クラウンよりも歯質保存でき、インレーよりも強度があるオンレー選択で、実は「咬頭被覆の判断ミス」が予後不良を3倍に高めます。
オンレーとインレーは、どちらも歯の一部を修復する補綴物ですが、その適応範囲には明確な違いがあります。インレーは歯の内部や溝を修復するために使用され、比較的小さな範囲の欠損を補う詰め物です。虫歯を削った後の歯の内部に詰めるもので、咬頭(歯の噛む面の突起部分)を覆わない形態が特徴となっています。
一方、オンレーはインレーよりも広範囲をカバーし、歯の表面全体や周辺部を補う部分的な被せ物です。最大の特徴は、一つ以上の咬頭を覆う点にあります。咬頭に咬合接触点がない場合や、歯の欠損が大きい場合に選択されます。
咬頭被覆が基本です。
適応基準の判断には、複数の要因が関与します。虫歯の大きさは最も基本的な判断材料ですが、それだけではありません。噛む力の強さ、どちら側の歯を主に使って噛むか、前歯がしっかり被さっているかといった咬合状態も重要な判断要素となります。エラが張っている方は噛む力が強い傾向にあり、より強度の高い修復が必要になることもあります。
無髄歯(神経を取った歯)の場合には、咬頭被覆が原則とされています。神経を失った歯は栄養供給が途絶え、経年的に脆くなる傾向があるためです。このような歯にインレーを選択すると、残存歯質が薄くなり、歯冠破折のリスクが高まってしまいます。
つまり咬頭被覆が必要です。
歯科医師が治療計画を立てる際には、咬合紙で咬合接触点を印記し、健全な咬頭に接触点があるかを確認します。咬頭に咬合接触点がある場合はインレー窩洞、健全な咬頭に接触点がない場合やマージン部に接触点がくる場合はオンレーが選択されます。
削る量と歯の残り具合も決定要因となります。インレーやオンレーは、できるだけ自分の歯を残したい場合に適しています。歯の損傷が少ないほど、インレーでの修復が可能です。逆に、歯が崩れていたり、広範囲に削らなければならない場合はクラウン(全部被覆冠)が選ばれます。
オンレーはその中間に位置する選択肢です。
オンレーに使用される材料には、保険適用の金属から自費診療のセラミック、ゴールドまで、幅広い選択肢があります。それぞれの材料には固有の特性があり、費用も大きく異なります。
保険適用の金属インレー・オンレーは、パラジウム合金が主に使用され、費用は3割負担で約2,000~3,300円程度です。噛める機能は変わりませんが、お口の中が暗くなり、歯肉の色も黒ずんでくることがあります。
金属アレルギーのリスクも存在します。
平均寿命は約5年と言われており、定期的な交換が必要になる可能性が高いです。
CAD/CAM冠(ハイブリッドレジン)は、保険適用で白い材料が使える選択肢として注目されています。費用は3割負担で約5,000~7,000円程度です。レジンとセラミックの複合材料で、ある程度の審美性を確保できますが、強度はセラミックに劣り、経年劣化により変色する可能性があります。
寿命は約5年程度です。
セラミックインレー・オンレーは、自費診療で55,000~110,000円程度が相場となっています。100%セラミックで作られた奥歯の詰め物・被せ物で、審美性に優れ、天然歯と同じ色調を再現できます。金属と違い、冷たいものがしみにくく、歯と化学的に接着しているため二次カリエス(虫歯の再発)のリスクが低いのが特徴です。
セラミックインレーやオンレーの11年生存率は約80%という研究結果があります。その破損原因で最も多かったのはセラミックの破折ですが、適切な手技と管理により10年以上、場合によっては一生機能することもあります。e-maxインレー(セラミックインレー)の硬さは400MPaで、天然歯とほとんど同じです。
平均的な寿命は10~15年とされています。
ゴールドインレー・オンレーは、70,000円程度が相場です。審美性が良くない点と熱伝導率が高い点を除けば、極めてメリットの多い歯科材料です。治療する歯はもちろんのこと、噛み合う歯にもやさしく、適合性に優れています。口の中で酸化されないため、金属アレルギーを起こす可能性は低いですが、リスクはあります。
耐久年数は10年以上と言われています。
材料費の高騰により、ゴールドの価格は上昇傾向にあります。しかし、長期的な予後を考えると、初期投資が高くても結果的に費用対効果が高い場合もあります。セラミックは審美性に優れる一方、ゴールドは機能性と耐久性に優れるという特徴があります。治療する歯の部位や患者さんの価値観によって、最適な材料は異なります。
オンレー治療の成否は、形成技術の精度に大きく左右されます。咬頭被覆を含む形成は、インレー形成よりも高度な技術が要求される領域です。
形成の基本原則として、咬合面の最小厚みを確保することが挙げられます。小窩裂溝は対合の咬頭からの力が加わるため、十分な厚みが必要です。厚みと水平的な咬頭の形成をバランス良く行うことで、材料の破折を防ぎます。セラミックの場合、最低でも1.5~2mmの厚みが推奨されます。
この厚み、コーヒーカップの底くらいです。
窩底の形態も重要なポイントです。窩底を平らに形成してしまうと窩壁部が深くなり過ぎ、歯冠破折のリスクが生じてしまいます。小窩を最深部として窩壁に向かって咬合面の概形に合わせた丸みをもった逆屋根形態にすることで、応力分散が図れます。
咬頭被覆の範囲設定には、明確な基準があります。咬合紙で咬合接触点を印記し、健全な咬頭に咬合接触点がない場合、マージン部に接触点が