あなたの設計、疲労限度以下でも3年で破断します
s-n曲線とは、応力(Stress)と繰返し回数(Number)の関係を示すグラフで、金属が何回の繰返し荷重で破壊するかを可視化したものです。横軸が繰返し回数、縦軸が応力です。回数が増えるほど耐えられる応力は低下します。
例えば炭素鋼では、約\(10^6\)〜\(10^7\)回付近で曲線が水平になります。ここが疲労限度です。つまりそれ以下の応力なら「理論上は」無限回耐えるとされます。ここが重要です。
つまり無限寿命の目安です。
ただしこれは理想条件です。実際の加工現場では、表面粗さや残留応力の影響で大きくズレます。現場では安全率を考慮するのが基本です。ここを無視すると破断事故につながります。
疲労限度はすべての金属に存在するわけではありません。ここがよく誤解される点です。鋼材には存在しますが、アルミニウムや銅合金には明確な疲労限度がありません。
例えばS45C鋼では疲労限度は引張強さの約50%前後、具体的には約250MPa程度です。一方でアルミ合金(A6061など)は、\(10^7\)回でも応力を下げ続けないと破壊します。つまり限界がありません。
これは重要な違いです。
アルミ部品で「疲労限度以下だから安全」と考えるのは危険です。長期間使う部品では、時間とともに破断リスクが増加します。長寿命設計では材料選定が最優先です。
加工状態は疲労強度に直結します。特に表面粗さの影響は大きく、Raが0.8μmから3.2μmに悪化すると、疲労強度が20〜30%低下するケースがあります。
小さな傷が起点になります。これがクラックの発生源です。旋盤加工後の工具痕や研削焼けも影響します。
ここが落とし穴です。
このリスクに対しては、表面仕上げの改善が有効です。例えばショットピーニングは圧縮残留応力を付与し、疲労寿命を1.5〜2倍に延ばす効果があります。現場でできる対策としては「仕上げ工程を1段追加する」がシンプルで有効です。
設計上の応力集中は見逃されがちです。キー溝やねじ部、段付き部では理論応力の2〜3倍の局所応力が発生します。これが疲労破壊の主原因です。
例えばシャフトの段差部分。半径Rが小さいと応力集中係数Ktは約2.5になります。つまり設計応力100MPaでも局所では250MPaになります。
これは危険です。
この問題の対策は明確です。応力集中を下げることです。具体的には「Rを大きくする」か「逃げ加工を入れる」だけで改善できます。設計段階での一手が寿命を大きく左右します。
温度と腐食環境も疲労限度を大きく変えます。例えば100℃を超える環境では、鋼の疲労限度が10〜20%低下することがあります。さらに腐食環境では疲労限度そのものが消失します。
これは見逃されがちです。
海沿い設備や薬品環境では特に顕著です。腐食疲労では通常の半分以下の寿命になることもあります。つまり設計値が全く通用しないケースです。
このリスクへの対策としては「環境条件の把握」が最優先です。その上で、防錆コーティングやステンレス材への変更を検討します。簡単にできる対策としては「使用環境を一度見直す」だけでも効果があります。
参考:金属疲労と環境影響の基礎解説(腐食疲労の具体例あり)
https://www.jssc.or.jp/knowledge/fatigue/