クレームブリュレと同じものだと思って頼んだら、まったく別の食感で思わぬ感動をもらった人が続出しています。
クレマカタラナの歴史は、少なくとも14世紀にまでさかのぼります。正式名称は「Crema Catalana(クレマ・カタラーナ)」で、スペイン語で「カタルーニャ風クリーム」という意味です。別名「クレマ・デ・サント・ジョゼプ(Crema de Sant Josep)」とも呼ばれており、これはイエス・キリストの養父、聖ヨセフにちなんだ名前です。
その誕生については、ユニークな逸話が残っています。諸説ありますが、カタルーニャの修道院で修道女たちが司教のために用意したプリンが、うまく固まらなかったことが発端とされています。困った修道女たちが急いでコーンスターチを加えて煮固めたところ、偶然にも新しいデザートが生まれたというわけです。失敗から生まれたスイーツというのは、意外ですね。
長い歴史の中で、クレマカタラナは3月19日の「聖ヨセフの日(Día de San José)」に食べる習慣と結びついてきました。スペインではこの日が父の日にあたるため、家族でこのデザートを囲む文化が根付いています。現在はバルセロナのレストランやカフェで年中楽しめますが、もともとは年に1日だけの特別なスイーツだったということです。
バーナーが発明される以前、キャラメリゼには「サラマンドラ」と呼ばれる鉄製の火ごてを真っ赤に熱して砂糖の上にかざすという方法が使われていました。現代のガスバーナーで表面をパリッと焦がす演出は、この古典的な手法が進化した姿です。700年間変わらぬ美味しさが、今もバルセロナの街で息づいています。
クレームブリュレとの元祖論争については、カタルーニャ人の側が「我々のクレマカタラナこそがフランスのクレームブリュレの祖先だ」と主張しています。実際、記録に残っている文献の古さではカタルーニャ側に分があるとも言われており、この論争は今も決着がついていません。
「クレマカタラナとクレームブリュレって、結局同じものでしょ?」という声をよく耳にします。見た目は確かに瓜二つです。どちらも表面にカリッとしたキャラメルの層があり、下にはなめらかなカスタードクリームが控えています。しかし、本場バルセロナで食べ比べをするとはっきり気づく、根本的な違いがあります。
まず最大の違いは「加熱方法」です。
| 比較項目 | クレマカタラナ | クレームブリュレ |
|---|---|---|
| 発祥 | スペイン(カタルーニャ) | フランス |
| 加熱方法 | 鍋で炊く(湯煎なし) | オーブンで湯煎焼き |
| 主な乳製品 | 牛乳のみ | 生クリーム+牛乳 |
| 風味付け | レモン・オレンジの皮+シナモン | 主にバニラ |
| とろみの原因 | コーンスターチ(でんぷん) | 卵の力だけ |
| 食感 | やや重め・濃厚 | 軽くとろける |
クレマカタラナは牛乳だけを使い、コーンスターチでとろみをつけながら鍋で炊き上げます。一方のクレームブリュレは生クリームと牛乳を合わせて、オーブンで湯煎焼きにするため、口の中でふわっと溶けるような軽い食感になります。つまり食感が根本的に別物です。
さらに風味も大きく異なります。クレマカタラナにはレモンやオレンジの皮、そしてシナモンスティックで香りをつけるのが伝統的なレシピです。柑橘の爽やかな香りとシナモンのスパイシーさが重なって、一口食べると「あ、スペインだ」という感覚が広がります。バニラ風味のクレームブリュレとはまったく違う方向性で、どちらが優れているというわけではなく、別のスイーツとして楽しむのが正解です。
器の形も見分けるポイントになります。本場バルセロナでは、クレマカタラナは底が平らで浅い「テラコッタ(素焼きの陶器)」の皿で提供されることが多いです。これは表面のキャラメル層をできるだけ広くとるための工夫で、スプーンを入れたときにパリッという音が聞こえやすくなります。これは使えそうです。
バルセロナを旅行するなら、本場のクレマカタラナを味わわずには帰れません。ここでは実際に日本人旅行者から高い評価を受けている3つのスポットを紹介します。予算の目安や立地もあわせて確認しておくと、旅のスケジュールが立てやすくなります。
🍮 グランハ・ラ・パリャレサ(Granja La Pallaresa)
1947年創業という、バルセロナでも指折りの老舗グランハ(スペイン版カフェ)です。ランブラス通りの東側、ゴシック地区の「ペトリチョル通り」沿いに位置しています。ペトリチョル通りはスイーツ店が並ぶかわいらしい小道で、街歩きがてら立ち寄りやすいのが魅力です。
クレマカタラナとコーヒーを合わせた注文で、お会計は5ユーロ程度(日本円で約800円前後)とリーズナブルです。営業時間は午前9:00〜13:00、午後16:00〜21:00で、日曜の午後は17:00からと遅くなるので注意が必要です。オープン前から並ぶ人気ぶりなので、時間には余裕を持って訪れましょう。
住所:Carrer de Petritxol, 11, 08002 Barcelona
☕ セルベセリア・カタラナ(Cerveceria Catalana)
バルセロナで最も話題に上ることの多い、アシャンプラ地区の人気タパスバルです。ガウディの代表作であるカサ・ミラから徒歩5分圏内という好立地にあり、観光の合間に立ち寄れる利便性も人気の理由のひとつです。世界中のガイドブックで紹介されており、在住日本人から「バルセロナでクレマカタラナを食べるなら最もおすすめ」との声も多く上がっています。
