中古で購入したポーセレンファーネスは、温度較正なしだと10℃以上ずれることがある。
中古のポーセレンファーネスを購入する際、まず把握しておきたいのが価格相場です。Yahoo!オークションでの過去120日間のデータを見ると、約45件の落札価格は平均93,331円となっています。つまり、10万円前後が中心的な価格帯ということですね。
ただし、この価格には大きな幅があります。機種の状態や付属品の有無、メーカーによって価格は大きく変動します。例えば、状態の良いイボクラール社のプログラマットEP3010は552,000円で落札された事例があり、一方でデンケン社のポーセレンファーネスは51,000円という価格で取引されています。この価格差は、機種のグレードや使用状況によるものです。
オークファンのデータでは、直近90日の平均落札価格は113,909円と、若干高めの数字が出ています。市場全体を見ると、およそ5万円から55万円の範囲で取引されているのが実情です。
新品との価格差も重要なポイントです。新品のポーセレンファーネスは、モリタのセラフュージョンPRESSが標準価格98万円、高機能機種では130万円を超えるものもあります。中古なら新品価格の1/3から1/10程度で入手できるため、開業資金を抑えたい歯科技工所にとっては大きな魅力です。
メルカリやジモティーといった個人間取引のプラットフォームでも、ポーセレンファーネスは出品されています。ジモティーでは4,000円という破格の価格で「訳あり」として出品されているケースもありますが、こうした格安品は動作保証がないため注意が必要です。
中古のポーセレンファーネスで最も重要なのが、温度精度の確認です。温度管理が不正確だと、セラミックの焼成不良につながり、技工物の品質を大きく損なうことになります。
実は、使用頻度の高いポーセレンファーネスでは、設定温度と実際の庫内温度が10℃以上ずれていることがあります。5ちゃんねるの歯科技工士スレッドでは、「某高級ファーネスの温度を調べたら、温度設定より釜が高温設定だった」という報告があり、メーカーや機種を問わず温度較正の重要性が指摘されています。
温度精度をチェックする方法として、焼成温度確認用のリングが市販されています。これは焼成時の庫内の最大焼成温度を知るためのツールで、価格は1個あたり14,000円程度です。焼成不足(透過性が前より悪い、白っぽい、シェイドディスクの発色が変わったなど)を感じた際に使用すると、焼成器の故障や熱線の交換時期を判断できます。
購入前に動作確認をする場合は、実際に焼成プログラムを走らせて温度上昇の様子を確認することが重要です。特に、ヒーターエレメントの状態をチェックしましょう。松風のオストロマット取扱説明書によれば、「ヒーターエレメントは消耗品であり、寿命は使用頻度により異なる」とされており、定期的にチェックプログラムを実行することでヒーターの交換時期を確認できます。
温度較正(キャリブレーション)の実施履歴も確認ポイントです。オークション出品物の中には、「キャリブレーションは4月に行いました」と明記されているものがあり、こうした機器は温度管理が信頼できる可能性が高くなります。逆に、較正履歴が不明な機器は、購入後に専門業者に依頼して温度較正を行う必要があり、その費用は数万円程度かかります。
ポーセレンファーネスのヒーターは消耗品であり、その寿命は機器の使用状況を左右する重要な要素です。中古機器を購入する際、ヒーターの残存寿命を把握しておかないと、購入後すぐに高額な交換費用が発生するリスクがあります。
高品質なポーセレンファーネスの本体寿命は、適切なメンテナンスを行えば20年から25年持続するとされています。しかし、これは主要な摩耗部品を適時交換した場合の話です。ヒーターエレメントの寿命は使用頻度により大きく異なり、ヘビーユーザーの場合は数年で交換が必要になることもあります。
ヒーター交換の目安を知るには、機器の自己診断機能を活用します。松風のオストロマットシリーズやDEKEMA社のファーネスには、チェックプログラムが搭載されており、定期的に実行することでヒーターの劣化状態を確認できます。温度上昇速度が遅くなった、設定温度に到達しない、温度が不安定になったといった症状が出たら、ヒーター交換のサインです。
ヒーター交換の費用は機種によって異なりますが、一般的に数万円から十数万円の範囲です。海外製の高級機種の場合、部品の取り寄せに時間がかかることもあり、その間は機器を使用できなくなります。中古購入時は、そのメーカーの部品供給体制やサポート体制も確認しておくことが重要です。
