歯周病原菌検査と費用・方法・効果

歯周病原菌検査は保険適用と自費の両方があり、検査方法も複数存在します。位相差顕微鏡とリアルタイムPCR法の違い、レッドコンプレックスの重要性、患者モチベーション向上への活用法を解説。正しい検査選択が歯周病治療の成功につながるのでは?

歯周病原菌検査の種類と方法

保険診療では検出不可能な菌が存在します。


この記事の3つのポイント
🔬
検査方法は3種類

位相差顕微鏡、リアルタイムPCR法、院内即日検査システムがあり、それぞれ検出できる菌種と費用が異なる

💰
費用は保険と自費で大きく差

保険適用の口腔細菌定量検査は130点(約1,300円)、自費のPCR検査は5,000~30,000円程度

📊
Pg菌は健康な歯茎の200倍

歯周病患者の歯茎からはPg菌が健康な歯茎の約200倍検出され、治療方針決定に重要な指標となる


歯周病原菌検査の位相差顕微鏡の特徴

位相差顕微鏡検査は、歯周ポケット歯垢から採取したサンプルを3,000~3,600倍に拡大して観察する方法です。検査は院内で即座に実施でき、患者さん自身がモニターで細菌の動きをリアルタイムに確認できることが最大の特徴となっています。


つまり視覚的な説明が可能です。


検査で確認できるのは、らせん状に動くスピロヘータ(歯周病菌)、カビ菌のカンジダアルビカンス、原虫である口腔トリコモナスや歯肉アメーバなどの形状が特徴的な細菌に限られます。費用は5,000円前後で、多くの歯科医院が自費診療として提供しています。ただし、レッドコンプレックスに分類される最も病原性の高いP.gingivalis菌(Pg菌)やT.forsythia菌は非常に小さい桿菌であるため、位相差顕微鏡では判別できません。


検査時間は5~10分程度です。


患者さんのモチベーション向上には効果的ですが、詳細な菌種の特定や定量的な評価には不向きという側面があります。治療方針を決定するためには、より精密な検査との併用が推奨されるケースも多いのが実情です。


歯周病原菌検査のリアルタイムPCR法の精度

リアルタイムPCR法は、細菌のDNAを増幅して歯周病原因菌を高精度で検出する検査方法です。新型コロナウイルスのPCR検査と同じ原理を応用しており、ごく微量なサンプルからでも目的の歯周病細菌を特定できます。


検査精度は非常に高いです。


検査では、レッドコンプレックスと呼ばれる3菌種(Pg菌、T.denticola菌、T.forsythia菌)を含む5菌種を同時に測定できます。特にPg菌は歯周病患者の歯茎から健康な歯茎の約200倍という圧倒的な量が検出されることが報告されており、歯周病の重症度や治療の必要性を数値で示せる点が大きなメリットです。検査には歯周ポケットからペーパーポイントで検体を採取し、外部検査機関に送付します。


結果が出るまで約1週間必要です。


費用は自費診療で5,000~30,000円程度と医院によって幅があります。2024年8月に日本口腔衛生学会が発表した見解では、歯周病細菌検査の臨床的意義について「現時点では研究段階」としながらも、重度歯周炎の診断補助や治療効果の評価には有用としています。検査結果は菌数と総細菌数に対する比率で表示され、基準値を超えた場合は抗菌療法を含む治療計画の立案に活用されます。


日本歯周病学会「歯周病患者における抗菌薬適正使用のガイドライン2020」では、細菌検査に基づく抗菌療法の指針が詳しく記載されています


歯周病原菌検査の院内即日システムの実用性

近年登場した院内即日検査システムは、歯科医療の現場に大きな変化をもたらしています。従来のリアルタイムPCR検査は外部機関への郵送が必要で結果まで1週間かかりましたが、新しいシステムでは院内で約18~45分で検査が完了します。


