自家骨移植の点数と算定要件を正しく理解する方法

歯科の自家骨移植における診療報酬点数(J063-2)の正確な算定方法を知っていますか?口腔内・外の区分から人工骨との併用まで、知らないと査定リスクが高まるポイントを徹底解説します。

自家骨移植の点数と算定でよくある誤解

採骨箇所が2か所でも、自家骨移植の点数は1回しか算定できません。


自家骨移植の点数 — 3つのポイント
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「簡単」と「困難」で点数が約9倍違う

口腔内採取(イ)は1,780点、口腔外採取(ロ)は16,830点。採取部位だけで点数が大きく変わるため、算定区分の確認が必須です。

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複数箇所への移植は1回算定のみ

採取した骨を複数箇所に移植しても、また2か所から採骨しても、算定は1回が原則。二重算定は査定の対象になります。

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骨移植に至らなかった場合は別コードへ

口腔外採取を試みたが移植に至らなかった場合は、J063-2ではなくJ063-3「骨(軟骨)組織採取術」で算定します。


自家骨移植の点数の基本:J063-2の区分と金額一覧

歯科における骨移植術は、区分番号「J063-2 骨移植術(軟骨移植術を含む。)」として定められています。その中でも「自家骨移植」とは、患者本人の骨を採取して別の部位へ移植する手術を指します。


令和6年度診療報酬点数表(令和6年6月施行)における点数の内訳は、以下の通りです。


































区分 内容 点数
1 自家骨移植 イ 簡単なもの(口腔内から採取) 1,780点
1 自家骨移植 ロ 困難なもの(口腔外から採取) 16,830点
2 同種骨移植(生体) 他者(存命)の骨を移植 28,660点
3 同種骨移植(非生体)イ 特殊なもの(組織バンク認定骨) 39,720点
3 同種骨移植(非生体)ロ その他の場合 21,050点


「イ 簡単なもの」と「ロ 困難なもの」の違いはシンプルです。採取部位が口腔内か口腔外か、それだけで分類されています。


たとえば、同じ患者に骨移植を行う場合でも、口腔内の顎堤付近から骨片を採取すれば「イ 簡単なもの」(1,780点)、腸骨や下顎枝など口腔外から採取すれば「ロ 困難なもの」(16,830点)となります。点数差はほぼ9倍。つまり約1.5万円以上の差が生じます。


点数の区分が正確に算定できているかどうかは、収益への直接的な影響があります。この基本の分類が正確に算定できているかどうかを、今一度確認しておくことが重要です。


参考:令和6年歯科診療報酬点数表(J063-2 骨移植術)の公式定義はこちら。


しろぼんねっと|J063-2 骨移植術(令和6年歯科点数表):通知・告示の全文を確認できます


自家骨移植の点数算定でミスが起きやすい「複数箇所採骨・移植」のルール

実臨床でよく起きる疑問の一つが「採骨を2か所行った場合、それぞれに算定できるのか?」というものです。結論は明確です。


点数表の通知(4)には次のように記されています。「骨移植術は、骨片切採術の手技料が含まれ、骨移植術において骨移植に用いる骨片をその必要があって2箇所(例えば脛骨と骨盤)から切除した場合であっても当該採取に係る手技料は別に算定できない。」


つまり、たとえ腸骨と下顎枝の2か所から採骨したとしても、算定は1回のみです。採骨箇所の数で点数が増えるわけではありません。これが原則です。


さらに通知(5)では「移植術は、採取した骨片を複数箇所に移植した場合も1回の算定とする」と定められています。採骨が1か所でも2か所でも、移植先が1か所でも3か所でも、J063-2の算定は1回だという点を押さえておきましょう。


この「1回算定のルール」を見落として2回請求すると、審査機関から査定を受けるリスクがあります。レセプト上で同月に同種の骨移植術が2件立っていると、まず疑義の対象になると考えておくべきです。


