唾液pH測定の方法と検査結果の活用

唾液pH測定は歯科医療従事者が虫歯リスクや歯周病リスクを評価する重要な検査手法です。測定方法や検査の注意点、患者指導への活用法について詳しく解説していきますが、果たして正しく測定できているでしょうか?

唾液pH測定とは何か

食後すぐに測定すると誤った結果になります。


この記事の3つのポイント
📊
pH5.5以下で歯が溶け始める

唾液のpHが5.5を下回ると脱灰が始まり、虫歯リスクが急激に高まることを理解し、患者の口腔環境を正確に評価できます。

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測定前1時間の飲食制限が必須

正確な検査結果を得るには測定前1時間の飲食や歯磨きを控える必要があり、患者への事前説明が検査の信頼性を左右します。

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緩衝能測定で予防計画を立案

pHだけでなく緩衝能を測定することで、患者ごとの虫歯リスクを数値化し、科学的根拠に基づいた予防プログラムを提案できます。


唾液pH測定の基本的な意義と目的


唾液のpH測定は、患者の口腔内環境が虫歯になりやすい状態かどうかを客観的に評価する検査方法です。通常、健康な口腔内のpHは中性に近い6.8から7.0の範囲を維持していますが、食事や細菌の活動によって変動します。


pH値が5.5を下回ると、歯のエナメル質からカルシウムやリンが溶け出す「脱灰」が始まります。


これは虫歯の初期段階です。


逆に、pH値が高すぎる場合は歯石が形成されやすくなり、歯周病のリスクが上昇します。このように、pHの測定値は患者の口腔リスクを判断する重要な指標となるのです。


歯科医療従事者にとって、この検査は単なる診断ツールではありません。数値として示すことで患者の予防意識を高め、生活習慣の改善を促す強力なコミュニケーション手段になります。特に定期健診で継続的に測定すれば、患者自身が口腔環境の変化を実感でき、セルフケアのモチベーション向上につながるのです。


唾液pH測定は簡便で非侵襲的な検査であり、わずか数分で結果が得られます。この手軽さが、予防歯科の現場で広く活用されている理由です。


唾液pH測定で把握できる虫歯リスクの指標

唾液pH測定によって、患者の虫歯リスクを複数の角度から評価できます。まず、安静時唾液のpHを測定することで、患者の基礎的な口腔環境が酸性に傾きやすいかどうかがわかります。実際に500人以上の唾液pH測定を行った調査では、大多数の患者が理想的なpH7.0以上のアルカリ性ではなく、酸性を示していたという報告があります。


pH値が低い患者は、日常的に口腔内が酸性環境にあるため、虫歯菌が活動しやすく、エナメル質の脱灰が進行しやすい状態です。例えば、pH5.5以下の状態が長時間続くと、歯の表面が約30分から1時間かけて溶けていきます。これは、1本のあめを30分なめ続けた場合とほぼ同じダメージです。


さらに、pH測定と同時に緩衝能を調べることで、より詳細なリスク評価が可能になります。緩衝能とは、酸性に傾いた口腔内を中性に戻す唾液の能力のことです。緩衝能が高い患者は、食後20分から30分で口腔内pHが中性に回復しますが、緩衝能が低い患者では60分以上かかることもあります。


この情報をもとに、歯科衛生士は患者に対して具体的な食生活指導や間食の頻度についてアドバイスできます。緩衝能が低い場合は、キシリトール配合のガムを食後に噛む習慣を提案するのが効果的です。


唾液pH測定の具体的な方法と手順

唾液pH測定には、大きく分けて試験紙法と専用機器による測定法があります。試験紙法は最も簡便な方法で、pH試験紙を唾液に浸して色の変化を標準色と比較するだけです。pH試験紙は薬局やオンラインショップで300円から500円程度で購入でき、測定範囲はpH4.5から9.0のものが一般的です。


試験紙を使用する際は、患者に刺激唾液ではなく安静時唾液を採取してもらいます。約1cmに切った試験紙を唾液で湿らせ、2秒程度置いてから色の変化を確認します。ただし、試験紙法には±0.5から±1.0程度の誤差があるため、精密な測定が必要な場合には向きません。


より正確な測定には、専用のpH測定器や唾液検査システムを使用します。代表的なものがライオン社の「SMT(Salivary Multi Test)」で、わずか5分で6項目を測定できます。患者に3mlの専用洗口液を10秒間口に含んでもらい、吐き出した液を試験紙に滴下して専用機器にセットするだけです。


測定時の注意点として、検査前1時間は飲食・歯磨き・うがい・喫煙を控えるよう患者に指導する必要があります。これは、食べ物や飲み物がpH値や細菌バランスを変化させ、正確な測定を妨げるためです。特に酸性飲料や糖分を含む飲食物は、口腔内を一時的に強い酸性に傾けます。