購入時にヒーターの状態を判断する方法として、出品者に使用年数や焼成回数を尋ねる、実際に焼成プログラムを走らせて温度上昇の様子を確認する、といった方法があります。オークションの場合、「動作良好」と記載があっても具体的な温度精度までは保証されていないケースが多いため、購入後の温度チェックは必須です。
ポーセレンファーネスの性能を左右するもう一つの重要な部品が真空ポンプです。真空ポンプは、焼成時に炉内の空気を排出し、気泡のない美しい仕上がりを実現するために不可欠な装置です。中古機器では、この真空ポンプの状態が購入後のトラブルに直結します。
真空ポンプには大きく分けて、オイル式とオイルレス式の2種類があります。オイル式は定期的なオイル交換が必要で、メンテナンスを怠ると吸引力が低下し、焼成品質に影響します。一方、オイルレス式は「オイル交換等のメンテナンスは不要なので、常にベストの性能を発揮します」と製品カタログに記載されており、ランニングコストの面で優れています。
中古機器を購入する際は、真空ポンプが付属しているか、付属している場合はその型式とメンテナンス履歴を確認することが重要です。オークションでは「真空ポンプ付き」と記載があっても、ポンプの動作状況や使用年数が不明なケースが多く見られます。松風のG-50DやG-200といった真空ポンプは中古市場でも単体で取引されており、状態の良いものは数万円の価値があります。
真空ポンプの動作確認では、以下の点をチェックしましょう。まず、ポンプを起動した際の異音がないか確認します。ガラガラという異音やモーターの回転が不安定な場合は、内部の摩耗や故障が疑われます。
次に、真空度が適切に保たれるか確認します。
ファーネス本体とポンプを接続して真空引きを行い、規定の真空度に到達するかテストします。
オイル式ポンプの場合、オイルの状態も重要です。オイルが黒く濁っている、量が不足している場合は、すぐにオイル交換が必要です。オイル交換を長期間怠ると、ポンプ内部が摩耗し、最悪の場合はポンプ本体の交換が必要になります。ポンプ本体の交換費用は数万円から十万円以上かかることもあり、中古機器購入時の想定外の出費となります。
中古のポーセレンファーネスを購入したら、すぐに使い始める前に、まず全体的なメンテナンスを実施することをお勧めします。購入時の価格が安くても、メンテナンスを怠ると長期的には高くつくことになります。
最初に行うべきは、温度較正です。前述の通り、中古機器では温度精度が狂っているケースが多く、購入後すぐに専門業者に依頼して較正を行うことで、焼成トラブルを未然に防げます。較正費用は業者によって異なりますが、一般的には数万円程度です。この初期投資は、後の技工物の失敗による損失を考えれば必要経費と言えるでしょう。
次に、ヒーターエレメントの状態チェックです。機器に搭載されているチェックプログラムを実行し、ヒーターの劣化状態を把握します。交換が必要と判断された場合は、早めに部品を発注しておくことで、使用中の突然の故障を防げます。ヒーター交換は専門技術が必要なため、メーカーや代理店に依頼するのが安全です。
真空ポンプのメンテナンスも重要です。オイル式の場合、購入直後にオイルを新品に交換することで、ポンプの性能を最大限に引き出せます。オイル代自体は数千円程度ですが、この小さな投資がポンプの寿命を大きく延ばします。オイルレス式の場合も、フィルターの清掃や交換が必要な場合があり、取扱説明書を確認しましょう。
定期メンテナンスの計画も立てておきます。理想的には、3ヶ月に1回程度の頻度で動作確認と清掃を行い、年に1回は専門業者による点検を受けることで、機器の寿命を延ばせます。メンテナンス記録をつけておくと、機器の状態変化を把握しやすくなり、トラブルの予兆を早期に発見できます。
購入した機器のメーカーや代理店のサポート体制も確認しておきましょう。国内メーカーのモリタ、松風、デンケンなどは、アフターサポートが充実しており、部品の入手も比較的容易です。一方、海外メーカーの場合は、部品の取り寄せに時間がかかることがあり、その間の代替機の確保も考慮する必要があります。
購入時に保証がない中古機器でも、購入直後に専門業者に点検を依頼することで、隠れた不具合を早期に発見できます。この時点で発見された問題は、出品者と交渉できる可能性もあります。オークションの場合、「ノークレーム・ノーリターン」が原則ですが、明らかな説明不足や虚偽があった場合は、返品や減額交渉の余地があります。
中古購入のメリットを最大限に活かすには、購入価格だけでなく、メンテナンス費用を含めたトータルコストで判断することが重要です。購入価格が9万円でも、メンテナンスに10万円かかれば、結局は新品の1/5程度の投資になります。それでも新品の98万円と比べれば大幅な節約ですが、想定外の出費にならないよう、購入前に予算計画を立てておくことをお勧めします。