汎用エンドミルでザグリ加工を代用すると、工具折損リスクが通常の3倍以上に跳ね上がります。
ザグリ加工(座ぐり加工)とは、ボルトや六角穴付きキャップボルトの頭部を材料表面に埋め込むために、あらかじめ穴の入り口を広げる切削加工です。 頭部が表面から飛び出さないため、他の部品との干渉を防いだり、製品の見た目を整えたりする目的で広く使われています。 sakusakuec(https://sakusakuec.com/shop/pg/1counterboring/)
ザグリの種類は大きく3つに分かれます。 sakusakuec(https://sakusakuec.com/shop/pg/1counterboring/)
- ザグリ(深ザグリ):六角穴付きボルトの頭部全体を沈める円筒形の穴。現場で「ザグリ」と言えばこれを指すことがほとんどです
- 皿ザグリ(皿穴加工):皿ねじの頭が面一になるよう、円錐形に掘り下げる加工
- 裏ザグリ:下穴を通じてワークの裏面(アクセスできない側)に座ぐりを施す特殊加工 fuji-bc(https://www.fuji-bc.com/tool/paper/tool201009.html)
工具選びで失敗すると、寸法精度の不良やびびり振動・工具折損につながります。結論は材質と用途に合った工具選定が原則です。
| 工具名 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 沈めフライス | 六角穴付きボルトの座ぐり | 下穴加工後に使用、JIS規格対応品が多い |
| 段付きドリル(ザグリドリル) | 下穴+ザグリの同時加工 | 工程削減できるが専用工具が必要 |
| 皿面取りカッター | 皿ねじ用の皿ザグリ | 角度(90°・82°など)の確認が必須 |
| 裏座ぐり工具 | 裏面からの座ぐり | 開閉式ウイング構造が一般的 |
沈めフライスはMISUMIやFKD(フクダ精工)など複数メーカーから展開されており、M3〜M30サイズまでラインナップされています。 六角穴付きボルト対応の場合はJIS規格の沈め穴径に合わせた製品を選ぶと寸法確認の手間が省けます。 jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/vona2/fs_machining/T0105000000/T0105070000/)
これは使えそうですね。
工具素材の選定はザグリ加工の品質と工具寿命を大きく左右します。材質による使い分けは次の通りです。 sakakibara-kouki.co(https://www.sakakibara-kouki.co.jp/column/%E3%82%B6%E3%82%B0%E3%83%AA%E5%8A%A0%E5%B7%A5%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%81%A8%E7%B2%BE%E5%BA%A6%E8%A6%81%E6%B1%82%E3%82%92%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%80%90%E8%A8%AD/)
ハイス(高速度鋼)工具
- 炭素鋼(S45C、SS400など)の汎用加工に適している
- コストが低く、再研磨で繰り返し使えるため経済性が高い
- 切削速度の上限が低く、マシニングセンタでの高速加工には不向き
超硬工具
- ステンレス(SUS304、SUS316)や焼入れ鋼・鋳鉄に有効 shimojima(https://shimojima.jp/shop/c/c20020312/)
- 工具単価は高いが、1本あたりの加工数が多くなるためランニングコストで有利
- ボール盤での使用にも適しており、アルミや鋳鉄のザグリ加工に特に推奨 shimojima(https://shimojima.jp/shop/c/c20020312/)
超硬が条件です。アルミや鋳鉄を頻繁に加工する現場では、ハイスよりも超硬タイプを標準として選定したほうが工具交換の頻度を抑えられます。
切削速度について補足すると、外部給油環境でドリル系加工を行う場合、カタログ値の80%を目安に回転数と送りを設定するのが安定した加工への近道です。 たとえばφ10のドリルで一般炭素鋼(S55C)を加工する場合、切削速度40〜90m/min・送り0.15〜0.2mm/rev程度が安定域の目安になります。 tungaloy(https://tungaloy.com/jp/technical-knowledge/external-drilling/)
裏座ぐりはワークの構造上、表からアクセスできない裏面に座ぐりを設ける必要がある場合に使います。 表座ぐりとは異なる工具が必要になる点が、ここで最も重要な確認事項です。 fuji-bc(https://www.fuji-bc.com/tool/paper/tool201009.html)
裏座ぐり工具の選定では「下穴径とホルダのガイド径が合っているか」が最大のチェックポイントになります。 ホルダのガイド部と下穴の隙間が大きいとびびりの原因になります。 具体的にはホルダのガイド部はマイナス公差(d8)で設計されているため、下穴径に対してぴったりのサイズを選ぶのが原則です。 fuji-bc(https://www.fuji-bc.com/tool/tool2/urazaguri.html)
フジBC技研の組み合わせ式裏座ぐり工具は、カッタとホルダを組み合わせてφ12〜φ125mmまでの裏座ぐりに対応しており、独自の3〜4枚刃構造で1枚刃品よりも能率の高い加工が可能です。 大昭和精機の裏座ぐりバーはウイング交換で裏面取り・表裏同時面取りにも対応できるため、段取り替えを減らしたい現場に向いています。 fuji-bc(https://www.fuji-bc.com/tool/tool2/pdf/urazaguri.pdf)
裏座ぐりに対応するにはホルダ・カッタの選定セットで考えることが条件です。工具単体だけでなく、下穴径・座ぐり径・首下長の3つの寸法を同時に確認してから発注するとミスを防げます。
ミスミ(MISUMI)のmeviyでは、穴加工の設計ポイントをまとめた技術情報ページも公開されており、設計段階での確認に役立ちます。
ミスミ meviy|穴加工の基本と設計のポイント(穴の縁際・下穴設計の注意点まで解説)
現場でよく見られるのが、専用工具が手元にないときにエンドミルでザグリ加工を代用するケースです。厳しいところですね。
エンドミルは本来、XY方向の側面切削を主目的とした工具です。 先端の切削能力と切りくず排出性がドリル系工具に劣るため、Zアキシャル方向に押し込む動きが主体となるザグリ加工では、逃げ角不足・排出不良による詰まり・びびり・工具折損のリスクが跳ね上がります。 これが代用がNGな根拠です。 anm7242(https://anm7242.net/pingye.sakura.ne.jp/flat-drill-vs-endmill/)
代用を避けられない場合でも、少なくとも以下の対策が必要です。
- 切削深さを1パスあたり工具径の10%以下に抑える(例:φ10エンドミルなら1回1mm以内)
- 回転数を通常の60〜70%に落とし、送り速度も標準の半分以下にする
- 切削油を十分にかけ、こまめに退避(ペッキング動作)を挟んで切りくずを排出する sanwachemical.co(https://sanwachemical.co.jp/blog/fukaana/)
段付きドリルや沈めフライスは1本あたり数百〜数千円台から購入可能で、モノタロウ・ミスミ・NACHI(不二越)などから幅広く入手できます。 工具1本のコストと、工具折損によるダウンタイムや再加工コストを比較すれば、専用工具への切り替えが圧倒的に合理的です。これは数字で見れば明らかです。 monotaro(https://www.monotaro.com/k/store/%E5%BA%A7%E3%82%B0%E3%83%AA%E5%B7%A5%E5%85%B7/)
ミスミ技術情報|沈めフライスの用途と種類(工具選定の基礎知識として参照)
フジBC技研|切削工具技術論文「座ぐり加工・裏座ぐり加工」(工具選定の詳細情報)