自費診療では2万円以上かかることも。
歯科医療従事者が知っておくべき検査費用の実態と医療費控除の落とし穴とは?
自費でpcr検査を受けた後に陽性判明すると、2万円以上が医療費控除の対象外です。
2025年現在、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから、pcr検査の費用体系は大きく変化しています。医療機関で症状があり医師が検査を必要と判断した場合、pcr検査は保険適用となります。保険適用の場合、検査料と判断料を合わせた総額のうち、自己負担割合に応じた金額を窓口で支払います。
3割負担の方の場合、核酸検出pcr検査(1,800点)と微生物学的検査判断料(150点)を合わせて約2,550円の自己負担です。2割負担なら約1,700円、1割負担なら約850円となります。これらの金額に初診料や再診料が加算されるため、実際の窓口負担は3,000円から5,000円程度になるケースが一般的です。
歯科医療従事者の方が患者対応で感染リスクにさらされ、発熱などの症状が出た場合も、この保険適用の対象になります。医師の診断のもとで検査を受ける限り、高額な自己負担を避けられるということですね。
ただし、海外渡航前の陰性証明や、無症状での自主的な検査は保険適用外です。こうした場合は全額自己負担となり、pcr検査だけで22,000円前後、診断書が必要な場合はさらに数千円が加算されます。症状の有無と医師の判断という2つの条件が、費用を大きく左右するわけです。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」では、医療提供体制と費用負担の詳細が説明されています。
2025年4月以降、多くの医療機関で多項目同時pcr検査機器が導入されています。この検査は、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザA・B型、RSウイルス、マイコプラズマなど、最大15種類の病原体を約20分で同時に検出できる画期的なシステムです。
発熱や呼吸器症状がある患者に対して、原因を特定するために非常に有効な検査です。従来は複数の検査を別々に行う必要があったところを、1回の鼻咽頭ぬぐい液採取で済ませられるため、患者の負担も軽減されます。検査時間も従来のpcr検査より大幅に短縮されています。
しかし、費用面では注意が必要です。多項目同時pcr検査は保険適用ですが、検査点数が1,350点と通常のpcr検査より高く設定されています。判断料などを含めると約1,500点となり、3割負担の方で約4,500円、2割負担で約3,000円、1割負担で約1,500円の自己負担です。
歯科医院で働くスタッフが体調不良を訴えた際、原因を早期に特定したい場合にこの検査は役立ちます。ただし通常のpcr検査と比べて約2,000円高額になるため、診療所の経費として負担する場合は予算への影響を考慮する必要があります。経営者として、スタッフの健康管理にどこまで費用をかけるか判断が求められる場面です。
いうち内科クリニック「多項目同時PCR検査機器導入について」で、検査の詳細な内容と費用が確認できます。
pcr検査費用が医療費控除の対象になるかどうかは、検査を受けた経緯によって判断が分かれます。国税庁の見解によれば、医師の判断で受けたpcr検査は医療費控除の対象です。一方、自己判断で受けた検査は原則として対象外とされています。
医療費控除の対象となるのは「医師による診療や治療のために支払った費用」と定義されています。発熱や咳などの症状があり、医師が新型コロナウイルス感染症の疑いがあると判断してpcr検査を指示した場合、その検査費用は診療の一環として扱われます。この場合、自己負担した金額が医療費控除の対象です。
ところが、無症状で「念のため陰性を確認したい」という理由で自主的にpcr検査を受けた場合は、医療費控除の対象外になります。海外渡航前の陰性証明取得や、イベント参加のための検査も同様です。これらは予防目的や証明目的であり、治療を伴わないためです。
ただし重要な例外があります。自己判断で受けたpcr検査でも、結果が陽性で引き続き治療を開始した場合は、その検査費用も医療費控除の対象に含められます。治療に先立って行われた診察と同様に扱われるという理屈です。つまり、自費で22,000円を支払って検査を受け、陽性が判明して治療した場合、その22,000円も控除対象になります。