ただし注意点があります。医学的に必要性が認められる「2回法」の骨移植術(たとえば前方アプローチと後方アプローチを別日に行う脊椎手術など)では、それぞれの手術に対してそれぞれ算定が認められる場合があります。歯科領域でも同様の考え方が適用される可能性がありますが、詳記や摘要記載を添付することが査定予防の観点から強く推奨されます。


自家骨移植の点数と人工骨の併用:算定区分が変わる重要ルール

「自家骨移植をしながら人工骨も補填した」という症例は、実臨床では珍しくありません。この場合の算定区分は「自家骨移植(1,780点または16,830点)」ではなくなります。意外ですね。


点数表の通知には次のように記されています。「自家骨又は非生体同種骨(凍結保存された死体骨を含む。)移植に加え、人工骨移植を併せて行った場合は『3』により算定する。ただし、人工骨移植のみを行った場合は算定できない。」


つまり、自家骨移植と特定保険医療材料078(人工骨)を併用した場合は、「3 同種骨移植(非生体)ロ その他の場合 21,050点」で算定することになります。





























施術内容 算定区分 点数
自家骨のみ(口腔内採取) 1 自家骨移植 イ 1,780点
自家骨のみ(口腔外採取) 1 自家骨移植 ロ 16,830点
自家骨+人工骨(078)の併用 3 同種骨移植(非生体)ロ 21,050点
人工骨のみ 算定不可


ここで注意が必要なのは、「同種骨移植(生体)」の区分(28,660点)は、人工骨等を用いた場合には算定できないという制約があることです。「2 同種骨移植(生体)」に人工骨を足しても高い点数では算定できません。人工骨と組み合わせる場合は常に「3 同種骨移植(非生体)ロ」が選択肢になります。


また、「人工骨を使った = 高い点数で算定できる」という誤解も禁物です。人工骨のみを移植した場合は、J063-2の算定はいっさいできません。自家骨または同種骨との併用が前提条件です。この点を正確に把握しておくことが、査定リスク回避の基本です。


自家骨移植の点数を正しく請求するための「骨移植に至らなかった場合」の特別ルール

口腔外から採骨を試みたものの、術中の状況により骨移植が実施できなかったケースがあります。この場合、J063-2「骨移植術」は算定できません。


代わりに算定するのは、区分番号「J063-3 骨(軟骨)組織採取術」です。この区分は、J063-2の「1のロ 困難なもの」の実施にあたり、骨片採取のみに終わり骨移植に至らなかった場合に限り算定できるとされています。


J063-3の点数は以下の通りです。



















区分 内容 点数
1 腸骨翼 腸骨翼からの採取 3,150点
2 その他のもの 腸骨翼以外(口腔内採取は除く) 4,510点


重要なのは、J063-3の「2 その他のもの」は口腔内からの組織採取には算定できないという点です。口腔内から採取した場合は除外されています。あくまで口腔外採取が前提のコードです。


また、「ロ 困難なもの」に限定されたルールです。つまり「イ 簡単なもの」、すなわち口腔内採取を試みて移植に至らなかった場合は、J063-3すら算定できません。この二重の制限を把握していないと、誤った請求につながります。


実際の臨床では「採骨はできたが患者側の都合で手術を中断した」「採取量が不足して移植を断念した」といったケースも起こり得ます。そのような場合でも、J063-3の算定が可能かどうかを正確に判断する習慣を身につけておきましょう。


参考:歯科診療報酬点数表J063-3(骨軟骨組織採取術)の通知は以下で確認できます。


しろぼんねっと|J063-3 骨(軟骨)組織採取術:骨片採取のみで移植に至らなかった場合の算定ルールが確認できます


自家骨移植の点数算定でレセプトが査定になる典型パターンと対策

診療現場で骨移植術のレセプトが査定になるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。知らずにいると繰り返し査定を受けることになるため、事前に把握しておくことが重要です。


パターン① 同月に骨移植術を2件立てている


先述の通り、採骨箇所・移植箇所が複数あっても算定は1回です。同月に同一患者で2件の骨移植術を請求すると、審査機関から疑義が生じます。2回法として医学的に必要な場合は、摘要欄に詳記を添付してから請求するのが鉄則です。


