銀歯より安いと思われがちなセレックが、実は銀歯より20年後のトータル費用で数十万円安くなるケースがある。
セレック治療の費用は、治療の種類(詰め物か被せ物か)と使用する素材によって大きく異なります。まず「インレー(詰め物)」と「クラウン(被せ物)」の違いを整理しておくことが、費用を正しく理解するための第一歩です。
インレー(詰め物)の費用相場は、自費診療の場合1本あたり4万〜7万円程度が一般的です。歯科医院によっては3万6,300円(税込)から提供しているクリニックもあれば、6万〜7万円設定のクリニックもあり、地域や院のブランド設定によってかなり幅があります。これは奥歯などの部分的な虫歯に対して、歯の一部だけをセラミックで補う治療です。
クラウン(被せ物)の費用相場は、1本あたり5万〜12万円程度です。神経を抜いた後の歯や虫歯が深く進行した歯の全体を覆う処置のため、インレーよりも費用が高めに設定されるのが一般的です。一部クリニックでは被せ物12万円設定の場合もあります。
つまり費用に幅がある、というのが正直なところです。
| 種類 | 内容 | 自費相場(1本) |
|---|---|---|
| セレックインレー | 詰め物(部分的な補填) | 約4万〜7万円 |
| セレッククラウン | 被せ物(歯全体を覆う) | 約5万〜12万円 |
| 保険適用ハイブリッドセラミック | CAD/CAM冠(条件あり) | 約6,000〜1万円(3割負担) |
この価格帯がイメージしにくい場合、インレー5万円という費用は「一般的な眼鏡フレーム1本分」程度と考えると感覚がつかみやすいでしょう。費用設定の根拠が院によって異なる以上、患者への説明では「なぜその価格なのか」を伝えられる準備が重要です。
参考:セレック費用の詳細な内訳については下記ページが参考になります。
セレック治療を考えている方必見:費用相場と治療期間の実態|かなまち志田歯科
「セレック治療はなぜ従来のセラミック治療より安いのか?」という疑問は、患者への説明でも必ずといっていいほど出てきます。これは安さの要因を知っておけばOKです。
従来のセラミック治療では、歯の型取り後に型を外部の歯科技工所へ送り、技工士が手作業でセラミック修復物を作製します。この外注費と人件費が、最終的に患者への費用に上乗せされていました。1本あたり技工料だけで数万円かかるケースも珍しくなく、それが従来セラミックの高価格の一因でした。
セレックは院内のCAD/CAMシステムですべて完結します。3Dスキャンからコンピュータ設計、ミリングマシンによる削り出しまでを院内で行うため、技工所への外注費が一切不要になります。結果として、従来セラミックより1本あたり約2万円程度安く提供できるクリニックが多いのです。これは使えそうです。
ただし、院内完結のメリットは費用だけではありません。外注する場合は型取りから装着まで通常2〜3回の通院が必要ですが、セレックなら最短1日で装着まで完了できます。患者の通院回数が減ることは、患者満足度の向上にも直結します。
一方で、クリニックがセレックシステムを導入するためには、CAD/CAMシステム本体に加え、スキャナーやミリングマシンのランニングコストも必要です。初期投資を回収するための価格設定が各院で異なる一因でもあり、相場に幅が生まれる背景はここにあります。院の導入コスト構造を理解しておくと、患者への価格説明もより説得力が増します。
2024年6月の診療報酬改定は、セレック治療にとって非常に重要な転換点でした。
改定以前は、保険適用のCAD/CAM冠(ハイブリッドセラミック使用)は小臼歯・前歯が主な対象で、大臼歯への適用には細かい条件がありました。改定後は、新素材「CAD/CAM冠用材料(Ⅴ)」の登場と制度改正により、条件付きながら事実上すべての歯へのCAD/CAM冠適用が可能になっています。保険適用範囲が全歯に拡大、というのが原則です。
具体的な保険適用の条件を整理すると、以下のようになります。
保険適用時の費用は3割負担で1本あたり約6,000〜1万円程度です。自費のセレックが5〜12万円であることを考えると、費用差は非常に大きいといえます。ただし、保険適用のハイブリッドセラミックはオールセラミックと比べると審美性・強度にやや劣ります。患者への説明では「保険か自費か」の選択肢と、それぞれの特性の違いを正確に伝えることが重要です。
