オラドールspトローチ違い成分効能適応

オラドールとSPトローチは同じ口腔内殺菌剤でも、主成分が異なり殺菌スペクトルや糖分含有量に大きな差があります。歯科医療現場での適切な使い分けを知っていますか?

オラドールspトローチ違い成分効能適応

処方トローチには1錠約1gの白糖が入っている


📋 この記事の3ポイント要約
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主成分の違いと殺菌スペクトル

SPトローチはデカリニウム塩化物、オラドールはドミフェン臭化物を主成分とし、抗菌スペクトルに違いがあります

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白糖含有による齲蝕リスク

オラドール・SPトローチともに1錠約1gの白糖を含有し、頻回使用で齲蝕リスクが上昇する可能性があります

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供給状況と代替処方

SPトローチの出荷調整時には同効薬のオラドールが代替薬として選定されています


オラドールとspトローチの主成分と作用機序の違い


オラドールとSPトローチは、どちらも口腔内殺菌を目的としたトローチ剤ですが、主成分が異なります。SPトローチの有効成分はデカリニウム塩化物で、1錠あたり0.25mgを含有しています。一方、オラドールトローチの有効成分はドミフェン臭化物で、1錠あたり0.5mgを含有しています。


どちらも陽イオン界面活性剤に分類される消毒薬です。


作用機序については、両剤とも細菌の細胞膜に作用して殺菌効果を発揮します。デカリニウム塩化物は細菌の蛋白質に作用し、口やのどの細菌を殺す働きがあります。ドミフェン臭化物は脂肪を可溶化し蛋白を変性する性質を有するため、細菌の細胞壁外膜および細胞質膜を急激に破壊することにより殺菌作用を示すと考えられています。


抗菌スペクトルにも違いが見られます。ドミフェン臭化物はグラム陽性菌、陰性菌のほか、真菌やウイルスにも強い殺菌作用を示すという特徴があります。臨床分離株に対する最小発育阻止濃度(MIC)は、グラム陽性およびグラム陰性球菌に対して0.75~3.1μg/mL、シュードモナス(0.37μg/mL)を除くグラム陰性桿菌に対して6.2~12.5μg/mL、カンジダに対して1.5~3.1μg/mLとなっています。


つまり広域スペクトルということですね。


各種抗生物質耐性ブドウ球菌およびカンジダアルビカンスに対しても低濃度で強力な殺菌作用を示すことが確認されています。デカリニウム塩化物も同様にグラム陽性菌や真菌などに抗菌作用を示しますが、具体的なスペクトルの広さには若干の違いがあると考えられます。


歯科臨床において抗菌薬を選択する際には、病原菌に有効でできるだけ抗菌スペクトルの狭い薬剤を選択することが原則です。しかし、口腔内の感染予防や咽頭炎などの治療では複数の菌種が関与することが多いため、広域スペクトルの殺菌剤が選択されるケースもあります。


オラドールの医薬品インタビューフォーム(日医工)では、作用機序や抗菌スペクトルの詳細データが掲載されています


オラドールとspトローチの効能効果と保険適応の範囲

両剤の効能効果はほぼ同様に設定されています。SPトローチ(デカリニウム塩化物)の効能効果は、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防です。オラドールトローチ(ドミフェン臭化物)も同じく、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防に対して保険適応が認められています。


歯科診療では特に重要な適応症です。


用法用量については、SPトローチはデカリニウム塩化物として通常1回0.25mgを1日3~6回投与し、口中で徐々に溶解させます。オラドールトローチはドミフェン臭化物として通常1回0.5mgを1日3~6回投与し、口中で徐々に溶解させます。いずれも症状により適宜増減が可能となっています。


臨床効果については、オラドールトローチの承認時の臨床試験データが参考になります。承認適応疾患488例での疾患別臨床効果は、咽頭炎で63.2%(91/144例)、扁桃炎で86.0%(43/50例)、口内炎で85.6%(119/139例)、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防で98.1%(152/155例)の有効率となっています。


特に抜歯後の感染予防では高い有効率ですね。


歯科での処方においては、口内炎の治療や抜歯後の感染予防目的で頻繁に使用されます。口腔用ステロイド製剤(ケナログ、デキサルチンなど)が処方される口内炎に対して、トローチ剤は殺菌消毒を目的として併用されることもあります。抜歯創を含む口腔創傷の感染予防では、98.1%という高い有効率が示されており、歯科外科処置後の日常的な処方薬として定着しています。


保険請求上の扱いについては、オラドール・SPトローチともに薬価基準収載されており、歯科診療報酬での算定が可能です。オラドールトローチ0.5mg、オラドールSトローチ0.5mgの薬価は1錠8.9円、SPトローチ0.25mg「明治」の薬価は1錠5.70円となっています(令和6年度薬価基準)。


