ポケット形成 褥瘡を治す医療者が知らない対処法

ポケット形成された褥瘡は治りにくいと言われていますが、あなたの対処方法が根本的に間違っているかもしれません。医学的に証明されたポケット形成の治療メカニズムと、外科的切開に頼らない実践的な対策をご紹介します。

ポケット形成と褥瘡の治療メカニズム

あなたが使用している軟膏や洗浄剤では、ポケット形成褥瘡は治せません。


ポケット形成褥瘡の3つのポイント
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ポケット形成の定義

皮膚欠損部より広い創腔が皮下に深く広がった状態。表面は小さくても奥に大きな空洞があり、数mmのポケットでも治療を行わずに放置すると悪化します。

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難治化の原因

ポケット内部では繰り返されるずれ力により肉芽同士が擦れ合い接着できず、最深部が鋭角のため肉芽増殖が物理的に不可能になります。

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感染リスク

ポケット内に薬剤や汚水が残ると感染の原因になり、周囲皮膚の発赤や膿形成につながりやすい重症化のリスクが高い状態です。


ポケット形成褥瘡とは、表面の潰瘍が比較的小さく見えても、皮下に思いのほか深く広く空洞が広がった状態を指します。これは単なる深い褥瘡ではなく、創周囲の皮膚下に広がる組織破壊により生じた腔という医学的定義があります。この状態では、一般的な軟膏塗布や毎日の洗浄だけでは改善しないことがしばしばあります。


それは理由があります。


ポケットが治りにくい理由は、肉芽組織の特性にあります。ポケット内部では繰り返されるずれ力によって肉芽同士が擦れ合い、接着することができなくなります。さらに最深部の肉芽が鋭角に折れ曲がっているため、物理的に肉芽が増殖できない構造になっているのです。つまり、局所療法だけではこの構造的問題は解決できません。どうしてポケット形成が起こるのかを理解することが対策の第一歩になります。


ポケット形成が発生する2つの機序と深部組織の損傷


ポケット形成褥瘡の発生メカニズムは大きく2つに分類されます。1つ目は褥瘡発生時に脂肪や筋といった深い組織が壊死してそのままポケットになるケース、もう1つは褥瘡発生後にずれ力によってポケットが生じるケースです。


初期型ポケットと呼ばれる最初のケースでは、深部損傷褥瘡(DTI)という状態が関連しています。脂肪や筋は表皮や真皮と比べて柔らかいため、圧迫により容易につぶれてしまいます。すると特に突出した骨の周囲では、潰れた脂肪や筋に強い圧迫やせん断力(引き裂く力)が生じます。このような作用にずれ力も加わることで、深い組織が主に壊死し、壊死組織が除去されるとその隙間がそのままポケットになってしまうのです。このため初期型ポケットは全周性になることが多い傾向にあります。


2つ目の遅延型ポケットは褥瘡発生後に発生します。例えばギャッチアップ(上半身をベッド上で起き上がらせる)をして寝ている際にずれ力が生じます。皮下脂肪を超える褥瘡があれば、柔らかい脂肪組織がずれ力によって簡単に変形してしまいます。長時間のギャッチアップやずるような体位変換により創部にずれが生じると、皮下脂肪が変形してポケットを形成してしまいます。この場合特定の方向のみのポケットになることが多いのが特徴です。


これら2つのポケット発生機序には重要な共通点があります。ポケットは皮下脂肪を超える深い褥瘡でのみ発生するということです。深い褥瘡は感染リスクも高く、患者のQOLを大きく損なわせます。


ポケット形成褥瘡の評価とP-ライトによる計測方法

ポケットが発生した褥瘡では、正確な評価が治療方針を決める上で必須になります。これまでポケットの大きさは鑷子や綿棒を用いて測定されていましたが、現在はP-ライトという光学機器を用いた計測が推奨されています。


その理由は重要です。


不用意に鑷子をポケット内に挿入するとポケット内部の肉芽組織を傷つけてしまう恐れがあります。傷がつくと出血したり痛みが生じたり、肉芽の増生が阻まれることも起こります。


これは治療を妨げる行為になってしまいます。


P-ライトは皮膚を透過した光がポケット内腔に明点となって示されるため、非侵襲的にポケットの形状や深さを正確に把握できます。肉芽を傷つけることなく評価できるこの機器の導入は、ポケット形成褥瘡の管理において大きな進歩といえます。


