パスタは茹でてもいないのに、フライパンに直接入れるだけで完成します。
フィデウアは、スペインのバレンシア地方から南に位置する「ガンディア」という小さな漁村で生まれました。漁師たちがいつものようにパエリアを作ろうとしたとき、肝心のお米を切らしていたことに気づき、苦し紛れにショートパスタ「フィデオ」を代わりに入れたのが始まりとされています。
つまり、偶然の産物だったわけです。
この話はフランスの「タルト・タタン」(リンゴのケーキをひっくり返してしまったことが発祥)と同様に、料理の歴史における「失敗が傑作を生む」典型例のひとつ。料理研究家・丸山久美氏(マドリード滞在歴14年)も「スペインの夏の定番家庭料理」として紹介しており、現地では家庭でも普通にテーブルに上る親しみやすい一皿です。
「フィデウア(Fideuà)」という名前は、バレンシア語で細いパスタを意味する「フィデオ(Fideo)」に由来しています。本場スペインでは2〜3cmにカットされた穴あきの細いマカロニ状のパスタを使うことが多く、日本では入手しやすいカッペリーニ(直径0.9mm以下の極細パスタ)やスパゲッティーニが代用として広く使われています。
バレンシア料理というイメージが強いですが、カタルーニャ沿岸部でも広く親しまれており、現地のレストランメニューには「パエリア」「アロスネグロ(イカ墨のご飯料理)」と並んで必ずといっていいほど掲載されています。日本でも、スペイン料理専門店では定番メニューのひとつとして登場するようになりました。
dancyu|魚介の旨味たっぷりのパスタパエリャ"フィデウア"(料理研究家・丸山久美さん監修レシピ)
フィデウアをおいしく作るうえで、パスタの種類選びは仕上がりを大きく左右します。これは重要なポイントです。
本場スペインで使われるのは「フィデオ」と呼ばれる、直径3mm前後の穴あきショートパスタです。日本ではほとんど手に入らないため、代替パスタとして以下の2つが主に使われています。
| パスタの種類 | 太さの目安 | 仕上がりの特徴 |
|------------|-----------|--------------|
| カッペリーニ | 0.9mm以下 | 本場に近いパリパリ食感、短時間で仕上がる |
| スパゲッティーニ | 1.6〜1.7mm | もちっとした食感、スープをたっぷり吸う |
| スパゲッティ | 1.8〜2.0mm | やわらかめに仕上がる、入手しやすい |
エバラ食品の公式レシピでは「細い麺のカッペリーニを使うことで、より本場スペインのフィデウアに近い仕上がりになる」と明記されており、パリパリ食感を楽しみたい場合はカッペリーニが最適です。
一方、スパゲッティやスパゲッティーニでも十分においしく作れます。エスビー食品の公式レシピでもスパゲッティを使ったレシピが紹介されており、太めのパスタを使うとスープの旨みをたっぷり吸ったもちもち食感になります。カッペリーニは100gあたり100〜180円程度で、スーパーのパスタ売り場で購入できます。
折り方にもコツがあります。スパゲッティ系は手で3〜4cmに折るだけでOKです。長さがポストカードの短辺(約10cm)の3分の1以下が目安と覚えておくと迷いません。細かく均等に折ることで、スープが均等に行き渡り、仕上がりにムラが出にくくなります。
エバラ食品公式|シーフード・フィデウア(パスタパエリア)のレシピ|パスタの種類と調理のポイント掲載
材料さえ揃えれば、あとはフライパン1つで完結します。これが基本です。
以下は2〜3人分の基本的な材料と手順です。
📋 材料(2〜3人分)
- カッペリーニまたはスパゲッティーニ……120g
- 有頭エビ……4尾
- イカ(輪切り)……100g
- あさり(砂抜き済み)……200g
- 玉ねぎ(みじん切り)……1/4個
- パプリカ(赤・黄)……各1/4個
- にんにく……1片
- トマト(またはトマトペースト大さじ2)……中1個
- サフラン……ひとつまみ(なければターメリック少量で代用可)
- オリーブオイル……大さじ2
- 水……300〜360ml
- 塩・コンソメ……適量
🍳 作り方(調理時間:約20分)
1. サフランをすり鉢で粉状に砕き、水に溶かしておく(20分前が理想)。
2. パスタを手で3〜4cmの長さに折っておく。
3. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火で香りを出す。
4. 中火にしてエビを両面焼き、頭を軽く押しつぶして旨みを出したら一度取り出す。
5. パプリカ・玉ねぎ・トマトを炒め、水分を飛ばす。
6. 折ったパスタを加え、オイルとなじませるように1〜2分炒める(ここがポイント!)。
7. サフラン水とコンソメ・塩を加え、沸騰したらイカとあさりをのせ、エビも戻す。
8. 蓋をして中火で8〜10分煮込む。
9. 最後に強火にして水分を飛ばし、鍋底がチリチリいうまでそのまま待つ。
10. くし形切りにしたレモンを添えて完成。
ステップ6でパスタを先に炒めることが、仕上がりのパリパリ感を生む最大のポイントです。油コーティングすることで、パスタが余計な水分を吸いすぎず、表面がほどよく香ばしく仕上がります。
ステップ9の「焦げ直前」まで待つのも重要なコツです。スペインの米パエリアに「ソカラット」と呼ばれる底面の香ばしい焦げがあるように、フィデウアでも鍋底のパスタがカリッとする一歩手前まで加熱することで、深みのある風味が生まれます。
エスビー食品公式|パスタで作るお手軽パエリア!フィデウア|サフランの使い方と仕上げのポイント掲載
フィデウアで最も多い失敗は「水分が多すぎてべちゃべちゃになる」か「水分が足りなくて焦げる」の2パターンです。
水分量はパスタの量と太さによって変わります。太さ1.6mm前後のスパゲッティーニを120g使う場合、水分量の目安は300ml前後です。煮込み中に水分が飛びすぎた場合は、少量のお湯を都度足しながら調整します。反対に、パスタに火が通っても水分が残る場合は強火にして素早く飛ばします。
火加減については、以下の3段階で考えると失敗しにくいです。
- 炒め段階:中火(パスタに油をなじませる)
- 煮込み段階:弱め〜中火(蓋をして蒸らす)
- 仕上げ段階:強火(水分を飛ばしてパリッと仕上げる)
蓋をする・しないは仕上がりを大きく変えます。蒸らしながら煮込む場合は蓋あり、パリパリ食感を重視する場合は途中から蓋を外して仕上げるのが正解です。エスビー食品の公式レシピでは「ふたはせずに中火で煮込む」とされており、初めての場合はこの方法が安定します。
また、サフランの代替として、ターメリック(ウコン)を少量使う方法があります。サフランは1g当たり数百円〜数千円と非常に高価なスパイスで、コンビニや一般的なスーパーではほぼ入手できません。ターメリックは色は同様の黄色に染まり、味わいはやや異なりますが、家庭料理としては十分代用になります。スーパーのスパイス売り場で100〜150円程度で購入できます。
生の魚介類はおいしい反面、下処理の手間と食費がかかります。毎日忙しい主婦にとっては、そこがネックになりやすい部分です。
実は冷凍シーフードミックスで、味の仕上がりはほぼ変わりません。
スーパーで200g入り400〜500円程度で購入できる冷凍シーフードミックス(エビ・イカ・あさりのセット)を使えば、下処理もゼロで済みます。エバラ食品の公式レシピでは「あさりとホタテの旨塩鍋」の素を活用したレシピが紹介されており、鍋の素1個でうま味・塩分・スープのバランスが一発で整うため、調味料を計量する手間が省けます。
また、パエリアの素(エスビー食品など)を使うと、サフラン・スパイス・コンソメがすでに配合されていて、パスタと水と具を加えるだけで本格的な仕上がりになります。価格は1袋200〜300円が相場で、2〜3人分が簡単に作れます。これは使えそうです。
さらに主婦の間で注目されているのが「手抜きフィデウア」と呼ばれる方法です。これは冷たいフライパンにパスタ・具・水・調味料をすべて入れてから火をかけ、パスタの表示ゆで時間+αだけ待つというワンステップ調理法です。熱湯を沸かす時間も省略でき、光熱費の節約にもなります。普通のパスタ調理と比べて工程が1/3ほどになる計算で、洗い物もフライパン1つで済みます。
パエリア鍋がなければ、直径26〜28cmの蓋付きフライパンで十分代用できます。スキレット(鉄製の小さなフライパン)を使うと、そのままテーブルに出せておしゃれな見た目にもなります。食卓でそのままサーブできるので、ホームパーティーや週末の特別ごはんにも最適です。
ホットペッパーグルメ meditsu|「手抜きフィデウア」はアレンジ無限大の家庭料理|光熱費節約のポイントも掲載