時間短縮率は約60%です。


代表的な製品には、大阪大学歯学部発ベンチャーのアイキャットが開発した「QUON Perio(クオンペリオ)」や、株式会社モリタが提供する「orcoa(オルコア)」があります。これらのシステムは、検体採取から測定完了まで18~45分で、患者さんの診療時間内に結果を伝えられる点が革新的です。外部検査機関と同等の精度を保ちながら、当日中にフィードバックできるため、患者さんの理解度とモチベーション向上に直接つながります。


検査結果をその場で共有できますね。


保険点数では口腔細菌定量検査1として130点(患者負担は約390円)で算定可能で、月2回まで実施できます。初期導入コストは高額ですが、ランニングコストは1検査あたり数百円程度に抑えられるため、検査数が多い医院では費用対効果が高くなります。ただし、同一月に歯周病検査を算定した場合は重複して算定できない点には注意が必要です。


アイキャット公式サイトではQUON Perioの詳細な製品情報と臨床活用事例が紹介されています


歯周病原菌検査のレッドコンプレックス5菌種

レッドコンプレックスは、歯周病を重症化させる最も病原性の高い3つの細菌群の総称です。具体的には、Porphyromonas gingivalis(Pg菌)、Treponema denticola(Td菌)、Tannerella forsythia(Tf菌)の3菌種を指します。


これらは極悪菌と呼ばれます。


Pg菌は特に重要で、酸素のない環境で生息し、血液を栄養源とする嫌気性菌です。歯周病患者の歯茎の細胞からは、健康な歯茎と比較してPg菌が約200倍、Td菌が2倍以上検出されることが研究で明らかになっています。このPg菌は歯周ポケット内のタンパク質を分解する酵素(ジンジパイン)を分泌し、歯周組織を破壊するだけでなく、血管を通じて全身に移行し、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病の悪化、認知症のリスク上昇にも関与することが判明しています。


全身疾患との関連が証明されています。


検査では、レッドコンプレックス3菌種に加えて、若年性歯周炎の原因となるAggregatibacter actinomycetemcomitans(Aa菌)と、菌の棲み家となるバイオフィルムを形成するFusobacterium nucleatum(Fn菌)を含めた5菌種を測定するのが一般的です。これら5菌種の検出量と比率によって、歯周病の進行度や予後、必要な治療法(機械的治療のみか抗菌療法の併用が必要か)を科学的根拠に基づいて判断できます。基準値を超えた場合は、マウスピースを使用した局所抗菌療法や内服薬による除菌治療が選択肢となります。


歯周病原菌検査の結果を治療計画に活用する独自視点

多くの歯科医師が「歯周病細菌検査はやる意味がない」と考えている実態があります。その理由は、検査結果が出ても実施する治療内容が変わらないためです。つまり、検査をしてもしなくても、スケーリングやSRPなどの機械的な歯石除去を行うという基本方針に変化がないという点が問題視されています。


結論は基本治療が最優先です。


しかし、検査結果を患者さんのモチベーション向上と行動変容のツールとして活用する視点は重要です。位相差顕微鏡で動く細菌を実際に見せることで、「見えない敵」を可視化し、セルフケアの重要性を実感してもらえます。また、リアルタイムPCR検査で治療前後の菌数を数値で比較することで、治療効果を客観的に示せるため、患者さんの通院継続率やリコール率の向上につながります。検査データは、患者さんとのコミュニケーションを深め、信頼関係を構築するための有効な手段となるのです。


数値化で納得度が高まります。


さらに、インプラント治療前のリスク評価や、糖尿病などの全身疾患を持つ患者さんの歯周病管理には、細菌検査が不可欠なケースもあります。レッドコンプレックスが高値の場合、インプラント周囲炎のリスクが上昇するため、事前の除菌治療が推奨されます。検査を「診断のため」だけでなく、「患者教育と治療の質向上のため」という複合的な目的で導入することで、臨床的な価値が大きく高まります。


日本口腔衛生学会の公式見解では、歯周病細菌検査の臨床的意義と活用方法について最新のエビデンスがまとめられています