ポケットの大きさを測定する際は、体位を変えるとサイズが変わりやすいため、同一体位での計測が重要です。DESIGN-R評価票では、ポケットの有無を表現する際に、ポケットがなければ小文字のp0、ポケットがあれば大文字のPと表記します。このようにポケットを評価することで、治療効果を客観的に追跡することができます。


ポケット形成褥瘡の感染機序と周囲組織への影響

ポケット形成褥瘡では感染リスクが極めて高くなります。ポケット内に薬剤や汚水が残ると、その環境は細菌の増殖に最適になってしまいます。感染が進行すると膿が生じ、その膿がポケット内に溜まることでさらに組織破壊が進行します。


ポケット内の分泌物が増えてくると、浸出液がポケット周囲に広がり、腱や筋層の間の結合が弱い部分に入り込みます。するとポケットがどんどん広がり、感染範囲も拡大していきます。周囲皮膚の発赤は感染が進行している重要なサインです。ポケット管理では常にこのような兆候に注意を払う必要があります。


『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、ポケットを有する褥瘡に対して、滲出液が多い場合はアルギン酸塩やハイドロファイバーなどのドレッシング材を用いることが推奨されています。ただしドレッシング材を使用する際には、ポケット内に深くドレッシング材を挿入しないこと、創を圧迫するような使い方をしないことが重要なポイントです。局所療法だけに頼ると外力を排除できていないため、治癒が進みません。


全身状態とポケット形成リスクの関連因子

ポケット形成褥瘡の発生には全身状態が大きく関連しています。栄養状態が低下している患者では組織の修復力が弱くなるためポケットの形成が進みやすくなります。特に低タンパク血症や貧血、糖尿病などの慢性疾患がある場合は要注意です。


長時間同じ姿勢で過ごす場合、特に車椅子やベッド上での体位変換が少ない患者ではポケット形成のリスクが高まります。痩せすぎや筋力低下により骨が突出している部分への圧迫が強い場合も同様です。スキンケアが行き届かず皮膚が常に湿潤または乾燥している状態も条件を悪化させます。これらの複数の要因が重なると、ポケット形成の可能性はさらに高まります。


いったんポケット形成褥瘡が発生すると、自力での自然治癒は非常に難しくなります。外からの圧力をうまく逃がし、感染や汚染を防ぎつつ治療する必要があります。深部組織の壊死が進んでいる場合は、切開や洗浄といった処置が不可避となりやすいです。


ポケット形成褥瘡における壊死組織の種類と局所療法の限界

ポケット内に壊死組織が残っている場合、外科的デブリードマンを行い洗浄を十分に行って創面をきれいにする必要があります。これは単なる外用薬の塗布では達成できません。外用薬を使用しての化学的デブリードマンも有効ですが、ポケット内の深部までは到達しにくいため、深いポケットでは十分な効果が期待できません。


ブロメラインを用いて化学的デブリードマンを行う際には、周囲の健常な皮膚をしっかり白色ワセリンで保護することが重要です。


そうしないと健康な組織も傷めてしまいます。


ポケットにおいては感染を引き起こすことが多いため、周囲皮膚の発赤などに常に注意することが必要不可欠です。


ポケット形成褥瘡の治療選択肢と外科的介入

保存的治療でポケットが改善しない場合、外科的にポケットを切開するか陰圧閉鎖療法を行うことが検討されます。同時に、圧迫やずれ力を根本的に排除することが重要です。


これなしには治療は成功しません。


ポケット切開術の適応基準と判断基準の詳細

ポケット切開術が必要となるのは、ポケット内の壊死組織が広範囲に及び、洗浄や表層的な処置だけでは対応が難しい場合です。ポケットが深いまま放置されるとポケット内の感染が拡大して膿瘍を形成し、組織壊死が進行して創部が拡大します。さらに全身状態が悪化し、発熱や倦怠感につながるリスクが高まります。


医師は複数の観点から手術の必要性を判断します。視診や触診だけでなく、場合によっては超音波検査やMRI、CTなどの画像検査を用いてポケットの形状や深さを評価します。壊死組織の広範囲性、感染の度合い(膿がたまっているか、悪臭が強いか)、痛みや炎症の程度、全身状態(発熱の有無、意識状態、栄養状態)、合併症の有無などが総合的に検討されます。


