う蝕活動性試験種類と方法を解説

う蝕活動性試験には唾液やプラークを用いた様々な種類があり、患者のう蝕リスクを科学的に評価できます。臨床でどの試験を選択し、結果をどう活用すればよいのでしょうか?

う蝕活動性試験の種類と分類

CAT21テストで陽性でも、実は予防だけで治療不要なケースが8割存在します。


この記事の3ポイント要約
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試験は2つの因子で分類

う蝕活動性試験は微生物因子(攻撃因子)を測る試験と、宿主因子(防御因子)を測る試験に大別されます

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判定時間は15分~48時間

RDテストは15分、CAT21は20分、スナイダーテストは48時間と、試験によって判定時間が大きく異なります

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結果でリコール間隔を決定

試験結果に基づき患者ごとのう蝕予防プログラムを立案し、適切なメインテナンス間隔を設定できます


う蝕活動性試験とは、将来的な齲蝕の発生や進行の可能性を予測するために行う検査です。検体としては唾液やプラークが用いられ、患者個々のう蝕リスクを科学的に評価することができます。


歯科臨床において、う蝕予防のためには個々の患者がどの危険要因のリスクが高いかを科学的に判定する必要があります。う蝕の発病には、宿主と歯、微生物、食餌性基質、時間という複数の因子が関与しており、これらのバランスでう蝕が発現すると考えられています。一番大きなリスク因子は何かを把握することが基本です。


う蝕活動性試験は主に2つのカテゴリーに分類されます。1つ目は微生物因子、つまり攻撃因子に関する試験で、唾液やプラークに含まれる細菌数や酸産生能を測定するものです。2つ目は宿主因子、つまり防御因子に関する試験で、唾液分泌量の測定や唾液緩衝能の測定などが含まれます。


SnydeyとNewbrunが提唱するカリエス・リスク・テストの具備すべき条件として、う蝕病因論に基づいていること、臨床成績との関連性があること、結果の再現性があること、操作時間が短く特殊な技術を要しないこと、判定時間が短く容易であること、安価であることが挙げられています。


つまり臨床で実用的であることが条件です。


九州歯科大学の口腔疾患の検査と評価に関する資料には、各種試験の詳細な分類と測定方法が記載されており、う蝕活動性試験の選択時の参考になります。


う蝕活動性試験における微生物因子の測定法

微生物因子に関するう蝕活動性試験は、唾液やプラークを検体として細菌数や酸産生能を測定します。細菌数を測定する代表的な方法として、デントカルトSM、デントカルトLB、ハードレーテスト、ミューカウントなどがあります。


デントカルトSMは唾液を検体として培養し、ミュータンス菌数を測定する試験です。同様にデントカルトLBでは乳酸菌数を測定します。CRT bacteriaという試験では、唾液を検体として培養し、ミュータンス菌と乳酸菌数の両方を同時に測定することが可能です。これは2種類の主要なう蝕原因菌を一度に評価できるため、効率的な検査方法といえます。


酸産生能を測定する方法も複数あります。スナイダーテストは歴史のある試験で、唾液中の耐酸性菌が発育して酸を産生する強さを測定します。スナイダー培地に混合唾液を培養し、唾液中の耐酸性菌が糖を分解して酸を産生する量を標示薬の色の変化(青から黄色へ)で判定するのです。


CAT21テスト(カリオスタット法)は、従来の試験に比べて判定時間が大幅に短縮されたことが特徴です。従来のう蝕活動性試験は培養に48時間を要したのに対し、CAT21テストは約20分で判定可能となりました。綿棒で上顎前歯唇側面の歯垢を採取し、試験液の入ったアンプルに投入して37度で培養します。酸が多いほど培養後、液の色が青から緑、黄緑、黄色へと変化し、危険な状態を示します。


RDテストは唾液をシール付きの試験紙にとって腕に貼るだけという簡便な方法です。わずか15分後にシールの色の変化を見てLow、Middle、Highの3段階で判定します。判定時間が短いため、患者説明の場でも活用しやすい利点があります。


プラークを検体とする試験もあります。Swabテストは歯垢を直接採取し、pH指示薬で色の変化をみて酸産生能を測定します。口内法としてStephan Curveという方法もあり、電極で歯垢のpH変化を測定することで、より正確なデータが得られます。


う蝕活動性試験における宿主因子の評価方法

宿主因子に関するう蝕活動性試験は、患者の防御機能を評価するもので、唾液分泌量と唾液緩衝能の測定が中心となります。これらは患者の口腔環境がう蝕から歯を守る能力をどれだけ持っているかを示す指標です。


唾液分泌量検査では、無味のチューイングペレットガムを3~5分間咀嚼し、刺激時唾液の量を測定します。正常は5ml以上/5分、少ないは3.5~5ml/5分、非常に少ないは3.5ml以下/5分と判定されます。唾液分泌量が多いほど、口腔内の自浄作用が高く、う蝕になりにくい環境といえます。


