ルフォー骨折 分類と診断・治療の重要知識

ルフォー骨折の分類(I型・II型・III型)と診断方法、治療の流れを理解することで、患者の予後判定や治療計画を正確に立てることができます。最新の分類基準と臨床応用について知っていますか?

ルフォー骨折 分類と上顎骨損傷の治療戦略

ルフォー骨折の分類は型によって骨折線の位置がまったく異なり、治療時間も2時間から6時間で3倍の差が生じます



ルフォー骨折は、上顎骨の損傷を分類する際の国際標準的なシステムです。1901年にフランスの外科医René Le Fortが、顔面への高エネルギー損傷を分析した結果から提唱されました。この分類は、骨折線の走行位置によって3つの型に大別され、治療方針や予後の判定に大きく影響します。


顔面骨折全体の約25%を占めるルフォー型骨折は、発生ピークが21~25歳の青年層で、男性が女性の約2.6倍多く見られます。発生原因としては交通事故が最も多く、次いで暴行や転倒が挙げられます。診断は視診・触診に加えて、CT検査(特に薄層CTや3D再構成画像)が必須です。骨折線の正確な判定が治療方針を大きく左右するため、画像診断の精度が臨床成績に直結します。


ルフォー骨折 分類と治療時間・症状の特徴
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Le Fort I型 - 最も頻度の高い水平骨折

梨状孔下部から犬歯窩を経由して上顎洞壁、翼口蓋窩を通り翼状突起下部に達する骨折。 上顎歯列が可動するため咬合異常が主症状。 手術時間2時間程度。

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Le Fort II型 - ピラミッド型骨折

鼻骨と篩骨複合体を含む骨折で、眼窩下縁を破断し上顎結節に達する。 複雑な骨折のため手術時間3~6時間。 髄液漏や嗅覚障害のリスク有り。

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Le Fort III型 - 頭蓋顔面剥離

頬骨を含む顔面中央部全体が頭蓋底から剥離する最も重症な骨折。 顔面が細長く見えるのが特徴。 手術時間最長で3~6時間。 頭蓋底損傷による髄液漏が高確率で合併。


ルフォー I型骨折の診断基準と臨床的特徴を把握する

ルフォー I型骨折は、Guerin骨折とも呼ばれる上顎水平骨折です。骨折線は両側の梨状孔下部を起点として、上顎骨体を水平に走り、上顎洞の前壁・側壁・後壁を回って後方に進みます。このため上顎歯列全体が歯槽突起とともに可動性を持ち、臨床診察時に上顎全体を浮動させることができます。


これはルフォー I型骨折の診断における最重要所見です。患者が歯をかみ締めたとき、上顎全体が上下に動く場合、ルフォー I型を強く疑います。咬合異常は最も訴えが多い症状で、特に臼歯部での咬み合わせのズレが顕著です。歯周組織の知覚異常も高頻度に認められ、眼窩下神経領域の麻痺が原因と考えられます。


頬骨弓は通常無傷のため、頬部の陥没変形は認められません。ただし腫脹が強い時期は骨折の判定が困難なため、受傷後5~10日の腫脹が軽減した時期が診断に最適です。手術は基本的に受傷後2週間以内に実施する必要があり、骨癒合が進む前の整復が成功率を大きく左右します。


ルフォー II型骨折の複雑な骨折パターンと治療の難しさ

ルフォー II型はピラミッド型骨折と呼ばれ、名称の通り骨折片がピラミッドのような形状を呈します。鼻骨を含む上部から下顎方向に向かう骨折であり、ルフォー I型より上位まで骨折が及びます。骨折線は前頭鼻骨縫合部から開始し、眼窩内側を通り、下眼窩裂、眼窩下縁、頬骨上顎縫合部、上顎洞側壁・後壁へと複雑に走行します。


中部顔面骨の内側部が完全に遊離する骨折であるため、見た目の変形も顕著です。特に鼻根部の陥没とともに、眼間距離が拡大して見えるのが特徴的です。これはルフォー III型との重要な鑑別点で、ルフォー II型では外側眼窩と頬骨弓は通常無傷のまま保たれます。ルフォー III型では両者とも損傷を受けます。


嗅覚障害や髄液鼻漏がルフォー II型で高確率に合併することも重要です。これは篩骨の損傷と頭蓋底への骨折線の波及を意味しており、術前の耳鼻科的評価や脳脊髄液漏の診査が必須となります。手術難度がルフォー I型の1.5~3倍高く、手術時間が3~6時間に及ぶため、十分な術前準備と綿密な治療計画が不可欠です。


