過剰歯があるからといって、すべてのケースで抜歯が必要というわけではありません。しかし、以下の3つの条件に当てはまる場合は、歯科医師による早期の治療判断が求められます。
永久歯の成長阻害が生じる場合、過剰歯が本来歯が生えるべき位置にあると、乳歯が抜けても永久歯が出てこないという状況が発生します。つまり、永久歯の萌出(ほうしゅつ:歯が生えること)がブロックされてしまうわけです。この場合、永久歯が正常に生えてくるまで待つのではなく、過剰歯を先に除去することで道を開く必要があります。
永久歯へのダメージも見逃せません。過剰歯が育つ過程で、隣接する永久歯の歯根を吸収(溶かす)することがあります。歯根が溶けると、その歯の神経がダメージを受け、最悪の場合は神経が死滅することもあります。レントゲンで歯根吸収が確認されたら、手術の優先度は高まります。
嚢胞(のうほう)形成のリスクも重要です。特に逆性過剰歯や水平埋伏歯では、歯茎の中に嚢胞ができることがあります。嚢胞が大きくなると周囲の永久歯の歯胚に悪影響を与え、歯根を溶かしてしまうケースもあります。これは放置すると取り返しのつかない結果につながる可能性があります。
つまり、治療判断には画像診断が欠かせないということですね。
過剰歯の抜歯手術は保険適用内で行われるため、親の費用負担は一般的な虫歯治療と同程度に抑えられます。ただし、埋伏の程度や手術方法によって大きく異なります。
日帰り手術の場合、歯茎から出ている過剰歯なら数百円~2,000円程度、歯茎に埋もれている過剰歯なら約3,000円程度が目安です。これに初診料、再診料、レントゲン撮影料、麻酔料、薬代が加算されるため、実際の支払いは数千円~1万円程度になるケースが多いです。局所麻酔の麻酔料は抜歯費用に含まれているため、別途請求されません。
入院が必要になるケースの費用相場は大きく跳ね上がります。過剰歯が顎の骨の深い位置にあったり、複数本の抜歯が必要だったり、小さなお子さんで全身麻酔が必要な場合は、入院費用相場として9万円~11万円が目安となります。ここで注意すべき点は、抜歯手術や検査には保険が適用されるものの、入院中の食事代や差額ベッド代には保険が適用されないという点です。差額ベッド代だけで1泊数千円~数万円かかることもあります。
高額医療費制度を活用しましょう。限度額を超えた場合は、医療費控除や高額医療費制度を利用することで、後から払い戻しを受けられます。これは保護者が事前に知っておくべき重要な情報です。
過剰歯の抜歯手術では、麻酔の選択肢が複数あり、お子さんの年齢や心理状態、埋伏の程度によって使い分けられます。
局所麻酔での日帰り手術が基本形です。小児の局所麻酔手術の目安は5歳以降とされており、通常は局所麻酔で日帰りで行われます。手術時間は30分~1時間程度で、術後には痛み止めと抗生剤が処方され、1週間後に抜糸を行う流れです。この方式なら、保護者の心理的負担も少なく、子どもの成長にも悪影響を与えにくいメリットがあります。
しかし、実は手術時間の半分近くは麻酔に費やされます。特に埋伏過剰歯の場合、ゆっくり段階的に麻酔を効かせないと、途中で痛みを感じさせてしまう可能性があり、麻酔プロセスだけで20分以上かかることも珍しくありません。
全身麻酔が選択される条件は明確です。6歳未満の幼い子どもで1時間以上じっとしていられない可能性がある場合、歯科に強い恐怖心や警戒心がある場合、複数本の抜歯で処置が長時間になる場合、そして過剰歯が顎の骨の深い位置にある場合です。全身麻酔は麻酔中に患者が動く心配がなく、より安全かつ確実に手術を進められるメリットがあります。
全身麻酔後は患者の状態管理が重要なため、入院を勧められることが多いです。術後に血圧低下や呼吸の問題が発生した場合、迅速に対応できる環境が必要だからです。
埋伏過剰歯の抜歯は、単なる外科手術ではなく、お子さんの心理的準備が手術の成功を左右することが多くあります。実際の臨床では、手術の数ヶ月前から段階的なトレーニングを行う歯科医院が増えています。
術前トレーニングの重要性は、特に6歳前後の幼い患者で顕著です。開口器(口を開けっぱなしに固定する器具)に慣れさせ、削る道具の振動音に適応させ、表面麻酔を経験させるなど、段階を踏んで治療環境に慣れさせていきます。2週間~2ヶ月程度かけて段階的にトレーニングを進めることで、本手術時の成功率が飛躍的に向上します。
特に埋伏過剰歯の場合、歯茎を半分近くめくり、骨を削って歯を露出させ、抜歯後に縫い合わせるという一連のプロセスは、一度開始したら中止できません。そのため、お子さんが最後まで落ち着いていられるかどうかが非常に重要な要素となります。
術後の疼痛と食事管理も見落とせません。手術後は2~3日程度痛みが続くため、痛み止めの処方と服用指導が必要です。また、術後1週間程度は、刺激の強い食べ物や硬い食べ物を避け、うがいの際も強くゆすがないよう指導する必要があります。特に全身麻酔の場合は、術後に嘔気や嘔吐が見られることもあり、保護者への事前説明が重要です。
過剰歯の抜歯時期は、単純に「見つかったら即座に抜く」という判断ではなく、お子さんの成長段階と永久歯の萌出状況に基づいて決定されます。
タイプ別の抜歯時期判断として、正中過剰歯(上の前歯の正中にできる最も一般的なタイプ)で、かつ埋伏していない場合は、永久歯がなかなか出てこないことが判明した時点で抜歯を進めることが多いです。一方、逆性過剰歯(逆向きに生えている埋伏歯)の場合は、永久歯の成長を妨げる前に早期対応が理想的とされており、遅くとも8~9歳までに対応すべきとの見方もあります。
経過観察という選択肢も存在します。他の歯に影響を与えていない過剰歯は、定期的に検査しながら様子を見ていくことも可能です。ただし、6ヶ月~1年ごとにレントゲン撮影して進行状況を確認することは忘れてはいけません。
術後の矯正治療への繋げ方が、過剰歯治療の最終的な成功を決めます。抜歯後に歯並びが自動的に整うわけではなく、むしろ正中離開(前歯の隙間)が生じたり、叢生(歯並びの乱れ)が生じたりすることもあります。
これが基本です。
そのため、過剰歯の抜歯後は矯正歯科専門医院での評価が必須となります。子どもの低年齢時(6~12歳)での抜歯であれば、第一期矯正治療のみで済むケースも多いため、早期対応のメリットはここにあります。
過剰歯の原因が不明な点も特筆すべき情報です。正確には、小児期または胎児期に歯の芽である歯胚が余分に作られたり分裂したりするメカニズムは、現在でも完全には解明されていません。男児に3倍多く見られるという統計的事実がありながら、なぜそうなるのかは謎のままなのです。
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