マルチブラケット装置手順と装着流れを解説

マルチブラケット装置の装着手順は5つのステップで構成され、各段階で正確な技術が求められます。歯面研磨からワイヤー装着まで、歯科医療従事者が知っておくべき重要なポイントと患者指導のコツを網羅的に紹介します。臨床で役立つ知識を身につけませんか?

マルチブラケット装置装着の手順

エッチング時間15秒だと再装着率が3割上がる


この記事の3つのポイント
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装着の基本5ステップ

歯面研磨、バンド装着、ブラケット接着、ワイヤー装着、患者説明の流れを詳しく解説します

⚠️
失敗を防ぐポイント

エッチング時間やブラケット位置決めなど、脱落リスクを減らす具体的な技術を紹介します

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患者指導のコツ

装着後の痛みや食事制限、口内炎対策など、トラブル予防のための説明方法をまとめます


マルチブラケット装置の歯面研磨とクリーニング


マルチブラケット装置を装着する最初のステップは、歯面研磨です。この工程を丁寧に行うことでブラケットの接着強度が大きく変わります。


専用のペーストとブラシを使って、歯の表面を機械的に清掃していきます。この作業で除去するのは、歯垢や歯石だけではありません。エナメル質表面のバイオフィルムと呼ばれる、口腔内細菌が作り出す目に見えない膜までしっかり取り除く必要があります。バイオフィルムが残っていると、接着剤が歯面に正しく密着せず、ブラケット脱落の原因となってしまうのです。


研磨作業では、歯面全体を均一に磨くことが重要です。特にブラケットを装着する部分は念入りに行いましょう。研磨ペーストの粒子が歯の表面の微細な凹凸に入り込み、汚れを物理的に除去していきます。作業中は歯科衛生士がアシスタントとして吸引を担当し、術野の明視性を確保することで作業効率が上がります。


つまり清掃が基本です。


患者さんには事前に歯磨きをしてから来院していただくことで、研磨作業の時間を短縮できます。ただし、どんなに丁寧に歯磨きをしてきても、プロフェッショナルクリーニングは必須です。装置装着前の歯面研磨は、治療成功の土台を作る大切な工程なのです。


マルチブラケット装置のバンド試適と装着手順

バンドは奥歯に装着する帯状の金属装置で、マルチブラケット装置の中でも特に強い矯正力がかかる大臼歯に使用します。上下左右合わせて4~8か所に装着するのが一般的です。


バンド装着の前に、セパレーションという準備工程が必要になる場合があります。歯と歯の間が狭くバンドが入らない時は、セパレーション用のゴムを歯間に挟んで隙間を作ります。セパレーションの期間は通常1週間、早ければ4~5日で十分な隙間が確保できます。患者さんによっては2週間程度かかることもあるため、個人差を考慮した計画が求められます。


バンドの試適では、歯の大きさに合った既成バンド(シームレスバンド)を選択します。各サイズのバンドを実際に歯に当てて、最適なフィット感を確認する作業です。サイズ選びを間違えると、バンドが緩すぎて脱落したり、きつすぎて歯肉を傷つけたりするリスクがあります。


試適が完了したら、バンド本体にブラケットやチューブを電気溶接で取り付けます。これは院内で行う場合と、技工所に依頼する場合があります。準備が整ったバンドを、歯科用セメントで歯に固定していきます。セメントの硬化時間は製品によって異なりますが、通常5~10分程度です。硬化するまでの間、患者さんには口を開けた状態で待っていただく必要があります。


これは必須工程です。


バンド装着は所要時間が長く、患者さんの負担も大きい工程です。事前に「開口時間が長くなること」「硬化待ちがあること」を説明しておくと、患者さんの協力が得やすくなります。


マルチブラケット装置のブラケット接着テクニック

ブラケット装着には、ダイレクトボンディング法とインダイレクトボンディング法の2つの方法があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、症例や医院の方針に合わせて選択します。


ダイレクトボンディング法は、歯科医師が患者さんの口腔内で直接ブラケットを一つずつ接着していく方法です。この方法は技術的にシンプルで、特別な準備が不要なため多くの医院で採用されています。ただし、限られた時間の中で正確な位置決めを行う必要があり、術者の経験と技術に左右される面があります。口腔内は唾液や呼気による湿気があるため、接着環境としては理想的ではありません。


インダイレクトボンディング法は、事前に歯型模型上でブラケットの位置を決め、専用のトレーを使って一度に複数のブラケットを装着する方法です。時間的余裕がある中で位置決めができるため、より正確な装着が可能になります。患者さんの口腔内での作業時間も短縮できるため、負担軽減につながります。デメリットは準備に時間とコストがかかることです。


どういうことでしょうか?


