ポルトガルプリンを作るのに「普通のプリンカップで十分」と思っているなら、それが失敗の原因になっています。
ポルトガルプリンとは、現地語で「Pudim de Ovos(プディン・デ・オボシュ)」と呼ばれる、卵をたっぷり使った濃厚で固めのプリンです。日本のカスタードプリンはとろとろ食感が主流ですが、ポルトガルプリンは全体がしっかり固まり、フォークでカットできるほどの食感が特徴です。
日本のプリンとの最大の違いは「型の大きさ」と「食べ方」にあります。ポルトガルでは一人用の小さなカップではなく、直径14〜16cmほどの大きなホール型で焼き上げ、家族や来客と食卓でカットして分け合って食べます。日本でいえばケーキを切り分けるような感覚で、クリスマスや誕生日などの特別な日には欠かせないデザートとされています。
また、材料にも大きな違いがあります。一般的なポルトガルプリンには薄力粉が少量加えられるレシピが多く、これがしっかりとした固さとねっとりした食感を生み出します。バニラの代わりにレモンの皮をすりおろして香りをつけるのもポルトガルらしいアレンジです。卵は全卵と卵黄を合わせて使い、Sサイズ型(直径14cm)で全卵4個+卵黄2個が目安です。卵の量が多い分だけリッチな味わいになります。
型についても独特の文化があります。ポルトガルでは「どの家庭にも1つはある」と言われるほどプリン型が生活に根づいており、特に老舗工房MARDOUROのアルミ製プリン型が定番として知られています。この型は蓋つきで、そのまま冷蔵庫に保管できる実用性も兼ね備えています。
| 比較項目 | 日本のプリン | ポルトガルプリン |
|---|---|---|
| 食感 | とろとろ・なめらか | しっかり固め・ねっとり |
| 型のサイズ | 一人用カップ(80〜150ml) | ホール型(直径14〜16cm) |
| 食べ方 | 個別に食べる | 切り分けてみんなで食べる |
| 香りづけ | バニラエッセンスが多い | レモンの皮・バニラビーンズ |
| 特徴材料 | 卵黄・牛乳・生クリーム | 全卵+卵黄・薄力粉・牛乳 |
つまり、型の選択がそのままプリンの仕上がりを左右します。
ポルトガルプリン型の定番として多くの料理好き主婦の間で話題になっているのが、ポルトガル第2の都市ポルトにある老舗工房「MARDOURO(マルドウロ)」製のアルミ型です。ポルトの対岸ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアに工房を構え、3代目のマリアナが現在率いるこのブランドは、創業から80年以上の歴史を持つ信頼のメーカーです。
MARDOUROのプリン型には現在主にSサイズとMサイズの2種類があります。
この型の最大の特徴はアルミ素材による「直火対応」です。カラメルソースを別の鍋で作らずに、プリン型に直接グラニュー糖を入れて火にかけてカラメルを作れます。洗い物が1つ減り、工程がシンプルになります。これは非常に便利です。
また蓋つきのため、焼き上がり後にそのまま冷蔵庫に入れて保管できます。一般的なプリン型にはない機能で、ラップをかける手間も省けます。さらにプリン以外にも、ゼリーや焼き菓子にも活用でき、ポルトガルの伝統菓子「ボーロレイ(Bolo Rei)」をパウンド生地でアレンジしたレシピも人気です。
参考リンクとして、MARDOUROプリン型と「バルバラさんのプリン」レシピの詳細を確認できます。
バルバラさんのプリン by mememeal(CASTELLA NOTE)
この型は人気のため入荷待ちになることも多く、国内では「CASTELLA NOTE」や「FOOD ORCHESTRA」などのオンラインショップで販売されています(価格:¥3,960前後)。メルカリなどフリマアプリにも出品されることがあるため、まずは在庫を確認してみましょう。
「MARDOUROの型を今すぐ手に入れられない」という場合でも、代用品でポルトガルプリンを作ることは可能です。ただし、すべての型が代用できるわけではないため、選ぶ際には明確な基準があります。
代用品として使えるのは主にオーブンの熱に耐えられる素材のものです。具体的には耐熱ガラス製のボウル(iwaki製など・耐熱温度120℃以上のもの)、ステンレス製ボウル、ホーロー製容器、アルミ製のケーキ型などが候補に挙がります。直径14〜16cm程度で深さが7cm以上あれば、形状的にも問題ありません。
一方で代用に向かないものもあります。耐熱表示のないガラス容器、プラスチック製の容器、シリコン型は変形や割れのリスクがあります。また、市販のプリンカップ(50〜200ml程度の小型容器)は1人分ずつ作れますが、ポルトガルプリンの「みんなで切り分けて食べる」という本来の楽しさは半減します。
代用品を使う際にひとつ注意が必要です。アルミ型と違って直火に対応していない容器がほとんどのため、カラメルソースは必ず別の鍋や小フライパンで作り、型に流し込む方法に変わります。熱いカラメルを移す際にはミトンを使い、型を温めておくとカラメルが型に均一に広がりやすくなります。
これは使えそうです。持っている耐熱容器を確認するだけでOKです。
