骨密度測定かかと数値の見方と歯科治療への影響

骨密度測定でかかとの数値を見たことがありますか?実は、その値だけでは患者さんの骨の状態を正しく判断できないことがあります。歯科医療従事者として知っておくべき、骨密度測定の正確な理解と臨床応用について、詳しく解説します。あなたの歯科治療に重要な影響を与える情報を見逃していませんか?

骨密度測定かかと数値の歯科臨床での活用

かかと測定の骨密度が正常でも骨粗鬆症治療が必要な患者さんがいます。


この記事の3つのポイント
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かかと測定は参考値に過ぎない

超音波によるかかとの骨密度測定は誤差が大きく、骨粗鬆症の確定診断には使えません。歯科治療計画を立てる際は腰椎や大腿骨の測定値を確認する必要があります。

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骨粗鬆症治療薬と顎骨壊死のリスク

ビスホスホネート製剤を服用中の患者さんが抜歯を受けると、点滴薬で1~2%、内服薬で0.01~0.02%の確率で顎骨壊死が発症する可能性があります。

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歯科パノラマX線写真でのスクリーニング

歯科で撮影するパノラマX線写真から下顎骨の骨密度を評価し、骨粗鬆症のリスクがある患者さんを早期発見できます。 医科歯科連携による早期治療につながります。


骨密度測定でかかとを選ぶ理由と測定の仕組み


かかとの骨は海綿骨の割合が90%以上と非常に多いため、骨粗鬆症の影響を受けやすい部位です。超音波法(QUS法)では、かかとの骨(踵骨)に超音波を当てて、骨の中を超音波が透過する速度や量から骨密度を評価します。


この方法の最大の利点は、X線を使用しないため放射線被曝がなく、妊娠中の方でも安全に測定できることです。また、靴下を脱ぐだけで短時間で測定できるため、健康診断や骨粗鬆症検診で広く使われています。


測定時間は数分程度で済みます。


かかとの骨を測定する理由は、この部位が背骨や大腿骨の状態をある程度反映するためです。海綿骨は骨代謝が活発で、骨粗鬆症による変化が早期に現れやすい特徴があります。そのため、スクリーニング検査としての有用性が認められています。


ただし、歯科医療従事者として注意すべきは、この測定値が骨粗鬆症の確定診断には使えないという点です。かかとの測定はあくまで初期スクリーニングであり、精密検査が必要と判断された患者さんには、DEXA法による腰椎や大腿骨の測定を勧める必要があります。


JA岩手県厚生連の超音波骨密度検査装置の解説では、かかとの骨の特性と測定原理について詳しく説明されています。


骨密度測定の数値(YAM値・Tスコア)の正しい読み方

骨密度の測定結果は、主に「YAM値」と「Tスコア」の2つの指標で表されます。


YAM値は「Young Adult Mean」の略で、若年成人(20~44歳)の平均骨密度を100%としたときに、自分の骨密度が何%かを示す数値です。具体的には、80%以上が正常、70~80%が骨量減少(要注意)、70%未満が骨粗鬆症と判定されます。


つまり基準は明確です。


一方、Tスコアは若年成人平均値と比べて、自分の骨密度がどれくらい低いかを標準偏差(SD)で表した数値です。たとえばTスコア-2.5は、若年成人平均値から標準偏差の2.5倍低い値であることを意味します。WHOの国際基準では、Tスコア-1.0以上が正常、-1.0~-2.5が骨量減少、-2.5以下が骨粗鬆症とされています。


歯科医療従事者が患者さんから骨密度の数値を聞く際は、どちらの指標で答えているかを確認する必要があります。「80%」と言われた場合はYAM値、「-2.0」と言われた場合はTスコアを指していることがほとんどです。


さらに重要なのは、測定部位によって数値が異なることです。かかとで80%以上でも、腰椎や大腿骨では70%未満という例も珍しくありません。骨粗鬆症ガイドラインでは、腰椎と大腿骨の両方を測定し、低い方の値を採用することが原則とされています。


患者さんがインプラント治療や抜歯を予定している場合、かかとの測定値だけで判断せず、正確な診断のために整形外科などでの精密検査を勧めることが医療安全の観点から必須です。


クレアージュの骨密度検査の解説では、YAM値とTスコアの違いと具体的な診断基準が詳しく紹介されています。


骨密度測定でかかとの数値が示す限界と誤差

超音波によるかかとの骨密度測定は誤差が大きく、骨粗鬆症の確定診断には使えないことが複数の研究で示されています。


エックス線による手の骨量測定はやや感度が低く、超音波によるかかとの測定は誤差が大きい傾向があります。最も信頼性が高いのは、2種類のエックス線を使用するDEXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)による腰椎や大腿骨の測定です。


