hads評価の点数と歯科患者への判定基準

HADS評価の点数(0〜7正常/8〜10境界域/11〜21異常)の判定基準から、歯科・口腔外科での活用法まで徹底解説。歯科従事者が知っておくべき採点手順と注意点とは?

hads 評価の点数と判定基準|歯科従事者が押さえる採点の全体像

HADSのスコアが8点を超えても、それだけでは不安障害とは診断できません。


この記事でわかること
📋
HADSとは何か

14項目で不安・抑うつを同時にスクリーニングできる自己記入式評価ツール。歯科・口腔外科患者にも有効に機能します。

🔢
点数の判定基準

0〜7点が正常、8〜10点が境界域(疑い)、11〜21点が異常とされる3段階の基準を正確に理解します。

🦷
歯科での活用ポイント

口腔外科受診患者の約22%が不安スクリーニング陽性とされるデータを踏まえ、現場での運用方法を解説します。

歯科情報


HADSの基本構造とhads評価が歯科で注目される理由

HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、1983年に英国の精神科医ZigmondとSnaithによって開発された自己記入式の心理スクリーニング尺度です。


正式名称を「病院不安抑うつ尺度」といい、身体疾患を抱える患者の不安(Anxiety)と抑うつ(Depression)を、同時かつ短時間で数値化できるのが最大の特徴です。全14項目(不安7項目・抑うつ7項目)からなり、各項目を0〜3点の4段階で回答します。記入にかかる時間はわずか2〜6分と短く、診察の待ち時間中でも完了できる手軽さがあります。


他の心理検査(例:SDSやCMIなど)と異なり、食欲低下・睡眠障害などの身体症状に関する設問を意図的に排除している点が重要です。これにより、口腔内の疼痛や術後の体調不良がスコアに影響しにくく、純粋な心理的苦痛を正確に評価できます。これが歯科・口腔外科領域で特に有効とされる理由です。


日本語版(HADS-J)は、1998年に久我谷らによって翻訳・検証されており、日本人患者においても信頼性・妥当性が確認されています。


名古屋大学医学部口腔外科(上田実教授)が1998年に発表した臨床研究では、口腔外科外来を受診した300例をHADSで評価したところ、不安障害への配慮が必要と考えられる症例が22%、抑うつ傾向を認める症例が16%に上ることが明らかになりました。これは、歯科受診患者の5人に1人以上が何らかの心理的スクリーニングを必要とすることを示しています。


つまり、HADSは精神科だけのツールではありません。歯科・口腔外科の現場においても、患者の心理状態を見落とさないための重要な評価手段となっています。


hads評価の点数の採点方法と逆転項目の注意点

HADSを正確に運用するうえで、採点手順と逆転項目の存在を正しく理解することが前提になります。


採点は基本的に単純な合算です。不安(HADS-A)7項目と抑うつ(HADS-D)7項目を、それぞれ0〜3点で採点したうえで合計します。各サブスケールの最大点は21点となります。


ただし、ここに1つ落とし穴があります。HADS には逆転項目が含まれており、選択肢の点数が通常とは逆の方向に割り当てられている質問が混在しています。例えば「以前楽しんでいたことを今でも楽しめますか?」という抑うつ関連の設問では、「以前と全く同じ位楽しめる」が0点、「全く楽しめない」が3点となります。一方で、一見すると「肯定的に答えるほど点数が高くなる」構造が維持されているように感じる設問もあります。用紙に付属の換算表を必ず確認し、採点の誤りを防ぐことが重要です。


採点の流れをまとめると以下のようになります。
























ステップ 内容
① 実施 患者に「直近1週間」の状態を基準に全14項目へ回答してもらう
② 逆転確認 用紙の換算表に沿って逆転項目の点数を変換する
③ 集計 HADS-A(不安)7項目、HADS-D(抑うつ)7項目をそれぞれ合計(最大21点)
④ 判定 下記の3段階基準に照らして心理的苦痛の程度を評価する


採点は誰でも行える点が強みです。特別な心理的知識や資格は必要ありません。歯科衛生士や受付スタッフが患者に渡し、待合室で記入してもらうだけでスクリーニングが完了する手軽さは、忙しい歯科外来において大きなメリットになります。


