エアタービン歯科での使い方とメンテナンス方法と選び方

エアタービンは歯科治療に欠かせない切削器具ですが、適切な滅菌や注油が不可欠です。回転数や切削圧、5倍速との違いなど、知っておくべき基礎知識と選び方のポイントをまとめました。あなたの医院は正しく管理できていますか?

エアタービン歯科での基礎知識

注油せずに使うと2週間でベアリングが破損します。


この記事の3ポイント要約
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エアタービンの超高速回転

30万~50万rpmの圧縮空気で駆動し、フェザータッチ(30~80g)の軽い切削圧で使用する必要がある

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患者ごとの滅菌は必須

使い回しによる院内感染のリスクがあり、オートクレーブ滅菌と適切な注油メンテナンスが欠かせない

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5倍速コントラとの使い分け

高速切削のタービンに対し、5倍速は低速高トルクで音が静か。用途に応じて使い分けることで治療効率が向上する


エアタービンの回転数と切削の仕組み


エアタービンは圧縮空気を動力源として、毎分30万~50万回転という超高速で回転する歯科用切削器具です。この回転数は一般的な電気エンジンの最大10,000回転と比べると、実に30~50倍もの速さになります。


仕組みはシンプルです。タービンヘッド内部にある回転羽根(ローター)に圧縮空気を送り込むことで、ボールベアリングやエアベアリングに支えられたローターが超高速回転します。この高速回転により、人体で最も硬いエナメル質や金属、陶材などを効率的に削ることが可能になりました。


ただし超高速回転にはデメリットもあります。回転力(トルク)が弱いため、強く押し当てると回転が止まってしまうのです。そのため約30~80gという羽根で触れるような軽い圧力、いわゆる「フェザータッチ」での使用が推奨されています。この軽圧での切削をマスターすることが、エアタービンを使いこなす第一歩です。


高速回転による摩擦熱は歯や歯髄にダメージを与えるため、必ず注水下で使用します。冷却水は切削部位を冷やすだけでなく、削りカスを洗い流す役割も果たします。


エアタービンと5倍速コントラの違い

歯科医院では近年、エアタービンに加えて「5倍速コントラ」と呼ばれる器具も広く使われるようになりました。どういうことでしょうか?


5倍速コントラはマイクロモーター(電気エンジン)で駆動し、最大4万回転程度で動作します。エアタービンの30万回転以上と比べると低速ですが、トルク(回転力)が大きいため、押し当てても止まらずに削り続けることができます。この特性により、繊細なコントロールが必要な支台歯形成や形成の仕上げ段階で威力を発揮するのです。


音の違いも重要なポイントです。エアタービンは「キーン」という甲高い音が出るため、患者さんが恐怖を感じることがあります。一方で5倍速コントラは低速回転のため音が静かで、患者さんの心理的負担を軽減できます。


これは使えそうです。


動力源の違いも押さえておきましょう。エアタービンは圧縮空気で動くため、エアーコンプレッサーが必要です。5倍速コントラは電気モーターで動くため、電源とマイクロモーター本体があれば使用できます。


実際の使い分けとしては、グロスリダクション(大まかな切削)にはエアタービン、精密な形成や仕上げには5倍速コントラという組み合わせが一般的です。両者の特性を理解し、治療内容に応じて使い分けることで、効率的かつ精密な治療が実現します。


エアタービンの滅菌と使い回し問題

2017年に歯科医療機関の約半数がエアタービンを患者ごとに滅菌せず使い回していたというニュースが話題になりました。この問題は歯科医療の信頼を大きく揺るがす出来事でしたが、なぜこのような事態が起きたのでしょうか。


理由の一つは経済的負担です。エアタービンを患者ごとに滅菌するには、診療台数の3倍程度の本数を保有する必要があると言われています。1本あたり数万円から10万円以上するエアタービンを、複数台のユニットで患者ごとに交換するには、相当な初期投資が必要になります。


さらに滅菌にかかる時間も課題です。従来のオートクレーブ滅菌では約120度の高温で処理するため、1サイクルに30分以上かかることが一般的でした。忙しい診療の中で毎回この時間を確保するのは難しく、使い回しの原因になっていました。


しかし近年は15分程度で滅菌できる専用機器も登場しており、状況は改善されつつあります。つまり適切な設備投資で患者ごとの滅菌は実現可能です。


使い回しによる院内感染のリスクは深刻です。エアタービンは患者の口腔内で使用するため、唾液や血液が付着します。これらには肝炎ウイルスやHIVなどの病原体が含まれている可能性があり、適切に滅菌しなければ次の患者へ感染するリスクがあります。


