空気感染予防策対象疾患と歯科医療従事者の必須知識

歯科診療において空気感染予防策が必要となる対象疾患とその判断基準について、知らないと感染リスクが高まる具体的な運用方法を解説します。あなたの感染管理、本当に適切ですか?

空気感染予防策対象疾患と予防策

限局性帯状疱疹でもN95マスク着用が必須になる場合があります


📋 この記事で分かる3つのポイント
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空気感染予防策の対象疾患

結核・麻疹・水痘の3疾患が基本対象だが、帯状疱疹でも播種性や口腔内病変では空気感染予防策が必要

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N95マスクの正しい運用

フィットテスト未実施のN95マスクは防護効果が80%以上低下する可能性があり、事前準備が必須

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歯科診療特有の注意点

肺外結核でも排菌状況によっては空気感染予防策が必要になり、歯科訪問診療では環境整備に制約がある


空気感染予防策対象となる主要3疾患の基準

空気感染予防策が必要となる疾患は、結核菌、麻疹ウイルス、水痘ウイルスの3つが代表的です。これらの病原体は5μm以下の飛沫核となって空気中を長時間浮遊し、肺内に直接吸い込まれることで感染を引き起こします。


結核については、肺結核および気管・気管支結核、喉頭結核が主な対象となります。排菌している患者と接触する際は、NIOSH認証N95マスクなどの着用が必須です。注意すべきは、肺外結核であっても呼吸器からの排菌が否定できない場合は空気感染予防策の対象となる点です。結核菌は空中を約30分程度浮遊することができ、独立空調で陰圧管理の個室が原則とされています。


麻疹は非常に感染力が強く、免疫を持たない人が曝露すると90%以上が感染すると言われています。医療従事者の場合、ワクチンを2回接種していても抗体価が基準値を下回る事例が報告されています。実際に、2回接種済みの医療従事者が麻疹患者への曝露後13ヶ月から15ヶ月後に発症した事例があります。


水痘については、播種性帯状疱疹(3分節以上に広がる全身性の病変)が空気感染予防策の対象となります。


つまり基本です。


限局性の帯状疱疹であっても、被覆できない部分(口腔内の帯状疱疹など)や免疫不全患者では播種性になる可能性があるため、接触感染対策に加えて空気感染対策が必要です。


厚生労働省の標準予防策と経路別予防策ガイドライン(対象疾患の詳細な定義と具体的な予防策の実施基準が記載)


空気感染予防策における陰圧個室と換気基準

空気感染予防策では、陰圧個室の確保が原則とされています。陰圧個室とは、室内の気圧を周囲よりも低く保つことで、室内の汚染された空気が外部に流出しないようにする病室のことです。具体的には、独立空調で1時間あたり6回から12回以上の換気を実施し、空気を外部へ排出する前にHEPAフィルタを通すことが求められます。


換気回数12回/時間以上に設定されていると、室内の病原体を99%以上除去するために必要な換気を短時間で行うことができます。HEPAフィルタは0.3μmの粒子を99.97%除去できるため、感染性エアロゾル(ウイルス飛沫核)をほぼ100%除去します。どういうことかというと、病室から出る空気は外部環境に影響を与えない清浄な状態になるということです。


歯科訪問診療の現場では、陰圧個室の確保は現実的ではありません。その場合の代替策として、他室と換気を共有しない個室を確保し、ドアを閉め、戸外に面した窓を開けて十分に換気することが推奨されています。薬局や歯科診療所では空気感染予防策が必要な場面は限定的であり、陰圧個室の確保が困難な場合が多いため、このような対応が現実的です。


歯科診療においては、高速回転切削器具や超音波スケーラーを使用するため、エアロゾルが大量に発生します。診療室内の汚染を減少させるために口腔外バキュームの使用が重要ですが、これは飛沫感染対策であり、空気感染予防策とは異なります。エアロゾルと空気感染の違いを正確に理解することが必要ですね。


日本環境感染学会の感染経路別予防策ガイドライン(陰圧個室の具体的な設備基準と換気回数の計算方法)


空気感染予防策対象となる結核の排菌状況判定

結核における空気感染予防策の対象判定では、排菌の有無が重要な判断基準となります。排菌とは、結核患者の咳や痰に結核菌が含まれている状態を指し、喀痰塗抹陽性の肺結核患者が主な感染源です。しかし、培養のみ陽性の患者や、まれに菌陰性の患者、肺外結核患者が感染源になることもあります。


