フォーミング加工だけで医療機器部品を作ると、強度不足で製品回収になるケースがあります。
フォーミング加工とプレス加工は、どちらも金属板材を変形させる塑性加工の一種ですが、その目的と変形の方向性に根本的な違いがあります。プレス加工は金型を使って材料に圧力をかけ、打ち抜き(ブランキング)・曲げ・絞りといった複数の加工を総称する広い概念です。一方、フォーミング加工はプレス加工の中の一分野として位置づけられることが多く、特に「素材を切断せずに形状を変える」成形加工を指します。
つまり、プレス加工はフォーミング加工を包含する上位概念ということですね。
具体的に整理すると、プレス加工には次の3系統があります。①せん断加工(打ち抜き・切断)、②曲げ加工(ベンディング)、③絞り加工(ディープドローイング)です。フォーミング加工はこのうち「材料を壊さずに形を作る」②と③に相当する工程を中心に指す場合が多く、医療機器業界では「成形加工」と表記されることもあります。
医療機器の部品設計において、この区別を曖昧にしたまま外注先に発注すると、見積もり段階から認識のズレが生まれ、後工程での手直しコストが発生します。これは避けたい事態です。
| 項目 | プレス加工(広義) | フォーミング加工(成形) |
|---|---|---|
| 定義 | 金型+プレス機による塑性加工全般 | 材料を切断せず形状を変える成形加工 |
| 主な工程 | 打ち抜き・曲げ・絞り・鍛造 | 曲げ・絞り・バーリング・エンボスなど |
| 材料歩留まり | せん断工程があるため低下しやすい | 切断なしのため比較的高い |
| 医療機器での主用途 | ハウジング・ブラケット・端子類 | カテーテルチップ・ステント展開部・縫合針 |
医療機器の製造現場では、プレス加工全般よりもフォーミング加工(成形)が特定の部品カテゴリで優先される背景があります。その最大の理由は「材料の連続性を保てること」です。体内に留置するステントや縫合針のような部品では、加工後の表面に微細な切断面やバリが残ると、生体への傷害リスクに直結します。フォーミング加工ではせん断を伴わないため、表面粗さRa(算術平均粗さ)を0.8μm以下に抑えた仕上がりが得やすく、これはJIS B 0601で規定される医療機器向け表面品質の目安ともおおむね一致します。
精度の話です。
現代のCNCフォーミング機では、曲げ角度の繰り返し精度として±0.1°以内の管理が可能で、これはA4用紙の厚さ(約0.1mm)にも満たない微差の積み重ねでも全体形状に影響が出るカテーテル先端部の成形に直接関わります。プレス加工の打ち抜き工程では、クリアランス(金型とパンチの隙間)が板厚の5〜15%程度に設定されますが、フォーミング工程ではこのクリアランス管理がさらに厳密になります。
一方で、フォーミング加工にも弱点があります。複雑な3次元形状の一体成形には限界があり、曲げ回数が増えるほど加工硬化(ワークハードニング)が進んで割れリスクが上がります。チタン合金(Grade2やGrade5/Ti-6Al-4V)は加工硬化が顕著で、フォーミング工程中に焼きなまし(アニール処理)を挟むことが必要になる場合があります。この工程追加がコストに跳ね返る点は、設計段階で考慮が必要です。
医療機器に使われる代表的な金属材料は、SUS316L(低炭素ステンレス)、チタン合金Ti-6Al-4V ELI、コバルトクロム合金(Co-Cr-Mo)などです。これらはすべて「難削材」に分類されており、一般産業向け鉄鋼材料と比べてプレス・フォーミング加工の難易度が大幅に上がります。
難削材が基本です。
SUS316Lは加工硬化係数が高く、深絞り(ディープドローイング)加工では、絞り比(ブランク径÷パンチ径)が2.0を超えると割れが生じやすくなります。これは直径20mmのパンチに対してブランク直径を40mm以上にしないという実務上の上限に相当します。
チタン合金は弾性回復(スプリングバック)が大きく、曲げ加工後の戻り量が鉄系材料の1.5〜2倍に達することがあります。つまり、狙いの曲げ角度を得るには過曲げ補正を設計段階で折り込む必要があります。この補正量の設定ミスは、組立工程での寸法不良につながり、最悪の場合ISO 13485上の不適合品として記録・追跡管理が必要になります。