ルフォー III型骨折と矢状骨折の診断・治療上の違い

ルフォー III型骨折は頭蓋顔面剥離と称される最も重症な上顎骨折です。骨折線は鼻前頭部から開始し、下眼窩裂を通って外側眼窩壁と両側頬骨弓を通過します。つまり頬骨までを含めた顔面中央部全体が頭蓋底から離断される損傷パターンです。このため臨床的には顔面が細長く見える特徴的な変形が認められます。


他の型との鑑別上、外側眼窩と頬骨弓が確実に損傷していることの確認が重要です。頬骨弓の陥没や頬部の平坦化が見られる場合は、ルフォー III型を第一に疑う必要があります。CT画像での3D再構成画像が診断の確定に極めて有用です。手術時間も最長となり、3~6時間の大手術が予想されます。


矢状骨折との混同に注意すること。矢状骨折は口蓋をほぼ矢状に走行する骨折で、正中部での軟組織損傷や口蓋粘膜の斑状出血が診断の手がかりになります。矢状骨折単独ではルフォー III型より症状は軽微ですが、複合骨折として存在することも多いため、常に全体像の把握が必要です。


ルフォー骨折の診断方法と画像検査の活用法

ルフォー骨折の診断は三段階で進みます。まず視診と触診で、顔面の腫脹・変形・皮下出血の分布パターンから骨折の位置を推測します。特に上唇と中顔面下半分の腫脹、眼窩下の感度低下、口蓋粘膜の斑状出血は重要な所見です。次に単純X線撮影を行いますが、Waters法が最適とされています。ただし梨状孔周辺の骨折線は X線では判別しにくいため、CT検査は必須です。


低線量CT(薄層スライス1mm以下)による軸位断、冠状断、矢状断の撮影が標準です。その後3D再構成画像を作製することで、複雑な骨折線の走行を立体的に理解できます。特にルフォー II型、III型では3D画像なしに治療計画を立案することは困難です。中顔面骨折の空間的把握と、複合骨折の診断が3D画像によって飛躍的に向上します。


受傷直後の急性期(1~3日)は腫脹が強く、また患者の全身状態の評価も必要なため、画像検査のベストタイミングは受傷後5~10日です。腫脹が軽減し、患者が診察協力できる状態になってからCT撮影を実施するほうが、診断精度も患者への身体負担も最適化されます。


ルフォー骨折患者への術前・術後の対応と予後管理

手術の適応基準は骨折の型により異なります。ルフォー I型・矢状骨折では受傷後2週間以内に手術を実施するのが原則です。一方、ルフォー II型・III型はより複雑なため、受傷日数と骨片の偏位程度をより詳細に検討してから手術日を決定します。通常は受傷後1~2週間以内の手術が目指されます。


術前準備として、耳鼻咽喉科による評価が不可欠です。髄液鼻漏の有無確認と、嗅覚や味覚の基礎的検査を行うことで、術後の合併症予測と患者への説明資料が得られます。抗生物質の予防投与も必須で、術前30分とその後4時間ごとの投与が標準プロトコルです。


術後は流動食・嚥下食により栄養管理を行い、1週間後に縫合糸除去と軟部組織の治癒評価を実施します。必要に応じて追加のCT検査を1~2回実施し、骨接合状態を確認します。最終的な検査は手術後6ヶ月で、この時点での咬合状態が不完全な場合は、歯科矯正治療への移行も検討します。顎間ゴム牽引を術後1ヶ月程度継続することで、咬合改善を図ることができます。


骨折が生じた時点で、患者は強い心理的負担を抱えています。手術の説明時には、治癒までの期間(通常4~12週)、後遺症の可能性(知覚異常、嗅覚障害など)、そして機能回復の見込みについて、正確でかつ前向きな説明が重要です。形成外科と歯科口腔外科との密接な連携により、機能性と整容性の両立が可能となります。


クインテッセンス出版「異事増殖大事典」ルフォーの分類ページ - ルフォー分類の詳細な定義と骨折線の走行についての専門的解説が掲載されています


日本形成外科学会「上顎骨骨折(LeFort型骨折)」 - 日本形成外科学会による公式な分類基準と各型の特徴、手術時間、入院期間に関する信頼性の高い情報


J-Stage「Le Fort type 顔面骨折の画像所見と臨床」- 各型の画像診断のポイントと臨床的鑑別方法についての学術論文


OralStudio オーラルスタジオ「LeFort I 型骨折」- 歯科専門用語辞書による各型の詳細定義と骨折線の解剖学的位置関係




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