ポルトガルプリンを型に流し込んでオーブンに入れたとき、最もよくある失敗が「す(巣)が入る」ことです。「す」とはプリンの断面に気泡のような穴がぼこぼこと開いている状態で、食感がスポンジのようにパサついてしまいます。原因は加熱温度が高すぎることです。
卵のたんぱく質が固まるのは60〜70℃ですが、80℃を超えると内部の水分が急激に蒸発し始め、逃げ場を失った水分が「す」として残ります。つまり、型の中でプリン液が100℃近くまで上がってしまうと仕上がりに穴が開く、ということです。温度管理が原則です。
具体的な対策は以下の通りです。
焼き上がりの確認方法も重要です。型を軽くゆすってみて、表面が波打たずに全体がしっかり固まっていればOKです。まだぷるぷるしている場合は5〜10分追加して焼きます。焼けたらすぐに型から取り出さず、常温で3時間ほどかけてゆっくり冷ましてから冷蔵庫に入れます。急激な温度変化も「す」の原因になるため、この冷まし時間も大切です。
参考リンクとして「す」が入る仕組みと対策が分かりやすく解説されています。
プリンが固まらない原因はこれ!「す」が入る理由をやさしく解説(おやつの魔法)
ポルトガルプリンは大きなホール型で作るため、型抜きに失敗すると悲惨なことになります。十分に冷えていない状態でひっくり返すと、プリンがぐちゃっと崩れて皿の上でつぶれてしまいます。型抜きは焦らず手順を守ることが条件です。
型抜きの正しい手順は次の通りです。
それでも型から抜けない場合は、軽く左右に揺すってみてください。重力と空気の力で自然に落ちてきます。無理に力を入れると崩れるため、じっくり待つことが大切です。
MARDOUROの型を使う場合、焼き上がりの熱いうちにスプーンで型の内側をぐるっと一周なぞっておくと、冷えた後に型から出しやすくなります。このひと手間がある意味で最大のコツです。
カラメルについても触れておきます。MARDOUROの型はアルミ製で直火対応のため、型に直接グラニュー糖50〜60gを入れて強火にかけ、カラメルを作ることができます。煙が出て濃い茶色になったら火を止め、大さじ1のお湯を加えてカラメルを伸ばします。このとき、カラメルが飛び跳ねてとても熱いため、布巾やミトンで型の縁を持ちながら作業しましょう。やけどに注意すれば問題ありません。
また、型抜き後のカラメルの見た目についてひとつ知っておきたい点があります。アルミ型で直接カラメルを作ると、型の内側表面がくもりやすくなります。これはアルミと高温カラメルの反応によるもので、使用上の問題はありません。外見を気にする場合は、別の鍋でカラメルを作って型に流し込む方法を選びましょう。
参考リンクとして、型から綺麗にプリンを取り出す方法が分かるレシピページです。
ポルトガルプリン by KADEL(クックパッド)
MARDOUROのプリン型を手に入れたら、ポルトガルプリンだけに使うのはもったいないという発想が生まれます。実はこの型、プリン以外にも複数のポルトガル菓子を作ることができる万能道具です。
料理家mememealのみおさんが考案したレシピには、プリン型を使った3つのメニューが紹介されています。
まずは「バルバラさんのプリン」です。上述のように、全卵・卵黄・牛乳・レモンの皮を使ったシンプルで素朴なポルトガル家庭のプリンです。SサイズとMサイズそれぞれに分量が調整されており、初めて作る方にもわかりやすいレシピです。冷蔵庫で3〜4日保存できます。
次に「ガスパショゼリー」です。ポルトガルの冷製スープ「ガスパチョ」をゼリーに仕立てたもので、夏に喜ばれる大人のおもてなし料理として活用できます。プリン型の蓋ごと冷蔵庫に入れて固めるだけで、型の形がそのまま見た目の華やかさになります。
そして「パウンド生地のオリジナルボーロレイ」です。ボーロレイとはポルトガルのクリスマスから新年にかけて食べる「王様のお菓子」で、本来はパン生地で作りますが、日本人の口に合わせてパウンドケーキ生地にアレンジされています。ラムレーズンやくるみ、ドレンチェリーを混ぜ込み、マデイラワインのシロップで仕上げる贅沢な焼き菓子です。
| レシピ名 | 用途・シーン | 難易度 |
|---|---|---|
| バルバラさんのプリン | 日常・特別な日のデザート | ★★☆(中級) |
| ガスパショゼリー | 夏のおもてなし料理 | ★☆☆(初級) |
| パウンドボーロレイ | クリスマス・年末年始のギフト | ★★★(上級) |
プリン型1つで季節ごとに使い回せる、これは使えそうです。
さらにプリン型を使わないときは、小物入れや観葉植物の鉢カバーとして飾っておくこともできます。アルミのクラシックなデザインはキッチンインテリアとしても様になり、「見えるところに飾りたい道具」として愛用者も多い一品です。料理家やインスタグラマーを中心に、型そのものを撮影してインテリアとして紹介する投稿も増えています。
参考リンクとして、プリン型を使ったボーロレイのレシピが詳しく紹介されています。
プリン型で作る、パウンド生地のオリジナルボーロレイ by mememeal(CASTELLA NOTE)