コバルトクロム合金は硬度が高く(Vickers硬度HV300〜450程度)、プレス金型の摩耗が著しく早いため、量産ロットでの金型交換サイクルを見込んだコスト計画が欠かせません。医療機器の量産では、ロット間の寸法バラつきが品質記録として残るため、金型摩耗による寸法変化の管理は監査対応の観点からも重要です。
プレス加工の基礎知識(材料・加工種別の解説) - 実装技術WEBマガジン
医療機器製造においてフォーミング加工やプレス加工のプロセスを管理するとき、ISO 13485:2016(日本ではQMS省令として国内法化)の「特殊工程」要件が関わってきます。この規格では、加工結果を最終検査のみでは十分に検証できないプロセスを「特殊工程(バリデーション要求工程)」として識別し、プロセスのバリデーションを義務付けています。
これは重要な規制ポイントです。
フォーミング加工がこの「特殊工程」に該当するかどうかは、加工後の部品特性(寸法・表面粗さ・材料特性)を最終製品検査だけで全数確認できるかどうかで判断されます。たとえば、ステントのような細い管状部品の内部応力や結晶構造の変化は、外観検査や寸法測定だけでは検出できないため、特殊工程として管理するのが適切とされます。
バリデーションが必要と判断された工程では、IQ(設置時適格性確認)・OQ(稼働時適格性確認)・PQ(性能適格性確認)の3段階のプロセスバリデーションが求められます。これはISO 13485 7.5.6条項の要求事項であり、製造委託先の加工業者がこのバリデーション文書を整備しているかどうかが、医療機器メーカーとして行うサプライヤー監査の重要チェック項目になります。
この観点で外注先のフォーミング加工業者を選定する際は、単に加工能力だけでなく、バリデーション文書・変更管理記録・トレーサビリティ記録の整備状況を確認することが、後の承認審査をスムーズにする条件です。
医療機器QMS省令の概要とバリデーション要求事項 - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
医療機器の調達担当者がフォーミング加工の見積もりを取る際、表面的な加工単価だけを比較しがちです。しかし実際のコスト構造は、一般産業部品とは異なる医療機器固有の要素を含んでいます。これを見落とすと、製造コスト計算が大幅にずれる場合があります。
見落としがちです。
まず「初期金型費」の問題です。フォーミング加工・プレス加工では金型費が発生しますが、医療グレード材料対応の金型は通常の金型より割増しになります。たとえば、SUS316L対応のプレス打ち抜き金型は1セットあたり50万〜150万円程度が相場とされており、少量多品種が多い医療機器部品では量産数量が少ないほど部品1個あたりの償却コストが膨らみます。
次に「バリ取り・仕上げ工程」のコストです。プレス加工後のせん断面には必ずバリが発生し、医療機器では生体接触部の表面品質基準(バリ高さ0.05mm以下など)を満たすために電解研磨やバレル研磨が追加されます。この後処理工程が加工費の20〜40%を占めるケースも珍しくありません。
さらに「ロット保証・検査コスト」があります。医療機器では全数寸法検査または統計的工程管理(SPC)によるサンプリング検査が求められることが多く、3次元測定機(CMM)による検査費が別途発生します。一般機械部品では外観検査中心のことが多いですが、医療部品では測定記録が監査資料として数年間保管されるため、管理工数が増えます。
これらを含めた「真のコスト」を把握するには、加工業者に「医療機器対応実績と対応規格」を明示した上で見積依頼することが有効です。医療機器向け部品加工の専門業者であれば、ISO 13485対応の管理費込みの見積もりを出してくれるため、後から追加費用が発生するリスクを大幅に減らせます。
| コスト項目 | 一般産業部品 | 医療機器部品(フォーミング/プレス) |
|---|---|---|
| 初期金型費 | 10万〜50万円程度 | 50万〜150万円程度(難削材対応) |
| 後処理(仕上げ) | 加工費の5〜10% | 加工費の20〜40%(電解研磨等) |
| 検査・記録費 | 外観検査中心・記録保管短期 | CMM測定・SPC・記録10年保管等 |
| バリデーション対応費 | 原則不要 | IQ/OQ/PQ文書整備が必要 |
医療機器の製造・品質管理に関する法令・通知一覧 - 厚生労働省

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