パターン② 自家骨移植と人工骨を使いながら「1 自家骨移植」で算定している


人工骨(特定保険医療材料078)を併用しているにもかかわらず、「1 自家骨移植」のまま算定しているケースは査定対象になりえます。この場合は「3 同種骨移植(非生体)ロ その他の場合」に変更する必要があります。レセプト提出前に使用材料と算定区分の整合性を確認する習慣が必要です。


パターン③ 稀な術式で詳記がない


一般的にあまり骨移植術を行わない術式や稀な症例では、詳記がないと審査委員会の判断が厳しくなる傾向があります。査定が心配な症例では「なぜこの骨移植が必要であったか」を摘要欄に簡潔に記述しておくと、大幅に査定リスクを減らせます。


査定になった場合は、6か月以内であれば再審査請求が可能です。ただし、再審査での復活率を高めるためには根拠となる通知文や疑義解釈を添付することが効果的です。


パターン④ 同種骨移植(特殊なもの)の組織バンク要件を満たしていない


「3 同種骨移植(非生体)イ 特殊なもの(39,720点)」は、日本組織移植学会が認定した組織バンクから調達した骨を使用した場合に限り算定できます。この要件を満たさない場合は、特殊なものとしては認められません。高点数の算定には認定バンクの利用が条件であることを忘れないようにしましょう。


参考:骨移植術の算定に関する審査支払基金の取り扱い事例については以下で確認できます。


社会保険診療報酬支払基金|骨移植術の算定について(審査取り扱い事例):同一手術野の局所骨採取に関する算定可否の根拠が記載されています


歯科スタッフが見落としがちな「自家骨移植の点数」と医科との違い・連携算定のポイント

歯科の骨移植術(J063-2)と医科の骨移植術(K059)は、構成区分が非常によく似ています。しかし歯科独自のルールもあるため、医科の解釈をそのまま歯科に適用しないよう注意が必要です。


歯科点数表では、通知(10)に「その他骨移植術の医科と共通の項目は、医科点数表の区分番号K059に掲げる骨移植術の例により算定する」と記されています。つまり歯科固有のルールが優先されますが、歯科通知に定めがない事項については医科の例に準じる、という仕組みです。


医科と歯科で異なる代表的なポイントは「採取部位の分類定義」です。医科では採骨部位の細かい区別は通知で明示されていませんが、歯科では「口腔内か口腔外か」という明確な基準で「イ」「ロ」が分けられています。歯科事務スタッフが医科のレセプト知識を持ち込むと、この分類を誤るリスクがあります。


また、骨移植術は他の手術と「併せて算定する」ことができます。たとえば歯肉剥離掻爬手術(J063)を行いながら骨移植術も実施した場合は、それぞれの点数を合算して算定可能です。この「他の手術との併算定」が認められているのも、骨移植術の大きな特徴です。


ただし、骨片切採術の手技料は骨移植術の所定点数に含まれているため、別途算定することはできません。採骨のための費用は、骨移植術の点数の中にすでに織り込まれているという考え方です。これが原則です。


さらに、他の医療機関で採骨した骨を移植する場合でも、算定はあくまで移植を行った保険医療機関で一括して行います。採取した医療機関と移植した医療機関がそれぞれに算定することは認められていません。費用の分配は両機関の合議に委ねられています。医療機関間の連携で骨移植を行うケースでは、この「算定の一本化」を事前に確認しておくことが重要です。


歯科では口腔外科処置に関連した骨移植術が多い一方で、インプラント関連の骨造成を保険で算定するケースは限られます。自家骨移植が保険の対象となるのは、あくまで定められた手術コードに該当する症例に限られる点も、改めて整理しておくとよいでしょう。


参考:厚生労働省が公開している歯科診療報酬点数表(別表第二)の最新版は以下から確認できます。


厚生労働省|別表第二 歯科診療報酬点数表(令和6年度版):J063-2骨移植術の告示全文と点数が確認できます