バルクフィルレジン臼歯部充填に適した一括充填材の選び方

バルクフィルレジンは4mm深さまで一括充填できる画期的な材料ですが、従来型との違いや適応症を正しく理解していますか?治療時間短縮と重合収縮応力への影響について詳しく解説します。

バルクフィルレジン臼歯部修復の基本

4mm深さでも積層不要というのは本当ですが、光照射20秒以上は必須です。


この記事の3つのポイント
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一括充填で時間短縮

従来2mm積層が必須だった充填作業が4mm深さまで一括で可能になり、治療時間を約40%削減できる

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重合収縮応力の特性

バルクフィルは従来型より重合収縮率が小さく、収縮応力の発生が緩やかで窩壁適合性に優れている

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製品選択と適応症

臼歯部咬合面を含む修復に使用可能だが、大面積欠損や強い咬合力部位では注意が必要


バルクフィルレジンの定義と従来型との違い

バルクフィルレジンとは、歯科において大きな欠損部位の修復に用いられるコンポジットレジンの一種で、「一括充填」を意味する材料です。従来のコンポジットレジンでは2mm程度ごとの積層充填が推奨されてきましたが、バルクフィルレジンは4〜5mm深さまで一度に充填して光重合できる特性を持っています。


この革新的な特性は、透光性の調整と光重合開始剤の工夫によって実現されました。具体的には、異なる粒径のフィラーを高密度に充填することで、深部まで光が届きやすくなり、同時に低い重合収縮率を達成しています。つまり、材料設計の根本から見直されているということですね。


従来型レジンとの最大の違いは治療時間です。例えば、深さ4mmの窩洞を修復する場合、従来型では2mm積層を2回繰り返す必要があり、それぞれ光照射と形態修正が必要でした。しかしバルクフィルレジンなら1回の充填と光照射で完了します。これは1症例あたり約5〜10分の時間短縮につながり、1日10症例なら50〜100分の効率化になります。


機械的強度についても研究データがあります。日本歯科保存学雑誌の報告によれば、バルクフィルレジンの曲げ強さは123.3〜127.5MPaで、従来型コンポジットレジンと同等以上の値を示しました。耐摩耗性も問題なく、臼歯部咬合面への使用が可能です。


重合収縮率は2.12〜2.23vol%で、ユニバーサルコンポジットレジンより大きいものの、収縮応力の発生が緩やかという特徴があります。気泡混入のリスクは減少しますが、充填時の適切なテクニックは依然として重要です。


バルクフィルコンポジットレジンの機械的諸性質に関する研究データ(J-Stage)


バルクフィルレジンの硬化深度と光照射条件

バルクフィルレジンの実用硬化深度は製品により異なりますが、多くの製品で4mm(光照射20秒)を実現しています。


これは従来型レジンの約2倍の硬化深度です。


ただし、この数値は1200mW/cm²以上のLED照射器を使用した場合の条件になります。


光照射時間は製品や色調によって調整が必要です。例えば、ジーシーの「グレースフィル バルクフロー」はUniversalシェードで20秒照射、Dentinシェードでは40秒照射が推奨されています。Dentinシェードは象牙質類似の色調で透光性が低いため、より長い照射時間が必要なんですね。


松風の「ビューティフィル バルクフロー」も硬化深度4mmを謳っていますが、LED照射器で20秒、ハロゲン照射器では40秒の照射が必要です。照射器の種類と出力によって必要時間が変わるため、使用する照射器の仕様を確認することが重要です。


深い窩洞への対応では注意点があります。窩洞深度が4mmを超える場合は、約4mmごとに分けて充填・光重合を繰り返す必要があります。一度に厚く充填しすぎると、深部の重合不良や気泡混入のリスクが高まります。


光照射のムラも避けるべき問題です。窩洞の形態が複雑な場合や、隣在歯に遮られる部分では、照射角度を変えながら複数方向から光を当てる工夫が求められます。照射時間を守ることはもちろん、光が均等に届くよう配慮する必要があります。


硬化確認の方法として、充填後にエキスプローラーで表面硬度を確認したり、わずかに圧接して弾性を感じるかチェックしたりします。不十分な場合は追加照射を行いますが、過度の照射は材料の劣化を招く可能性もあるため、適切な判断が求められます。


バルクフィルレジンの重合収縮応力と窩壁適合性

重合収縮応力はコンポジットレジン修復における最大の課題の一つですが、バルクフィルレジンはこの問題に対して興味深い特性を持っています。日本歯科保存学雑誌の研究によれば、バルクフィルレジンの収縮応力は製品間で差があるものの、発生が緩やかで窩洞への影響が少ないことが示されました。


具体的な数値を見ると、SDR(Dentsply Sirona社)の弾性率とビューティフィル バルク ハード(松風)の重合収縮率は有意に小さく、収縮応力の発生も抑制されていました。これは積層充填で各層の収縮ストレスが累積するリスクを避けられるためです。


窩壁封鎖性についても優れた結果が報告されています。ビューティフィル バルクシリーズは、異なる粒径のフィラーを高密度充填することで、優れた窩壁封鎖性を実現しました。これは二次う蝕のリスク低減につながる重要な特性です。


ただし、充填法の違いが収縮応力に影響を与えることも明らかになっています。日本接着歯学会の報告では、バルクフィルレジンでも充填法によって収縮応力が異なることが示されました。一括充填が可能だからといって、雑な充填は避けるべきということですね。


