顔面裂 分類を歯科医が実践的に理解する

顔面裂の分類は複雑で、テシエ分類から Veau 分類まで複数の方法があります。歯科医として臨床診断に必要な分類体系と、実際の診療現場での活用法を学べます。口唇裂・口蓋裂・顎裂の基本分類から応用まで、どのように使い分ければよいのでしょうか?

顔面裂の分類を歯科医が理解する

あなたが学んだ顔面裂の分類は、臨床で使えない分類かもしれません。


3ポイント要約
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基本分類

口唇裂のみ、唇顎裂、口蓋裂、唇顎口蓋裂の4パターンと、口蓋の部位別分類が歯科診療の中心になります。

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臨床診断ポイント

視診・触診で判定可能な裂の位置・範囲を確認し、重症度と治療計画を関連付けることが重要です。

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治療連携

形成外科・口腔外科・矯正歯科とのチーム医療で、分類に基づいた多職種の治療計画が必要です。


顔面裂の分類における基本的な4つのパターン


顔面裂とは、顔面・上顎・口腔内に生じた先天性の裂け目のことです。歯科医が診療現場で出会う顔面裂のほぼすべては、基本的な4つのパターンに分類されます。これらは胎児の発育過程における突起の癒合不全によって生じたもので、最も発生頻度が高い先天異常です。日本では400~600人に1人の割合で生まれるとされており、歯科医が定期的に診療する可能性が高い疾患です。


基本分類は以下の4つです。第一に口唇裂のみ、第二に唇顎裂(口唇裂と顎裂の併発)、第三に口蓋裂のみ、第四に唇顎口蓋裂です。これらの分類が、治療計画と直結する最も実用的な枠組みです。つまり基本4分類が理解できれば、歯科診療の基本は確立できるということです。


さらに、同じ唇裂でも片側性と両側性に分けられ、左側・右側という側方性も記載します。この側方性の記載は矯正治療やインプラント計画に重要な情報を与えます。つまり単なる分類ではなく、その後の治療戦略を決める情報になるのです。


顔面裂の分類における口蓋裂の部位別診断

口蓋裂は見た目では判定しづらい疾患です。患者が口を開けて初めて診断可能な場合が大半です。口蓋の裂の位置によって、軟硬口蓋裂・軟口蓋裂・粘膜下口蓋裂に分類されます。この分類が重要な理由は、言語機能や嚥下機能の予後が大きく異なるからです。


硬軟口蓋裂は、上顎の前方の骨部分(硬口蓋)から後方の軟らかい部分(軟口蓋)まで裂けている状態です。機能的問題が最も大きく、手術時期や矯正治療の必要性も高まります。軟口蓋裂のみの場合は、比較的予後が良好な傾向にあります。最も診断が困難なのが粘膜下口蓋裂で、見かけ上は割れていないのに筋肉だけが分離している状態です。これは予期しない言語障害や聴力障害を引き起こすため、触診での確認が不可欠です。つまり視診だけで「問題なし」と判定してはいけないということですね。


顔面裂の分類が臨床診療で活用される実践的側面

分類を学ぶ目的は、単に病態を理解することではなく、治療計画を立てることです。歯科医が顔面裂患者を診るときに求められるのは、形成外科や矯正歯科との連携における「正確な情報提供」です。つまり「どの部位がどの程度裂けているのか」を簡潔・正確に報告できるスキルが求められるわけです。


診療ガイドラインでは、口唇裂・口蓋裂の治療が形成外科・口腔外科・矯正歯科・音声言語士・補綴歯科による集学的チーム医療で行われることが強調されています。各専門家が異なる用語で分類を理解していると、治療計画の齟齬が生じる可能性があります。そのため、日本口蓋裂学会が2022年に策定した診療ガイドラインでは、統一された分類法の使用を推奨しています。つまり分類は単なる学問ではなく、患者への医療の質を左右する実務的ツールなのです。


視診と触診に加えて、X線検査や3D画像診断も活用される現代では、より精密な裂型の把握が可能になりました。ただし、これらの検査結果も「基本分類」に基づいて報告されることで初めて他職種の理解につながります。あなたが正確に分類できなければ、その後の治療計画全体が影響を受ける可能性があります。


結論は診療ガイドラインの理解と実践です。


歯科医が知るべきテシエ分類と稀な顔面裂の分類

医学教科書では「テシエ分類」という用語が登場します。フランスの眼科医テシエが提唱した分類で、顔面裂を15種類に細分化したものです。正中裂・傍正中裂・軌道裂・外側裂という4グループに分けられ、それぞれの中で0~14番号が付与されています。確かに包括的な分類ですが、歯科診療で活用される機会はほぼありません。


意外ですね。


テシエ分類による顔面裂は、10万出生あたり1.4~4.85例という非常に稀な先天性異常です。日本で毎年約100万人の出生があれば、テシエ分類の顔面裂患者は数人程度の発生予測になります。つまり一般的な歯科診療所では、キャリア通算でも数例程度の遭遇しか考えられないということです。形成外科診療ガイドラインでも「テシエ分類は発生学を考慮しておらず、治療方法と直結していないため、臨床診断の第一選択として推奨されない」と記載されています。つまり学問的には興味深いが、実践的価値は限定的ということですね。


顔面裂の分類における歯科医の役割と治療計画への応用

歯科医が顔面裂患者に関わるのは、初回診察時から治療終了時までの長期間です。乳幼児期の初期検査から始まり、矯正治療、補綴治療、成人期の咬合管理まで、人生全体の口腔機能管理に携わります。そのため、「今この患者がどの分類に属し、どの段階の治療を必要としているのか」を常に把握していることが求められます。


診療ガイドラインに基づく標準的な治療計画では、初回口唇形成術は生後3~6ヶ月に行われます。その後、初回口蓋形成術は生後18~24ヶ月に実施されるのが一般的です。矯正治療は混合歯列期から開始し、永久歯列完成後も長期的な管理が必要です。補綴治療(義歯やインプラント)は、成人期に多くの患者が必要とします。これら全段階を通じて、歯科医が「正確な分類情報」を保有していることで、他職種への情報提供精度が高まり、結果として患者の治療満足度が向上します。つまり分類の理解は、患者の人生に直結する医療品質を左右するのです。


形成外科医や矯正歯科医との連携時には、「右側片側性唇顎口蓋裂」といった簡潔かつ正確な表現が求められます。あいまいな表現や誤った分類名を使用すると、治療計画の変更や不要な検査につながる可能性があります。したがって、基本分類の正確な理解と適切な用語使用は、医療安全の観点からも重要なスキルなのです。実際の診療現場では、一度の曖昧な報告が後の治療段階で大きな支障をもたらすケースも報告されています。


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参考情報: 日本口蓋裂学会の公式診療ガイドライン2022年版では、多職種チーム医療における分類の統一的使用を強調しており、分類に基づいた治療計画策定の重要性が詳述されています。


『口唇裂・口蓋裂の診療ガイドライン 2022』日本口蓋裂学会


参考情報: 日本形成外科学会の診療ガイドラインでは、テシエ分類の臨床的位置付けについて検討が加えられており、実践的な分類法の重要性が指摘されています。


『形成外科診療ガイドライン「頭蓋顎顔面疾患」』日本形成外科学会




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