感染性廃棄物処理方法と歯科医院の分別・保管・業者選定

歯科医院の感染性廃棄物処理は、法令遵守と安全管理が必須です。

分別ミスや不適切な保管は重い罰則の対象に。


正しい処理方法とマニフェスト管理、コスト削減のポイントを知っていますか?


感染性廃棄物処理方法と適正管理

マニフェストなしで処理すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。


この記事の3つのポイント
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法令遵守の重要性

感染性廃棄物の不適切処理は、マニフェスト未交付で1年以下の懲役または100万円以下の罰金、無許可業者への委託で5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金という重い罰則が科されます

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正確な分別と容器選択

感染性廃棄物は形状により赤・橙・黄のバイオハザードマークで区分し、鋭利物は耐貫通性容器、液状物は密閉容器、固形物は二重袋と段ボールを使用する必要があります

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コスト管理と業者選定

処理費用は容器サイズや回収頻度で変動し、小規模歯科医院で月1〜3万円が相場ですが、適切な業者選定とマニフェスト管理で最大23%のコストダウンが可能です


感染性廃棄物の定義と法的位置づけ


歯科医院から排出される廃棄物のうち、血液や唾液が付着した注射針、ガーゼ、抜去歯などは感染性廃棄物として扱われます。これらは廃棄物処理法により「特別管理産業廃棄物」に指定されており、通常の産業廃棄物よりも厳格な処理基準が設けられています。


感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じる廃棄物のうち、人が感染し、または感染するおそれのある病原体が含まれる、もしくは付着している廃棄物を指します。環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」では、形状、排出場所、感染症の種類という3つの観点から判断基準が示されています。


歯科診療において発生する典型的な感染性廃棄物には、使用済み注射針、血液付着のガーゼやコットン、抜去した歯、血液が混入した吸引チップなどがあります。これらは一般の事業系ごみとは完全に分別し、専用の容器に収納しなければなりません。分別を誤ると、スタッフや収集運搬業者の針刺し事故、感染リスクの増大につながります。


特に歯科医院では、観血処置が日常的に行われるため、ほぼ毎日感染性廃棄物が発生します。


つまり毎日が法令遵守の対象です。


この点を理解しておけば、廃棄物管理の重要性が明確になります。


不適切な処理を行った場合、排出事業者である歯科医院の開設者に対して、改善命令や措置命令が出されることがあります。さらに悪質な場合は、刑事処分として懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。法人の場合、罰金額は最大3億円にまで引き上げられるケースもあるため、決して軽視できません。


環境省の感染性廃棄物処理マニュアル(PDF)には、詳細な判断基準と処理手順が記載されています


感染性廃棄物の分別基準と容器の選び方

感染性廃棄物は、その形状に応じて3種類のバイオハザードマークで区分されます。赤色マークは液状・泥状のもの(血液、血清など)、橙色マークは固形状のもの(血液付着のガーゼ、グローブなど)、黄色マークは鋭利なもの(注射針、メス、破損したガラス製品など)を表します。


鋭利なものには、耐貫通性のある堅牢な容器が必須です。段ボールやビニール袋は簡単に貫通してしまうため使用できません。金属製またはプラスチック製の専用容器を使用し、容量の8割に達したら速やかに交換します。容器を満杯にすると、針が飛び出す危険性が高まります。


液状または泥状のものは、密閉性の高いプラスチック製容器を使用します。


漏洩を防ぐため、容器の密閉構造が重要です。


段ボール容器を使用する場合は、必ず内袋を使用し、液体が外部に漏れないようにします。


固形状のものは、丈夫なポリ袋に入れ、さらに段ボール容器に収納する二重梱包が基本です。この方法により、運搬中の破損や内容物の飛散を防ぎます。ポリ袋は透明または半透明のものを避け、中身が見えないようにする配慮も必要です。


