じつはシュラー法だけでは下顎頭の骨形態異常の約40〜60%が見逃されるリスクがあります。
シュラー法(Schüller変法)は、顎関節の側面像を得るための経頭蓋側斜位撮影法です。 検側(撮影したい顎関節側)を下にして患者を腹臥位から横向きに寝かせ、X線を非検側の耳介から約3横指上の点に向けて頭尾方向25〜30°で斜入射します。 これにより非検側の顎関節が足側に逃げ、検側の下顎頭と顎関節窩が重なりなく鮮明に描出されます。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/orthodontics/36924)
顎関節撮影法の代名詞ともいわれるほど広く使われており、単純撮影として手軽に実施できる点が強みです。 撮影条件は一般的に70〜75kV・16mAs、撮影距離100cm、グリッド使用(グリッドの向きは頭尾方向)が標準です。 短時間で左右の比較ができるため、日常的な顎関節症スクリーニングとして非常に有用です。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
ポジショニングの基準点は「非検側の耳介から3横指上」です。 小児の場合は入射角を20°に変更するのがポイントです。つまり成人と小児でプロトコルが異なるということですね。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
正確な画像を得るには、体位固定の精度が命です。 まず患者に眼鏡・ヘアピン・ピアス・入れ歯などの障害物を除去させ、検側の外耳孔をカセッテ中心に正確に合わせます。 正中矢状面とカセッテが平行になっているかを頭側と正面の両方向から確認することが必須です。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
開口撮影時は頭部のブレが生じやすいことに注意が必要です。 長時間の側面保持は患者の負担になるため、体位確認以外の準備(照射野設定・撮影条件入力)を先に済ませてから体位固定に入るのが実践的な工夫です。これは使えそうです。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
撮影後の画像チェックポイントは以下のとおりです。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
- 非検側の顎関節が下方に位置し、検側が明瞭に投影されている
- 閉口位で下顎頭が顎関節窩内に収まっている
- 開口位で下顎頭が顎関節窩より前方に移動している
- 乳突蜂巣の含気状態が観察できる
- 外耳孔が画像の中心に投影されている
これらが確認できなければ、ポジショニングをやり直すことが原則です。 w.atwiki(https://w.atwiki.jp/xrayroom/pages/36.html)
シュラー法の最大の臨床的意義は、開口位と閉口位の2枚を比較することで下顎頭の可動性を直接評価できる点にあります。 健常では開口時に下顎頭が顎関節窩から前方に移動(前進)し、閉口時には窩内に戻ります。顎関節症で開口制限がある場合、この前進量が著明に減少またはほぼゼロになります。 scw.asahi-u.ac(http://scw.asahi-u.ac.jp/~kawamata/TMJ.html)
読影の際は左右を必ず比較してください。 一側性の下顎頭萎縮や変形性関節症では、患側だけに骨形態変化(下顎頭の平坦化・骨棘形成・びらん)が認められます。ただし断層撮影のほうが微妙な骨形態異常の検出には優れており、シュラー法の限界を意識することが重要です。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/orthodontics/36398)
下表に顎関節撮影法の特性を整理します。
| 撮影法 | 骨形態評価 | 可動性評価 | 軟組織評価 | 被曝・簡便性 |
|--------|-----------|-----------|-----------|-------------|
| シュラー法 | 〇(やや不確実) | 〇(開閉口比較) | ✕ | 低被曝・簡便 |
| 断層撮影 | ◎ | 〇 | ✕ | 中程度 |
| パノラマ | △ | ✕ | ✕ | 低被曝・簡便 |
| MRI | ✕ | △ | ◎ | 無被曝・高コスト |
| CT | ◎ | △ | △ | 高被曝・高解像 |
結論はシュラー法単独では限界があるということです。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/orthodontics/36398)
シュラー法はスクリーニングとして優れていますが、微妙な骨形態異常の検出は困難である点を念頭に置く必要があります。 関節円板の位置異常や変性などの軟組織病変は、X線写真ではまったく評価できません。これは重要なポイントです。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/orthodontics/36398)
日本歯科放射線学会などの専門資料では、顎関節症の確定診断にはMRIが最も優れていると明示されています。 関節円板の前方転位(クリック音や開口制限の原因)を確認するには、T1・T2強調MRI画像が不可欠です。 骨破壊性変化の精密評価にはCTが有用です。 www2.kyu-dent.ac(http://www2.kyu-dent.ac.jp/depart/hoshasen/plane-imeges/tmj.html)
以下の所見がシュラー法で認められた場合は、追加検査を検討してください。
- 下顎頭の著明な平坦化または骨棘形成
- 一側性の顕著な下顎頭萎縮
- 開口時の下顎頭前進がほぼゼロ(可動域著明制限)
- 顎関節窩の骨形態異常
顎関節規格撮影装置(サジタリウス3000など)を採用することで、従来のシュラー法では難しかった再現性の高い規格撮影が可能になります。 経過観察において同一条件での比較が重要な症例では、規格撮影装置の利用を積極的に検討する価値があります。 nishikawa-dent(https://www.nishikawa-dent.com/gakukan/gakukan-diagnosis/)
実務上、見落とされがちなのが診療報酬の算定方法です。パノラマ(デジタル)撮影に加え、シュラー法で開口・閉口の左右4枚を撮影した場合、「単純撮影(デジタル)」として計上するのが基本です。 枚数のカウントを誤ると返戻につながるため、開口位2枚+閉口位2枚の合計4枚として記録します。 shirobon(http://shirobon.net/qabbs_detail.php?bbs_id=39520)
撮影ごとにマーカー(R/L)を必ず置くことがチェックポイントです。 左右逆転は診断上の重大な誤りに直結します。開口位の撮影ではブレが生じやすく、読影に支障が出るため撮り直しの判断基準を院内で統一しておくことも重要です。 tools4radtech(https://www.tools4radtech.com/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%B3%95-schuller-method/)
また、小児・成長期の患者では顎関節形態が変化するため、定期的なシュラー法での経時的評価が矯正治療計画に直接影響します。 矯正診断において、顎関節癒着症・過形成・減形成の鑑別にシュラー法やパルマ法の使い分けが求められます。 どの撮影法を選択するかは診断目的によって変わります。目的の確認が条件です。 quint-j.co(https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/orthodontics/36924)
参考:シュラー法の撮影手技の詳細と正常例・異常例の画像
シュラー法 Schuller view|ポジショニング・撮影条件・チェックポイントの実践的まとめ(tools4radtech.com)
参考:顎関節X線写真撮影法の種類と使い分けの整理
顎関節X線写真(撮影法)|異事増殖大事典(クインテッセンス出版)
参考:MRIを含む顎関節画像検査の実際の画像と解説
顎関節の画像検査|朝日大学歯学部放射線科(開口・閉口時の下顎頭可動性の見方)