誤差の原因は複数あります。


超音波法は測定時の足の位置や角度、機器のキャリブレーション状態によって結果が変動しやすい特性があります。また、かかとの骨と腰椎・大腿骨の骨密度の相関は0.4~0.7程度で、必ずしも一致しません。閉経や加齢に伴う骨密度の減少速度も部位によって異なるため、かかとの測定値だけでは骨折リスクの高い腰椎や大腿骨の状態を正確に評価できないのです。


実際の臨床では、かかとの測定で正常範囲でも腰椎で骨粗鬆症と診断されるケースが存在します。歯科治療、特に抜歯やインプラント埋入などの侵襲的処置を計画する際は、患者さんが骨粗鬆症治療薬を服用しているかどうかを問診で確認することが何より重要です。


骨粗鬆症治療薬の中でも、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬を服用中の患者さんは、抜歯後に顎骨壊死を起こすリスクがあります。点滴薬で1~2%、内服薬で0.01~0.02%の頻度で顎骨壊死が発症すると推測されています。


そのリスク管理が不可欠です。


したがって、かかとの骨密度測定はあくまで参考値として扱い、歯科治療のリスク評価には整形外科などでの精密検査結果と服薬情報を総合的に判断する必要があります。


読売新聞ヨミドクターの骨密度検査の記事では、測定方法による精度の違いについて分かりやすく解説されています。


骨密度測定の数値と歯科治療(インプラント・抜歯)の関係

骨粗鬆症の患者さんが抜歯やインプラント治療を受ける際、骨密度の数値は治療計画に直接影響します。


骨密度が低い患者さんの場合、インプラントと骨の結合(オッセオインテグレーション)に必要な期間が通常より長くなることが知られています。健康な骨では3~6カ月程度でインプラントが骨と結合しますが、骨粗鬆症の患者さんではその2倍程度、つまり6カ月~1年程度の期間を待つことが推奨されます。


待機期間の延長が必要です。


さらに重要なのは、骨粗鬆症治療薬を服用している患者さんへの対応です。ビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬を服用中の患者さんが抜歯やインプラント埋入を受けると、顎骨壊死(MRONJ:薬剤関連顎骨壊死)のリスクがあります。


この顎骨壊死は、抜歯をきっかけに発症することが多く、点滴薬で1~2%、内服薬で0.01~0.02%の頻度で発症すると推測されています。発症すると顎の骨が露出し、痛み、腫れ、しびれなどの症状が長期間続き、治療が困難になります。


歯科医療従事者として取るべき対応は、まず問診で骨粗鬆症の有無と服薬状況を必ず確認することです。骨粗鬆症治療薬を服用中の患者さんには、抜歯やインプラント治療のリスクについて十分に説明し、主治医と連携して休薬の可否を検討します。


ただし、内服薬の場合は休薬による骨折リスクと顎骨壊死リスクを天秤にかける必要があるため、一律に休薬を勧めることはできません。日本口腔外科学会のガイドラインでは、内服期間が3年未満でリスク因子がない場合は休薬せずに処置可能としています。


インプラント治療を計画する場合、骨密度が不十分な患者さんには骨移植や骨再生療法を併用することで成功率を高めることができます。これらの治療を適切に組み合わせることで、骨粗鬆症の患者さんでも安全にインプラント治療を受けることが可能です。


亀田メディカルセンターの骨粗しょう症とインプラント治療の解説では、顎骨壊死のリスクと対策について詳しく説明されています。


歯科医療従事者ができる骨密度スクリーニングと医科連携

歯科医院で日常的に撮影するパノラマX線写真を活用して、骨粗鬆症のリスクがある患者さんをスクリーニングできることが近年注目されています。


パノラマX線写真では、下顎骨下縁の皮質骨の厚みや骨梁構造を観察することで、全身の骨密度の状態をある程度評価できます。研究によると、下顎骨の骨密度と腰椎の骨密度の間には有意な相関関係(r=0.74)があることが示されています。


相関係数は高い値です。


具体的には、下顎骨下縁の皮質骨が薄くなっている、または骨梁がまばらになっている患者さんは、骨粗鬆症のリスクが高いと判断できます。このような所見を認めた場合、歯科医師から患者さんに骨密度検査を勧めることで、骨粗鬆症の早期発見につながります。


