声をかけることが大切です。
金属製品の取り外し忘れも頻繁に起こる失敗です。ピアスをつけたままだったり、ネックレスを外し忘れたりすると、金属の影が画像に重なって診断を阻害します。特に小さなピアスやボディピアスは見落としやすいため、撮影前のチェックリストを作成して確認する習慣をつけるとよいでしょう。
患者自身も気づいていないことがあります。
防護エプロンによる映り込みも再撮影の原因になります。歯科用レントゲン撮影で防護エプロンを着用すると、エプロンの影が画像に映り込みやすく、特に顎の下部分に黒い影が入ることがあります。日本歯科放射線学会の指針でも、パノラマ撮影では防護エプロンの実質的な線量低減効果がほとんどないとされており、映り込みによる再撮影リスクを避けるために装着しない選択が推奨されています。
撮影中の患者の動きも失敗原因です。撮影時間は10〜15秒程度ですが、この間に唾を飲み込んだり、舌を動かしたり、呼吸で体が揺れたりすると、画像にブレが生じます。特に小児や高齢者、嘔吐反射の強い患者では静止が困難なことがあります。撮影開始前に「機械が回っている間は動かないでください」と明確に伝えることが重要です。
装置の設定ミスや機械的トラブルも見落とせません。露出時間や電圧の設定が患者の体格に合っていないと、画像が黒すぎたり白すぎたりします。また古い装置では、センサーの劣化や機械的な動作不良により画像品質が低下することがあります。定期的なメンテナンスと校正作業を実施し、常に最適な状態で撮影できる環境を整えることが必要です。
バイトブロックは患者の口腔内に直接接触するため、厳格な感染対策が必要です。リユース型バイトブロックを使用する場合は、患者ごとにオートクレーブ滅菌(134℃の高圧蒸気滅菌)または煮沸消毒を行います。ZTバイトブロックなど、オートクレーブ対応の製品を選ぶことで、確実な滅菌処理が可能になります。顎関節に負担がかからない設計のものを選ぶと、患者の快適性も向上します。
バイトブロックカバー(スリーブ)の使用は、感染対策の効率化に有効です。リユース型バイトブロックの表面を覆うディスポーザブルフィルムで、患者ごとに交換するだけで感染リスクを大幅に減らせます。厚さが薄くなり操作性が向上した新型製品も登場しており、装着時の手間が軽減されています。200枚入りまたは1000枚入りから、使用頻度に応じて選択できます。
ディスポーザブルバイトブロックの導入も選択肢の一つです。プロブロックのような使い捨て製品は、滅菌処理の手間とコストを完全に削減できます。100個入りで個別包装されており、開封してすぐに使用できるため、スタッフの作業負担が軽減されます。ただし単価は高くなるため、診療規模と経済性を考慮した判断が必要です。
撮影室全体の感染対策も重要です。パノラマ装置の操作パネルやテンプルレスト、チンレストなど、患者が接触する部分はアルコール消毒剤で清拭します。手指を直接口腔内に入れないよう、口唇排除用のミラーを使用することで、術者の感染リスクも低減できます。撮影時の注意事項として、バイトブロックを咬ませた後の位置確認やレーザー光の調整時には、必ず手袋を着用します。
器具の保管方法も衛生管理の一部です。滅菌済みバイトブロックは、清潔な専用容器に保管し、未滅菌品と明確に区別します。使用期限や滅菌日を記録し、トレーサビリティを確保することで、万が一の感染事例発生時にも迅速な対応が可能になります。定期的に在庫を見直し、劣化した器具は速やかに交換することが基本です。
歯科画像検査における感染対策の詳細について、こちらのPDF資料でパノラマ撮影時の具体的な手順を確認できます
嘔吐反射が強い患者へのパノラマ撮影は、特別な配慮が必要です。バイトブロックを咬むことで反射が誘発されることがあるため、撮影前に深呼吸を促してリラックスさせます。舌に塩を一摘み乗せると反射が軽減されることがあり、簡易的な対処法として有効です。それでも困難な場合は、表面麻酔スプレーで咽頭部の過敏性を抑える方法もあります。
代替撮影法の検討も重要です。通常のパノラマ撮影が困難な場合、デンタルX線撮影を複数枚組み合わせて診断する方法があります。またCT撮影はバイトブロックを咬む必要がないため、嘔吐反射の強い患者でも比較的容易に実施できます。ただしCT撮影の被ばく量はパノラマより多くなるため、必要性を十分に検討した上で選択します。
車椅子患者や起立困難な患者への対応では、座位撮影可能な装置の選択が有効です。朝日レントゲンのLapix7007のような、患者をベッドに仰向けの状態で撮影できる装置も開発されています。障害者歯科治療を行う医療機関では、こうした特殊な装置の導入が患者の負担を大きく軽減します。従来の立位専用装置では撮影不可能だった症例にも対応できます。
小児患者への配慮も欠かせません。装置の大きさや音に恐怖を感じる子どもには、事前に撮影の流れを丁寧に説明し、保護者の同伴を許可することで安心感を与えます。身長が低い場合は昇降機能を活用し、無理のない姿勢で撮影できるよう調整します。撮影時間が短いこと(10〜15秒程度)を伝え、「じっとしていられたら偉いね」と励ますことも効果的です。
開口障害や顎関節症の患者では、バイトブロックの咬合が痛みを引き起こすことがあります。この場合、咬合力を最小限にする指導や、柔らかい素材のバイトブロックへの変更を検討します。症状が重度の場合は、無理にパノラマ撮影を行わず、他の検査法で代替することも選択肢です。患者の訴えをよく聞き、柔軟に対応することが信頼関係の構築につながります。

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