辺縁漏洩のリスクについて考えてみます。従来型レジンでは積層界面からの漏洩が問題になりましたが、バルクフィルでは界面数が減少するため、このリスクは低減します。しかし窩洞形成時のエナメル質処理や接着操作が不適切だと、辺縁部からの漏洩は依然として発生します。


収縮応力を最小限にする実践的なテクニックとして、窩洞底部から少量ずつ充填して窩壁に適合させる方法があります。一度に大量を充填するのではなく、窩底部を確実に封鎖してから全体を充填することで、より良好な適合が得られます。


バルクフィルコンポジットレジンの重合収縮応力に関する詳細研究(J-Stage)


バルクフィルレジン製品の種類と特徴比較

国内で入手できる主要なバルクフィルレジン製品には、それぞれ異なる特性があります。製品選択は臨床ニーズに応じて行う必要があるため、各製品の特徴を理解することが重要です。


ジーシーの「グレースフィル バルクフロー」は、フロータイプでありながら一括充填に対応した製品です。実用硬化深度4mm(光照射20秒)を実現し、高いチキソトロピー性によって窩洞底面を隙間なく充填できる流動性と咬頭形成を可能とする賦形性を併せ持っています。これは注入操作の容易さと形態修正のしやすさを両立しているということです。


松風の「ビューティフィル バルク」シリーズには、ペーストタイプの「バルク」とフローアブルタイプの「バルク フロー」があります。両製品とも硬化深度4mmを実現していますが、ペーストタイプは付形性に優れ、フロータイプは注入性と窩底部への適合性に優れています。使い分けとしては、咬合面形態の回復が必要な場合はペーストタイプ、窩底部のライニングや小窩洞にはフローアブルタイプが適しています。


サンメディカルの「バルクベース」は裏層材として特化した製品です。従来の裏層材では難しかった厚みを確保しつつ、低重合収縮を実現しています。専用のライナー材「バルクベースライナー」との組み合わせで歯質への接着性を高め、辺縁漏洩を防ぎます。


トクヤマデンタルの「オムニクロマ フロー バルク」は、構造色技術を採用した製品で、シェードレスでありながら周囲歯質に調和する特徴があります。硬化深さ3.5mm以上(800mW/cm²、20秒照射)で、色調選択の煩雑さを軽減できます。


Dentsply Sironaの「SDR Flow」は、世界的に広く使用されているバルクフィル製品です。特殊なポリマーモジュレーターにより低い重合収縮応力を実現し、流動性が高いため窩底部への適合性に優れています。ただし、咬合面への直接使用は推奨されず、上層に従来型レジンでキャッピングする必要があります。


製品選択の実践的なポイントとして、窩洞の大きさと部位を考慮します。小窩洞や窩底部のみの使用ならフロータイプ、咬合面全体の形態回復が必要ならペーストタイプを選択します。また、自院の照射器の出力と各製品の推奨照射条件の適合性も確認が必要です。


バルクフィルレジンの臨床的適応症と禁忌

バルクフィルレジンの適応症は、主に臼歯部のⅠ級窩洞およびⅡ級窩洞における修復です。添付文書には「臼歯部(咬合面を含む)における小さな窩洞の充填修復」と明記されている製品が多く、咬合面への使用が可能です。これは従来型フロアブルレジンとの大きな違いですね。


具体的な適応例として、以下のような症例が挙げられます。


- 臼歯部Ⅰ級窩洞(深さ4mm以内)の一括充填修復
- 臼歯部Ⅱ級窩洞のベースまたはライニング
- セラミックインレーやレジンインレーのライニング材として
- 中心結節破折後の歯髄保護と形態回復
- 小窩裂溝の予防充填


ただし、すべての症例に適応するわけではありません。大面積の歯質欠損、特に咬合面全体に及ぶ大きな虫歯では、バルクフィルレジンだけでは強度不足になる可能性があります。日本大学歯学部の研究では、強い咬合力がかかる部位では寿命が短くなる傾向が示されました。


禁忌症例としては、以下が挙げられます。


- メタクリル酸系モノマーに対する過敏症の既往歴がある患者
- 根管内への適用(ほとんどの製品で禁忌)
- 極めて深い窩洞で歯髄に近接している場合(適切な覆髄処置が優先)
- ブラキシズムなど異常習癖がある患者の咬合面修復


注意が必要な症例もあります。口腔清掃状態が悪い患者では、どんな材料を使用しても二次う蝕のリスクが高まります。この場合は材料選択より先に、患者教育と口腔衛生指導の徹底が必要です。


咬合状態の評価も重要です。対合歯が天然歯かセラミック冠か、咬合接触が点接触か面接触かによって、レジン修復物にかかる負荷が変わります。過度な咬合力が予想される場合は、レジン修復自体を避けて間接修復を選択することも検討すべきです。


長期予後の観点から見ると、バルクフィルレジンと従来型コンポジットレジンの間に有意差はないという報告があります。つまり、適切な症例選択と丁寧な処置を行えば、従来型と同等の予後が期待できるということですね。ただし上市から約10年という比較的新しい材料であるため、さらなる長期的な追跡データの蓄積が待たれます。


バルクフィルレジンと従来型レジンの長期予後比較に関する論文解説(WHITE CROSS)