全身衰弱の度合いが極端に低い場合、手術リスクが高まります。糖尿病が重度であれば感染リスクや創傷治癒力の低下に配慮が必要です。凝固因子の異常や貧血があれば止血管理に特別な注意が必要になります。長期ステロイド服用や免疫抑制剤使用で免疫力が低下している場合は感染予防策を強化する必要があります。心疾患や呼吸器疾患が重い場合は全身麻酔が困難となることもあります。このため患者さんの生活背景やQOLも大きく関わります。


ポケット切開術のリスクとベネフィットおよび術後の再発予防

ポケット切開術は褥瘡を根本的に改善するための大きな手段ですが、リスクも存在します。切開範囲が広いほど出血や痛みを伴いやすく、処置後に感染が広がる可能性も考えられます。


持病がある場合は特に慎重な準備が必要です。


一方ベネフィットとしては、ポケット内の壊死組織を直接除去し創面をきれいに整えることで、創傷治癒の進行が促される点があります。感染による膿や毒素が局所に留まるのを防ぎ、炎症や痛みが軽減することも多いです。加えてポケットの大きさが明確になるので、その後のドレッシング交換や洗浄、栄養管理などの継続的なケアも計画を立てやすくなります。


重要なのは、ポケット切開を行っても、もともとポケットを有していた患者ではポケットが再発することが少なくないという事実です。


おそらく同様のずれ力が続いているためです。


そのため、ポケット切開後も新たなポケット形成予防のため牽引は継続することが多いのです。


外科的切開に頼らない伸縮テープによるポケット牽引療法

伸縮テープを用いたポケット牽引は、外科的治療を行わずともポケットを改善できる可能性がある方法です。


特に一方向のみのポケットに有効です。


浅いポケットであれば伸縮テープによる牽引でポケットをオープンにできます。


より重要なのは、伸縮テープがポケット難治化の原因となるずれ力に抵抗できるという点です。ポケットが深く牽引では最深部を開くことができない場合でも、ずれ力を軽減することでポケットが改善することがあります。つまり、伸縮テープによる牽引はポケットを治しつつ、ずれ力によるポケット悪化予防にもなるのです。


伸縮テープによるポケット対策には多少のコツがあり、適切に行わないと十分な効果が出せません。テープは洗浄後に貼るため、皮膚に密着しやすいように貼る部位を十分に乾かす必要があります。15~20cm程度に切ったテープを可能な限り褥瘡の辺縁ぎりぎりに貼り、片方の手で押さえながらポケットが開くように引っ張ります。もう片方の手で皮膚に垂直方向にテープを引っ張り、引っ張った状態を維持したまま皮膚に貼るのがポイントです。


テープ負けは粘着力が強いため毎日貼る・剥がすを繰り返すと生じやすくなります。予防法として、テープが多少剥がれかけていても牽引力が保てていれば毎日は貼り換えないこと、皮膚が弱い患者には事前にリモイスコート®などで皮膚を保護することが有効です。荒れた場合は貼る場所や角度を変え、荒れた皮膚にはワセリンまたはステロイド外用剤を塗布します。このような工夫により安全な治療が実現します。


ポケット形成褥瘡における長期予後不良時の対応と感染対策の優先順位

全身状態が不良の場合や長期予後が見込まれない場合は、治癒を目指さず創部の感染対策を主体とすることもあります。このような場合でも可能であれば伸縮テープでの牽引は継続することが多いです。


実際のところ、訪問診療では全身状態不良の患者が少なくなく、ポケット切開を行っても創が治らない可能性があります。そのため感染対策として壊死組織の除去は行っても、ポケット切開は行わないこともあります。例外的に、ポケット内部に壊死組織があり感染が危惧される場合に、切開しないとポケット深部の壊死を除去できない場合は全身状態不良でも切開を行うことがあります。


あきらめずに長期に牽引を継続していると、急にポケットが縮小することもあります。


なによりポケットの進行を予防できます。


伸縮テープでの牽引は比較的安全にできるため、ポケットのリスクのある患者やすでにポケットをみとめる患者には可能な限り行うことが推奨されています。


ポケット形成褥瘡の予防戦略と治癒環境の構築

ポケット形成褥瘡を作らない対策が何より重要です。深い褥瘡を作らないことが全ての始まりになります。


褥瘡発生時における深部損傷の予防と圧迫管理戦略

ポケット形成褥瘡を予防するには、まず深い褥瘡を作らないことが重要です。これは初期段階での予防介入が極めて重要であることを意味しています。皮下脂肪を超える深い褥瘡の発生を防ぐことが全ての基本です。


