使い捨て排唾管を再利用すると院内感染リスクが8倍に高まります
唾液吸引管には大きく分けて使い捨てタイプと持続吸引タイプがあり、患者の状態や治療内容に応じて適切に選択する必要があります。使い捨てタイプは一般的な歯科治療で広く使用され、ディスポーザブル排唾管とも呼ばれています。一方、持続吸引タイプは長時間の吸引が必要な場合や、自力での嚥下が困難な患者に使用されます。
持続吸引タイプの代表的な製品であるメラ唾液持続吸引チューブには、SPタイプ(細)とMPタイプ(太)の2種類があります。SPタイプは小児や口腔が小さな方に適しており、MPタイプは成人や唾液の分泌量が多い方向けです。
つまり患者の口腔サイズで判断します。
さらに、芯線の有無によっても使い分けが可能で、芯線有タイプはチューブ形状を保持できるため口腔内に留置しやすく、芯線無タイプは吸引効率が高く唾液の分泌量が多い患者に適しています。
使い捨てタイプの排唾管は、100本あたり約1,200円から3,000円程度で入手できます。
先端形状も重要な選択基準となります。一般的な排唾管は先端が渦巻き状に加工されているものが多く、舌上で吸引効果が得られやすい設計になっています。また薄型設計のため、舌で容易に動かして吸引できる利点があります。治療内容によっては、吸引口が複数開いているタイプを選ぶことで、唾液が詰まりにくくなり、口腔粘膜への吸着も防げます。
材質としては、シリコン製やプラスチック製が一般的で、それぞれに特性があります。シリコン製は柔軟性に優れ、患者への不快感を軽減できますが、プラスチック製は形状保持力が高く、術野の確保がしやすいメリットがあります。どちらも医療機器として認証されたものを使用することが基本です。
歯科診療では、治療部位や術式に合わせて排唾管を選択することで、治療効率が大きく向上します。例えば印象採得時には、舌と頬を同時に圧排しながら吸引できるタイプが有効で、より正確な光学印象の取得が可能になります。吸引口を10ヵ所開けた製品では、唾液と水を強力に吸引できるため、面倒な下顎の形成時にも効率的に作業できます。
唾液吸引管の再利用は、院内感染の大きなリスク要因となります。使い捨てが基本とされる理由は、吸引チューブの形状が細い筒状になっており、洗浄や消毒が十分に行えないためです。通水しても痰や細菌は完全には除去できず、使い回しを行うと菌が増殖してしまう可能性が高くなります。
特に口腔内には1ミリリットル中に1億から10億個もの細菌が存在しているため、唾液や血液で汚染された吸引管を再利用することは極めて危険です。どういうことでしょうか?気道分泌物によって汚染されたチューブを使うと、下気道に直接微生物を押し込むことになってしまい、薬剤耐性菌が肺炎の原因菌となる可能性もあるのです。
吸引チューブを使い捨てではなく再利用する場合でも、厳格な管理が必要となります。消毒剤入りの保存容器につけてカテーテルの清潔を保つ方法がありますが、これも完全な安全性を保証するものではありません。使用済みカテーテルを中性洗剤などでキレイに洗浄し、アルコール綿で拭き取り、新鮮な水道水でリンスする手順が必須です。
それでも感染リスクは残ります。
歯科用バキュームや吸引装置は、唾液や粉塵の除去だけでなく、院内感染対策という観点でも極めて重要な役割を担っています。特にエアロゾルを発生させる超音波スケーラーやタービンを使用する際には、適切な吸引管の使用と口腔外バキュームの併用が推奨されます。
使用前には、消毒用エタノールで必ず清拭・消毒することが求められます。また使用前に破損がないか確認し、患者ごとに交換することが基本原則です。バキュームチップを外す時はその前に吸引装置に十分水を吸引し、吸引管内に血液や唾液が逆流しないよう注意が必要です。
感染対策として、吸引器本体の管理も重要です。吸引器は使用ごとに手で触れる部位・チューブ収納部分などを洗浄剤+消毒薬含有のワイプで拭くか、消毒用アルコールで拭き消毒を行いましょう。吸引器の集痰ビンの中に消毒薬を入れておく必要はありませんが、1日1回交換することが推奨されています。