歯科関係薬剤点数表(都道府県歯科医師会)には、トローチ剤の保険適応症と使用上の注意が詳しく記載されています


オラドールトローチとオラドールsトローチの味と選択基準

オラドール製剤には、通常のオラドールトローチとオラドールSトローチの2種類があります。両者の主成分と効能効果は全く同じですが、香料が異なります。オラドールトローチは香料としてハッカ油、ユーカリ油、ウイキョウ油を使用しており、ハッカ様の芳香がする白色のトローチです。


成人向けのスッキリした味わいです。


オラドールSトローチはストロベリーフレーバーを使用しており、いちご様の芳香がする淡紅色のトローチです。添加剤として赤色106号が含まれているため、ピンク色をしています。この味の違いは、患者の嗜好や年齢に応じた選択を可能にするためのものです。


小児患者に対する処方では、オラドールSトローチが選択されることが多くなっています。ストロベリー味は子どもにも受け入れられやすく、服薬コンプライアンスの向上につながります。ハッカ味が苦手な成人患者に対しても、オラドールSトローチが代替選択肢となります。


味の選択が服薬継続につながります。


一般名処方を行う際には注意が必要です。処方箋に「ドミフェン臭化物トローチ」と記載した場合、薬局でオラドールトローチ(ハッカ味)とオラドールSトローチ(ストロベリー味)のどちらを調剤するか判断に迷うケースがあります。特に小児に対する処方では、備考欄に「ストロベリー味希望」などと明記することで、適切な製剤が選択されやすくなります。


SPトローチとの味の比較では、SPトローチはほんのりとした甘みがあり、ミント系のスーッとした清涼感のある風味が特徴です。苦味はほとんど感じない方が多く、比較的服用しやすいお薬といえます。オラドールトローチのハッカ味も同様に清涼感がありますが、ハッカ油の独特の風味があるため、好みが分かれることがあります。


患者の嗜好確認が大切ですね。


オラドールとspトローチの白糖含有量と齲蝕リスク管理

処方トローチに含まれる白糖の問題は、歯科医療従事者として特に注意すべき点です。オラドールトローチ、オラドールSトローチ、SPトローチのいずれも、1錠中に約1gの白糖(普通の砂糖)が添加されています。トローチ剤の製剤特性上、口中で徐々に溶解させるために糖分が必要となるためです。


これは意外と見落とされがちなポイントです。


1日3~6回の使用が推奨されているため、1日あたりの白糖摂取量は3~6gに達します。1週間継続使用すると21~42g、2週間では42~84gもの砂糖を摂取することになります。これは角砂糖(1個約3~4g)に換算すると、1日0.75~1.5個、1週間で5.25~10.5個、2週間で10.5~21個に相当します。


齲蝕リスクの観点から問題となるのは、摂取量だけでなく摂取頻度とだらだら舐めによる口腔内pH低下の持続です。トローチは約10~15分かけてゆっくり溶解させるため、その間口腔内は酸性に傾いた状態が続きます。1日に3~6回使用すると、口腔内が酸性環境にさらされる時間が大幅に増加し、脱灰が進行しやすくなります。


口腔内環境の悪化リスクが高まります。


齲蝕ハイリスク患者に対する処方では、特に注意が必要です。既に多数の齲蝕がある患者、唾液分泌量が少ない患者、口腔衛生状態が不良な患者などでは、トローチ使用による齲蝕リスクの増大が懸念されます。こうした患者には、使用後の口腔清掃の励行やフッ化物洗口の併用など、追加的な齲蝕予防措置を指導することが重要です。


市販のトローチには「ノンシュガー」と表示されている製品もありますが、医療用医薬品のトローチ(オラドール、オラドールS、SPトローチなど)には白糖が含まれているため、患者への情報提供が必要です。特に糖尿病患者や齲蝕リスクの高い患者に対しては、この点を説明した上で処方の必要性を判断すべきです。


患者への適切な説明が求められます。


代替策としては、使用期間を必要最小限にとどめる、使用後に水で口をすすぐよう指導する、就寝前の使用を避ける、といった配慮が考えられます。抜歯後の感染予防目的であれば、使用期間は通常数日から1週間程度で済むため、齲蝕リスクは限定的です。しかし、慢性的な口内炎や咽頭炎で長期使用が必要な場合は、定期的な口腔内チェックとフッ化物応用などの予防処置を併用することが望ましいでしょう。


リタ歯科クリニックのブログでは、トローチと虫歯の関係について詳しい解説があります


オラドールとspトローチの供給状況と代替処方の実際

近年、医薬品の供給不安定が問題となっており、トローチ剤も例外ではありません。SPトローチは2022年以降、急激な需要増加により出荷調整となった時期がありました。令和4年度の医療機関薬事委員会資料によると、SPトローチが出荷調整となったため代替薬選定が行われ、同効薬はオラドールのみであるとされています。