なお、すべての歯科医院が保険適用のCAD/CAM冠に対応しているわけではない点も注意が必要です。厚生労働省が承認した材料を取り扱っている医院のみが実施できます。
参考:2024年改定後の保険適用条件の詳細はこちら。
セレック治療は保険適用できる?保険適用できる箇所と素材について|つじの歯科医院
「費用が高い」という理由でセレックを選ばない患者は一定数います。しかし、その判断が本当に患者の利益につながっているかどうかは、長期的なコストで考えないとわかりません。
厚生労働省の実態調査によると、保険適用のメタルインレー(銀歯)の平均寿命は約5.6年、CR充填(プラスチックの詰め物)は約5.1年です。一方、セレック治療の生存率は15年後で94%、20年後で90%というデータが報告されています(長期耐久性に関する複数の研究より)。
この差を具体的な費用に置き換えると、銀歯を20年間で3〜4回やり直した場合、1回あたり3,000〜5,000円(保険3割)の治療費に加えて、再治療のたびに歯を削ることになります。再治療を繰り返すうちに歯質が薄くなり、最終的に抜歯となれば、インプラント治療で1本あたり30〜50万円の費用と手術の負担が発生します。
| 項目 | 保険の銀歯 | セレック(自費) |
|---|---|---|
| 初期費用(1本) | 3,000〜5,000円 | 4万〜12万円 |
| 平均寿命 | 約5〜7年 | 15年以上(20年後生存率90%) |
| 20年間の再治療回数(目安) | 3〜4回 | 0〜1回 |
| 二次カリエスリスク | 高い(適合精度の問題) | 低い(化学接着・精密適合) |
| 抜歯・インプラントリスク | 相対的に高い | 相対的に低い |
つまり長期的にはセレックの方がコスパに優れるケースが多い、ということです。
銀歯が「安い」と感じるのは初期費用だけを見た場合の話です。患者への説明でこの視点を提供できると、セレックの自費費用に納得感を持ってもらいやすくなります。セレックの費用を「投資」として位置づける説明フレームは、患者の意思決定を支援するうえで非常に有効です。
参考:銀歯とセラミックの長期コスト比較について詳しく解説されています。
銀歯は平均7年?セラミックとの寿命の違いと「長期的コスト」の真実|東京審美歯科
「セレックは高くて無理」と言う患者に対して、最後に伝えてほしい情報があります。それが医療費控除の活用です。
医療費控除とは、1月1日から12月31日の1年間に、本人または生計を共にする家族のために支払った医療費の合計が10万円(総所得金額等が200万円未満の方は総所得の5%)を超えた場合に、確定申告をすることで所得税の一部が還付される制度です。
ここで重要なのは、セレックの自費治療費も医療費控除の対象になる、という点です。「審美目的のみ」と判断されるケースは対象外になりますが、虫歯治療・機能回復を目的としたセレック治療はほぼすべて対象となります。
具体的な節税効果のイメージを見てみましょう。
還付額だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、複数本の治療や家族の医療費を合算すれば控除額は大きくなります。また、通院のための公共交通機関の交通費も控除対象に含まれます。
領収書は必ず保管することが条件です。患者に「来年の確定申告まで領収書を大切に保管してください」と一言添えるだけで、患者の不満を大きく減らせる場合があります。医療費控除の存在を知らずに損している患者は実際に多いのです。
また、高所得の患者の場合、所得税率が高いほど還付額も増えます。自費治療に踏み切れないでいる患者に対して、「治療費の一部が戻ってくる可能性があります」と伝えることは、患者の背中を押す有効なコミュニケーションになります。
参考:セレック治療と医療費控除の詳細はこちらをご確認ください。
セレック治療は医療費控除の対象になる?|つじの歯科医院
十分な情報が集まりました。記事を作成します。