日本環境感染学会による歯科診療における感染対策ガイドラインでは、患者ごとの器具交換と適切な消毒方法が詳しく解説されています。
吸引圧の適切な設定は、患者の安全と治療効率の両立に不可欠です。適正な吸引圧について完全な合意は得られていませんが、一般的に成人では20kPa(150mmHg前後、最大200mmHg)が安全域とされています。小児は80~120mmHg、新生児は60~80mmHgが推奨値です。
25kPa(20cmHg)を超えないようにすることが基本です。吸引圧が強すぎると、口腔粘膜を傷つけ出血するリスクが高まります。特に粘稠性が高い唾液では吸引チューブが詰まることがあり、それを防ぐために吸引圧を強くすると、口腔粘膜にチューブが吸着して発赤や出血を引き起こす可能性があるのです。
治療内容に応じて吸引圧を調整することも重要なポイントとなります。切削時で水を多く使う場合は吸引力を強くし、水を使わずに唾液だけを吸う場合は弱めに調節することで、患者への負担を軽減できます。吸引圧を確認する方法には、吸引管を親指でふさいで圧がかかるかをチェックする方法や、吸引チューブの根元を折る方法があります。
吸引圧がうまくかからない場合の原因としては、接続にゆるみがないか、吸引ボトルのふたがしっかり閉まっているか、吸引ボトル内の内袋がきちんとはまっているか、アダプターの接続がゆるくないかなどを確認する必要があります。
これらは基本的なチェック項目です。
低圧持続吸引を行う場合、ポンプは水平に、チューブをくわえた口より低い位置に置くことが重要です。吸引器の位置が不適切だと、重力により吸引効率が低下してしまいます。また、ポンプ内に水が入ると故障するので、ボトル内の水位に常に注意を払う必要があります。
吸引時間も安全管理の重要な要素で、1回の吸引時間は10秒から15秒以内を目安に行いましょう。吸引時間が長くなると合併症を起こすリスクも高くなるといわれています。このとき、吸引に合わせて咳嗽を促すと、痰が咽頭・口腔内に喀出されて除去しやすくなる効果があります。
吸引中は必ずモニター等でSpO2の確認を行うことが求められます。自発呼吸がある場合は、患者の吸気に合わせて吸引を行うことで、低酸素状態を防げます。人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避するため、気管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行い、カフ圧は2~2.9kPaに保つようにすることも忘れてはいけません。
唾液吸引管の詰まりは治療の中断を招き、患者の不快感にもつながる重大な問題です。詰まりの主な原因として、粘稠性が高い唾液、唾液に混じった食物残渣や血液の凝固物、唇や口腔内の皮・歯石・鼻汁や痰の固まりなどが挙げられます。
目詰まりしやすいのはこれが理由です。
詰まりを防ぐためには、まず適切なチューブの太さを選択することが重要です。チューブが太すぎると粘膜を傷つけてしまい、細すぎると吸引物が詰まりやすくなります。患者の唾液の性状や分泌量に応じて、SPタイプとMPタイプを使い分けることで、詰まりのリスクを大きく低減できます。
吸引管内に詰まりがある場合は洗浄が必要ですが、日常的な予防策として定期的に水を吸引してチューブ内をきれいにすることが効果的です。使用中にも適宜水を通すことで、粘稠な唾液や血液が固まる前に洗い流せます。
これは簡単な習慣です。
患者の体でチューブを潰したり、チューブがベッドのフレームに挟まっていないかも確認ポイントとなります。体位変換などにより吸引管が閉塞したり、コネクタの接続が外れたりしないよう、テープ等で固定することが推奨されます。このような物理的な原因による詰まりは、意外と見落とされがちです。
効率的な留置位置として、舌下、舌上、頬と歯の間に留置すると効率よく唾液吸引できます。治療部位や術式によって最適な位置は異なりますが、基本的には術歯の近くで吸引し、お口の奥に水や唾液が溜まった場合は臼後三角で適宜吸引するのが原則です。