容器の外側には、必ずバイオハザードマークを明示します。マークの色と形状が一致していることを確認し、誤った容器に廃棄物を入れないよう注意します。スタッフ全員がこのルールを理解していることが、事故防止の鍵です。


分別を誤ると、処理業者が受け取りを拒否するケースがあります。その場合、再度正しい容器に詰め替える手間が発生し、スタッフの感染リスクも高まります。最初から正確に分別することが、安全とコスト削減の両面で重要です。


感染性廃棄物の保管基準と注意点

歯科医院内で感染性廃棄物を保管する際は、関係者以外が立ち入れない場所を確保します。保管場所には「感染性廃棄物保管場所」という表示を見やすい位置に掲示し、他の廃棄物と明確に区別します。


保管期間は、できる限り短期間にすることが原則です。環境省のマニュアルでは具体的な日数制限は設けられていませんが、やむを得ず長期間保管する場合は、容器を密閉し、冷蔵庫に入れるなど腐敗を防ぐ措置が必要です。夏場は特に腐敗が早いため、週1回以上の回収頻度が推奨されます。


保管場所の床は、清掃しやすい構造とし、万が一液体が漏れた場合でも速やかに除去できるようにします。床面は耐水性の素材を選び、排水設備との接続は避けます。感染性廃棄物が下水に流入すると、環境汚染の原因になります。


容器は、収納したまま取り扱うことが鉄則です。移し替えや再使用は、感染リスクを高めるため禁止されています。容器が破損した場合は、新しい容器に慎重に移し替え、破損した容器も感染性廃棄物として処理します。


この原則を守ることが基本です。


保管場所には、消火器や手洗い設備を設置し、万が一の事故に備えます。スタッフが廃棄物に触れた後、すぐに手を洗える環境を整えることで、感染リスクを最小限に抑えられます。


定期的に保管状況を点検し、容器の破損や液漏れがないか確認します。点検記録を残すことで、管理体制の適切性を証明でき、行政の立入検査にも対応できます。


記録は最低5年間保存します。


感染性廃棄物処理業者の選定とマニフェスト管理

処理業者を選ぶ際は、必ず「特別管理産業廃棄物収集運搬業」と「特別管理産業廃棄物処分業」の両方の許可を持つ業者に委託します。許可証の写しを契約書に添付し、許可の有効期限や業務範囲を確認します。無許可業者に委託すると、委託した側も5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金の対象になります。


マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、廃棄物を引き渡すたびに必ず交付します。マニフェストには、廃棄物の種類、数量、運搬業者名、処分業者名などを正確に記載します。記載漏れや虚偽記載は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。


この違反は意外と多いです。


マニフェストのB2票は運搬業者から、D票とE票は処分業者から返送されます。これらの票は、廃棄物が適正に処理されたことを証明する重要な書類です。返送期限は、B2票が引き渡しから10日以内、D票が90日以内、E票が180日以内と定められています。期限内に返送がない場合は、速やかに都道府県知事に報告する義務があります。


返送されたマニフェストは、送付を受けた日から5年間保存します。この保存義務を怠ると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。紛失した場合も同様の罰則対象となるため、施錠できるキャビネットなどで厳重に保管します。


電子マニフェストを利用すると、交付や保管の手間が大幅に軽減されます。電子マニフェストシステム(JWNET)に登録することで、パソコン上で一元管理でき、返送期限の通知も自動的に届きます。初期費用はかかりますが、長期的にはコスト削減につながる場合があります。


業者選定では、処理費用だけでなく、回収頻度、緊急時の対応、マニフェスト管理のサポート体制も比較します。複数の業者から見積もりを取り、サービス内容を詳細に確認することで、最適な業者を選べます。料金が安すぎる業者は、不法投棄のリスクがあるため注意します。


電子マニフェストの詳細は、公益社団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)の公式サイトで確認できます