欠測(未回答)が生じた場合は、原則として全14項目の完答が必要です。途中で回答が止まっている場合は、患者の状況(疲労・理解困難・疼痛など)を確認したうえで再実施を推奨します。


hads評価の点数に基づく3段階の判定基準と境界域の扱い方

HADSの判定は、不安(HADS-A)と抑うつ(HADS-D)のそれぞれについて、以下の3段階のカットオフ値で評価します。
























スコア範囲 判定 推奨対応
0〜7点 正常範囲(心理的苦痛なし) 経過観察・定期再評価
8〜10点 境界域・疑いあり 再評価推奨・臨床面接を検討
11点以上 異常・明確な症状あり 精神科・心療内科への照会を検討


この3段階基準は、原著論文(Zigmond & Snaith, 1983)およびBjellandら(2002)の国際的な体系的レビューでも支持されています。


特に歯科現場で注意したいのが「境界域(8〜10点)」の取り扱いです。境界域を「様子見」で終わらせると、後に重篤な心理的問題が顕在化するリスクがあります。この段階では、再評価の日程を先に決めてしまうことと、「最も困っていることは何か」を1つだけ言語化してもらうことが有効です。面接での傾聴と組み合わせることで、スクリーニング以上の情報が得られます。


また、現場でよくある誤解として「11点以上=不安障害の確定診断」と受け取ってしまうケースがあります。これが冒頭の驚きの一文につながる重要なポイントです。HADSはあくまでもスクリーニングツールです。原著者のZigmondらの研究でも、HADS-CasesでC群(11点以上)であった患者の90%以上が不安・抑うつ障害と診断されたとされていますが、それは精神科医による面接評価との組み合わせで確認されたものです。HADS単体での診断確定は本来の使用法から逸脱します。高得点が出た場合は「次に何をするか」を明確にセットで記録することが大切です。


境界域の再評価は、1〜2週間から1か月を目安に、同じ条件(時間帯・体位・環境)で実施します。これが条件です。


HADS(病院不安抑うつ尺度)の採点と臨床活用(THERABBY)|カットオフ値の3段階基準と具体的な運用フローを詳解


歯科・口腔外科でのhads点数の活用と疾患別の注意点

HADSを歯科・口腔外科領域で活用する際には、疾患ごとに心理的苦痛の傾向が異なることを念頭に置く必要があります。


先述の名古屋大学の研究では、疾患群別の分析で特に注目すべき結果が得られています。
バーニングマウス症候群(BMS)患者群では、HADS-Anxiety(不安)・HADS-Depression(抑うつ)のいずれにおいても、全症例平均と比較して有意に高頻度で不安・抑うつ傾向が認められました。また、顎関節症(TMJ)群においても不安・抑うつ傾向が高い結果が示されています。これは意外に思えるかもしれませんが、BMSや顎関節症は症状の原因が明確でないことが多く、慢性的な疼痛や不確実性が心理的苦痛を増幅させやすいためと考えられています。


一方で、合併疾患(高血圧・糖尿病・循環器系疾患など)を持つ患者群においても、合併症なし群と比較してHADSの不安・抑うつスコアが有意に高いことが示されています。有病者歯科治療を担当する場面では、身体管理だけでなく心理面にも目を向けることが求められます。


さらに、慢性疼痛領域の研究では「不安やうつが慢性疼痛の治療に悪影響を与える」という報告が複数あります。東京歯科大学の研究でも、口腔顔面部領域の疼痛患者において不安・抑うつが治療経過に影響する可能性が示されています。これは実践的な意味で重要です。


つまり、HADSで高得点を示す患者を見落として通常通りの歯科治療を進めると、痛みへの過敏反応や治療への拒否・キャンセルが増加するリスクがあります。スクリーニング結果を治療計画の参考情報として活用することで、患者ごとのアプローチを最適化できます。歯科の現場でも、HADSは「患者理解のための入口」として機能するのです。