中央の咽頭周囲はできるだけ避けましょう。
排唾管の操作テクニックとして、緩く「へ」の字に曲げることで、逆手で持って粘膜を排除しながら吸引できるようになります。左手の人差し指で頬粘膜を引っ張り、バキュームを入れ込む方法を使うと、口唇の巻き込みも防ぐことができます。術者の手が止まらず水が溜まってしまった際は、「奥を吸います」とひと声かけ、術者に注意をうながすことも大切です。
吸引管の角度調整も詰まり防止に有効で、好きな角度にチューブを曲げて使用できるディスポーザブル排唾管では、患者の口腔内組織を吸引しないよう先端チップの形状にも工夫が施されています。二重管構造のタイプは、口腔粘膜に吸着しにくく傷つけにくいという特徴があり、吸引孔が複数あるので唾液が詰まりにくくなっています。
唾液吸引管の使用において、患者の不快感を最小限に抑える配慮が治療の成功を左右します。口の奥を吸引する際は、口蓋垂や咽頭を刺激すると嘔吐反射が起き、嗚咽が出て、ひどい場合は嘔吐につながるため特に注意が必要です。食後すぐの吸引は避け、嘔吐を引き起こしやすい部位を避けながら吸引することが重要となります。
患者への声かけとコミュニケーションは、不安軽減の基本です。吸引の目的・方法・時間を説明し、了解を得ることで、患者は安心して治療を受けられます。治療中でも少量の唾液は飲み込んで大丈夫ですが、治療内容によっては飲み込まないほうが良い場合もあるので、気になる場合は手を挙げて確認してもらうよう事前に伝えておきましょう。
唾液がたまって苦しいと感じたら、遠慮せずに手を挙げて伝えてもらうことが重要です。このような患者とのサイン方法を確立しておくことで、治療中の意思疎通がスムーズになります。患者が手を挙げたら直ちに対応し、必要に応じて吸引位置を調整することで信頼関係が構築されます。
バイトブロックの使用も考慮すべき対策の一つで、患者が保護管を歯で穴を開けたり、咬み切ることがあるため、監視を怠らないよう十分注意する必要があります。特に長時間の治療では、患者の疲労により無意識にチューブを噛んでしまうケースが増えるため、定期的な確認が欠かせません。
吸引管を挿入する際の方向にも注意が必要で、適正な方向に挿入することと、吸引チューブを入れる長さを適正にすることが基本原則です。吸引チューブに印をつける、目盛が付いているものを使用するなどの工夫により、適切な挿入深度を維持できます。無理やり押し込むと粘膜を傷つけ出血する恐れがあるため、角度の調整や左右の鼻の穴を変えるなどの対応をしましょう。
清潔操作の維持も重要な注意点で、カテーテル先端には触らず、また先端を周囲のものにぶつけて不潔にならないよう十分注意することが求められます。吸引カテーテルを不潔にならないように取り出す際には、衛生的に器具の取扱いができているか常に意識する必要があります。
治療効率を上げる独自の工夫として、複数種類の吸引管を用意しておき、患者の状態や治療内容の変化に応じて即座に切り替えられる体制を整えることが推奨されます。例えば、印象採得時には吸引力の強いタイプに切り替え、通常の診察時には患者への負担が少ない低圧タイプを使用するといった柔軟な対応が、患者満足度の向上につながります。
また、唾液の性状が治療中に変化することも考慮に入れるべきです。緊張により唾液が粘稠になる患者には、リラックスできる環境づくりや声かけを行うことで、唾液の性状が改善し吸引管の詰まりも減少します。水分補給を促すことも効果的な対策となり得ます。
泉工医科工業のメラ唾液持続吸引チューブよくある質問では、実際の使用時のトラブルシューティングが詳しく紹介されています。
唾液吸引管の適切な選択と使用は、歯科治療の質と安全性を大きく左右する重要な要素です。患者の状態に応じた種類の選択、感染対策の徹底、適正な吸引圧設定、詰まり防止対策、そして患者への配慮を総合的に実践することで、より快適で安全な歯科治療の提供が可能になります。

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