ブラケット装着の前には、エッチング処理が不可欠です。リン酸処理剤を歯面に塗布し、エナメル質表面を脱灰することで接着剤が付きやすい粗造な状態を作ります。エッチング時間は20秒が標準とされていますが、15秒以下の短時間では接着強度が不足し、ブラケット脱落のリスクが3割増加するという報告があります。逆に長すぎても歯質へのダメージが懸念されるため、正確な時間管理が求められます。


エッチング後は水で十分に洗い流し、エアーで乾燥させます。白くなったエナメル質表面が確認できれば、エッチングが適切に行われた証拠です。この白い部分は、治療後に速やかに再石灰化するため、歯質への永続的な影響はありません。


ブラケット本体と歯面の両方に接着剤を塗布したら、光照射で硬化させます。光照射時間は製品によって異なりますが、通常3~10秒程度です。全てのブラケット装着が完了したら、さらに5分間待機して接着剤の完全硬化を確認します。この待機時間を省略すると、装着直後にブラケットが外れるトラブルにつながります。


接着は慎重にです。


装着後は、歯科衛生士が余剰の接着剤を除去し、ブラケット周辺をクリーニングします。余剰接着剤が残っていると、プラークが付着しやすくなり、虫歯リスクが高まるため、丁寧な仕上げが必要です。


マルチブラケット装置のワイヤー装着と調整方法

ワイヤーは矯正力を発揮する核となる部分で、材質や太さによって様々な特性を持っています。治療の段階に応じて適切なワイヤーを選択することが、効率的な歯の移動につながります。


治療初期には、直径0.010インチ(約0.254mm)という髪の毛ほどの細さのニッケルチタン製ワイヤーから始めることが多いです。このワイヤーは柔軟性と形状記憶性を持ち、歯に優しい力で徐々に動かし始めます。患者さんの痛みも比較的少ないため、装置に慣れていただく期間に適しています。


治療中期になると、0.016インチ、0.018インチと段階的に太くしていきます。ワイヤーが太くなるほど強い矯正力が発揮されますが、同時に痛みも増す傾向にあります。中期以降はステンレススチール製の硬いワイヤーに移行し、より確実に歯を目標位置へ移動させます。


治療後期には、0.019×0.025インチという四角型の太いワイヤーを使用します。このサイズはブラケットのスロット幅(0.022×0.028インチ)に近く、歯の位置を三次元的に精密にコントロールできます。四角型ワイヤーは、歯の傾きや回転を細かく調整する仕上げの段階で威力を発揮します。


これは段階的です。


ワイヤーの装着では、結紮(けっさつ)という作業が重要になります。細い針金やゴムを使って、ワイヤーをブラケット一つひとつに固定していく作業です。結紮が緩いとワイヤーの力が歯に伝わらず、治療効果が低下します。逆にきつすぎると過度な力がかかり、歯根吸収などのリスクが高まります。適切な張力での結紮は、矯正治療の成否を左右する技術です。


ワイヤーの長さ調整も欠かせません。後方のワイヤーが余って頬に刺さると、患者さんに強い痛みを与えてしまいます。装着時に適切な長さにカットし、尖端を丸めて安全性を確保します。ただし、歯が動くにつれてワイヤーが伸びてくることがあるため、調整来院時には毎回チェックが必要です。


セルフライゲーティングブラケットを使用する場合は、結紮作業が不要になるため、装着時間を大幅に短縮できます。ブラケット本体にワイヤーを固定する機構が組み込まれており、開閉するだけでワイヤーが保持されます。ただし、装置費用が高くなる点は考慮が必要です。


歯科衛生士は、ワイヤーの準備や器具の受け渡しでアシスタント業務を担当します。ワイヤーカッターやプライヤーなど、複数の器具をスムーズに渡せるよう、術者の動きを先読みして準備することが求められます。


マルチブラケット装置装着後の患者指導ポイント

装置装着が完了したら、歯科衛生士による患者指導が始まります。この説明を丁寧に行うことで、装置装着後のトラブルを大幅に減らすことができます。


食事に関する指導では、「食べてはいけないもの」ではなく「食べ方の工夫」を中心に伝えます。肉や野菜などの硬いものは、小さく切ってから奥歯で噛むように指導します。前歯でかみ切ろうとすると、ブラケットに過度な負荷がかかって脱落の原因になるためです。じゃがりこや焼き鳥の串など、硬くて大きなものには特に注意が必要です。


お餅やチューイングガムなど、歯にくっつきやすいものも要注意食品です。大きな塊が装置に絡みつくと、外そうとした時にブラケットごと取れてしまうリスクがあります。これらも小さく切って食べれば問題ありません。一方、100%キシリトールガムはベースが硬いため装置にくっつきにくく、虫歯予防の観点からも推奨できます。