ガムを噛むことで刺激唾液を採取するのがポイントです。安静時唾液と刺激時唾液では分泌量が大きく異なるため、標準化された条件で測定する必要があります。


5分間で5ml以上が正常域です。


唾液緩衝能検査は、採取した唾液が酸を中和する力を測定するものです。試験紙タイプとテストチューブタイプ、pHメータータイプの3種類の方法があります。試験紙タイプでは、酸溶液を染みこませたpH試験紙(緩衝能ストリップス)に唾液を滴下し、pH指示薬で色の変化をみて測定します。


デントバフストリップスという試験紙に採取した唾液を垂らし、5分間で色の変化があるか確認する方法が一般的です。色が緑から青に変化すれば緩衝能が高く、黄色のままであれば緩衝能が低いと判定されます。


緩衝能が高いということですね。


テストチューブタイプでは、乳酸粉末の入ったテストチューブに唾液を滴下し、pH指示薬で色の変化をみます。これはドライゼンテスト(Dreizen test)として知られており、唾液に乳酸を滴下してpHが戻るまでの乳酸量を測定する方法です。さらに精密な測定にはハンディ型pHメーターを改良した唾液緩衝能測定装置もあります。


エナメル質の耐酸性を直接測定する方法として、エナメル質生検法があります。酸エッチング法、研削法、セルロース・アセテートディスク法などが該当し、歯質そのものの強さを評価できます。また、フォスディックテスト(Fosdick test)では、唾液にブドウ糖とエナメル質粉末を入れて、溶出したカルシウムとpHを測定することで脱灰能を評価します。


グルコースクリアランステストは、グルコース含嗽後の残留時間を測定することで、唾液による糖の洗浄能力を評価する試験です。これは唾液のクリアランス機能を数値化できる点で臨床的に有用です。


う蝕活動性試験の判定基準と臨床的解釈

う蝕活動性試験の結果判定には、各試験ごとに確立された基準があります。判定基準を正確に理解し、臨床的に意味のある解釈を行うことが、効果的な予防プログラムの立案につながります。


CAT21テストの判定基準は、色の変化によって4段階に分類されます。青色(-)は陰性で安全、緑色(+)はやや危険、黄緑色(++)は危険、黄色(+++)は非常に危険と判定されます。判定色見本と実際のアンプルを並べて比較することで、酸産生能の程度を視覚的に評価できるのです。


スナイダーテストでは、培養48時間後の色の変化を観察します。培地が青色のまま変化しなければ陰性、緑色に変化すれば陽性、黄色に変化すれば強陽性と判定されます。培養時間が長い分、より正確な細菌の酸産生能を評価できる利点があります。


結論は培養時間と精度の関係です。


RDテストは3段階判定で、Low(低リスク)、Middle(中リスク)、High(高リスク)に分類されます。シールの色が青から緑、黄色へと変化する程度で判定し、15分という短時間で結果が得られるため、チェアサイドでの患者説明に適しています。


唾液緩衝能の判定では、pH試験紙の色の変化を基準に評価します。pH6.0以上であれば緩衝能が高い、pH4.5~6.0であれば中程度、pH4.5以下であれば緩衝能が低いと判定されます。緩衝能が低い患者は、食後の口腔内pHの回復が遅く、脱灰のリスクが高い状態にあります。


デントカルトSMでは、培養後のコロニー数で判定します。コロニー密度がクラス0~1であれば低リスク、クラス2であれば中リスク、クラス3であれば高リスクと評価されます。ミュータンス菌数が10の5乗CFU/ml以上の場合、う蝕活動性が高いと判断されるのです。


複数の試験結果を総合的に判断することが重要です。例えば、酸産生能は高いが唾液緩衝能も高い患者の場合、防御因子が攻撃因子をある程度カバーしていると解釈できます。逆に、両方のリスクが高い患者は、より集中的な予防プログラムが必要になります。


試験結果の臨床的解釈では、過去のう蝕経験との整合性も確認します。DMFT指数が高い患者で活動性試験も高リスクを示す場合、その結果は信頼性が高いと考えられます。一方、過去にう蝕経験がほとんどない患者が高リスクと判定された場合は、最近の生活習慣の変化などを詳しく問診する必要があります。


患者への結果説明では、数値やリスクレベルだけでなく、それが日常生活でどのような意味を持つのかを具体的に伝えることが大切です。例えば「あなたの唾液の酸を中和する力が弱いため、間食の回数を減らすことが特に重要です」といった個別化された説明が効果的です。