東京歯科大学|口腔顔面部の疼痛患者における不安・抑うつとHADSの評価に関する研究


hads評価を歯科外来で運用する際の現場的な工夫と独自視点

HADSは構造がシンプルな分、現場での運用設計が結果の質を大きく左右します。この点は他の解説記事ではほとんど触れられていない独自の視点です。


まず、実施タイミングについて考えます。HADSは「直近1週間の状態」を評価対象とするため、強い疼痛がある日・術直後・麻酔が効いている直後などはスコアが一時的に高くなる可能性があります。疼痛のピーク時を避け、患者が比較的落ち着いている来院初期の待合室時間や、主訴の確認後・治療計画の説明前など、安定した場面で実施するのが理想的です。


再評価の重要性も見落とせません。口腔外科手術を控えた患者では、手術前日と術後10日目という2時点での測定が変化の追跡に有効とされています(新潟大学歯科口腔外科の研究より)。これにより、術前不安の程度と術後の心理的回復の経過を把握でき、退院指導や次回受診時のコミュニケーションに活かすことができます。


実施・記録の際に役立つ具体的な記録項目をまとめます。



  • 📅 実施日時・評価条件(時間帯・場所・体位)

  • 📝 記入方法(自記入・口頭代読の別)

  • ⏱ 所要時間と途中中断の有無

  • 🔢 HADS-Aスコア・HADS-Dスコア・次回再評価の予定日

  • 💬 面接で得たキーワード(「痛みへの恐怖」「治療後の生活不安」など)


記録は点数だけで終わらせないことが原則です。スコアに加えて「患者が口にした困りごとのキーワード」を1行添えるだけで、次回の担当者との引き継ぎがスムーズになり、チームとしての対応の質が上がります。


高得点が出た場合の連携先としては、心療内科・精神科への照会が基本ですが、院内に専門スタッフがいない地方の歯科医院では、まずかかりつけ医への情報共有という選択肢も有効です。患者本人が精神科に抵抗感を示す場合は、「不安が強いと痛みを感じやすくなることがある」という情報提供から始めると受け入れやすくなります。


新潟大学歯科口腔外科|口腔外科手術患者の周術期心理状態とHADSによる評価の推移


PHQ-9・SDSとのhads点数の違いと歯科での使い分け

歯科現場では「他の心理評価ツールとどう使い分けるか」という疑問が生まれがちです。HADS・PHQ-9・SDSはいずれも不安や抑うつを評価しますが、用途と特性が異なります。


まず前提として、これらは目的の異なるツールです。PHQ-9は「うつ病の重症度評価」に特化した9項目の質問紙で、食欲・睡眠・疲労感などの身体症状を含む設問が多く含まれます。一方、SDSは「抑うつの自己評価」を目的とした20項目の尺度で、同じく身体的な症状項目を含んでいます。


身体疾患を持つ患者においてPHQ-9やSDSを使用すると、歯科治療由来の疼痛・疲労感・食欲不振などが心理的苦痛として誤カウントされるリスクがあります。これが歯科・口腔外科でHADSが推奨される本質的な理由です。
































ツール 評価対象 項目数 身体症状の混入リスク 歯科適性
HADS 不安+抑うつ 14項目 低い(意図的に除外) ⭐⭐⭐ 高い
PHQ-9 抑うつ重症度 9項目 やや高い ⭐⭐ 中程度
SDS 抑うつ自己評価 20項目 高い ⭐ 低い


HADSは不安と抑うつを同時に評価できる点でも優れています。例えばBMS患者や顎関節症患者では、不安と抑うつが混在していることが多く、どちらが前景に立っているかによってアプローチが変わります。HADS-AとHADS-Dを分けて評価することで、「この患者は不安が強い(Aが高い)が抑うつは正常範囲内」という判断が可能になり、対応の優先順位が明確になります。


PHQ-9はHADSでスクリーニング陽性となった患者を精神科・心療内科に紹介する際の、より詳細な重症度評価として使う位置づけが適切です。つまり、HADSはトリアージのための「入口」、PHQ-9は「詳細評価の道具」という役割分担で使い分けると運用しやすいです。


HADS評価法の採点と判定基準(リハビリくん)|PHQ-9・GAD-7との比較と現場での詰まりどころ解説