感染性廃棄物処理のコスト管理と削減方法

感染性廃棄物の処理費用は、容器サイズ、回収頻度、地域によって大きく変動します。一般的な相場として、20L容器で1,800円〜4,000円、40L容器で2,700円〜6,000円、80L容器で1,900円〜4,000円程度です。これに加えて、マニフェスト管理費が1式あたり200円〜500円、収集運搬費が1回あたり5,000円〜2万円程度かかります。


小規模歯科医院の場合、月額1万円〜3万円が標準的な処理費用です。中規模の医療機関では月3万円〜8万円前後が一般的です。年間にすると、小規模でも12万円〜36万円の経費になるため、コスト管理は経営上重要です。


コスト削減の第一歩は、感染性廃棄物と非感染性廃棄物の正確な分別です。血液が付着していない紙くずや容器包装などを誤って感染性廃棄物として廃棄すると、処理費用が無駄に増加します。スタッフ教育を徹底し、分別基準を明確にすることで、廃棄物量を適正化できます。


容器の容量を8割で交換する原則を守りつつ、回収頻度を最適化します。廃棄物の発生量を把握し、必要以上に頻繁な回収を避けることで、収集運搬費を削減できます。ただし、保管期間が長すぎると腐敗や臭気の問題が生じるため、バランスが重要です。


複数の処理業者から相見積もりを取ることで、適正価格を把握できます。病院専門のコンサルティングサービスを利用し、処理費用を見直した結果、最大23%のコストダウンに成功した事例もあります。契約内容を定期的に見直し、サービスと価格のバランスを評価します。


電子マニフェストへの移行も、長期的なコスト削減につながります。紙マニフェストの購入費、郵送費、保管スペースが不要になり、事務作業の時間も大幅に短縮されます。初期投資を回収できる見込みがあれば、積極的に導入を検討する価値があります。


廃棄物の減量化も、根本的なコスト削減策です。必要最小限の材料使用、リユース可能な器具の選択、適切な在庫管理により、廃棄物の発生量自体を減らせます。


環境配慮と経費削減を同時に実現できます。


歯科医院特有の感染性廃棄物処理の注意点

歯科診療では、抜去歯の取り扱いに特別な注意が必要です。抜去歯は、血液や組織が付着しているため、形状の観点から感染性廃棄物に該当します。橙色のバイオハザードマークが付いた容器に収納し、他の固形廃棄物と同様に処理します。


アマルガムが充填された抜去歯は、感染性廃棄物であると同時に水銀含有廃棄物でもあります。この場合、アマルガム専門の回収業者に別途委託するか、処理業者にアマルガム対応が可能か事前に確認します。不適切な処理は環境汚染につながるため、慎重な対応が求められます。


歯科用レントゲンの定着液は、廃酸に分類される産業廃棄物ですが、感染性は通常ありません。ただし、血液が混入する可能性がある場合は、感染性廃棄物として扱います。定着液は銀を含むため、リサイクル業者に買い取ってもらえる場合もあります。処分前に確認すると、逆に収益になることがあります。


石膏模型の廃棄には、特有のルールがあります。血液や唾液が付着していない石膏は、非感染性の産業廃棄物として処理できます。ただし、印象採得直後の石膏や、血液が混入した石膏は、感染性廃棄物として扱う必要があります。判断に迷う場合は、安全側に倒して感染性として処理します。


歯科ユニットから排出される吸引廃液は、血液や唾液を含むため、液状の感染性廃棄物です。赤色のバイオハザードマークが付いた密閉容器に収納し、漏洩を防ぎます。吸引瓶の清掃時には、手袋とゴーグルを着用し、飛沫感染を防ぎます。


インプラント治療で使用した器具や、外科処置で発生した組織片は、特に厳重な管理が必要です。これらは形状の観点から明確に感染性廃棄物に該当するため、発生時点で即座に専用容器に収納します。放置時間が長いほど、スタッフの感染リスクが高まります。


即座の廃棄が原則です。




感染性廃棄物保管場所標識 600X600mm