多くの歯科医は、ステロイド治療が入院期間を延長させるリスク要因だと誤解しています。
スティーブンス・ジョンソン症候群の治療で最初にすべきことは、原因薬剤の即時中止です。これは治療の基本原則であり、最も効果的な対処法とされています。多くの臨床現場では、医師が患者に初期症状(発熱、眼充血、口内炎など)を自覚させた段階で、疑わしい医薬品を直ちに中止しています。
被疑薬を中止しない状態で治療を続けると、皮膚病変や粘膜病変がさらに進行し、重篤な合併症に至るリスクが急速に高まります。実際のケースでは、患者が症状を風邪だと思い込み、別の解熱薬を追加で服用することで病状が悪化した例も報告されています。
つまり、被疑薬の中止は医学的判断ではなく患者教育であり、その実行が生死を左右する要因になります。
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a02.pdf
厚生労働省資料:スティーブンス・ジョンソン症候群の初期症状と医薬品中止の重要性について詳しく解説しています。
急性期治療の中心は、ステロイド薬の全身投与です。特に重症例では発症から7日前後の「黄金の窓」と呼ばれる時期に、ステロイドパルス療法を含む高用量のステロイド治療を開始することが生存率を大きく左右します。
ステロイドパルス療法の標準プロトコルは、メチルプレドニゾロン500~1000mg/日を3日間連続で点滴投与することです。この治療により、暴走する免疫反応を素早く抑制し、皮膚および粘膜の壊死性病変の進行を食い止めることができます。皮疹が進展しないことを確認してから、段階的にステロイド量を減量していきます。
ステロイド治療で十分な効果が見られない場合は、免疫グロブリン製剤大量静注療法(IVIG)が追加されます。この治療は、ヒト免疫グロブリン400mg/kg/日を5日間連続投与する方法で、2014年から保険適用となった比較的新しい治療法です。
この治療だけでは不十分と判断される場合、血漿交換療法も併用されることがあります。それら全身管理が成功したかは重症度が改善したことで判断されます。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4074
難病情報センター:指定難病38スティーヴンス・ジョンソン症候群の公式な治療指針を確認できます。
眼病変は治療の成否を左右する最も重要な合併症です。急性期には結膜充血、偽膜形成、眼表面上皮欠損が生じ、眼科医による厳格な管理が必須となります。抗菌薬とステロイドの点眼薬、眼軟膏の塗布、偽膜の除去などが同時進行で行われます。
皮膚の発疹やびらんが消失しても、眼の炎症が遷延することが珍しくありません。高度なドライアイと視力障害が後遺症として残ることが多く、患者の社会復帰と生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。
近年、輪部支持型角膜形状異常眼用コンタクトレンズ(サンコンKyoto-CSRなど)が眼後遺症に対して新規開発されました。このコンタクトレンズは眼表面の疾患状態の悪化を抑制し、視力改善とドライアイ症状の緩和をもたらすとされています。
口腔粘膜病変も併発症として認識されるべき対象です。歯科医は患者の口唇・口腔粘膜のびらんや出血、疼痛、摂食障害を評価し、感染予防と疼痛管理に協力する必要があります。
https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_23027
日本医事新報:眼所見における治療方法を詳しく解説しており、眼科との連携の重要性が理解できます。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の死亡率は約3~5%ですが、より重症な中毒性表皮壊死症(TEN)では約20~30%に上昇します。早期治療により生存率は90%まで向上する一方、遅延すると死亡リスクが著しく高まることが臨床統計で証明されています。
生存後の後遺症は深刻です。眼科後遺症には失明に至る視力障害、瞼球癒着、ドライアイが含まれます。皮膚後遺症では瘢痕、爪の脱落・変形が生じます。呼吸器では閉塞性細気管支炎による呼吸障害、外陰部では癒着が留置されることもあります。
入院期間は症状の程度や基礎疾患の有無によって異なりますが、1ヶ月以上に及ぶことがしばしばです。高齢者や重篤な基礎疾患(糖尿病、腎不全など)を持つ患者では、治療期間がさらに延長される傾向があります。
これは診療計画が重要だということですね。
慢性期の治療は眼表面の管理が主体となります。ドライアイ対策、人工涙液、眼軟膏の継続的な使用が必要です。また、2018年4月から、SJS/TEN慢性期の眼後遺症がある患者は指定難病の申請が可能となり、医療費助成が受けられるようになりました。
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/SJSTEN2025.pdf
日本皮膚科学会:SJS/TEN診療ガイドライン(2025年版)で、最新の治療戦略と予後評価基準を確認できます。
スティーブンス・ジョンソン症候群の原因薬剤として高頻度で報告されるものには、サルファ剤、ペニシリン系抗生物質、フルオロキノロン系抗菌薬、セファロスポリン系抗生物質、抗てんかん薬、解熱消炎鎮痛薬(NSAIDs)が含まれます。歯科領域では、抗生物質処方時に注意が必要です。
驚くべきことに、市販の風邪薬やアセトアミノフェンなどの常用医薬品でも発症することが報告されています。患者が「いつもの薬だから安全」と自己判断して継続投与することで、重篤化を招くケースが実臨床で記録されています。
原因薬剤の服用から症状出現までの期間は個人差が大きく、数日以内から1ヶ月以上経過してから発症することもあります。平均的には1~2週間以内の発症が多く、特に急速に進展する中毒性表皮壊死症では平均5.5日と極めて短い期間で症状が顕在化します。
原因をはっきりさせるために、薬剤添加リンパ球刺激試験やパッチテストなどの特殊検査が行われることがあります。
医薬品の副作用による疑いが生じたら、どの薬が犯人かを早期に特定することは患者の将来の安全を確保する上で重要です。
https://medicalnote.jp/diseases/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
メディカルノート:原因薬剤の特定方法と患者への説明に有用な記事です。