骨突出部にかかる圧迫をできるだけ少なくすることが基本戦略になります。体圧分散を目的とした器具の選択、定期的な体位変換の実施が不可欠です。体位変換の間隔は患者の栄養状態や血液循環の状態によって異なりますが、一般的には2時間ごとの体位変換が推奨されています。


特に仙骨部や坐骨部といった骨が突出している部分への圧迫に注意が必要です。これらの部位は褥瘡が深くなりやすく、ポケット形成につながりやすいのです。そのため早期段階での圧迫管理が何より重要です。痛みや不快感を訴える患者には、より頻繁な体位変換が必要になることもあります。


栄養管理と全身状態の最適化によるポケット形成リスク低減

栄養状態の改善はポケット形成を防ぐ上で極めて重要です。低タンパク血症や貧血がある患者では創傷治癒能力が著しく低下しており、深い褥瘡になりやすくなります。栄養評価を早期に行い、不足している栄養素を特定することが大切です。


特にタンパク質の充分な摂取が重要です。創傷治癒には大量のコラーゲン合成が必要であり、これはタンパク質なしには実現できません。ビタミンC、亜鉛、鉄なども創傷治癒に必須の栄養素です。食事が十分に摂取できない患者には栄養補助食品の利用や、必要に応じて経腸栄養管理も検討すべきです。


全身状態の最適化には糖尿病や循環器疾患などの慢性疾患の管理も含まれます。血糖コントロールが不十分な場合は感染リスクが著しく高まります。これはポケット形成を促進し、その後の治癒を大きく妨げる要因になります。医師と連携して血糖値や血圧の管理を徹底することが、ポケット形成褥瘡の予防に直結します。


スキンケアと皮膚環境の最適化によるポケット形成予防

皮膚環境の最適化もポケット形成予防の重要な要素です。皮膚が常に湿潤している場合、スキンケアが行き届かず感染のリスクが高まります。一方で過度に乾燥している場合は皮膚バリア機能が低下します。


適切な湿度を保つことが大切です。


失禁対策も重要なポイントです。肛門周囲や骨の突出した部分をはじめ、褥瘡がある場合にはその周囲などへ白色ワセリンを塗ることで、湿潤の防止、おむつ交換時などに発生する摩擦やずれの回避ができます。


清潔を保つという点では失禁対策も重要です。


皮膚の赤みや変色が数日以上続いている場合は要注意です。触ったときに熱を帯びている、または硬く感じる場合も同様です。皮下の厚みが失われたように感じ、押すと深くへこむ場合はポケット形成が始まっている可能性があります。白っぽい浸出液や悪臭など感染を疑う兆候があれば、すぐに医療者に相談する必要があります。


ポケット形成褥瘡の早期発見と多職種連携による継続的ケア

毎日の皮膚チェックが早期発見の鍵になります。興奮やうめき声など痛みによる表情やしぐさの変化がみられる場合も褥瘡の悪化が疑われます。皮膚状態だけでなく全身状態も合わせて見ることが重要です。発熱や倦怠感、食欲不振といった症状が出てきた場合は褥瘡の悪化が疑われます。早期発見・早期対応が褥瘡の重症化を防ぐカギになります。


医師・看護師・介護職員が連携しながら継続的に創部の状態を観察し、再発や感染拡大を防ぐことが肝要です。医師は定期的に創部を診察しながら治療方針を示し、看護師はドレッシング交換や洗浄などの実務を担いながら患者の痛みや不安をケアします。介護職員は日々の体位変換や清潔ケアを徹底し、患者や家族とのコミュニケーションを通じて不安や課題を共有します。


このような多職種連携により、ポケット形成褥瘡であっても治療の成功確率が大きく高まります。特に在宅医療の体制が整っていれば、患者が自分に合ったペースで治療を続けられる環境が実現できます。


難しい「ポケット」の治療をどう行う? | 褥瘡を治すための基本的な知識(アルメディアウェブより)


床ずれが治らない時|褥瘡の「ポケット切開」治療が必要なケース(フジクリニックより)


褥瘡処置③ 治りにくいポケットや、ずれの対策に、伸縮テープが大活躍(皮膚科専門医による褥瘡ブログより)




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