タパスやパンコン・トマテ(トマトパン)なども一緒に楽しめるため、食事としてがっつり使えます。ランチは混雑するため、11:00〜12:00の早めの時間帯か、15:00以降に訪れると比較的スムーズに入れます。
住所:Carrer de Mallorca, 236, 08008 Barcelona
🏛️ グランハ・M・ビアデル(Granja M. Viader)
こちらは1870年創業という、バルセロナで最も歴史あるグランハのひとつです。観光客向けのお店というよりも、地元の人が日常的に足を運ぶ落ち着いた雰囲気が特徴です。ゴシック地区の路地の奥にひっそりと構えており、「知る人ぞ知る」的な存在として旅行者の間でも評判です。伝統的なレシピにこだわったクレマカタラナが楽しめます。
住所:Carrer d'en Xuclà, 4-6, 08001 Barcelona
バルセロナグルメ視察レポート:セルベセリア カタラナなどおすすめバー&カフェ情報
せっかくバルセロナに来たのに、うまく注文できなかったり、食べるタイミングを間違えて残念な思いをしてほしくありません。ここでは旅行初心者でも安心して楽しめるよう、実際の注文のコツや現地での食べ方のポイントをまとめます。
スペイン語での注文フレーズ
レストランやカフェでクレマカタラナを注文するときは、「クレマ・カタラナ、ポル・ファボール(Una crema catalana, por favor.)」と言えば通じます。英語のメニューがあるお店も多く、"Catalan cream"と書かれていることもあります。観光地のレストランでは英語が通じることがほとんどなので、過度に心配しなくて大丈夫です。
デザートの注文タイミング
スペインのレストランでは、食事は前菜・メイン・デザートの3皿構成が基本です。クレマカタラナはデザートとして提供されるのが一般的なので、メインを食べ終えたタイミングで店員さんに「ポストレ(Postre)=デザート」と声をかけましょう。デザートで注文するのが原則です。
食べ方のポイント
目の前に運ばれてきたら、まずスプーンで表面のキャラメル層をパリッと割ることからはじめます。このひと割りが最大の醍醐味です。できれば1回で中央あたりに向けてスプーンを入れると、パリッという音とともに全体に割れ目が広がって、見た目にもおもしろい瞬間が楽しめます。カスタード部分と砕けたキャラメルを一緒にすくうのが、本場流のいただき方です。
スーパーでも買えるお土産用クレマカタラナ
旅行のスケジュールが詰まっていてカフェに座る時間がないという場合や、家族へのお土産として持ち帰りたい場合は、バルセロナ市内のスーパーマーケットでも購入できます。「メルカドーナ(Mercadona)」や「ボンプレウ(Bonpreu)」などのチェーンスーパーでパック入りのクレマカタラナが販売されており、価格は1〜2ユーロ前後と非常にリーズナブルです。スーパーで気軽に買えるのはいいことですね。
日本への持ち帰りは冷蔵品のため難しいですが、クレマカタラナ風味のクッキーやターロン(ヌガー菓子)なら常温で持ち帰ることができます。エル・コルテ・イングレス(El Corte Inglés)のデパートの食品フロアでも、関連スイーツのお土産が揃っています。
旅から帰ってきた後も、あの感動をもう一度味わいたくなるのが本場のスイーツというものです。嬉しいことに、クレマカタラナは家庭にある材料だけで比較的簡単に作れます。オーブン不要、湯煎不要という手軽さも主婦にとって大きなメリットです。
基本の材料(4人分)
作り方のポイント
まず牛乳にレモンの皮とシナモンスティックを入れて、沸騰直前まで温めます。そこに蓋をして10分ほど蒸らすことで、香りがしっかり移ります。別のボウルで卵黄・グラニュー糖・コーンスターチを混ぜ、温めた牛乳を少量ずつ加えながら合わせていきます。これを鍋に戻してとろみがつくまで中火で加熱し、器に流し込んで冷蔵庫で2〜3時間冷やします。
食べる直前に表面にグラニュー糖を薄くまぶし、ガスバーナーで焦がします。バーナーがない場合はグリル機能を使ったトースターで代用できます。ただしトースターを使う場合は、砂糖が均一に焦げるよう薄く広げることがコツです。冷やすまでが準備、キャラメリゼが仕上げです。
よくある失敗と対策
カスタードが分離してしまうケースは、牛乳を加えるときの温度が高すぎることが原因であることが多いです。牛乳を60℃程度まで冷ましてから少量ずつ加えることで、なめらかに仕上がります。またとろみが出ないという失敗は、コーンスターチの量が少ない、または加熱時間が短いことが原因になります。鍋底にへらが届くようにしっかりかき混ぜながら、濃度がつくまで加熱し続けることが基本です。
本場の風味を出すためのひとつのコツとして、レモンとオレンジの皮を両方使う方法があります。レモン1/2個分のみでも美味しく作れますが、オレンジの皮を少量加えるだけで一気に南スペインらしい、甘くて爽やかな香りが立ちます。試してみる価値があります。
日本で作る場合、キャラメリゼ用のガスバーナーは調理器具専門店やAmazonなどのECサイトで2,000〜3,000円程度から購入できます。一度手に入れると、クレームブリュレやグラタンのこんがり焼き目にも使えてとても便利です。バーナーがあれば再現の幅が広がります。
バルセロナへの旅行を計画している方はもちろん、まだ行ったことがないという方にも、このデザートを入口にして「食のカタルーニャ文化」に触れてみていただければと思います。700年の歴史が積み上げたひとさじの美味しさは、きっと新しいお気に入りになるはずです。