実際に、骨粗鬆症と歯周病の間には強い相関関係があることが複数の研究で報告されています。骨粗鬆症を患う人の90%以上が重度の歯周病にかかるという報告もあります。全身の骨密度が低い患者さんは、歯を支える歯槽骨の密度も低い傾向にあり、歯周病によって歯槽骨がより早く失われる可能性があります。


歯周病進行のリスクが高まります。


歯科医療従事者として取り組むべき医科歯科連携の流れは以下の通りです。まず、パノラマX線写真で下顎骨の骨密度低下が疑われる患者さんを見つけます。次に、患者さんに骨粗鬆症のリスクについて説明し、整形外科や内科での骨密度検査(DEXA法)を勧めます。


近年では、AIを活用してパノラマX線写真から骨粗鬆症リスクをスコア化するシステムも登場しています。これらのシステムは大量の画像データをもとに学習を行い、皮質骨の厚みや骨梁構造のパターンを解析することで、骨粗鬆症の可能性をスコアとして提示します。


このスコアにより、歯科医師はより客観的に骨粗鬆症リスクを評価し、患者さんへの説明や医科への紹介をスムーズに行えることが期待できます。医科歯科連携により、歯科医院から骨粗鬆症患者を紹介し、医科では骨粗鬆症治療を行い、歯科では歯周病治療や安全な抜歯・インプラント治療を提供するという協力体制を構築することが、患者さんの全身の健康維持に大きく貢献します。


医科歯科連携についてのインタビュー記事では、パノラマX線写真を用いた骨粗鬆症スクリーニングの重要性が詳しく解説されています。


骨密度低下と歯周病・骨粗鬆症治療薬の副作用対策

骨密度低下は歯周病の進行を加速させる重要な全身的リスク因子です。


愛知学院大学短期大学部の研究では、「残っている歯の数」と「骨密度」の関係性が調査されました。その結果、正常な骨密度の人の90%以上は歯が20本以上残っていましたが、骨密度が低い人の70%は歯が20本未満しか残っていなかったことが分かりました。


20本という基準が重要です。


この関係の背景には、エストロゲンという女性ホルモンの減少が関与しています。閉経後の女性ではエストロゲンが減少し、骨粗鬆症のリスクが高まります。同時に、エストロゲンの減少は歯と歯ぐきの境目で炎症を引き起こしやすくなり、歯周病が悪化しやすくなります。


骨粗鬆症治療薬の服用は骨密度を改善しますが、一部の薬剤には歯科治療に影響を与える副作用があります。特にビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬を一定期間以上服用中に抜歯やインプラントなどの外科処置を行った場合、顎骨壊死や炎症がひどくなるといった副作用が報告されています。


副作用のリスク管理が必須です。


歯科医療従事者として患者さんの骨粗鬆症リスクを早期に察知し、適切な対応を取るために、以下の対策を日常診療に組み込むことが推奨されます。


📋 問診票の工夫
初診時の問診票に「骨粗鬆症の診断を受けていますか」「骨粗鬆症の薬を飲んでいますか」という項目を必ず含めます。特に50歳以上の女性患者さんには重点的に確認します。


🔍 パノラマX線写真の活用
定期的な歯科検診で撮影するパノラマX線写真から、下顎骨の骨密度低下の兆候を見逃さないようにチェックします。皮質骨の菲薄化や骨梁の粗鬆化が認められた場合は、医科への受診を勧めます。


💊 服薬情報の管理
骨粗鬆症治療薬を服用中の患者さんについては、薬剤名、服用開始時期、服用方法(内服・点滴)をカルテに記録し、抜歯やインプラント治療を行う際には必ず確認します。


🤝 医科との連携体制
近隣の整形外科や内科と連携体制を構築し、骨粗鬆症が疑われる患者さんをスムーズに紹介できる仕組みを作ります。逆に、医科から骨粗鬆症治療中の患者さんの歯科治療を依頼されることもあるため、双方向の連携が重要です。


骨粗鬆症治療薬を服用している患者さんの歯周病治療では、非外科的なアプローチを優先します。スケーリングルートプレーニングなどの保存的治療を徹底し、可能な限り抜歯を避ける努力が必要です。やむを得ず抜歯が必要な場合は、主治医と連携して休薬の可否を検討し、抜歯後の感染予防のために抗菌薬の投与や創部の一次閉鎖などの対策を講じます。


定期的な口腔衛生管理も重要です。


骨粗鬆症患者さんに対する歯周病予防の指導では、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動、禁煙などの生活習慣改善を併せて勧めることで、全身と口腔の両方の健康維持につながります。


うかい歯科の骨粗鬆症と歯周病の解説では、両疾患の関係性と臨床対応について詳しく説明されています。




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