供給状況を常に把握しておく必要があります。


2025年には一部の包装規格で限定出荷や供給停止の状況が発生しました。PTP18錠包装の代替えとしてPTP6錠包装への需要急増に備えて限定出荷が行われるなど、在庫状況に応じた供給調整が続いています。オラドールトローチ・オラドールSトローチについても、2025年1月に限定出荷の通知が出され、その後11月に限定出荷解除の通知が出されるなど、供給状況が変動しています。


歯科医療機関では、こうした供給状況に応じて処方薬を柔軟に変更する必要があります。SPトローチが入手困難な場合、オラドールトローチまたはオラドールSトローチを代替薬として処方することが推奨されています。主成分は異なりますが、いずれも陽イオン界面活性剤による殺菌作用を持ち、効能効果もほぼ同等であるため、臨床的には問題なく代替可能とされています。


代替処方時の患者説明も重要です。


処方変更時には患者への説明が重要です。「いつもと違う薬が出ている」と患者が不安を感じることがないよう、「同じような効果のある薬で、供給の関係で今回はこちらにしました」などと説明することで、患者の理解と安心が得られます。味が変わることについても、事前に伝えておくとよいでしょう。


在庫管理の観点からは、複数のトローチ剤を採用しておくことでリスク分散が可能になります。SPトローチとオラドールの両方を採用医薬品とし、供給状況に応じて処方を切り替えられる体制を整えておくことが望ましいでしょう。ただし、在庫管理コストや期限管理の負担も考慮する必要があります。


医薬品供給情報データベース(DSJP)では、医薬品の出荷調整や出荷停止などの供給状況がリアルタイムで確認できます。歯科医療機関の薬剤管理担当者は、このようなデータベースを定期的にチェックし、処方薬の供給状況を把握しておくことが推奨されます。


医薬品供給状況データベース(DSJP)では、トローチ剤を含む医薬品の供給状況が随時更新されています


オラドールとspトローチの副作用プロファイルと患者指導のポイント

トローチ剤は比較的安全性の高い医薬品ですが、副作用の可能性を理解しておくことは重要です。オラドールトローチ・オラドールSトローチの主な副作用として、腹痛(0.1~0.5%未満)、胃重圧感(0.1%未満)、腹部重圧感(0.1%未満)、悪心(0.1%未満)、下痢(0.1%未満)、舌のしびれ感(0.1%未満)、過敏症状(頻度不明)が報告されています。


発現頻度は比較的低いですね。


消化器症状が出現する理由は、トローチを溶解させる際に唾液とともに有効成分を嚥下することで、消化管粘膜に作用するためと考えられます。通常は軽度で一過性ですが、症状が持続する場合や悪化する場合は使用を中止し、医師に相談するよう指導します。


舌のしびれ感は、陽イオン界面活性剤が舌粘膜に直接作用することで生じる可能性があります。多くの場合、使用を続けているうちに慣れてくることもありますが、強いしびれ感や不快感が続く場合は処方変更を検討します。SPトローチとオラドールで感受性が異なることもあるため、一方で副作用が出た場合に他方を試してみる価値はあります。


過敏症状については、発疹、発赤、そう痒感などが出現した場合は直ちに使用を中止する必要があります。これは頻度不明とされていますが、アレルギー体質の患者では注意が必要です。初回処方時には、アレルギー歴を確認し、万一異常が現れた場合は速やかに連絡するよう指導しておきます。


適切な使用方法の指導も副作用予防につながります。トローチは口中で徐々に溶解させるものであり、噛み砕いたり飲み込んだりしてはいけません。急速に溶解させると局所の薬物濃度が高くなり、粘膜刺激や副作用のリスクが高まる可能性があります。


ゆっくり溶かすことが大切です。


使用タイミングについても指導が必要です。食事の直前直後は避け、食間に使用することで効果的な局所作用が得られます。就寝前の使用については、白糖含有の観点から歯磨き後の使用は避けるべきですが、抜歯後など感染予防が優先される場合は、使用後に水で軽く口をすすぐよう指導します。


長期使用に関しては慎重な判断が求められます。トローチ剤は対症療法であり、原因疾患の治療にはなりません。1週間使用しても症状が改善しない場合や悪化する場合は、他の治療法を検討する必要があります。漫然とした長期投与は、正常細菌叢の乱れや耐性菌の出現リスクにもつながる可能性があるため注意が必要です。


特定の背景を有する患者への注意点として、妊婦への投与については治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。


授乳婦への投与も同様です。


小児への使用は可能ですが、トローチを誤嚥しないよう注意が必要で、通常は3歳以上が対象となります。




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