医院の信頼を守るためにも、患者ごとの滅菌は必須の対応と言えます。設備への投資は経営判断として重要ですが、患者の安全を第一に考える姿勢が求められています。


エアタービンのメンテナンスと注油方法

エアタービンの寿命を左右するのが、使用後の注油メンテナンスです。注油を怠るとベアリング部分に汚れが蓄積し、回転不良や異音、最悪の場合はベアリング破損につながります。


注油の基本手順はシンプルです。まず使用後はタービン本体をカップリングジョイントから取り外します。次に専用のメンテナンススプレーのノズルをタービン後部に差し込み、チャック部からオイルが出てくるまでスプレーします。注油後は10~20秒回転させて内部にオイルを行き渡らせ、しみ出たオイルをガーゼで拭き取ります。


タイミングも重要です。注油は洗浄・消毒後、またはオートクレーブ滅菌前に行うのが原則です。滅菌後に注油すると再び汚染される恐れがあるため、滅菌前の注油が推奨されています。オイルを適切に使用することで滅菌時の高温からベアリングを保護する効果もあります。


近年は自動注油洗浄装置も普及しています。これらの装置は複数本のハンドピースを同時に処理でき、手作業よりも確実で時間も短縮できます。iCareやルブケアなどの製品があり、エアータービンとコントラアングルの専用回路を備えたものもあります。


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注油を怠った場合の代償は大きいです。ベアリングが損傷すると修理に数万円かかることもあり、場合によっては本体交換が必要になります。毎回の注油という小さな手間が、長期的なコスト削減につながることを忘れてはいけません。


メンテナンススプレーの選び方も重要です。各メーカーは専用オイルを推奨しており、他社製品を使うと不具合が起きる可能性があります。モーターアタッチメント用とエアタービン用では成分が異なるため、必ず用途に合ったものを選びましょう。


エアタービンの選び方とバー脱落リスク

エアタービンを選ぶ際は、まず自院の治療スタイルと患者層を考えることが基本です。一般診療が中心なら標準的なヘッドサイズのもの、小児や矯正治療が多いなら小型ヘッドのものが使いやすいでしょう。


回転数も選択基準の一つです。多くのエアタービンは30万~50万rpmの範囲ですが、製品によって最高回転数が異なります。硬い金属や陶材を削る機会が多いなら、高回転数のモデルが効率的です。


メンテナンス性も見逃せません。カートリッジ交換式のモデルは、消耗したベアリング部分だけを交換できるため、長期的なコストを抑えられます。ただし一度分解すると音や振動が大きくなるリスクもあるため、メーカー推奨の方法を守ることが大切です。


重量とバランスも重要なポイントです。長時間の治療で疲労を軽減するには、軽量で手にフィットするデザインを選ぶべきです。実際に手に取って持ちやすさを確認することをお勧めします。


注水孔数も確認しましょう。3点注水や4点注水など、注水孔の数と配置によって冷却効果が変わります。切削部位に的確に冷却水を届けられる製品を選ぶことで、熱によるダメージを最小限に抑えられます。


バー脱落事故のリスクにも注意が必要です。医療事故報告では、エアタービン使用中にバーが口腔内に落下した事例が複数報告されています。バーの装着確認を怠ると、患者の誤嚥や組織損傷につながる重大な事故になります。


使用前の確認作業が基本です。


チャック機構の種類も選択基準になります。フリクショングリップチャックやプッシュボタン式など、各メーカーで方式が異なります。バーの着脱がスムーズで確実にロックできるものを選びましょう。


価格帯は製品によって大きく異なります。国内メーカーの高品質モデルは10万円以上しますが、海外製の低価格モデルなら2万円程度から入手可能です。ただし耐久性やメンテナンス体制を考慮すると、信頼できるメーカーの製品を選ぶ方が長期的には安心です。


最近では45度ヘッドなど特殊な形状のタービンも登場しています。智歯や埋伏歯の分割、抜歯など、通常のタービンではアクセスが困難な部位での使用に適しています。こうした専門的な器具も、診療内容に応じて検討する価値があります。


日本歯科医師会のエアータービン解説ページでは、基本的な使用方法と注意点が詳しく説明されています。


NSKの臨床レポート(PDF)には、日本の歯科用回転切削器具の技術的な詳細と臨床使用のポイントがまとめられており、より専門的な知識を得たい方に参考になります。




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