デンタルローンを選べば、分割手数料が院内分割より最大5倍近く高くなる場合があります。
マウスピース矯正は、全体矯正で80万〜120万円、部分矯正で30万〜60万円が一般的な相場です。これは自由診療のため、保険が一切適用されません。患者が「こんなに高いとは思わなかった」と感じるのは、この金額を実際に目にした瞬間がほとんどです。
矯正費用の内訳を整理すると、主に検査・診断料(2万〜5万円程度)、マウスピース製作費(60万〜80万円程度)、調整料・処置料(月々3,000〜1万円程度)、保定装置料(2万〜5万円程度)の4項目で構成されます。治療期間中の通院が月1回程度とすると、1〜2年にわたって費用が発生します。
つまり一括払いが難しい、ということです。
歯科従事者として患者から最初にぶつかる壁が「費用をどう払うか」という問題です。治療を勧めても、支払い方法の説明が不十分だと患者が治療を諦めたり、治療途中で中断するリスクが生じます。分割払いの仕組みを正確に理解して案内することが、スタッフ全員に求められるスキルです。
以下の表で、矯正方法別の費用相場を確認しましょう。
| 矯正の種類 | 部分矯正の相場 | 全体矯正の相場 |
|---|---|---|
| マウスピース矯正 | 30万〜60万円 | 80万〜120万円 |
| 表側矯正(ワイヤー) | 30万〜60万円 | 60万〜130万円 |
| 裏側矯正(リンガル) | 40万〜70万円 | 100万〜170万円 |
参考として、矯正費用の内訳や相場について詳しくまとまった情報はこちらです。
歯科矯正の分割払い方法〜デンタルローンと院内分割の違い(River Clinic Dental)
デンタルローンとは、信販会社や金融機関が患者に代わって矯正費用を立て替え、患者が毎月分割で返済していく仕組みです。一般的な金利は年3〜8%程度。クレジットカードの分割払い(年12〜15%程度)と比べると、大幅に低く設定されています。これは使えそうです。
たとえば100万円の矯正費用を金利5%・84回(7年)払いにした場合、分割手数料は約19万円になります。月々の支払いは約1万4,000円程度とスマホ代並みにはなりますが、総支払額は119万円超になる、ということですね。患者にこの数字を提示せずに「月々〇〇円です」だけ伝えるのは、後のクレームを招きかねない危険な説明です。
デンタルローンの審査では、主に以下の3項目が評価されます。
審査対象年齢は原則20歳以上(信販会社によっては18歳以上)で、安定した収入があることが条件の一つです。専業主婦・学生・非正規雇用の患者は審査に通りにくいケースがあります。ただし、パートやアルバイトでも安定した収入があれば通過できる場合もあります。
代表的な信販会社のデンタルローンを整理すると、以下の通りです。
| 信販会社 | 金利目安 | 最大回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| オリコ | 固定金利 | 84回 | 提携歯科医院専用 |
| ジャックス(デントキュア) | 4.3%〜 | 120回 | 最長10年払いに対応 |
| アプラス | 要確認 | 加盟医院限定 |
また、銀行系のデンタルローン(スルガ銀行:年2.5〜5.0%、イオン銀行:年3.8〜8.8%など)は金利が低い傾向がある反面、審査の基準が信販会社より厳しめです。患者が「どのデンタルローンを選べばよいか」と迷っている場合は、医院が提携している信販会社から案内するのが最もスムーズです。
院内分割は、歯科医院が独自に設けている分割払い制度です。金融機関を介さないため、金利・手数料が発生しないケースがほとんど。審査もないため、収入が不安定な患者でも利用しやすい点が大きなメリットです。
ただし、注意点があります。院内分割は一般的に治療終了までの期間内での完済が求められます。マウスピース矯正の治療期間が1〜2年程度とすると、12〜24回払いが上限になることが多いです。月々の負担額はデンタルローンより高めになりますが、総支払額は治療費そのままと変わりません。