装置装着後の痛みについては、正直に説明することが信頼関係構築につながります。装着後2~3日から1週間程度が痛みのピークで、歯が浮いたような感覚が生じます。痛みの程度には個人差があり、我慢できる範囲なら市販の鎮痛剤で対応可能です。ただし、「まったくご飯が食べられない」「夜眠れない」という状態が1週間以上続く場合は、医院に連絡していただくよう伝えます。


結論は説明が大切です。


歯磨き指導では、ブラケット周辺、ワイヤーと歯の間、歯間という3つの重点箇所を具体的に示します。理想は毎食後の歯磨きですが、最低でも朝晩2回は丁寧に磨くよう指導します。矯正治療中に虫歯ができると、その部分の装置を外して虫歯治療を優先する必要があり、治療期間の延長につながります。虫歯治療の内容によっては、数週間から数か月の治療中断を余儀なくされることもあると説明すると、患者さんの予防意識が高まります。


口内炎対策として、矯正用ワックスを必ず渡します。ブラケットが頬や唇に当たって痛い時は、当たる部分の装置にワックスをつけることで痛みが軽減されます。ワックスの使い方を実際に見せながら説明すると、患者さんが自宅で正しく使えます。装置に慣れるまでの1~2週間は、常にワックスを携帯してもらうよう勧めます。


ブラケット脱落やワイヤー抜けが起きた場合の対応も説明しておきます。痛みがなければ次回来院まで放置しても問題ないこと、痛みがある場合は電話連絡してほしいことを明確に伝えます。特に、ワイヤーが頬に刺さって痛い場合は、早めに来院して切断処置を受けた方が良いと説明します。再装着には追加費用がかからない医院が多いため、その点も伝えておくと患者さんの心理的負担が軽減されます。


初回装着時には、これらの説明内容をまとめた資料を渡すと効果的です。口頭説明だけでは忘れてしまうことも、資料があれば自宅で確認できます。当院では説明用のパンフレットと矯正用ワックス、歯ブラシをセットにして患者さんに渡していますという形で、具体的な取り組みを紹介すると説得力が増します。


マルチブラケット装置装着時の時間配分と医院運営

マルチブラケット装置の装着には、想像以上に時間がかかります。初回の片顎装着で60分前後、2回目の装着では装置装着とワイヤー交換があるため60~90分程度を見込む必要があります。


これは大きな時間です。


装着は上下を分けて2回の来院で行うのが一般的です。初回に上顎、次回に下顎という流れが多いですが、治療計画によっては数か月空けることもあります。患者さんのスケジュールや治療の進行状況を考慮して、歯科医師が判断します。


予約枠の設定では、装着予定時間に加えて15~30分のバッファを確保しておくと安心です。患者さんの口腔内の状態や協力度によって、予定より時間がかかることは珍しくありません。次の患者さんを待たせないためにも、余裕を持った時間設定が医院運営のポイントになります。


アシスタント体制も重要です。歯科医師一人で全ての作業を行うより、歯科衛生士が吸引や器具受け渡しをサポートすることで、作業効率が格段に上がります。特にダイレクトボンディング法では、エッチング後の時間管理や接着剤の準備など、複数の作業を同時進行する場面が多いため、チームワークが求められます。


器具の準備と滅菌サイクルも計画的に行う必要があります。ブラケット装着には多数の専用器具を使用するため、一日に複数の装着アポイントを入れる場合は、十分な器具セットを用意しておきます。滅菌に時間がかかる器具もあるため、前日までに準備を整えておくと当日の診療がスムーズです。


患者さんへの事前説明も効率化のカギです。装着当日に初めて説明するのではなく、診断時に「装置装着には1時間以上かかること」「口を開けた状態が続くこと」を伝えておくと、患者さんも心の準備ができます。開口時間が長いと顎が疲れるため、途中で休憩を挟むことも事前に伝えておくと良いでしょう。


費用面では、ブラケット脱落による再装着は無料とする医院が多い一方、患者さん都合で装置を一時除去して再装着する場合は、矯正装置料の一部を請求する医院もあります。費用ルールを明確にして、契約時に書面で示しておくことがトラブル防止につながります。


装置装着日は試験や旅行の前を避けるよう勧めます。装着後3日間ほどは痛みで食事が難しくなることがあるため、大切なイベント前の装着は患者さんにとって負担になります。スケジュール調整の際には、患者さんの生活イベントを確認し、最適なタイミングを提案することが患者満足度向上につながります。


マルチブラケット装置の詳細な治療手順と各段階の解説(歯科辞書OralStudio)




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