プロトラクション・肩甲骨の動きで歯科従事者の肩こりを改善する方法

歯科従事者の96%が経験する肩こりや筋骨格系障害。その根本原因は肩甲骨のプロトラクション不全にある可能性があります。前鋸筋の働きや正しい動作習慣を理解することで、慢性的な痛みを予防できるのでしょうか?

プロトラクションと肩甲骨の動きを歯科従事者が正しく理解する方法

肩甲骨を「後ろに引く」ことが正しい姿勢だと思っていませんか?実は後ろに引きすぎると、診療中に前鋸筋が過度に引き伸ばされ、肩の慢性痛リスクが高まります。


この記事の3つのポイント
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プロトラクションとは何か

肩甲骨を外側・前方へスライドさせる動きで、腕を前に伸ばすあらゆる動作の土台となる。前鋸筋・僧帽筋が協調して働くことで成立する。

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歯科従事者が陥りやすいリスク

国際研究では歯科衛生士の96%が筋骨格系障害(MSD)を経験。頸部・肩部への慢性的な負荷が蓄積し、離職の一因にもなっている。

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プロトラクション改善の具体策

壁押しエクササイズ・四つ這いプッシュ・セラタスパンチなど、診療前後でも実践できる前鋸筋強化ドリルを具体的に解説する。


プロトラクションとは何か:肩甲骨が担う解剖学的な役割

プロトラクション(protraction)とは、肩甲骨が背骨(脊椎)から離れるように外側・前方へとスライドする動きのことです。日本語では「肩甲骨の外転・内旋位への動き」と表現されることもありますが、シンプルに言えば「腕を前に伸ばすとき、肩甲骨もいっしょに前へ滑っていく」状態を指します。


例えば、ユニット脇の器具に手を伸ばす動作、患者さんに器具を渡す動作、あるいはマウスをクリックする動作でも、このプロトラクションは常に発生しています。腕を前に出せばほぼ必ずプロトラクションが起きる、と覚えておけばOKです。


反対方向の動きは「リトラクション」と呼ばれ、肩甲骨を背骨に引き寄せる動きです。プロトラクションとリトラクションが交互にスムーズに行われることで、肩関節への余計な負担を分散させるクッションのような働きをしています。


🔎 プロトラクションに関わる主な筋肉を整理すると以下のとおりです。


| 筋肉名 | 主な役割 |
|---|---|
| 前鋸筋(ぜんきょきん) | 肩甲骨を外側へ押し出す・肋骨に張り付ける主役筋 |
| 僧帽筋上部繊維 | 肩甲骨の挙上をサポート |
| 僧帽筋下部繊維 | 肩甲骨の下方安定を担う |
| 大胸筋・小胸筋 | プロトラクションの補助的な牽引力を提供 |


特に重要なのが「前鋸筋」