肺結核および気管・気管支結核、喉頭結核以外の結核の場合、呼吸器からの排菌が否定できれば必ずしも空気感染予防策の対象とはなりません。例えば、骨・関節結核や腎結核などの肺外結核では、通常は空気感染のリスクが低いとされています。しかし、菌を含む体液が飛沫状に飛び散った場合には感染源となり得るため、状況に応じた判断が求められます。


排菌している結核患者であっても、抗結核薬を飲み始めて約2週間で他の人への感染性はほぼなくなります。治療では抗結核薬を6ヶ月以上使用しますが、感染対策の観点からは治療開始後の経過時間も重要な判断材料です。


歯科診療の場面では、患者の結核診断情報や排菌状況を事前に把握することが困難な場合があります。特に歯科訪問診療では、施設入居者や在宅療養者の感染症情報が不十分なまま診療を開始してしまうリスクがあります。事前のトリアージ(テレトリアージ)で発熱や咳などの症状を確認し、関係者間で情報共有することが感染リスクを下げる有効な手段です。


空気感染予防策におけるN95マスクのフィットテスト必要性

N95マスクを空気感染予防策で使用する際、フィットテストとユーザーシールチェックが必須です。フィットテストとは、マスクが装着者の顔に適切にフィットしているかを事前に定量的または定性的に確認する試験のことです。


フィットテストを実施せずにN95マスクを使用すると、顔とマスクの隙間から病原体を含む空気が侵入し、防護効果が大幅に低下します。研究では、適切にフィットしたN95マスクはウイルスの吸い込み量を10%から20%まで抑えられるのに対し、フィットが不適切な場合は防護効果が著しく低下することが示されています。


つまり空気感染対策が無効になるということですね。


歯科医療従事者がN95マスクを使用する際は、事前のフィットテストに加えて、使用直前のユーザーシールチェック(フィットチェック)が必要です。ユーザーシールチェックとは、マスク装着時に手でマスクを覆って息を吐き、空気が漏れないことを確認する簡易的な方法です。これにより、その都度正しく装着できているかを確認できます。


歯科訪問診療の現場では、結核患者や麻疹患者、播種性帯状疱疹患者と診断されている患者、または疑いのある患者を診療する際にN95マスクが必要です。しかし、歯科診療所と異なり訪問先での環境整備には制約があるため、事前準備が特に重要になります。各歯科医療従事者が自分に合ったN95マスクのサイズとモデルを把握し、フィットテストを済ませておくことが推奨されます。


日本老年歯科医学会の歯科訪問診療における感染予防策の指針(N95マスクの正しいフィットテストとシールチェックの手順)


歯科医療従事者のワクチン接種による空気感染予防

空気感染する疾患のうち、麻疹、水痘、結核にはワクチンが存在します。医療従事者は、これら空気感染する感染症の他、風疹、流行性耳下腺炎、インフルエンザのワクチン接種が推奨されています。


麻疹と風疹については、1歳以上で2回の予防接種記録があれば、抗体検査は必須ではありません。1回のワクチン接種で96%が抗体を獲得しますが、2回接種すると97%から99%の人が免疫を獲得します。


これが基本的な考え方です。


ただし、2回接種していても抗体価が基準値を下回る「基準を満たさない陽性」となる場合があり、実際の臨床現場で混乱が生じています。


日本環境感染学会のガイドラインでは、麻疹と風疹の「基準を満たす陽性」は、ワクチンを受けてもブースター効果が働かない程度の高い抗体価を設定しています。医療従事者の場合、EIA法(IgG)で麻疹は16.0以上、風疹はHI法で256以上、またはEIA法で45.0以上が基準です。これ以上の抗体価があれば追加接種は不要とされています。


水痘に関しても、1歳以上で2回の予防接種記録があれば抗体検査は必須ではないとされています。麻疹、水痘、播種性帯状疱疹の免疫を保有している場合は、これらの患者と接触する際の特別な空気感染予防策は必要ありません。どういうことかというと、免疫があればN95マスクの着用が不要になるということです。


結核については、BCGワクチンが乳児期に接種されていますが、成人における予防効果は限定的です。そのため医療従事者であっても、結核患者と接触する際はN95マスクの着用が必須とされています。定期的な健康診断での胸部X線検査やIGRA検査(T-SPOT等)により、結核感染の早期発見が重要です。


歯科医療従事者の場合、患者と直接接触しない事務職であっても、患者と空調を共有する場所や同じ空間にいる可能性があればワクチン接種が必要です。実習生やアルバイト、派遣職員、ボランティアも含めて、すべての関係者がワクチン接種を完了していることを確認すべきですね。


日本環境感染学会のワクチンに関するQ&A(医療従事者向けの抗体価基準と接種記録の判断フロー)


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