歯科医院の経営者が従業員のために検査費用を負担する場合、福利厚生費として経費計上できるケースもあります。業務上の必要性が認められれば、従業員の健康管理費用として妥当な支出です。ただし、特定の役員だけに限定して実施すると役員報酬と見なされる可能性があるため、公平な基準で実施することが大切です。
国税庁「新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用は医療費控除の対象となりますか」で、具体的な判断基準が示されています。
歯科医療の現場では、エアロゾルが発生しやすい処置が多く、従業員の感染リスクが高い環境です。スタッフが発熱などの症状を訴えた際、診療所としてどのように対応し、費用負担をどう処理するかは重要な経営判断になります。
多くの歯科医院では、従業員が体調不良を訴えた場合、まず医療機関を受診してもらい、必要に応じてpcr検査を受けるよう指示しています。この場合、保険適用で検査を受けられれば、従業員本人の自己負担は2,550円程度です。医院側が福利厚生の一環として費用を補助する場合でも、比較的少額で済みます。
問題となるのは、無症状の従業員に対して医院側が予防的にpcr検査を求める場合です。症状がない状態での検査は保険適用外となり、1人あたり22,000円程度の費用が発生します。5名のスタッフ全員に検査を実施すれば11万円の出費です。
このような予防的検査の費用を医院が負担する場合、「福利厚生費」または「衛生費」として経費計上できます。
業務上の必要性が認められるためです。
ただし、特定の役員だけに検査を実施し費用を負担すると、それは「役員報酬」と見なされ、源泉徴収の対象になる可能性があります。合理的な基準で全従業員に平等に適用することが条件です。
実務上、多くの歯科医院では次のような対応をしています。症状がある従業員には速やかに医療機関受診を促し、保険適用での検査を受けてもらう。無症状での予防的検査は、濃厚接触者となった場合など必要性が高いケースに限定する。検査費用の一部または全額を医院が補助する場合は、就業規則や福利厚生規程に明記しておく。
従業員の健康管理と感染拡大防止、そして経営コストのバランスを考えた運用が求められます。検査体制を整えることは、患者への安心感にもつながる投資と言えるでしょう。
pcr検査の費用は、保険適用の場合は全国一律の点数で決まりますが、自費診療の場合は医療機関ごとに価格設定が異なります。都市部の自由診療クリニックでは、pcr検査単独で22,000円程度が相場です。一方、地方の診療所では15,000円から18,000円程度と、やや低めに設定されているケースもあります。
自費でのpcr検査に陰性証明書や英文診断書が必要な場合、別途3,000円から10,000円の文書料が加算されます。海外渡航用の証明書は特に高額で、検査費用と合わせて30,000円を超えることも珍しくありません。航空会社や渡航先の国が指定する検査時間内に結果を得る必要があるため、特急料金が上乗せされる場合もあります。
抗原検査とpcr検査の費用比較も重要です。抗原検査は保険適用で3割負担なら約1,330円と、pcr検査より1,000円以上安価です。結果が15分から30分で出るというメリットもあります。ただし、抗原検査はウイルス量が少ない感染初期には偽陰性が出やすいという欠点があります。
歯科医療従事者が自身の健康管理で検査を受ける際、どの検査を選ぶかは症状と目的次第です。明らかな症状があり早期診断が必要なら抗原検査、より確実な結果を求めるならpcr検査、複数の病原体の可能性を考えるなら多項目pcr検査という選択基準が一般的です。費用と精度、結果が出るまでの時間を総合的に判断することになります。
医療機関によっては、複数回の検査をパッケージ料金で提供している場合もあります。定期的な検査が必要な医療従事者向けのプランを設けているクリニックもあり、単価を抑えられる可能性があります。所属する歯科医師会や医療従事者向けの福利厚生サービスで、検査費用の補助制度がないか確認する価値があります。
感染症対策は継続的な取り組みが必要です。単発の検査費用だけでなく、年間を通じた総コストを見据えた予算計画を立てることが、歯科医院経営においては賢明な判断と言えるでしょう。