急性根尖性歯周炎による激痛は、多くの歯科医が遭遇する症状の中でも最も患者負担が大きいものです。通常、症状の進行は比較的一貫したパターンを示します。最初の1~2日間は軽いうずくような痛みで始まり、その後、歯をかみ合わせると飛び上がるほどの激痛へと移行するというのが一般的な経過です。この時期、患者の大半は睡眠をとることができず、かなり憔悴した状態で来院されます。
強い痛みの最も厳しい時期は4~5日間で収まるというのが臨床的な知見です。その後、症状は新しい段階へと移行し、歯肉の腫脹が顕著になってきます。腫脹が進行すると、骨の中に蓄積していた膿の圧力が低下するため、激痛は次第に軽減していきます。このメカニズムを患者に説明することで、見通しを持たせることができます。
膿が物理的に排出されることで、患者が経験する激痛は劇的に改善します。一般的には、歯肉の腫脹が1週間程度で破れ、排膿路(フィステル)を形成するまでの間が最も辛い期間です。フィステルが形成されると、膿が継続的に排出され、根尖周囲の圧迫圧が低下するため、患者の不快感は大きく軽減されるのです。
ただし、重要な点として認識すべきは、フィステルが形成されたからといって根尖性歯周炎が治癒したわけではないということです。膿の出口ができたため一時的に症状が消失しているだけで、細菌感染は依然として存在しています。この段階で治療を中断すれば、再度の急性発作が繰り返されることになります。患者さんの期待値を正しく設定することが、治療継続への重要な要素です。
治療開始前の対処として、強い疼痛を伴う患者に対しては、まず鎮痛薬や抗生物質を処方して症状を緩和させることが重要です。多くの症例では、抗生物質は2~3日で効果が現れ始め、その後1週間程度の効果が継続します。疼痛が特に強い場合には、処方薬の鎮痛剤を使用することで、患者の生活の質を維持することが可能です。
急性の根尖性歯周炎で根尖周囲の歯肉が著しく腫脹している場合は、根管治療開始前に歯肉の切開を行い、膿を積極的に排出する(排膿処置)こともあります。この応急処置により、患者の激痛は数時間で大幅に軽減されることが多いのです。つまり、激痛を耐え続けるのではなく、早期の歯科受診が症状緩和の鍵となります。
通常、急性根尖性歯周炎の激痛は4~5日で収束し、その後は腫脹へと移行するというパターンが標準的です。しかし、1週間以上にわたって激痛が継続する、あるいは日を追うごとに症状が悪化する場合は、治療方針の変更が必要です。このような場合、いくつかの原因が考えられます。
根管内に感染源が残存している可能性が高いため、再度の根管内評価と徹底的な清掃が必要になります。また、治療中の器具破損、歯の破折、根尖外の複雑な炎症病巣などが原因となっていることもあります。成功率60~80%とされる感染根管治療において、うまくいかないケースの多くは、このような複雑な状況を含んでいます。激痛が長引く患者には、追加の診断検査や再治療の必要性を説明し、適切な医学的対応を促すことが重要です。
興味深い臨床観察として、初回の急性発作で最もひどい痛みを経験する患者が多いという点が挙げられます。初回発作時に患者はしばしば寝られないほどの激痛を報告しますが、フィステルが形成された後に再度急性発作を繰り返す場合、フィステルが既に存在するため、膿が即座に排出され、初回ほどの激痛には至りません。この臨床的な経験則を患者に説明することで、「今回が最もつらい時期である」という認識を与えることができます。
長期放置による問題として、繰り返す急性発作により顎骨内に嚢胞(シスト)が形成される可能性があります。嚢胞は徐々に拡大し、最終的には外科的摘出が必要になることもあります。特に糖尿病などの全身疾患を有する患者の場合、感染が頭頸部全体に拡散する蜂窩織炎へと進展するリスクがあり、生命に関わる合併症に至ることも稀ではありません。したがって、早期の根管治療完了が患者の長期的な歯牙保存と健康管理に直結することを、患者さんに丁寧に説明することが歯科医師の責務です。
根尖性歯周炎の治療成功には、患者の治療継続への動機づけが不可欠です。激痛という最もつらい時期が4~5日で必ず軽減すること、その後は適切な根管治療により完治が期待できること、そして放置による重大な合併症の可能性を、エビデンスに基づいて説明することで、患者さんとの信頼関係を構築できるでしょう。
参考情報:根尖性歯周炎の急性発作においては、歯根膜から骨膜下、粘膜下へと炎症が進行する段階的なプロセスが明確に存在します。各段階での症状の特徴を理解することで、患者さんへのより正確な説明と予測可能な治療計画が実現できます。
原田歯科医院:根尖性歯周炎による激痛の段階的経過とフィステル形成までのプロセスについて、臨床的観察に基づいた詳細な記載があります。
石野歯科医院:急性根尖性歯周炎の4つのステージ(歯根膜期、骨内期、骨膜下期、粘膜下期)と各段階での症状の違いが詳述されています。
きど歯科:急性根尖性歯周炎での排膿処置の適応と治療による痛みと腫れの軽減メカニズムが説明されています。

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