検査のタイミングも重要です。朝一番の唾液は最も正確な結果が得られるため、午前中の予約を推奨するとよいでしょう。


唾液pH測定結果を患者指導に活用する方法

測定結果を効果的に患者指導に活かすには、数値を視覚的に示すことが重要です。多くの歯科医院では、測定結果をレーダーチャートやグラフで表示し、患者が自分の口腔状態を一目で理解できるようにしています。


pH値が低い患者には、まず口腔内が酸性に傾く原因を説明します。頻繁な間食、酸性飲料の常飲、口呼吸による唾液分泌量の低下などが主な要因です。例えば、スポーツドリンクはpH3.5程度と非常に酸性度が高く、1日に何度も飲む習慣があると常に口腔内が酸性環境にさらされることになります。これは、東京ドーム1個分の広さの土地を酸で洗っているようなダメージです。


具体的な改善策として、以下のポイントを患者に伝えます。まず、食後に水やお茶で口をすすぐ習慣をつけることです。これだけで口腔内pHの回復時間が大幅に短縮されます。次に、間食の回数を減らし、食べる時間を決めることです。ダラダラ食べると、口腔内が酸性の状態が長時間続き、脱灰のリスクが高まります。


緩衝能が低い患者には、唾液分泌を促す方法を指導します。よく噛んで食べる、舌の運動をする、唾液腺マッサージを行うなどの方法があります。また、フッ素入り歯磨き粉の使用や、定期的なフッ素塗布も推奨します。


測定結果を記録し、定期健診ごとに比較することで、患者は自身の努力の成果を実感できます。


つまり改善が見える化されるのです。


唾液pH測定における注意点と測定精度の管理

正確な測定結果を得るためには、いくつかの重要な注意点があります。


まず、試験紙の保管方法です。


pH試験紙は湿気に非常に敏感で、適切に保管しないと劣化して正確な測定ができなくなります。使用期限は購入後約3年ですが、高温多湿を避け、風通しの良い冷暗所で保管し、開封後は速やかに使用する必要があります。


試験紙が少し変色しても使用可能ですが、白く変色した場合は使用できません。


これは誤差につながります。


また、試験紙を唾液に浸す時間は1秒以内とし、長時間浸すと正確なpHが測定できなくなります。


専用機器を使用する場合も、定期的なメンテナンスとキャリブレーション(校正)が必要です。一般的にpH測定の不確かさは約0.05pHと言われていますが、電極の汚れや消耗により指示値がずれることがあります。機器メーカーの推奨する頻度でメンテナンスを行いましょう。


患者側の準備不足も測定精度に影響します。検査前1時間の飲食制限を守らなかった場合、食べ物の残渣や酸性物質が唾液に混じり、実際よりも低いpH値が出ることがあります。


受付時に再度確認することが大切です。


測定前12時間以内の抗菌剤配合マウスウォッシュの使用も避けるべきです。これにより口腔内細菌のバランスが変わり、正確な評価ができなくなります。


さらに、激しい運動直後の測定も避けます。運動により唾液分泌量が変化し、pH値に影響するためです。これらの条件が整わない場合は、検査を延期するほうが正確な結果が得られます。


唾液pH測定の費用と歯科医院への導入メリット

唾液pH測定を含む唾液検査は、基本的に自費診療となります。検査内容によって費用に幅がありますが、簡易的なpH測定のみであれば1,000円から1,500円程度、SMTなどの多項目検査システムを使用する場合は3,000円から5,500円程度が相場です。初回は5,000円、2回目以降は4,000円といった料金設定をしている医院もあります。


歯科医院にとって、唾液検査システムの導入は患者満足度向上と予防歯科強化の両面でメリットがあります。SMTの場合、機器本体の導入コストは約100万円前後ですが、検査1回あたりの消耗品コストは比較的低く抑えられます。測定時間がわずか5分と短いため、診療の流れを妨げずに実施できるのも利点です。


患者にとっても、検査結果が数値やグラフで視覚化されるため、自分の口腔状態を客観的に理解しやすくなります。これにより、歯科医師や歯科衛生士からの指導内容に対する納得感が高まり、予防への取り組み意欲が向上します。特に、定期的に測定して改善を実感できると、継続的な通院のモチベーションにつながります。


予防歯科の収益化という観点からも、唾液検査は有効です。検査結果に基づいて、フッ素塗布、PMTCプロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング、ホームケア用品の販売など、関連する予防サービスの提案がしやすくなります。


導入を検討する際は、スタッフへの教育も重要です。検査の意義や結果の読み方、患者への説明方法を全スタッフが理解していれば、チーム全体で予防歯科を推進できます。


定期的な院内研修を実施しましょう。


ライオン歯科材株式会社のSMT製品情報ページでは、多項目・短時間唾液検査システムの詳細な測定項目や操作方法について確認できます。


デンタルプラザの学術記事では、日常臨床における唾液検査の有効な活用法と患者モチベーション向上の実践例が紹介されています。




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