抗生物質を投与してもほとんど効果がないのに、多くの飼い主が期待してしまう治療法です。
犬の根尖膿瘍は、歯の根の先端部分に膿が溜まる状態です。歯周病が悪化すると、歯垢に含まれた大量の細菌が血液を介して歯の根元に達し、そこで感染症を引き起こします。症状が進行すると、目の下や下顎の皮膚が腫脹し、やがて膿が皮膚から漏出することもあります。
3歳以上の犬の約8割が歯周病を抱えていると言われており、その多くは放置されているのが現状です。歯周病がここまで進行するまで数年の時間がかかるため、早期発見が極めて困難です。
歯の破折も根尖膿瘍の原因になります。硬いおもちゃやおやつを噛むことで歯が折れると、エナメル質が破損し、細菌が歯髄内に侵入します。これが内部で感染を起こし、根尖部までの進行を招きます。
上顎第四前臼歯という歯が最も好発部位で、ちょうど目の下に位置するため、この部位の根尖膿瘍は目の下の腫脹として現れることが多いです。犬の顔が片側だけ腫れている場合は、歯の病気を疑う必要があります。
根尖膿瘍の診断には、高精度な画像検査が不可欠です。通常のレントゲン撮影だけでは診断できないケースが多く、そうした場合はCT検査が必要になります。
レントゲン撮影費用は一般的に5,000円~7,500円程度ですが、CT検査となると全身麻酔代を含めて40,000円~50,000円かかります。多くの動物病院では、CT検査の方が正確な診断が可能と判断しています。これは見逃し防止だけでなく、不要な抜歯を避けるためでもあります。
CT検査で得られた断層画像により、どの歯が原因であるか、周囲の骨がどの程度溶けているかが正確に把握できます。こうした情報は治療方針を決定する際に極めて重要です。診断が甘いと、同じ部位で再発したり、他の歯にも波及したりする可能性が高まります。
目の下や頬の腫脹が見られた場合、まず皮膚科的原因と誤診されるケースが少なくありません。細胞診で化膿性炎症と判定されても、根本原因が歯にあれば、抗生物質だけでは解決しません。複数の抗生物質を試しても改善しない腫脹は、歯科的検査の適応です。
抗生物質が根尖膿瘍に対して限定的にしか効かない理由は、膿瘍内の環境にあります。形成された膿の袋は密閉され、死細胞や細菌の塊で構成されています。血液を介して全身に運ばれる抗生物質は、この膿瘍内部の細菌に十分な濃度に達しません。
つまり抗生物質を投与しても一時的に腫脹が引くだけで、膿瘍そのものは存在し続けるということです。腫脹が引いたからといって治癒したわけではなく、単に圧が低下しているだけです。抗生物質が効果を示す2~3週間後に症状がよくなったとしても、数か月で再発することがほとんどです。
再発のたびに飼い主は新しい抗生物質を求めるようになります。しかし複数の抗生物質を多用すると、耐性菌が増加する問題が生じます。全身性の感染が悪化して敗血症に至るリスクもあります。さらに繰り返される痛みにより、食欲不振や発熱が続き、犬の全身状態が悪化します。
一度の抗生物質使用で十分な効果が得られない場合、別の種類の抗生物質を試すことはありますが、それでも根本解決には至りません。重要なのは、抗生物質は根尖膿瘍の「治療」ではなく、あくまで手術前後の「補助療法」であることを理解することです。
根尖膿瘍の唯一の根本治療は、原因となる歯の抜歯です。全身麻酔下で膿瘍を形成した歯を完全に除去し、感染周囲組織も丁寧に処置します。抜歯後は縫合して閉創し、必要に応じて抗生物質と鎮痛薬を投与します。
歯を失うことへの不安を持つ飼い主は少なくありませんが、犬は歯がなくても通常通り食事が可能です。むしろ痛みの原因である歯を取り除くことで、抜歯後は元気にごはんを食べるようになることが多いです。抜歯によって痛みが消失するため、食欲が回復するメリットも大きいです。
抜歯の際には同時に他の歯の歯石除去やポリッシング処置も行うことで、麻酔の回数を最小限に抑えます。抜歯後2週間は柔らかい食事、1か月はおもちゃでの遊びを控えることで、創傷の治癒を促進します。
根管治療という歯を残す治療法もありますが、歯周病由来の根尖膿瘍では周囲の支持組織が広範囲に破損しているため、適応が限定的です。犬歯などの機能的に重要な歯で、かつ周囲骨の損傷が軽度の場合のみ検討されます。ほとんどの根尖膿瘍は抜歯が選択肢となります。
根尖膿瘍の抜歯治療にかかる費用は、一般的に50,000円~150,000円の範囲です。周囲の歯や骨の状態が複雑なほど費用が増加します。高度な診断を要する場合、CT検査料金40,000円~50,000円が別途必要になります。
小型犬で複数本の抜歯が必要な場合は66,000円~110,000円、臼歯欠損で根尖膿瘍が発症した場合は55,000円~77,000円といった相場が報告されています。麻酔前血液検査なども加わると、最終的には20万円を超えることもあります。
経済的理由で抜歯を躊躇し、抗生物質で経過観察することを選択する飼い主も存在します。しかし反復的な再発の度に通院が必要になり、トータルの医療費で見ると抜歯の方が経済的という矛盾が生じます。多くの動物病院では分割払いなどの対応も可能なため、相談することをお勧めします。
ペット保険によっては歯科治療を補償の対象外としている商品も多いため、事前に確認が必要です。不適切な診断や根管治療の試行で費用が膨らむケースもあるため、歯科専門医のいる動物病院での治療を検討する価値があります。
参考リンク。
犬や猫の根尖膿瘍について | 森田動物医療センター - 根尖膿瘍の原因から治療法、予防方法まで詳しく解説されています。
根尖周囲病巣、根尖膿瘍の治療とデンタルケア | かしわだい動物病院 - レントゲン撮影を活用した診断方法と飼い主との相談に基づく治療方針の決定について記載。
犬の歯根膿瘍 | KINSWITH動物病院 - 抜歯以外の根管治療について、また予防策としてのデンタルケアの重要性を解説。
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