院内分割とデンタルローンの比較が条件です。
| 比較項目 | 院内分割 | デンタルローン |
|---|---|---|
| 金利・手数料 | なし(多くの場合) | 年3〜8%程度 |
| 審査 | 不要 | 必要 |
| 最大分割回数 | 12〜24回程度 | 最大120回 |
| 月々の支払い額 | 高め | 低く設定可能 |
| 総支払額 | 治療費と同額 | 金利分増加する |
一方、クレジットカード分割払いは手続きが最も簡単ですが、金利が年12〜15%と高めです。30万円を24回払いで支払った場合、クレジットカード(金利15%)の分割手数料は約48,960円。デンタルローン(金利5%)の場合は約15,874円で、その差は約33,000円にのぼります。
痛いですね。
クレジットカード払いを選ぶ患者に対しては、「無金利キャンペーン期間中の一括払い」や「高還元率カードでポイントを得つつ一括払い」という選択肢も情報として添えることで、より満足度の高い案内ができます。ただし、カードの利用限度額が矯正費用を下回るケースも多いため、事前確認を促すことも重要です。
「分割払いをすると医療費控除が使えない」と誤解している患者は少なくありません。これは違います。分割払いでも医療費控除は申請できます。ただし、方法によって申告のタイミングが異なるため、正確な案内が必要です。
院内分割の場合は、実際に支払った年の医療費として計上します。たとえば2025年に矯正治療を開始し、月々2万円ずつ24回払いにした場合、2025年中に支払った分(たとえば年内12回=24万円)が、2026年3月の確定申告で申告できます。
一方、デンタルローン(信販会社)の場合は扱いが異なります。信販会社が医院に治療費を一括立替払いするため、ローン契約(実質的に治療費の支払)が完了した年に全額を医療費控除として申告できます。月々の返済は信販会社への借金返済であり、医療費の支払いとは別扱いになるのです。
医療費控除額の計算式は次の通りです。
医療費控除額 =(年間医療費総額 − 保険金等の補填額)− 10万円(※所得200万円未満の場合は所得の5%)
具体的な例を挙げると、年間の医療費が80万円(矯正治療費)で、保険補填がない場合、医療費控除額は70万円です。所得税率20%なら約14万円の還付が見込めます。さらに住民税の控除分も加味すると、実質的な還付額は20万円近くになるケースもあります。
医療費控除は確定申告期限(翌年3月15日)を過ぎても、5年間はさかのぼって申請可能です。申告を忘れてしまった患者がいれば、この情報を案内するだけで大きな感謝を得られます。
参考として、医療費控除の対象条件や申請方法について詳しく解説されています。
矯正は医療費控除の対象?費用負担を減らす方法(歯科あべクリニック)
カウンセリング時の支払い説明は、治療成功率に直結します。患者が費用の全体像を正確に把握できているかどうかで、治療中断のリスクが大きく変わるからです。
特に気をつけたい落とし穴が、デンタルローンの中途解約です。治療を途中でやめても、デンタルローンの返済は完済まで続きます。マウスピース矯正はすべてのアライナーを治療開始時に一括製作するケースが多く、治療中断時の返金が難しい場合がほとんどです。つまり「矯正をやめてもローンだけ払い続ける」という状況が起こり得ます。
これは事前に伝えておくべき情報です。
カウンセリングで押さえるべき説明項目を整理すると、以下の通りです。
患者の職業・家族構成・月の支払い可能額などを把握したうえで支払い方法を提案するのが理想です。「月々いくらなら払えますか?」という問いかけ一つで、最適なプランに誘導できます。また、患者が審査に不安を感じている場合は、院内分割を先に提案する配慮も効果的です。
患者説明の質は、口コミや紹介率にも影響します。費用に対して「丁寧に説明してもらえた」という体験は、患者満足度を高める重要な要素になります。
参考として、患者への支払い方法の説明をわかりやすくまとめた情報はこちらです。
マウスピース矯正でもローンは使える!契約方法や審査基準について解説(Oh my teeth)