知らないと損します。


う蝕活動性試験結果に基づく予防プログラムの立案

う蝕活動性試験の最大の目的は、結果に基づいて個々の患者に適した予防プログラムを立案することです。リスク評価の結果により、リコール間隔の決定、フッ化物応用の方法、食事指導の内容などを個別化できます。


リコール間隔の設定は、う蝕活動性試験の重要な臨床応用です。低リスク患者には6ヶ月~1年の間隔、中リスク患者には3~6ヶ月の間隔、高リスク患者には1~3ヶ月の間隔でのメインテナンスが推奨されます。画一的な間隔設定ではなく、科学的根拠に基づいた個別設定が可能になるということですね。


酸産生能が高い患者には、プラークコントロールの強化とシュガーコントロールが特に重要です。ミュータンス菌数が多い患者には、クロルヘキシジン含有洗口液の使用や、キシリトール製品の活用を提案します。細菌数そのものを減少させる戦略が効果的です。


唾液分泌量が少ない患者には、唾液分泌を促進する対策が必要です。シュガーレスガムの咀嚼、こまめな水分補取、唾液腺マッサージなどを指導します。薬剤性の口腔乾燥がある場合は、主治医と連携して薬剤の見直しも検討します。


口腔乾燥のリスクは見過ごせません。


唾液緩衝能が低い患者には、高濃度フッ化物配合歯磨剤の使用や、フッ化物洗口の併用を推奨します。また、飲食後の口腔内pHの回復を助けるため、食後の水やお茶での口すすぎを習慣化させることも有効です。


緩衝能を補う工夫が必要です。


複数のリスク因子が重なる高リスク患者には、より集中的なアプローチが求められます。定期的なプロフェッショナルケア、高濃度フッ化物の局所塗布、抗菌療法の検討、徹底した食事指導などを組み合わせた包括的なプログラムを立案します。


予防プログラムの効果判定のため、3~6ヶ月後に再度う蝕活動性試験を実施することが推奨されます。リスク因子の改善が確認できれば、患者のモチベーション向上にもつながります。改善が見られない場合は、プログラムの見直しや、患者の実行状況の確認が必要です。


歯科疾患管理料の算定においても、う蝕活動性試験の結果は重要な資料となります。科学的根拠に基づいた管理計画を立案し、患者に説明することで、保険診療においても質の高い予防歯科を提供できます。


管理料算定の要件も満たせます。


う蝕活動性試験の臨床導入における注意点と限界

う蝕活動性試験を臨床に導入する際には、いくつかの注意点と限界を理解しておく必要があります。試験結果だけに依存せず、総合的な臨床判断が求められる場面も多くあります。


検体採取のタイミングと条件は、結果に大きく影響します。唾液検査では、検査前1時間は飲食、タバコ、歯磨きを控えるよう患者に指示する必要があります。また、朝の起床直後や食後すぐなど、唾液の性状が変化しやすい時間帯は避けるべきです。


標準化された条件が基本です。


プラークを検体とする試験では、採取部位の選択が重要になります。う蝕リスクが高い部位(小窩裂溝、隣接面など)からプラークを採取することで、より臨床的に意味のあるデータが得られます。単に採取しやすい部位を選ぶのではなく、戦略的な部位選択が必要です。


試験結果の解釈には、患者の年齢や全身状態も考慮します。高齢者では唾液分泌量が低下する傾向があり、若年者と同じ基準で判定すると、多くの患者が高リスクと判定されてしまいます。


年齢を考慮した解釈が必要です。


薬剤の影響も無視できません。抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗うつ薬などの多くの薬剤が唾液分泌を抑制します。服薬情報を確認し、薬剤性の影響がある場合は、その旨を考慮して結果を解釈する必要があります。


薬の副作用は盲点です。


う蝕活動性試験の費用対効果も考慮すべき点です。すべての患者に高価な試験を実施するのではなく、う蝕リスクが高いと予想される患者や、予防プログラムの効果判定が必要な患者に絞って実施することが現実的です。


検査の優先順位をつけることが条件です。


試験結果が臨床所見と一致しない場合の対応も考えておく必要があります。過去にう蝕経験がほとんどないのに試験結果が高リスクを示す場合や、その逆のケースでは、再検査や別の試験法の併用を検討します。複数の評価軸を持つことで、より正確なリスク判定が可能になります。


患者への説明方法も重要です。試験結果を提示する際には、数値やグラフを用いて視覚的に示すことで理解を促進できます。ただし、結果が悪かった患者を過度に不安にさせないよう、改善可能な点を強調し、具体的な対策を提示することが大切です。


前向きな説明が鍵です。


う蝕活動性試験は、あくまでもリスク評価の一手段であり、絶対的な予測ツールではないという限界を認識しておく必要があります。試験結果と臨床経験、患者の生活習慣情報などを総合的に判断し、個別化された予防戦略を立案することが、真の予防歯科の実践につながるのです。